本文
広環保第185号
平成27年9月10日
広島県知事 湯埼 英彦 様
(注)湯崎の「崎」の右側は「大」が「立」
広島市長 松井 一實(環境局環境保全課)
平成27年7月30日付けで照会のありましたこのことについて、広島県環境影響評価に関する条例第10条第2項に基づく環境の保全の見地からの意見を別紙のとおり提出します。
本事業は、低廉で安定した電力を供給することのほか、再生可能エネルギーの普及拡大、低炭素社会の実現に寄与することも目的とし、広島ガス株式会社が安芸郡海田町の広島ガス海田基地敷地において、石炭及びバイオマスを燃料とする海田バイオマス混焼発電所(出力11.2万kW)を新たに建設するものであり、当該事業に係る環境影響を受ける範囲であると認められる地域に本市の一部が含まれている。
事業者による環境影響評価が適切に実施され、その結果を環境保全措置等に適正に反映させるため、「海田バイオマス混焼発電所建設計画に係る環境影響評価方法書」について知事意見の作成に際して考慮されるよう、次のとおり意見を述べる。
(1) 可能な限り定量的な説明を行うとともに、市民に分かりやすい用語・表現を用い、専門用語を用いる場合には、用語の解説を添付すること。
(2) ボイラ設備、貯蔵バンカ、冷却塔、排ガス処理装置(バグフィルタ)、排水処理装置などの主要な設備の諸元の詳細を準備書に記載すること。また、その諸元に基づき、必要に応じて、選定した項目及び手法を見直し、調査、予測、評価を行うとともに、環境保全措置についても検討を行うこと。
(3) 準備書には、予測の手法を具体的に記載すること。また、単に予測の結果を記載するだけではなく、予測の際に設定した環境影響の発生源データや算出過程についても併せて記載すること。
(1) 本事業は、再生可能エネルギーの普及拡大及び低炭素社会の実現に寄与することも目的としているが、使用する燃料の種類や輸送経路等の条件によって寄与の程度は異なると考えられる。このため、石炭燃料の場合との比較ができるように、想定されるバイオマス燃料の種類、調達量、調達先、運搬の方法及び経路、並びに、燃焼灰の処分方法、処分先、運搬の方法及び経路をそれぞれ明らかにした上で、燃料の燃焼過程だけでなく、運搬、処分などの過程も考慮し、排出される温室効果ガスの量を計算するなど、バイオマス燃料の利用による温室効果ガス削減への寄与の程度を分かりやすく準備書に記載すること。
(2) 事業実施区域は埋立地であり、地震による液状化や高潮等による影響が懸念されることから、災害の危険性についても十分に調査、検討すること。
(3) 燃焼灰については、発生量が1日当たり250トンと多量に見込まれている。このため、燃焼灰の保管、運搬、再利用等の計画を明らかにして、その内容を具体的に準備書に記載すること。
また、燃焼灰の搬出が計画どおりに進まない場合の保管の計画も準備書に記載すること。
ア 施設の稼働(排出ガス)に伴う大気質の現地調査の地点について、選定理由とその根拠を明らかにして準備書に記載すること。
また、対象事業実施区域の東方向の住宅密集区域等、事業による環境影響が懸念される区域があることから、必要に応じて調査地点に追加するよう検討すること。
イ バイオマス、石炭、燃焼灰(フライアッシュ及びボトムアッシュ)等の運搬に伴う粉じんの発生による影響を回避・低減するため、適切な環境保全措置を検討し、その内容を準備書に記載すること。
ア 対象事業実施区域の周辺には非常に交通量が多い道路があり、工事車両の運行に伴う渋滞や騒音等による環境への影響を回避・低減するため、適切な環境保全措置を検討し、その内容を準備書に記載すること。
イ 対象事業実施区域は埋立地であるため地盤が弱く、タービン等の施設の設置に際して、共振現象や不等沈下が発生する可能性が考えられるため、適切な環境保全措置を検討し、その内容を準備書に記載すること。
ア 一般排水の排出を予定している海域については、全燐の年間平均値が当該海域にあてはめられた類型の環境基準値を超過している地点があり、また、化学的酸素要求量(COD)に係る環境基準に適合していないことから、当該海域環境への影響を可能な限り低減するため、一般排水の処理について、方式や能力の複数案を比較して適切な環境保全措置を検討し、その内容を準備書に記載すること。環境保全措置の検討結果を踏まえて、必要に応じて予測・評価の方法を見直すこと。
イ 冷却塔等から出る温度の高い排水を周辺海域に継続的に排出することにより、排水口付近の海域の温度や生物相への影響が一定程度考えられることから、工事の着手前の時期から、複数の定点を設けて水温、水質(塩分濃度など)及び生物相の経年変化を調査し、その結果を公表すること。
また、温度の高い排水による影響範囲や程度は常に変化すると考えられるため、工事の着工前の時期に海水温の変化の状況を把握するとともに、一般排水と海水の温度差を明らかにした上で、他のアセス事例で使用され、一定の精度が保てると認められる手法(平野の式等)により、温度の高い排水の拡散の範囲を通年で予測して分かりやすく準備書に記載すること。
施設の存在に伴う景観について、多数の地域住民が利用し、発電所を望むことができる近景域の場所についても、必要に応じて調査地点に追加するよう検討すること。
また、ボイラ設備などの工作物等については、景観に配慮したデザインや配置のあり方なども含めた環境保全措置を検討し、その内容を準備書に記載すること。
ア 施設の稼働に伴う二酸化炭素の排出量について、バイオマスの実現可能な混焼割合を明らかにした上で予測・評価し、混焼による削減効果を準備書に具体的に記載すること。
また、燃料の燃焼に伴って一酸化二窒素なども発生することに留意し、これらの温室効果ガスの排出を可能な限り削減するため、採用する燃料は可能な限り環境負荷の小さいものが選択されているか、導入する発電設備の発電効率は実行可能なより良い技術が採用されているかといった検討を、近年計画されている他の発電事業と比較するなどにより行い、その内容を準備書に記載すること。
イ 燃料の輸送行程から発生する温室効果ガスなどの環境影響を低減するため、竹の利用可能性の検討を含め、国内のバイオマスを可能な限り利用することを検討し、その内容を準備書に記載すること。