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広エ環第107号
平成21年5月19日
広島電鉄株式会社 代表取締役社長 大田 哲哉 様
広島市長 秋葉 忠利(環境局エネルギー・温暖化対策部環境保全課)
このことについて、広島市環境影響評価条例第10条第1項の規定により、別紙のとおり環境の保全の見地からの検討を行った結果に基づく意見を述べます。
本事業は、ひろしま西風新都の南端に位置し、住宅や商業、業務系の複合用地を造成するものである。また、事業予定地は、標高105mから200m程度の丘陵地で、広島都市圏の近傍に残された数少ない山林を開発するものである。
このため、事業の実施にあたっては、広大な森林等の開発に伴う自然環境への影響や交通量の増大等に伴う周辺地域の生活環境への影響を可能な限り回避、低減すべきである。
本事業に係る環境影響評価を適切に実施し、その結果を環境保全措置等に適正に反映させるため、本事業に寄せられた市民意見に配意するとともに、広島市環境影響審査会からの意見を最大限尊重し、次のとおり市長意見を述べる。
(1) 本事業は、複合用地を造成するものとして環境影響評価の手続きを進めている。現段階では、事業予定地に立地する商業施設や集合住宅等の詳細が未定であることから、環境への影響について不明の部分が多くある。また、立地施設の内容によっては、現在想定しているものより環境への影響が大きく異なる可能性がある。
このため、事業予定地の立地施設については、環境に配慮したものとなるよう努めるとともに、関係機関との協議等により計画の見直しが必要となった場合には、環境影響評価についても必要な見直しを行うこと。
(2) 環境影響評価準備書には、市民に分かりやすい用語、表現を用い、専門用語を用いる場合は、用語の解説を添付すること。また、参考とした資料については、その正式名称を記載するとともに、必要に応じて資料の概要を添付すること。
(3) 事業を進めるにあたっては、住民に対し十分な説明を行うとともに、住民の疑問、意見には誠意をもって対応すること。
ア 事業予定地は丘陵地であるが、その東側に標高300m 程度の高い山があり、その山からの地下水が事業予定地に流入していると推測される。
このため、事業予定地とその周辺における地下水、湧水及び地質の状況を十分把握すること。
また、その調査結果に基づいて、東側斜面も含めた造成に伴う影響を検討するとともに、事業予定地の排水対策や北側及び西側法面の安定性など、防災対策を十分検討すること。
イ 地震による影響や土石流等の危険性について十分調査、検討すること。
この事業計画においては、商業用地が多くの面積を占めており、自動車交通量の大幅な増加が予想される。
このため、自動車交通対策について関係機関と十分協議し、適切に対応すること。
(1) 環境配慮事項については、事業者自ら行うものと事業予定地の立地予定者への要請事項を区別して、分かりやすく記載すること。
(2) この事業は、二酸化炭素の吸収源である森林を伐採するとともに、商業施設の誘致により自動車交通量が増加すること等により、二酸化炭素の排出量が増加するものと予想されるため、広島市地球温暖化対策等の推進に関する条例や脱温暖化に向けた長期ビジョンの趣旨に則った開発に努めることが求められる。
このため、開発にあたっては、伐採した木材の有効利用、事業予定地での緑化の推進、ミティゲーションとしての植林、公共交通機関との連携等による自動車交通量の削減及び立地予定者への新エネルギーの導入や低公害車の導入促進の要請など、地球温暖化対策に十分配慮するとともに、環境影響評価準備書には、対応策についてできるだけ定量的かつ分かりやすく記載すること。
(3) 事業予定地の近隣には住宅地があることから、工事の施工に伴う騒音や粉じん等環境への影響を十分配慮し、必要な環境保全措置を検討すること。
また、建設工事に係る配慮について、排ガス対策型建設機械や低騒音、低振動型の建設機械・工法を用いるとしているが、環境影響評価準備書には具体的数値を明記するなど、対応策を分かりやすく記載すること。
ア 造成に伴う石内川の流量への影響はないとしているが、特に最近、時間降雨量の多い降雨が多く発生していることから、河川流量への影響について検討し、その結果を環境影響評価準備書に記載すること。
イ 地下水及び湧水について、事業予定地の東側も含め、造成に伴う影響について調査を行うこと。
ア 事業予定地は自然林が広大な面積を占めている。このため、動物、植物については、詳細な調査を行うこと。特に植物については、精密な植生図を作成すること。
イ 開発により生息生育環境が失われる貴重な動物及び植物については、必要な保全措置を検討すること。
特にギフチョウについては重点的に調査するとともに、生息が確認された場合には、保全措置を検討すること。また、保全措置については追跡調査を実施し、その結果を事後調査として報告すること。
事業予定地の北側に集合住宅用地を設け、高さ約30m の法面の上に11 階建ての集合住宅を建築することとしており、その建築場所によっては、周辺の既存住宅への日照阻害や電波障害の可能性が考えられる。
このため、日照阻害や電波障害への影響が考えられる場合は評価項目に加え、必要に応じて環境保全措置を検討すること。
ア 事業予定地の北側については、既存の住宅団地等があることから、用地の造成や立地予定の集合住宅などが建築された場合の圧迫感を含めた景観への影響について十分検討するとともに、必要な環境保全措置を検討すること。
イ 事業予定地の全体像や立体交差地点等の主要構造物及び西側と北側の法面などについて、モンタージュ写真やイメージパースを作成するなど、事業の全体像を分かりやすく示すこと。
既存樹木の減少による二酸化炭素吸収量の変化及び関連施設や関連車両の走行に伴う二酸化炭素の排出量について予測評価を行うこととしているが、評価はできるだけ定量的に行い、単に予測結果の数値を示すだけではなく図表を用いて他の事例と比較するなど、環境影響評価準備書には市民に分かりやすく記載すること。