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広環保第56号
平成29年6月5日
広島市長 松井 一實 様(都市整備局都市計画課)
広島市長 松井 一實(環境局環境保全課)
このことについて、広島市環境影響評価条例(以下「条例」という。)第35条第2項の規定により読み替えて適用される第10条第1項の規定により、別紙のとおり環境の保全の見地からの検討を行った結果に基づく意見を述べます。
本事業は、デルタ内の公共交通ネットワークを担っている路面電車について、移動の円滑化を推進するとともに、利用者の利便性向上の観点に立った公共交通ネットワークの形成を図るため、南区松原町から南区比治山町までの区間に、約1.2kmの軌道を建設しようとするものである。
このような事業特性及び地域特性に応じた適切な環境保全措置が講じられ、事業の実施に伴う周辺環境への影響が可能な限り回避・低減されたものとなるよう、下記のとおり審査結果に基づく意見を述べる。
(1) 工事計画について、工事の内容やスケジュールを明らかにして具体的に準備書に記載すること。
(2) 準備書で使用する用語・表現については、市民に分かりやすいものとなるよう努め、専門用語を用いる場合は、その解説を添付すること。また、参考として使用した資料については、その正式名称を記載するとともに、必要に応じて資料の概要を添付すること。
ア 現地調査の時期を春季と秋季の2季としているが、気象条件や大気汚染物質の濃度の季節変動等、大気の状況の変動を再度十分に考慮し、盛夏期、厳冬期の調査が必要でないかを検討すること。また、検討した内容を準備書に記載すること。
イ 軌道施設の存在(電停の新設や車線数の減少)に伴う道路の交通(量)への影響を検討したうえで、大気質や騒音などの環境要素について、環境影響評価の項目の追加や環境保全措置の検討を行い、その検討結果を準備書に記載すること。
ア 路面電車の走行により発生する騒音だけでなく、高架構造物そのものから発生する騒音も合わせて予測及び評価を行うこと。また、予測の結果が環境基準値を超えた場合は、高架構造物の床版や桁への防音カバーの設置や裏面への吸音材の設置などの環境保全措置を検討し、検討結果を準備書に記載すること。
イ 高架部の下に計画されているバスの乗降場における騒音についても予測・評価を行うとともに、環境保全措置を検討し、検討結果を準備書に記載すること。
ウ 路面電車の走行に伴う高架構造物(鋼橋)の振動を起因とした超低周波音(周波数が20Hz以下の音)について、事業実施区域の周辺の状況を踏まえて環境影響評価の項目への追加を検討し、必要に応じて調査、予測、評価等を行うこと。また、検討結果を準備書に記載すること。
エ 気流が高架構造物に作用して発生する風騒音について、高架構造物の構造形式を踏まえて周辺地域の居住者及び歩行者等に対する生活環境上の影響を検討し、必要に応じて環境影響評価の項目に追加して調査、予測、評価等を行うこと。また、検討結果を準備書に記載すること。
ア 工事の内容を考慮し、河川に影響を及ぼすおそれがあるものが含まれる場合は、工事の実施に伴う動物(魚類等)への影響を検討し、必要に応じて環境影響評価の項目の追加や環境保全措置の検討を行い、その検討結果を準備書に記載すること。
イ 事業実施区域の周辺では、鳥類が多く確認されていることから、事業特性を踏まえて環境影響評価の項目への追加を検討し、必要に応じて調査、予測、評価等を行うこと。また、検討結果を準備書に記載すること。
ア 事業実施区域は、二葉山と比治山を繋ぐように位置しており、工事により失われる中央分離帯の植物の代替となるだけでなく、二葉山と比治山を繋ぐ緑の回廊となって新たな都市景観の創出等に寄与することが考えられるような措置について検討を行い、その検討結果を準備書に記載すること。
イ 高架構造物については、景観の重要な要素となることから、形態、意匠、色彩等について、広島市の陸の玄関口にふさわしい都市景観が形成されるよう十分な検討を行い、その検討結果を記載すること。
ウ 主要な眺望点だけでなく、不特定多数の人々が行き交う歩行者空間にも視点場を設け、当該視点場から望む高架構造物や電停の新設に伴う景観の変化の状況をフォトモンタージュ法等の視覚的な表現手法により予測し、影響の程度を把握すること。なお、視点場は、広島駅前交差点の東方向及び西方向の地点、駅前大橋南詰付近のほか複数の地点を選定すること。
エ 事業実施区域は、広島市景観計画において景観計画重点地区に設定されているため、工事期間中の防音壁などについても、景観上の配慮を検討すること。
(1) 高架構造物に照明施設を設置しようとする場合は、照明施設について、漏れ光(もれこう)による光害が問題とならないよう、安全性及び効率性の確保だけでなく、景観及び周辺環境への配慮等も十分に検討し、検討結果を準備書に記載すること。
(2) 事業実施区域については、城下町であったことや西国街道と交差していることに留意し、文化財の有無や取扱について、あらかじめ関係機関と協議して適切に対応すること。
(3) 駅前大橋南詰の地点について、駅前吉島線を北上する自動車が誤って路面電車の軌道の高架部に進入することがないよう対策を検討し、検討結果を準備書に記載すること。
(4) 駅前大橋の橋脚の構造について、工事による荷重条件の変更があっても十分安全なものであることの根拠となる基準や確認内容を明らかにし、その概要を分かりやすく準備書に記載すること。
(5) 歩行者や車両の運転手への安全面への影響について検討し、その内容を準備書に記載すること。