原爆体験者等健康意識調査報告書第3-2(1)-1、2

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ページ番号1022259  更新日 2025年2月20日

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第3 調査結果

2 解析の方法と結果

(1)心身の健康影響

1.基本属性要因について
  • 基本調査結果から、まず、心身の健康に関する各従属変数上付きについて、基本属性情報上付きのみを説明変数とした重回帰分析上付きを行い、それぞれの体験区分が比較対照群と比較して有意な違いがあるかを検討した。
  • 次に、各従属変数について、基本属性情報、原爆体験、原爆体験の影響、原爆以外の戦争体験、その他の心的外傷体験を説明変数とした重回帰分析を行い、統計的にほぼ有意と認められる項目(p値<0.1)を選択した。(p値=統計的に差がないという仮説の下で観測された程度の差を生じる確率)
  • さらに、各群によって、体験内容(直接的、間接的等)に差が想定されたことから、それに伴う体験項目による心身の健康に対する反応性の違いを調整するために、被爆区分と原爆体験、原爆体験の影響、原爆以外の戦争体験、その他の心的外傷体験それぞれについて、交互作用を説明変数に加えて検討した。(その他は単純集計による。)
    ※1 従属変数=PCS-8(SF-8上付き身体的サマリースコア)MCS-8(SF-8上付き精神的サマリースコア)、IES-R(Total)、IES-R-I(再体験)、IES-R-A(回避)、IES-R-H(過覚醒)、K6のスコア
    ※2 基本属性情報=性別、年齢、現在の居住状況、介護度、世帯収入
    ※3 重回帰分析=従属変数が複数の説明変数によりどれくらい説明できるのかを定量的に分析する。
  • この結果、基本属性要因として調査対象者の性別、年齢、居住状況、介護度、世帯収入の違いが、全ての従属変数のスコアに有意な差をもたらせており、全般的に女性、高年齢、重い介護度、低い世帯収入が健康不良と有意に相関していた。
2.精神健康機能、不安抑うつ症状等について

基本属性要因を説明変数として投入し調整した上で、被爆群、黒い雨体験群(黒い雨関係群のうちの(4)指定地域群、(5)未指定地域群の2区分をいう。)、比較対照群((6)非体験群をいう。)の尺度得点について重回帰分析を行ったところ、以下のような結果を得た(表1)。

  • 精神健康機能指標(MCS-8)について
    被爆群、黒い雨体験群のいずれも、比較対照群と比べて全て有意にスコアが低く、精神的健康状態に悪影響を受けていた。
  • 不安抑うつ指標(K6)について
    被爆群、黒い雨体験群のいずれも、比較対照群と比べて全て有意にスコアが高く、不安抑うつ傾向が大きかった。
  • 心的外傷性ストレス症状指標(IES-R)について
    被爆群、黒い雨体験群のいずれも、比較対照群と比べて全て有意にスコアが高く、心的外傷性ストレス症状傾向が大きかった。
表1 原爆体験ごとの比較対照群とのスコア差(精神健康尺度)

区分

MCS—8

スコア差

MCS—8

p

K6

スコア差

K6

p

IES—R

スコア差

IES—R

p

被爆群(1)直接被爆群 -2.415 <0.001 1.890 <0.001 12.941 <0.001
被爆群(2)入市被爆群 -2.361 <0.001 1.675 <0.001 10.196 <0.001
被爆群(3)救護・看護被爆群 -2.362 <0.001 1.622 <0.001 9.316 <0.001
黒い雨体験群(4)指定地域群 -1.526 0.002 1.393 <0.001 6.651 <0.001
黒い雨体験群(5)未指定地域群 -2.356 <0.001 1.856 <0.001 9.262 <0.001
比較対照群 0.000   0.000   0.000  

(注)上記は、性別、年齢、居住状況、要介護度、世帯収入の基本属性要因を調整し、解析したもの。
MCS-8は、マイナス値大であるほど精神的健康状態が低い。
K6は、プラス値大であるほど不安抑うつ傾向が大きい。
IES-Rは、プラス値大であるほど心的外傷性ストレス症状傾向が大きい。

  • 以上より、MCS-8、K6、IES-Rの全てにおいて、被爆群、黒い雨体験群のいずれも、比較対照群との間に有意なスコア差が認められた。
  • このうち、(5)未指定地域群は、MCS-8についての差は被爆群に匹敵するほど大きく、K6についての差は(2)入市被爆群及び(3)救護・看護被爆群よりも大きかった。また、IES-Rについての差も(3)救護・看護被爆群に匹敵するほど大きかった。

このページに関するお問い合わせ

健康福祉局原爆被害対策部 調査課
〒730-8586 広島市中区国泰寺町一丁目6番34号
電話:082-504-2191 ファクス:082-504-2257
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