原爆体験者等健康意識調査報告書3-2(4)
第3 調査結果
2 解析の方法と結果
(4)黒い雨の体験状況
- 解析する基本調査の調査項目は、黒い雨の体験(黒い雨を浴びたり、触れたり、ロにしたり、見たりしたことをいう。)の有無、体験場所、雨の降り始めと降り止んだ時刻(時単位)、雨の強さ(強い、中程度、弱い)、雨の色(真っ黒、黒っぽい、茶色、透明に近い)についてである。
- 解析対象者は、黒い雨を体験したと回答した者のうち、その黒い雨を体験した場所(場所情報)を回答している者で、心身の健康影響と同様に記億の明確さを考慮して、調査時の年齢が71歳以上の者に限定した。
- また、場所情報については、概ね旧町村単位(市内中心部については体験者が一定数集まる範囲)で統合し、その地域の代表地点(中心地の役場や学校)の位置情報(経度と緯度)に変換を行った。なお、各図表には、目安として広島市の行政区域のほか、いわゆる宇田大雨、宇田小雨、増田小雨に相当する区域を既存資料から推測して挿入している。
- 表17は、黒い雨の降り始め及び降り止んだ時刻に関する回答者の分布を示す。雨の降り始めと降り止んだ時刻が回答されているものをタイプA、降り始めの時刻のみが回答されている(降り止んだ時刻は不明)となっているものをタイプBとする。
- タイプAのデータについて、雨の降り始め時刻別降り終わり時刻別の2次元度数を表18に、タイプBのデータの降り止んだ時刻が不明の者の降り始めの時刻別回答者数を表19に示す。
タイプ |
降り始めの時刻(時) |
降り止んだ時刻(時) |
回答者数 |
---|---|---|---|
A | 8時から16時 | 8時から18時 | 1,084人 |
B | 8時から16時 | 不明 | 481人 |
計 | ― | ― | 1,565人 |
降り始めの時刻 |
降り止んだ時刻 8時 |
降り止んだ時刻 9時 |
降り止んだ時刻 10時 |
降り止んだ時刻 11時 |
降り止んだ時刻 12時 |
降り止んだ時刻 13時 |
降り止んだ時刻 14時 |
降り止んだ時刻15時 |
降り止んだ時刻 16時 |
降り止んだ時刻 17時 |
降り止んだ時刻 18時 |
計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
8時 | 12人 | 110人 | 19人 | 2人 | 8人 | 2人 | 4人 | 2人 | 0人 | 0人 | 0人 | 159人 |
9時 | 0人 | 25人 | 147人 | 52人 | 26人 | 13人 | 4人 | 9人 | 2人 | 2人 | 0人 | 280人 |
10時 | 0人 | 0人 | 13人 | 157人 | 69人 | 32人 | 18人 | 13人 | 2人 | 1人 | 1人 | 306人 |
11時 | 0人 | 0人 | 0人 | 9人 | 62人 | 28人 | 22人 | 10人 | 7人 | 2人 | 0人 | 140人 |
12時 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 6人 | 25人 | 9人 | 6人 | 3人 | 1人 | 0人 | 50人 |
13時 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 1人 | 24人 | 12人 | 4人 | 3人 | 1人 | 45人 |
14時 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 2人 | 39人 | 8人 | 1人 | 2人 | 52人 |
15時 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 2人 | 25人 | 13人 | 2人 | 42人 |
16時 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 0人 | 8人 | 2人 | 10人 |
計 | 12人 | 135人 | 179人 | 220人 | 171人 | 101人 | 83人 | 93人 | 51人 | 31人 | 8人 | 1084人 |
8時 | 9時 | 10時 | 11時 | 12時 | 13時 | 14時 | 15時 | 16時 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
89人 | 138人 | 118人 | 57人 | 18人 | 21人 | 19人 | 17人 | 4人 | 481人 |
雨の降り始めの時刻と雨の降り終わりの時刻を図2に、また、雨の降り止んだ時刻と降り始めの時刻の差により求められた雨の降雨時間について、そのヒストグラムを図3に示す。
図2 黒い雨の降り始めの時刻のヒストグラム(左図)と降り止んだ時刻のヒストグラム(右図)
図3 黒い雨の降雨時間のヒストグラム
- 黒い雨は、午前10時辺りをピークに1時間から2時間程度降ったと回答した者が多かった。
- 黒い雨の体験者については、その場所毎に類別され、それぞれの調査項目について、回答結果について平均値や比率により要約を行った。さらに、その要約値に対して局所線形回帰モデルに基づいたノンパラメトリック回帰分析を適用し、黒い雨の各特性値に関する昭和20年(1945年)8月6日当時の時空間分布を推定した。
(1)降雨時間の長さについて
- 黒い雨体験者で、黒い雨の降り始めと降り止んだ時間を回答した者(タイプAのみ)を解析対象として、降雨時間の地理分布を求めた。なお、解析精度を保持させるため、地区別回答者数が10人以上の場所のみを解析の対象とした。(解析対象者数903人)
- 推定された降雨時間の長さの地理分布を図4に示す。(Tは時間)
(図4 推定された広島の黒い雨の降雨時間の地理分布)
- 降雨があった(降雨時間>0時間)と推定された地域は、いわゆる宇田雨域よりも広く、場所によっては増田雨域の外縁部に近似する結果が得られた。
- 比較的長い降雨時間が推定された地域は、宇田雨域の北西部及びその周辺部であり、その時間は1時間半から2時間程度と推定された。
(2)時刻毎の降雨の状況について
- 黒い雨体験者で、黒い雨の降り始めについて回答した者(タイプA十B)を解析対象とした。解析精度を保持させるため、回答者数が10人以上の地区に限定した。(解析対象者数1,413人)
- タイプBの降り止んだ時間を回答していない者については降雨時間を降り始めから1時間として解析した。(タイプAの中では、降雨時間は1時間と回答した者が最も多かったため。)
- 時刻毎の黒い雨の体験率(厳密には、条件付き体験率というべき)の地理分布を図5に示す。
(図5 推定された黒い雨の体験率の時間空間分布)
- 黒い雨は、午前9時頃に広島市西方近郊から降り始め、その後北西に拡がり午前10時から11時頃に最も広い範囲で降り、その後縮小し、午後3時頃加計付近で消失している。
(3)降雨の強さについて
- 黒い雨体験者で、雨の強さについて回答した者を解析対象とした。解析精度を保持させるため、回答者数が10人以上の地区に限定した。(解析対象者数1,378人)
- 推定された降雨強度の最大値の地理分布を図6に示す。
(図6 推定された降雨の強さの分布図)
「強い雨で土砂降りに降った」と推定された地域(図6の強い雨の地域)は、宇田大雨地域のほぼ北半分を含み、さらにその北西側(湯来町東部)にも分布している。
(4)降雨の色について
- 黒い雨体験者で、雨の色について回答した者を解析対象者とした。解析制度を保持させるため、回答者数が10人以上の地区に限定した。(解析対象者数1,248人)
- 降雨の色についての地理分布を図7に示す。
(図7 推定された雨の色の分布図)
- 真っ黒い雨の降った領域は広島市の北西近郊(沼田地区、湯来町東部)と推定され、その範囲は「強い雨で土砂降りに降った」と推定された地域とほぼ一致している。
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