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ページ番号:0000000218更新日:2013年3月21日更新印刷ページ表示

衛研ニュース/結核とその検査法について

結核とは

 結核菌という細菌が原因で起こる人獣(人間と動物の)共通感染症です。最初は炎症から始まり、菌の周囲を炎症細胞が取り囲むような結節を形成します。菌が「核」となり「結節」を作るこの症状が「結核」の名前の由来です。体内のどこでもできますが、人間では8割から9割が肺に病巣を作る「肺結核」といわれています。発熱、疲労感、しつこい咳などの症状が現れ、咳やくしゃみのときに結核菌が空気中に飛散し、これを吸い込んだ人が感染します。

 結核菌は「抗酸菌」の一つです。これは細胞壁が脂質に富み、通常の染色法では染まりにくく、抗酸菌染色で染まる特徴を持つ菌の種類です。結核菌は、長さ2~10ミクロン、幅0.3~0.6ミクロンの細長い桿菌と言われる菌の1種で、芽胞や鞭毛、莢膜は作りません。

 結核菌の学名はMycobacterium tuberculosisといいます。他にMycobacterium bovis、Mycobacterium africans、Mycobacterium microtiなどの4菌種を合わせて「結核菌群」(M. tuberculosis complex)と呼びます。これらの菌が原因で起こる病気を「結核症」、抗酸菌で結核とよく似ているものの人から人に移りにくい菌(M.kansasiiやM.aviumなど)によるものを「非定型(非結核性)抗酸菌症」といって区別されます。非定型抗酸菌症の中では、日本ではM.aviumとM.intracellulareが多く見られます。

 「感染」の成立は必ずしも「発病」を意味するものではなく、咳などの自覚症状、胸部X線の異常、排菌などを認めた時に「結核症」と診断され、治療の対象となります。また自覚症状はないが、結核菌をもち免疫力がおちると発症する可能性のあるものを「潜在性結核感染」と呼びます。

結核の現状と問題点

 日本での結核罹患率は2010年で10万人当たり18.2人前後、世界保健機構(WHO)の汚染区分では中等度汚染とされ、先進国の中では高い方です。感染予防対策は少しずつ成果を出しているとはいえ、昔と今とでは結核感染の状況や死亡原因など大きく変わってきています。

 今後対策が必要な課題として、

  1. 高齢者における再燃性結核
  2. 若年層の集団感染
  3. AIDSの広まりでその患者・感染者に簡単に感染し、死亡者が増えていること

などがあります。

 また、国際化が進んでいることで、最近では留学生、外国人労働者からの集団感染事例も報告されています。

治療方法

 昔は良い薬も無く、空気の良い療養所で静養するしかなく、長患いの果てに亡くなる人も多かったのですが、現在は排菌のない場合は外来で、排菌のある場合でも3~6か月の入院で治療することができるようになりました。治療は「化学療法」です。化学療法ではイソニアジド、リファンピシン、ヒドラジンなど複数の抗結核薬を最適な組み合わせで飲みます。症状が治まり、退院してからも薬を飲むことがあります。大事なのは完全に治療が終わるまで薬をきちんと服用し続けることです。これをおろそかにすると、薬に耐性(薬が効かない)の菌を育ててしまうことになり、治療がより長引いたり、たくさんの強い薬を飲むことになったりします。そうなると患者さんの体への負担が大きくなるだけでなく、治療困難な結核菌(多剤耐性結核菌)を新たに生み出すことになりかねません。

 そこでWHOは薬を確実に患者が服薬する制度を提唱しました。それがDOTS(ドッツ)と呼ばれる制度です。

 DOTSとは「Directly Observed Treatment, Short Course」のことで日本語では『直接服薬確認療法』と訳されます。飲み忘れず、間違いなく薬を飲んでいるかを医療従事者が直接確認する制度です。WHOでは退院後も病院に通ってもらい、そこで薬を渡して飲んでもらう、というやり方を推奨しています。そのため、厚生労働省は、平成16年12月に「結核患者に対するDOTS(直接服薬確認療法)の推進について」の通知を出し、保健所の保健師等による患者の家庭訪問指導及び医師による指示並びに服薬確認を軸とした地域の事情に応じたDOTSの積極的な取組を要請し、さらに、平成23年にその一部を改正して、その一層の取組を進めています。

予防方法・診断方法

 日本では現在、結核を予防するために、BCG接種が義務付けられています。平成15年までは4歳未満、小学生、中学生でツベルクリン反応陰性者に対して、平成15年からはツベルクリン反応を省略して乳幼児期に一回となりましたが、平成17年4月には結核予防法の改正により生後6か月までに1回の接種に変わりました。なお、結核予防法は、平成19年に「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」に統合されました。

 結核の診断方法には喀痰塗抹鏡検(顕微鏡で見ること)、細菌培養、胸部X線撮影、ツベルクリン反応があります。喀痰塗抹鏡検では結核菌か、非結核性抗酸菌かの区別がつかず、細菌培養は1か月近くの時間がかかり、胸部X線検査では肺ガンなど他の病気と間違えることもあることから、ツベルクリン反応が結核の特異的診断法として使われてきました。結核を発症している人ではこれに結核菌の遺伝子診断であるPCR法などを加えて比較的早く確定診断ができるようになりました。しかし、ツベルクリン反応検査では、過去のBCG接種の影響で、本当は感染していないのに陽性に出てしまう偽陽性が多いことも知られていました。これはBCGワクチンに使われている抗原とツベルクリン反応に使われている抗原がほぼ同一のものだからです。

 また、この検査法ではツベルクリン接種後48~72時間で病院に再び来てもらわなくてはいけないことや赤くなっているところをものさしで測るという主観により左右される判定であること、何度もツベルクリン注射を行うと反応が増幅されるというブースター効果が起こるので短期間の反復した検査はできないこと、など多くの課題を持つ検査法でした。

 近年、ツ反の持つこれらの欠点を解決する、血液を使用する新たな結核感染診断法が開発されました。結核感染者におけるエフェクターT細胞によりインターフェロン-γ(IFN-γ)産生を誘導する結核菌特異抗原が発見されたのです。これらの抗原を刺激抗原として血液を刺激し、エフェクターT細胞より産生されたIFN-γ量を測定することにより、BCG接種や大多数の非結核性抗酸菌感染の影響を受けない結核感染診断法クォンティフェロン-TB(QFT)が開発されました。現在では初代QFT-TB-2G(結核特異抗原ESAT=6/CFP-10)より感度と操作性に優れたQFT-TB-3G(結核特異抗原ESAT-6/CFP-10/TB7.7)が使用されています。

クオンティフェロンTB‐3G検査法

検査方法について

 QFT検査に使用する結核菌特異抗原(ESAT-6/CFP-10/TB7.7)は、全てのM.bovisBCG亜株及びM.avium、M.intracellulareを含む大部分の非結核性抗酸菌には存在せず、結核菌群とごく一部の非結核性抗酸菌にのみ存在しているので、結核予防のためBCG接種を積極的に行ってきた日本での結核感染診断法としてツベルクリン反応よりも有効です。

 ツベルクリンはBCGワクチンと同一の抗原を使っているため、BCG接種を受けた人と実際に結核菌感染した人を区別することは困難であるけれども、QFT-TB-3Gで使われている結核菌特異的抗原はBCGと異なる抗原であるためBCG接種の有無に関係なく結核菌の感染を診断することができるのです。

 検査方法は、IFN-γの定量をELISA法で行い、数値として算出することから客観的に判定することができ、血液採取して翌日には結果を出すことが可能です。

 QFT-TB-3Gキットの開発で、より正確かつ迅速に結核感染診断が行えるようになりました。広島市でも接触者の定期外健診に活用し、結核の蔓延防止に努めています。

QFT-3Gキットを用いた結核の検査
QFT検査キットを用いた結核の検査

QFT検査の原理

 QFT-TB-3Gを用いた検査では、次の2段階の検査手順をおこないます。

  1. 血液を特異抗原(ESAT-6/CFP-10/TB7.7)で刺激し、IFN-γを放出させる。
  2. 血漿中に放出されたIFN-γをELISA法で定量する。

1.血液の抗原刺激(採血管内で実施)

 採血管内に塗布されている抗原に血液が添加されると抗原提示細胞がTリンパ球に抗原提示を行います。この検査を受ける人がもし結核菌に感染していたら、血液中に結核菌に感作されたTリンパ球が存在するので、そのTリンパ球が抗原提示を受けてIFN-γを産生します。

(1)3本の試験管に採血し、混和して37℃で16~24時間培養

3本の採血管に採血

(2)抗原提示細胞が抗原を捕食して提示部位を認識(試験管内の反応)

抗原提示細胞が抗原提示部位を認識

(3)抗原提示細胞がTリンパ球に抗原提示

抗原提示細胞がTリンパ球に抗原提示

(4)Tリンパ球がIFN-γを産生

Tリンパ球がIFN-γを産生

2.IFN-γの定量(ELISA法)

(1)抗ヒトIFN-γ抗体でコーティングしてあるプレートを準備する。

抗ヒトIFN-γ抗体でコーティングされたプレート

(2)標識抗体を入れる

標識抗体を入れる

(3)検体(抗原刺激培養した血液の血漿)を入れる。

検体を入れる

(4)検体中のIFN-γがプレートにコーティングしている抗体と標識抗体にはさまれるように反応してプレートに固定される。

検体中IFN-γがプレートの抗体と標識抗体にはさまれるように反応

(5)一度洗浄して余分な標識抗体を取り除いて発色基質を入れると青く呈色する。

余分な標識抗体を除去し、発色気質を入れると青く呈色する

(6)反応停止液を入れると黄色になる。この発色具合を機械で測定することで産生されたIFN-γ量を定量できる。

反応停止液を入れ(黄色くなる)、機械で測定しIFN-γ量を定量

TーSPOT.TB検査法

 QFTと同様に特異抗原刺激により産生されたIFN-γを測定することにより結核感染を診断する他の診断試薬として英国で開発されました。

 血液より末梢血単核球(リンパ球)を精製し、規定の細胞数を専用の培養ウエルにいれ結核菌抗原ESAT-6とCFP-10で刺激します。専用の培養ウエルはPVDFという白膜で形成されており、あらかじめ抗ヒトIFN-γ抗体が結合しています。そのため抗原刺激後、細胞から放出されたIFN-γは放出場所で抗体に結合します。

 CO2インキュベーターを用いて37℃で16~20時間培養した後、産生されたIFN-γを染色することによって、IFN-γを放出したリンパ球の存在した場所をスポット(点)として可視化するものです。スポット1個がIFN-γを放出したリンパ球1個に相当するのです。染色後スポット数を計測して、規定の判定基準により結核感染の診断を行います。T-SPOTはQFTよりも高感度であるが、特異性は低いとする論文もあります。一方、T-SPOTは高感度のためQFT検査では検出困難な免疫不全症(エイズなど)患者や小児などにおける結核感染診断に有用であるという報告もあります。したがって、今後の検討が必要であると思われます。