包括外部監査の意見に対する対応結果の公表(令和7年7月9日公表)
広島市監査公表第24号
令和7年7月9日
広島市監査委員 古川 智之
同 井戸 陽子
同 川村 真治
同 平岡 優一
広島市長から監査の意見に対する対応結果について通知があったので、当該通知に係る事項を次のとおり公表する。
令和5年度包括外部監査の意見に対する対応結果の公表(財政局)
1 監査意見公表年月日
令和6年2月5日(広島市監査公表第2号)
2 包括外部監査人
松本 京子
3 監査意見に対する対応結果通知年月日
令和7年6月24日(広財財第18号)
4 監査のテーマ
補助金等交付事務に関する財務に係る事務の執行について
5 監査の意見及び対応の内容
(1) 効果測定について
(所管課:財政局財政課)
監査の意見
「地方公共団体は、その事務を処理するに当っては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」(地方自治法第2条第14項)。補助金等の交付に当っても、最少の補助金等の交付で最大の効果が得られることが要求される。
そのため、補助金等事業の公募時には計画(効果予測)が、事業等が終了した際には効果測定が不可欠となる。
しかしながら、広島市における補助事業等においては、多くの事業で効果測定をしておらず、また効果測定をしている場合であっても、アンケート結果をまとめた言葉やイメージを中心とした文章による定性的な評価にとどまり、具体的かつ客観的な指標による定量的な評価がほとんどなされていなかった。
当該効果予測や効果測定の手法は地方公共団体の自立性・自主性に委ねられるものである。
そこで、広島市において、一定程度客観的な項目や指標を定めた効果測定ガイドラインを策定することが望ましいと考える。
対応の内容
監査の意見を受けて、本市が実施する補助事業のうち、政策的要素の強い「事業補助」、「イベント等補助」については、翌年度の予算要求の時点で現年度以前の実績を踏まえた補助金評価調書を作成・提出させることで、効果測定を毎年度実施することとした。
(2) 間接補助について
(所管課:財政局財政課)
監査の意見
補助金等適正化法第2条第4項第1号は、間接補助金等として「国以外の者が相当の反対給付を受けないで交付する給付金で、補助金等を直接又は間接にその財源の全部又は一部とし、かつ、当該補助金等の交付の目的に従つて交付するもの」とし、間接補助事業者等には補助事業者等と同様の定めを置いている(補助金等適正化法第3条第2項、第11条第2項、第17条第2項等)。この趣旨は、間接補助事業者等にも、補助事業者等と同様の責務を負わせなければ、補助金等適正化法の目的である「補助金等の交付の不正な申請及び補助金等の不正な使用の防止その他補助金等に係る予算の執行並びに補助金等の交付の決定の適正化を図る」ことを達成できない点にある。
すなわち、国が補助金を交付する場合、まず都道府県や市町村等の地方公共団体に交付し、地方公共団体によって最終の使用者に分配されることが多いことから間接補助を認める必要性が高い。反面、相当の反対給付を受けないこと(片務性)、交付の相手方が利益を受けること(受益性)という補助金等の性格からすると、不正・不当支出に陥りやすく、補助金等の支出の適正を期するためには、直接交付される補助金についてのみ規制を加えるのでは不十分であり、補助金の最終の使用者に分配される段階まで所要の規制を及ぼすことで、間接補助の各過程の透明性を確保し、間接補助事業者等の責任を明確にする必要がある。
広島市補助金等交付規則をみると、間接補助金等、間接補助事業者等に関する定めがない。
たしかに、国と異なり広島市の場合はあえて間接補助とする必要性が乏しい場合が多いと思われる。
しかし、広島市においても、間接補助の必要性がある場合で実際に間接補助を実施する場合には上記趣旨が妥当する。
そこで、間接補助の合理的必要性があり、かつ規則又は個別の交付要綱において間接補助事業者等に遵守させるべき事項を規定して間接補助事業者等の責任を明確にした場合に限り、間接補助を認めることができると考える。
なお、当然のことであるが、広島市が直接補助金等を交付できない場合に間接補助金等を交付することは、広島市補助金等交付規則の趣旨を潜脱する点で認められない。
対応の内容
監査の意見を受けて、広島市補助金等交付規則を改正(令和7年3月11日公布、同年4月1日施行)し、間接補助に関する規定を追加した。
(3) 補助金根拠の明確化・関係規則等の制定について
(所管課:財政局財政課)
監査の意見
各補助金等の根拠を確認したところ、広島市補助金等交付規則以外の根拠法令等がないものが多く見られた。
根拠規範が具体的な法令によって与えられていない補助金等、すなわち予算措置のみに基づく補助金等が直ちに違法となるわけではない。
しかしながら、補助金等が相当の反対給付を受けず(片務性)、相手方が利益を受ける(受益性)という性格を有すること、公益上必要がある事業が補助対象事業となること、補助金等が「市税その他の貴重な財源で賄われること」からすると、公正・公平・公益性を満たす点で、予算措置ではなく補助金根拠を明確化することが望ましい。
したがって、規則や要綱などにより、補助金額や補助率の算定根拠、補助対象経費、内部手続等を定めるべきである。
なお、団体運営補助については、団体運営補助金に係る規則や要綱等を制定した場合に限り、補助金交付を認めるべきことは前述したとおりである。
対応の内容
監査の意見を受けて、次のとおり令和7年2月27日付けで各局に対応依頼を実施した。
ア 原則として、全ての補助事業(持ち回り大会に係る開催地補助金のような単年度限りの事業を除く継続的に実施する補助事業)について、補助対象経費や補助率、具体的な手続を定めた個別の要綱等を制定すること。
イ 個別の要綱等を定めていない事業について、令和7年度交付決定分から対応できるよう、令和6年度中に制定すること。
(4) 補助事業等の第三者への事務委託について
(所管課:財政局財政課)
監査の意見
補助事業者等の責務として、補助金等適正化法第3条第2項は「補助事業者等及び間接補助事業者等は、補助金等が国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに留意し、法令の定及び補助金等の交付の目的又は間接補助金等の交付若しくは融通の目的に従つて誠実に補助事業等又は間接補助事業等を行うように努めなければならない」と定め、広島市補助金等交付規則第3条第2項も「補助事業者等(補助事業等(補助金等の交付の対象となる事務又は事業をいう。以下同じ。)を行う者をいう。以下同じ。)は、補助金等が市税その他の貴重な財源で賄われるものであることに特に留意し、補助金等の交付の目的に従って誠実に補助事業等を行うように努めなければならない。」と定め、さらに補助金等適正化法第11条第1項は「補助金事業者等は、法令の定並びに補助金等の交付決定の内容及びこれに附した条件その他法令に基く各省各庁の長の処分に従い、善良な管理者の注意をもつて補助事業等を行わなければならず、いやしくも補助金等の他の用途への使用をしてはならない」と定め、同規則第10条も「補助事業者等は、補助金等の交付の決定の内容及びこれに付された条件に従い、善良な管理者の注意をもつて補助事業等を行わなければならない」と定める。
これらの規定は、補助事業者等自らが、交付目的・内容及びこれに付された条件を、誠実に、善管注意義務を果たしながら補助事業等を行うことを定めたものである。したがって、補助事業者等が補助事業等を第三者へ包括的に事務委託することは原則として認められない。
ただし、申請・交付事務の履行、補助事業等の周知等の観点から補助事業等を第三者へ包括的に事務委託したほうが補助事業等の公正性・効率性が図られる場合もある。他方で、補助事業等の第三者への委託にあたり、業務内容、委託期間、委託料、報告義務、双方の責任範囲等を明確化した業務委託契約書を締結することにより、上記規定の責務や善管注意義務を果たすことができる。
そこで、補助事業者等が第三者への包括的な事務委託をすることは、業務内容、委託期間、委託料、報告義務、双方の責任範囲等を明確化した業務委託契約書を締結した場合に限り、例外的に認められると考える。
対応の内容
監査の意見を受けて、次のとおり令和6年3月7日付けで各局に対応依頼を実施した。
補助事業等が補助金等の交付の目的に沿って適切に遂行されるよう、事業の遂行状況を適宜把握するとともに、必要に応じて、補助事業者等に対し指示・指導等を行う必要があり、第三者委託契約の締結に当たっては、業務委託契約書において、業務内容、委託期間、委託料、報告義務、双方の責任範囲等を明確化すること。
(5) 消費税仕入控除税額に係る処理について
(所管課:財政局財政課)
監査の意見
消費税は、課税売上げに係る消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を控除して計算する。
消費税法上、補助金は、消費税の課税対象外取引とされるため、補助金収入には消費税が含まれていない。
しかし、当該補助金収入により、補助事業において備品購入や工事発注等の課税対象取引を行った場合、原則課税の事業者は、補助金分の消費税についても、補助事業以外における支払い消費税と併せて仕入税額控除を受けることができる。
この場合、消費税を預かっていないにもかかわらず、仕入税額控除の適用を受けることになることから、この重複部分を精算し、補助金を返還させるべきである。また、返還の前提として、補助事業者に対し、原則課税事業者か否か、消費税仕入控除税額の確定時に返還額の報告を課すべきである。
広島市においては、当該補助金について定められた個別の交付要綱の中で消費税の仕入控除税額に係る処理の定められているものが一部あるに留まり、その処理も所管課で異なっていた。
そこで、消費税の仕入控除税額に係る処理について、市全体の統一的な取扱いを定め、規則や要綱等を作成することが望ましい。
対応の内容
監査の意見を受けて、次のとおり令和7年2月27日付けで各局に対応依頼を実施した。
ア 補助対象者が、本市からの補助金収入によって実施する事業において、消費税等の課税対象取引を行った場合で当該課税対象取引の仕入税額控除を受けている場合、補助事業完了後、補助対象者に仕入控除税額を報告させた上で、仕入控除税額を本市に返還させること。
イ アの取扱は、令和7年度交付決定分の補助金から適用すること。
なお、この対応に伴い、「広島市補助金等交付規則の解釈及び運用」を改正(令和7年3月25日)した。
令和6年度包括外部監査の意見に対する対応結果の公表(財政局)
1 監査意見公表年月日
令和7年2月6日(広島市監査公表第3号)
2 包括外部監査人
松岡 賢
3 監査意見に対する対応結果通知年月日
令和7年6月26日(広契物第8号)
4 監査のテーマ
教育に関する事業の財務事務の執行について
5 監査の意見及び対応の内容
採点システムの導入・運用(公募型プロポーザル方式に関するガイドラインの公表について)
(所管課:財政局契約部物品契約課)
監査の意見
採点システム導入に当たっては令和2年度に公募型プロポーザル方式で委託事業者が決定されているところ、導入する採点システムは機能性や実際に使用する教員にとっての使いやすさ、トラブル発生時のフォロー体制などが重要であることから、公募型プロポーザル方式を採用したことは妥当な判断である。
この点、地方公共団体が契約を締結する場合、経済性、選定における公平性を確保する観点から一般競争入札による方法が原則であり、随意契約の一種である公募型プロポーザル方式は例外的に認められる方法であることから(地方自治法第234条第2項,地方自治法施行令第167条の2)、公募型プロポーザル方式は契約の性質や目的等を考慮して限定的に採用されなければならない。そこで、このような公募型プロポーザル方式を採用する基準や契約手続の公平性・透明性・客観性を確保し、事業者選定に関する市民・事業者からの信頼を得るためには、公募型プロポーザル方式を採用する場合のガイドラインを策定・公表することが望ましいところである。
このガイドラインの策定・公表状況についてみると、広島市では平成29年度に「総合評価一般競争入札等の手引」が策定されており、その中に総合評価一般競争入札のほか公募型プロポーザル方式及びコンペ方式を採用する場合の一般的な事務手順や考え方が定められているものの、公表はされていない状況であった。
上記のとおり、当該手引には一般的な事務手順や考え方が定められているにすぎず、これを公表することにより公募型プロポーザル方式の実施及びこれに関する事務に具体的な不利益・支障が生じるおそれはなく、他方で公募型プロポーザル方式を採用する基準や契約手続の公平性・透明性・客観性を確保し、事業者選定に関する市民・事業者からの信頼を得るべく、当該手引については公表することが望まれた。
そこで、監査人が、当該手引の所管課である財政局契約部物品契約課との間で当該手引の公表に向けて協議を行った結果、当該手引を公表すべきであるとの認識を共有することができた。そして、当該協議時点で公募型プロポーザル方式により調達手続が進められている案件があったことから、当該手引については令和6年11月13日付けで広島市のホームページ上において公表されるに至っている。
(手引・ホームページ省略)
対応の内容
監査の過程で監査人と協議を行った結果、当該手引を公表すべきであるとの認識を共有したため、令和6年11月13日付けで本市ホームページ上において公表した。
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