本文
広環保第631号
平成28年10月12日
広島県知事 湯埼 英彦 様
(注)湯崎の「崎」の右側は「大」が「立」
広島市長 松井 一實(環境局環境保全課)
平成28年8月9日付けで照会のありましたこのことについて、広島県環境影響評価に関する条例第19条第2項に基づく環境の保全の見地からの意見を別紙のとおり提出します。
本事業は、低廉で安定した電力を供給することのほか、再生可能エネルギーの普及拡大、低炭素社会の実現に寄与することも目的とし、広島ガス株式会社が安芸郡海田町の広島ガス海田基地敷地において、石炭及びバイオマスを燃料とする海田バイオマス混焼発電所(出力11.2万kW)を新たに建設するものであり、当該事業に係る環境影響を受ける範囲であると認められる地域に本市の一部が含まれている。
このような事業特性及び地域特性に応じた適切な環境保全措置が講じられ、事業の実施に伴う周辺環境への影響が可能な限り回避・低減されたものとなるよう、次のとおり意見を述べる。
(1) 発電用燃料で使用する国内産バイオマスの調達に関する計画について、調達量の目標値を明らかにするとともに達成状況を踏まえた目標値の見直しを定期的に行い、調達量の拡大に取り組むこと。
(2) 発電用燃料で使用する海外産バイオマスの調達に関する計画について、本事業は、「カーボンニュートラルな燃料であるバイオマスを可能な限り混焼することで、低炭素社会の実現に寄与すること」を目的としているところ、バイオマスのほとんどは海外から調達する計画となっており、輸送等に伴って発生する二酸化炭素の影響も懸念されることから、発電所の稼働だけでなく輸送等を含めた二酸化炭素削減効果について、わかりやすく評価書に記載すること。
(3) バイオマスの保管に関する計画について、海外産バイオマスに混入している有害な生物の対策は、燻蒸だけでの駆除が困難な場合も考えられるため、簡易計測用トラップを設置し、定期的な見回りを行い、対処するなどの方法による実施を検討すること。
(4) 排水の処理に関する計画について、ボイラーや冷却塔などの排水の水質や処理の内容を明らかにして、わかりやすく評価書に記載すること。また、これらの内容が正しく反映されるよう、フローを修正すること。
(5) 廃棄物の処理に関する計画について、廃棄物の種類ごとの保管設備や保管方法を具体的に評価書に記載すること。
(1) 地形影響の予測の結果について、一部で地形影響を考慮しない場合の結果を下回っている原因を検証し、必要に応じて手法の見直し等の修正を行うとともに、風下距離に応じた濃度比のグラフも、分母を距離に応じた値とするよう計算方法を見直して修正し、これらを評価書に記載すること。
(2) 特殊気象条件下の予測の結果について、地形影響を併せて考慮した場合の影響の程度を判断できるよう、最大着地濃度出現地点及びその数値だけでなく、風下距離に応じた濃度の予測結果も計算により明らかにし、その結果を評価書に記載すること。また、準備書に記載されている予測の結果は、環境基準とほぼ同値のものがあり、さらに、当該予測の結果は一定の誤差をもつと考えられることから、事後調査を実施するとともに、その結果に基づいて追加の環境保全措置を検討することとし、これらを評価書に記載すること。
(3) 発電用燃料で使用する石炭に含まれる水銀について、大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)に基づく規制の動向を踏まえ、排出の実態も把握し、必要に応じて追加の環境保全措置を検討し、これを実施すること。
予測について、主要な騒音の発生源に関する音源の高さや周波数ごとのパワーレベルなどの諸元を明らかにするとともに、計算過程をトレースできるよう説明を追加し、これらを評価書に記載すること。
評価(回避・低減に係る評価)について、排出水の排出先の海域は、閉鎖性が高く、また、COD、窒素及び燐について総量規制基準が設定されているといった地域特性があることから、排出水に含まれる汚濁負荷量を削減する対策を検討して環境保全措置に追加し、実行可能な範囲内で環境影響の回避・低減が図られているか評価すること。
(1) 個体群動態について、定量的な予測等の実施を検討すること。
(2) 発電所の稼働に伴って変化する大気質や水質による動植物への影響について、近縁種などの汚染物質への耐性などを参考にして、予測等の実施を検討すること。
(1) 発電所の稼働に伴って発生する燃焼灰の予測について、バイオマス燃料の混焼比率の上限値及び下限値の範囲や使用する珪砂の量などの予測の前提条件を、計算方法とあわせて具体的に評価書に記載すること。
(2) 発電所の稼働に伴って発生する産業廃棄物の評価(国又は地方公共団体の廃棄物に係る環境保全施策との整合性に係る検討)について、方法書に記載した手法に基づいて、「国及び地方公共団体の環境の保全の観点からの施策に関する計画」の種類及び基準又は目標を明らかにしたうえで、当該基準又は目標と予測結果との整合が図られているかどうかの確認を行うこと。また、当該確認の結果に基づき、必要に応じて追加の環境保全措置を検討して実施することとし、これらを評価書に記載すること。
(1) 調査について、方法書に記載した手法に基づいて、「国及び地方公共団体の温室効果ガスに係る環境の保全の観点からの施策に関する計画」の種類及び基準又は目標を具体的に評価書に記載すること。
(2) 予測について、設備計画炭の使用量から一般炭の使用量を算出する方法を明らかにして評価書に記載すること。また、当該算出に伴う予測の不確実性の程度を検討して、これらを評価書に記載すること。
(3) 評価(国又は地方公共団体の環境保全施策との整合性に係る検討)について、方法書に記載した手法に基づいて、「国及び地方公共団体の温室効果ガスに係る環境の保全の観点からの施策に関する計画」の種類及び基準又は目標を明らかにしたうえで、当該基準又は目標と予測結果との整合が図られているかどうかの確認を行うこと。また、当該確認の結果に基づき、必要に応じて追加の環境保全措置を検討して実施することとし、これらを評価書に記載すること。
(4) 発電用燃料で使用するバイオマスについて、混焼比率の目標値を45%とした理由を明らかにするとともに、「国のエネルギーミックス及び二酸化炭素削減目標とも整合する排出係数」は0.37kg-CO2/kWhであることから、達成状況を踏まえた目標値の見直しを定期的に行い、混焼比率の向上に取り組むこと。また、これらを評価書に記載すること。
(5) 発電用燃料で使用する海外産バイオマスについては、安定的な調達が困難なことなどが課題とされており、需給環境の変化などによって混焼比率が変化して、二酸化炭素の発生量や排出原単位が予測の結果と違ってくることが考えられる。このため、バイオマス燃料及び石炭燃料の使用量を事後調査により把握し、混焼比率の目標値、二酸化炭素排出係数とあわせて毎年度自主的に公表すること。また、混焼比率が目標値を下回った場合は、追加の環境保全措置を検討することとし、これらを評価書に記載すること。
環境監視及び必要に応じて行う事後調査の結果について、随時、ホームページ等を活用して住民等に自主的に公開することとし、これらを評価書に記載すること。
(1) 環境法令の遵守はもとより、準備書に記載された環境保全措置を確実に実施するとともに、事後調査の結果、環境保全のために追加の措置を行う必要が生じた場合は速やかに実施すること。
(2) 現段階では予想し得ない事業に伴う環境影響等の問題が生じた場合には、原因究明を図り、適切な措置を講じること。
(3) 関係地域の住民等からの環境の保全に関する情報提供や苦情については、対応窓口を設けるとともに、誠意をもって対応すること。
(4) 評価書で使用する用語については、原則として、「可能な限り」や「必要に応じて」などの抽象的なものは避け、具体的な内容がわかるものを使用すること。また、環境保全措置に関する用語について抽象的な用語を使用する場合については、当該措置による予測の不確実性の程度を検討し、これらを評価書に記載すること。