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第18回ひろしま街づくりデザイン賞
広島市では、街を魅力的にしている建物や看板、活動などを市民の皆さんから広く募り、その中から特に優れたものを「ひろしま街づくりデザイン賞」として表彰しています。
この度、第18回目の受賞作品が以下のとおり決定しました。
大賞(建築物(一般)部門・花と緑部門)
広島アンデルセン
写真提供:株式会社アンデルセン・パン生活文化研究所
- 所在地:中区本通7番1
- 施主:株式会社アンデルセン・パン生活文化研究所
- 設計者:大成建設株式会社
- 施工者:大成建設株式会社中国支店
- 概要:ベーカリー、レストラン、集会場 鉄筋コンクリート 地上5階建て
- 建築面積:919.04平方メートル 延床面積:3,424.78平方メートル
- 完成時期:令和2年7月
選考理由
被爆建物の建替えと一部保存が同時に行われており、街の記憶の継承という観点からも重要な役割を担う、広島らしい建築物である。一方、被爆建物の保存方法のあり方についても考えさせられる建築物である。
ファサードは一見重厚に見えるが、よく観察すると、凹凸のある表面が柔らかな印象を与えている。また敷地南側のオープンスペースでは、モダンなデザインと緑の巧みな組み合わせにより、もう一つの正面ともいえる空間が創り出されている。緑が少ない広島都心部において、四季が感じられる居心地の良い、街中オアシスのようなポケットパークであり、このような空間がさらに増えることが期待される。
部門賞
江波の家(個人住宅部門)
写真提供:小松 隼人
- 所在地:中区江波
- 施主:小松隼人
- 設計者:株式会社小松隼人建築設計事務所
- 施工者:有限会社ホームテック
- 概要:専用住宅 木造 2階建て
- 建築面積:72.87平方メートル 延床面積:114.26平方メートル
- 完成時期:令和元年10月
選考理由
トンネル・急斜面に隣接する特殊な敷地環境が積極的に活かされており、環境との連続性を強く意識したデザインによって、森の中の住宅のような空間が創られており、また「接庭」の樹木と日光の交わりも穏やかな印象を与える。
特徴的な形状の建築物に、垂直基調の立体感あるファサード、ダークブラウンの色彩などが施されており、個性と周辺景観との調和が両立されている。そして、この緑映えるファサードのデザインが街に色と形のリズムを与えている。
PeacoQ(個人住宅部門)
写真提供:山中 雅俊
- 所在地:安佐南区緑井
- 施主:山中 雅俊
- 設計者:株式会社UID 前田 圭介
- 施工者:橋本建設株式会社
- 概要:専用住宅 木造 2階建て
- 建築面積:61.00平方メートル 延床面積:101.71平方メートル
- 完成時期:令和2年3月
選考理由
住宅の外壁の外側に、もう一枚、曲線の緩衝壁が設けられ、この緩衝壁の大小様々な開口部を介して、公共空間と住宅との連続性が巧みに創り出されている。公共空間と私的空間の境界部のデザインという現代的課題に対する方向性の一つを示している。
また、テラコッタを思わせる自然な色合いの外壁が主張しすぎることなく、周辺環境に溶け込んでおり、落ち着いた印象である。
夕凪の街 桜の国(アストラムライン本通駅ステンドグラス)(アート部門)
写真提供:広島高速交通株式会社
- 所在地:中区本通6番30号
- 施主:広島高速交通株式会社
- 設計者:こうの 史代
- 施工者:クレアーレ熱海ゆがわら工房(製作) 公益財団法人日本交通文化協会(企画)
- 概要:アストラムライン本通駅に平和の尊さを伝えるステンドグラス作品を設置。
- 完成時期:令和2年2月
選考理由
悲劇的な歴史を持つ広島が復興し、明るい未来に向かって進んでいく変遷が印象的に表現されている。
ステンドグラスによる表現手法は、通常、教会などで使用され、重い雰囲気になりがちだが、イラストのモチーフや色彩の選び方などにより、明るく楽しい雰囲気が伝わってくる。
暗い地下空間を明るくする取組は、平和記念公園の最寄り駅に相応しい。
広島電鉄ラッピング電車(段ボール電車)(広告部門)
写真提供:株式会社桐原容器工業所
- 施主:株式会社桐原容器工業所
- 設計者:株式会社広告通信社、有限会社IC4DESIGN
- 施工者:巣守金属工業株式会社
- 走行区間:広島駅~広電宮島口駅
- 完成時期:令和3年12月
選考理由
梱包材である段ボールを絵柄として電車をラッピングするアイデアは、クライアントの個性が全面的に表現されており、広島の特徴的な景観づくりに貢献している。
段ボールの細かい部分まで再現されており、リアルな段ボール電車が走る面白さや楽しさが、街に提供されている。
色合いも優しく、街の景観に対する配慮がなされている点も良い。
風花山本(街並み部門)
写真提供:株式会社沖田
- 所在地:安佐南区山本四丁目12番
- 設計者:株式会社沖田
- 施工者:株式会社沖田
- 概要:専用住宅、事務所 木造 2階建て 全13戸
- 建築面積:1,501平方メートル 延床面積:1,348平方メートル
- 完成時期:令和元年5月
選考理由
定期借地に伴う建築協定等のルールにより「共用部を多くする」「敷地境界に塀を設けない」といったデザイン的工夫がなされている。これにより、子どもたちが敷地に関係なく自由に駆け回るなど、生活が一体となった優しい街並み景観が創り出されている。
車道沿いに連続する植栽と建物の組み合わせには統一感があり、その意匠が近隣の住宅にも影響を与えている点も素晴らしい。コミュニティデザインと一体となった街並みデザインの手法として、可能性が感じられる。
minagarten(ミナガルテン)コミュニティエリア(街並み部門)
写真提供:株式会社真屋
- 所在地:佐伯区皆賀三丁目8番11号
- 施主:株式会社真屋
- 設計者:株式会社真屋
- 施工者:株式会社イワキ
- 概要:ベーカリー、カフェ、シェアキッチン等の複合型コミュニティ施設
鉄骨造3階建て、木造2階建て - 建築面積:230平方メートル 延床面積:鉄骨建物420.7平方メートル、木造建物 58.4平方メートル
- 完成時期:令和3年10月
選考理由
園芸倉庫のリノベーションによる新しさを感じる建築物。ガラスが印象的な外観と、カフェやシェアキッチンなどが入った内部が連続しており、これらが一体となり地域に活力を与えている。
時間をかけて、古い建築物の構造などを再構成すると同時に、緑を生かした新しいコミュニティ空間の創出に挑戦しており、その結果、既に近隣住民の居場所となっている様子がうかがえる。
地域の自然、環境、歴史、文化、そして生活への配慮がなされ、近隣住宅地に花を添える場所となっており、新たな街並み景観形成手法としても可能性を感じる。
奨励賞
ひろぎんホールディングス本社ビル
写真提供:株式会社広島銀行
- 所在地:中区紙屋町一丁目3番8号
- 施主:株式会社広島銀行
- 設計者:株式会社日建設計
- 施工者:広島銀行新本店ビル新築工事共同企業体 代表者 株式会社竹中工務店広島支店
- 概要:店舗、事務所、駐車場 鉄骨・鉄筋コンクリート造陸屋根地下1階付19階建て、鉄骨造陸屋根5階建て
- 建築面積:3,247.83平方メートル 延床面積:45,885.86平方メートル
- 完成時期:令和3年2月
選考理由
広島都心部のランドマークとしての役割を果たす、安定感のある建築物である。現代的かつ奥行きのあるファサードが創り出されており、特に鯉城通り側からの眺めが美しい。
1階に銀行の店舗を置かないこと、セットバックにより広い空間を創り、人々が入りやすいデザインとしていること、2階の植栽選定などにより、街との上手な融合が図られている。
コ・イルミネーション
写真提供:コイコイコ実行委員会
- 所在地:西区己斐本町一丁目18番3号
- 施主:コイコイコ実行委員会
- 設計者:株式会社フジヤ広島支店
- 施工者:株式会社フジヤ広島支店
- 概要:西広島駅前の「KOIPLACE」のイルミネーションやライトアップを行っている。
- 完成時期:令和2年12月
選考理由
新たに創られたパブリックスペースの使い方として魅力的である。
地域住民が集まる場所として、華やかな雰囲気となっている点、駅と上手に融合して安全性が高くなっている点も良い。
暖かさや懐かしさを感じるイルミネーションであり、駅を日常的に利用する乗客にとって、ほっとできる空間となっている。
泉屋 幟町店
写真提供:足袋井竜也(TATSUYA TABII )
- 所在地:中区幟町12番14号
- 施主:泉屋株式会社
- 設計者:HANKURA Design、TEKI DESIGN
- 施工者:株式会社Hiromitsu
- 概要:和洋菓子店の泉屋のロゴを設置した広告。
- 完成時期:令和3年12月
選考理由
ユニークな「泉」のロゴが面白く、店舗ファサードを白色で統一することで、黒色のロゴと文字がよく目立ち、効果的な広告になっている。
このロゴと共に写る人々の写真がインスタグラムに多数投稿されており、撮影スポットにしようという意図も狙い通り実現されている。
小規模ではあるが、このような取組の積み重ねが、美しい街並み形成につながる。
真亀一丁目花の会
写真提供:真亀一丁目花の会
- 所在地:安佐北区真亀一丁目25番
- 活動団体:真亀一丁目花の会
- 概要:団地内の道路沿いに412平方メートルの花壇を造成し管理している。
- 活動開始時期:平成24年7月
選考理由
雑草が繁茂するなど、景観を損なっていた広大な法面を、地元住民が、ボランティア活動を通じて花壇に変え、街並みを良いものにしようとする活動は、四季を通じた町内の憩いの場・新たな交流の場を創り出している。
10年以上の長期にわたる継続的な活動は、地域の連帯感の高まりやコミュニティ形成にもつながっている。
紙屋町まちかどピアノ
写真提供:広島地下街開発株式会社
- 所在地:中区基町地下街100号
- 活動団体:広島地下街開発株式会社
- 概要:紙屋町シャレオ東中広場に誰でも利用できるストリートピアノを設置。
- 設置開始時期:令和元年11月
選考理由
被爆後、市民を音楽で勇気づけてきた音楽喫茶から受け継いだピアノに、広島らしい花のデザインをまとわせ、多くの人々の利用に供している。そのストーリーも含め、広島ならではの活動といえる。
すべての市民に人前で演奏できる機会があるということは、街の文化的豊かさという観点から重要である。広島ではまだ珍しい取組であるため、街のオアシスとしての役割を果たすと同時に、被爆後のストーリーの周知も含め、これからの活動の広がりに期待したい。
表彰式・パネル展示を開催しました
今回の受賞作品の表彰式及びこれまでの受賞作品のパネル展示は以下の日時で開催しました。
多数の方に御来場いただき、誠にありがとうございました。
- 日時:令和4年11月25日(金曜日)
表彰式 午後2時30分~午後4時30分
パネル展示 午前10時~午後6時(入退場自由) - 会場:紙屋町シャレオ中央広場(中区基町地下街100号)
表彰式及びパネル展示の様子
当初掲載日:令和4年11月1日
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