原爆体験者等健康意識調査報告書第3-2(1)-6、7
第3 調査結果
2 解析の方法の結果
(1)心身の健康影響
6 黒い雨関係群の心身の健康影響について
個別調査結果から、黒い雨関係群の(4)指定地域群(n=63)、(5)未指定地域群(n=159)、比較対照群(非体験群)(n=161)の男女割合をカイ二乗検定により、年齢、教育年数及びK尺度得点を分散分析法(ANOVA)により3群比較した。さらに、Tukey-KramerのHSD検定により、すべてのペアの群間比較(有意水準p<.05)を行った。その結果は次のとおりであった。
- 男女比、年齢、教育年数について、3群間で有意差を認めなかった。
- MMPIのK尺度得点は、3群間に有意差(F=4.87,p=.0082)があり、ペアごとの比較では(5)未指定地域群は比較対照群よりも有意に低かった。またK尺度得点は、SF-36の各下位尺度と有意な正の相関(r=.20~.37)を、GHQ28及びCAPS現在症状得点と有意な負の相関(r=-.39及びr=-.22)を示した。したがって自分を良く見せようとしたり、逆に問題を誇張して悪く見せようとする回答態度が心身健康関連の尺度得点に与える影響を調整するため、回答者のK尺度得点と、3群区分とK尺度得点との交互作用を共変量として投入した共分散分析法により3群間の各尺度得点を比較した。その結果、交互作用はいずれも有意でないことを確かめた上で、Tukey-KramerのHSD検定により、すべてのペアの群間比較(有意水準p<.05)を行った。その結果は次のとおりであった。
なお、以下に示す平均値(M)のはいずれも調整済み平均値(最小二乗平均)である。 - GHQ28得点は、3群間に有意差(F=4.84,p=.0084)があり、ペアごとの比較では(5)未指定地域群が(6)比較対照群よりも有意に高かった(M:(4)指定地域群=6.40、(5)未指定地域群=7.82、比較対照群=5.83)。
- SF-36の8下位尺度得点(国民標準値に基づくスコアリング)は、PF(身体機能)(F=6.49,p=.0017)、RP(日常役割機能)(F=7.15,p=.0009)、BP(体の痛み)(F=9.42,p=.0001)、GH(全体的健康感)(F=3.69,p=.0258)、VT(活力)(F=6.32,p=.0020)、SF(社会生活機能)(F=5.78,p=.0034)、RE(日常生活機能)(F=5.72,p=.0036)において3群間に有意差があり、ペアごとの比較では全てにおいて(5)未指定地域群が比較対照群よりも有意に低かった。また5%水準の有意差にはわずかにいたらなかったが、MH(心の健康)(F=2.77,p=0641)においても(5)未指定地域群が比較対照群よりも低かった。一方、(4)指定地域群は、BP(体の痛み)において(5)未指定地域群と同様に比較対照群よりも有意に低かったことを除いて、比較対照群との間に有意差を認めなかった。
- CAPS現在症状得点は、3群間に有意差(F=5.14,p=.0063)があり、ペアごとの比較では(5)未指定地域群は比較対照群よりも有意に高かった(M:(4)指定地域群=3.84、(5)未指定地域群=5.89、比較対照群=2.91)。
- 健康不安尺度得点は、3群間に有意差(F=17.95,p<0001)があり、ペアごとの比較では(4)指定地域群と(5)未指定地域群はともに比較対照群よりも有意に高かった(M:(4)指定地域群=2.84、(5)未指定地域群=3.45、比較対照群=1.24)。
- 差別・偏見体験尺度得点は3群間に有意差(F=11.98,p<0001)があり、ペアごとの比較では(5)未指定地域群は比較対照群よりも有意に高かったが、(4)指定地域群との間には有意差を認めなかった(M:(4)指定地域群=1.23、(5)未指定地域群=1.88、比較対照群=0.87)。
7 原爆体験後の精神的成長度(変化)について
個別調査結果から、PTGI(外傷後成長尺度)により原爆体験後のポジテイプな精神変化について検討した。
- 本調査におけるPTGI(21項目)の内部一貫性(α係数=.96)は優れていた。
- 被爆群及び黒い雨関係群とも、PTGI得点はSF-36上付き、GHQ28、CAPS、健康不安尺度、差別・偏見体験尺度のいずれとも、有意な相関関係を認めないか、有意であった場合も無相関であった。
- 被爆群のPTGI得点は、3群間に有意差(F=5.01,p=.0071)があり、間接被爆群は近距離直爆群及び遠距離直爆群よりも有意に得点が高かった(M:近距離直爆群=55.20、遠距離直爆群=55.91、間接被爆群=62.31)。原爆体験後のポジティブな精神変化は、間接被爆群に、より大きく認められた。
- 黒い雨関係群のPTGI得点(調整済み平均値)は3群間に有意差を認めなかった(M:(4)指定地域群=55.96、(5)未指定地域群=59.27、比較対照群=54.78)。またPTGI得点とK尺度得点とに相関関係を認めなかった(r=.05)。
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