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結核は、結核菌に感染することで引き起こされる病気です。主に肺に炎症が起き、咳、痰、微熱などの症状がみられるようになります。また、肺以外にもリンパ節、骨、腎臓、脳など全身に影響が及ぶこともあります。全国で年間1万人以上が新たに感染しており、広島市でも年間約100人の新規感染者が発生しています。
【小川培地上の結核菌】
結核は、「感染」と「発病」の違いを理解することが大切です。
結核菌が体内に存在しますが、症状が現れていない状態をいいます。この状態を潜在性結核感染症(Latent Tuberculosis Infection : LTBI)といいます。LTBIは人へ結核をうつすことはありません。
結核菌が体内で増え、咳などの症状が現れた状態をいいます。症状が進行すると、咳や痰の中に結核菌が排出され、人へ結核をうつすようになります。高齢、糖尿病、ガン、疲労などで身体の免疫が低下すると、過去に感染して体内に定着していた結核菌の活動が活発になり、発病に至ることがあります。
結核の治療には抗結核薬を使用します。結核菌は増殖が非常に遅いため、薬は4~6カ月以上の長期にわたって飲み続ける必要があります。治療は、症状が消えた後も長期にわたって続けなければなりません。途中で薬を止めてしまうと結核菌が完全に死滅せず、結核が再発したり薬の効かない結核菌(耐性菌)が出現する可能性もあります。
日本では現在、乳幼児期の重症結核を早期に予防するため、生後1歳に至るまでに(標準的接種期間は5か月から8か月に達するまで)BCGを接種することになっています。
診断には結核の「発病」を調べる検査と、「感染」を調べる検査があります。
「発病」を調べる検査には、痰などを採取して結核菌を検出する方法(塗沫検査法、分離培養法、PCR法)と、胸部エックス線による肺病変の確認があります。塗抹検査では、痰を顕微鏡で観察して結核菌が見つかると、排菌している(結核菌を体外に出している)状態であることが分かります。
「感染」を調べる検査には、ツベルクリン検査とIGRA(インターフェロン-γ測定試験/血液検査)があります。
結核菌から精製したタンパク抗原(ツベルクリン)を皮膚に注射し、48時間後に注射した部位の皮膚の変化を調べる検査です。結核菌に感染していると、注射されたツベルクリンに対して体の免疫が反応して、注射した部分が赤く腫れたり、硬くなったりします。BCGと同じ抗原を用いるため、結核に感染していなくてもBCG接種を行っている場合には陽性と判定される(偽陽性)ことがあります。
この検査では、採取した血液に結核菌が作るタンパク質と似た合成タンパク質(結核特異抗原)を混ぜます。結核菌に感染している場合は、結核特異抗原に反応して白血球がサイトカイン(免疫細胞から分泌されるタンパク質)の一種であるインターフェロンガンマ(IFN-γ)を作り出します。IFN-γが産生されたかどうかを調べることで、結核に感染しているかどうかを判断します。
この検査はツベルクリン検査とは異なり、結核の予防接種を受けたことがある場合でも偽陽性の判定が出ることはありません。
広島市では、結核感染の拡がりの有無を調べるため、患者の濃厚接触者のIGRAを実施しています。