原爆体験者等健康意識調査報告書第3-2(2)
第3 調査結果
2 解析の方法の結果
(2)PTSD症状
- 個別調査のために特別の面接トレーニングを受けた臨床心理士(87名)が個別に実施した、構造化診断面接(PTSD臨床診断面接尺度:CAPS)の結果をもとにPTSD診断を行った。また、診断は調査時点における診断(現在診断)と原爆体験後に最も症状が強かったと思われる時点における診断(生涯診断)とに分けて行った。
- DSM-IVのPTSD診断基準では、B基準(再体験症状)5項目中1項目以上、C基準(回避・精神麻痺症状)7項目中3項目以上、D基準(過覚醴定状)5項目中2項目以上をすべて満たすことが必要とされる。
- また、症状は1カ月以上持続し、症状のために臨床上強い苦痛、あるいは社会的、職業的又は他の重要な領域における機能の障害を引き起こしていることが条件とされる。その基準に従い下記のように分類した。
(注)PTSD:上記のDSM-IV基準をすべて満たすもの
パーシャルPTSD:B基準1項目以上で、C基準3項目以上又はD基準2項目以上のどちらかを満たすもの
ミニマムPTSD:上記以外で、B、C、D基準をそろって少なくとも各1項目は満たすもの - その結果は次のとおりであった。被爆群(表9)黒い雨体験群(表10)
なお、被爆群(95%信頼区間)と黒い雨関係群では、個別調査対象者の抽出方法が異なっているため、単純な比較はできない。
区分 |
PTSD |
パーシャルPTSD |
ミニマムPTSD |
(診断合計) |
非PTSD |
---|---|---|---|---|---|
現在診断 | 1.2% (0.6-2.7%) |
2.5% (1.4-4.3%) |
1.6% (0.8-3.2%) |
5.4% (3.7-7.7%) |
94.7% (92.3-96.3%) |
生涯診断 | 6.4% (4.5-8.9%) |
10.1% (7.7-13.1%) |
6.2% (4.4-8.7%) |
(22.6%) (19.1-26.6%) |
77.4% (73.4-80.9%) |
(合計100.0%とならないのは少数点第2位以下を四捨五入したため)
- 表に示したように、PTSD診断に相当する割合は限られたものであり、ことに現在診断ではわずかとなっていた。ただし症状項目ごとの有病割合を見ると、被爆者には現在においても、フラッシュバック(侵入的想起)9.7%(7.0-12.3%)、苦痛な夢6.0%(3.9-8.1%)、きっかけにさらされた時の心理的苦痛8.4%(6.0-10.9%)、被爆体験に関する考え・感情・会話の回避9.3%(6.7-11.8%)(括弧内はいずれも95%信頼区間)といった割合で症状が認められた。
区分 |
PTSD |
パーシャルPTSD |
ミニマムPTSD |
非PTSD |
合計 |
---|---|---|---|---|---|
現在診断(4)指定地域群 | 0人 (0.0%) |
1人 (1.6%) |
0人 (0.0%) |
62人 (98.4%) |
63人 (100.0%) |
現在診断(5)未指定地域群 | 4人 (2.5%) |
2人 (1.3%) |
4人 (2.5%) |
149人 (93.7%) |
159人 (100.0%) |
現在診断比較対照群 | 0人 (0.0%) |
0人 (0.0%) |
2人 (1.2%) |
159人 (98.8%) |
161人 (100.0%) |
生涯診断(4)指定地域群 | 6人 (9.5%) |
2人 (3.2%) |
0人 (0.0%) |
55人 (87.3%) |
63人 (100.0%) |
生涯診断(5)未指定地域群 | 7人 (4.4%) |
19人 (12.0%) |
8人 (5.0%) |
125人 (78.6%) |
159人 (100.0%) |
生涯診断比較対照群 | 1人 (0.6%) |
8人 (5.0%) |
6人 (3.7%) |
146人 (90.7%) |
161人 (100.0%) |
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