原爆体験者等健康意識調査報告書第3-2(3)
第3 調査結果
2 解析の方法の結果
(3)身体的な症状
1 自覚的な急性症状の有無上付きについて
- 基本調査結果から、自覚的な急性症状の有無について回答がある者で、71歳以上の者(心身の健康影響と同様に記憶の明確さを考慮)を解析対象とした。(解析対象者数 10,926人)
※自覚的な急性症状の有無=基本調査(アンケート)の質問項目である「原爆の直後からおよそ2か月間に出現する、発熱、鼻・歯茎・腸などからの出血、皮下出血、下痢、脱毛などで、1週間程度続いたもの」の自覚の有無をいう。これらの症状は当時の社会経済状況や栄養状況による可能性もあり、放射線との関連は必ずしも明らかではない。 - 性別原爆体験区分別急性症状の有無別頻度とその割合を表11に示す。
- 症状が有ったと回答した割合は、(1)直接被爆群で最も高く、男女ともに50%程度であった。
区分 |
男性 症状有 |
男性 症状無 |
男性 計 |
女性 症状有 |
女性 症状無 |
女性 計 |
---|---|---|---|---|---|---|
被爆群(1)直接被爆群 | 1,053人 (50. 5%) |
1,034人 (49.5%) |
2,087人(100.0%) | 1,799人(48.2%) | 1,932人 (51.8%) |
3,731人 (100.0%) |
被爆群(2)入市被爆群 | 240人 (26.7%) |
659人(73.3%) | 899人(100.0%) | 234人(20.6%) | 900人 (79.4%) |
1,134人 (100.0%) |
被爆群(3)救護・看護被爆群 | 26人 (19.3%) |
109人 (80.7%) |
135人 (100.0%) |
57人 (12.6%) |
394人 (87.4%) |
451人 (100.0%) |
黒い雨体験群(4)指定地域群 | 24人 (15.1%) |
135人 (84.9%) |
159人 (100.0%) |
33人 (16.6%) |
166人 (83.4%) |
199人 (100.0%) |
黒い雨体験群(5)未指定地域群 | 20人 (9.6%) |
188人 (90.4%) |
208人 (100.0%) |
24人 (11.1%) |
192人 (88.9%) |
216人 (100.0%) |
比較対照群 | 36人 (3.5%) |
979人 (96.5%) |
1,015人 (100.0%) |
17人 (2.5%) |
675人 (97.5%) |
692人 |
- 次に、性別及び年齢の効果を調整した上で、自覚的な急性症状発生における被爆状況依存性を定量化するために、ロジスティック回帰分析を行った。自覚的急性症状の有無を目的変数とし、原爆体験内容をダミー変数で表現し、比較対照群を基準群として、性別と年齢の2変数を加えて説明変数とした。
- 被爆群、黒い雨体験群のいずれも、比較対照群に比べて有意に高かった。(図1)
図1 原爆体験区分別自覚的急性症状の有無に関するオッズ比
(Cat1=(1)直接被爆群、Cat2=(2)入市被爆群、Cat3=(3)救護・看護被爆群、Cat4=(4)指定地域群、Cat5=(5)未指定地域群、Cat6=(6)比較対照群)
2 現在治療等を行っている病気について
基本調査結果から、「現在、病院で診断・検査や治療を受けている病気」として、表12の中でいずれかに〇の記載がある者全員を解析対象とした。(複数回答可)(解析対象者数 20,133人)
内容 |
別表での表示 |
---|---|
貧血など造血機能の病気 | blood |
肝硬変など肝臓の病気 | liver |
がん(悪性新生物) | cancer |
脳出血、脳梗塞など脳の病気 | brain |
糖尿病、甲状腺機能低下症など内分泌腺の病気 | internal |
高血圧性心疾患、心臓病、心筋梗塞など心臓の病気 | heart |
腎炎、腎不全など腎臓の病気 | kidney |
白内障など目の病気 | eye |
肺気腫、慢性間質性肺炎など呼吸器の病気 | respirat |
変形性関節症、変形性脊椎症、骨相鬆症など関節や骨の病気 | bone |
胃潰瘍、十二指腸潰瘍など胃や腸の病気 | stomach |
不眠、うつ、ストレスなどこころの病気 | mental |
婦人科の病気 | women's |
なし | Non |
- その中で、調査時年齢が71歳未満群と71歳以上群とに分け、性別年齢階級別の疾病別頻度を確認した。(別紙13、14、15、16に性別年齢階級別疾病別の有病者上付き頻度を示す。)
- この結果、「現在、病院で診断・検査や治療を受けている。」と回答した者の割合は、多くの病気に関して、(1)直接被爆群が最も高くなっていた。調査時年齢が71歳未満の場合、造血機能、関節や骨の病気が、また、調査時年齢が71歳以上の場合、造血機能及び脳の病気が、被爆群及び黒い雨体験群で比較対照群に比べて有意に高くなっていた。
- なお、がんについては、71歳未満の場合、(1)直接被爆群が比較対照群に比べて有意に高くなっており、71歳以上の場合、(1)直接被爆群と(2)入市被爆群が比較対照群に比べて有意に高くなっていたが、それ以外では比較対照群との間に有意差はなかった。
※有病者=基本調査で「現在、病院で診断・検査や治療を受けている。」と回答した者をいう。
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