包括外部監査の意見に対する対応結果の公表(令和2年11月4日公表)
広島市監査公表第42号
令和2年11月4日
広島市監査委員 谷本 睦志
同 井戸 陽子
同 八條 範彦
同 大野 耕平
広島市長から監査の意見に対する対応結果について通知があったので、当該通知に係る事項を別紙のとおり公表する。
(別紙)
平成30年度包括外部監査の意見に対する対応結果の公表(こども未来局)
1 監査意見公表年月日
平成31年2月5日(広島市監査公表第1号)
2 包括外部監査人
大濱 香織
3 監査意見に対する対応結果通知年月日
令和2年10月26日(広こ企第59号)
4 監査のテーマ
子ども・子育て支援事業の事務の執行について
5 監査の意見及び対応の内容
公立保育園の民間移管について(所管課:こども未来局保育企画課)
監査の意見
公立保育園の数を全国20の政令指定都市で比較すると、広島市は、名古屋市、大阪市に次いで多い方から第3位に位置付けられる。一方で、同じ政令指定都市でも、公立保育園の民間移管を進めている市もあり、例えば福岡市では、平成16年4月時点では21園あった公立保育園の民間移管を進め、平成28年4月までに予定していた14園の民間移管を実施し、現在では公立保育園は7園となっている。待機児童の問題はどこの政令指定都市でも同じようにある。同様の状況下においても、公立保育園の民間移管を進めている政令指定都市とそうではない政令指定都市に対応が分かれている。
次に、広島市内の公立保育園と私立保育園について、現在提供されている保育サービスの面から比較してみると、延長保育については、公立保育園が40%の36園が1時間の延長保育に限って実施しているのに対し、私立保育園では71%の98園が1時間の延長保育を実施している。さらに、私立保育園では2時間の延長保育を31園が、4時間の延長保育を2園が実施している。また、一時預かりについては、公立保育園が1園も実施していないのに対し、私立保育園は97園が実施しており、保護者のニーズに沿って多様な保育サービスを提供している現状がうかがえる。
財政の面から比較してみると、園児一人当たりの事業費(月額)は、平成29年度決算額を基に、平成17年度の包括外部監査において導入された考え方である、0歳児の保育士配置基準と各年齢児の配置基準の割合により各年齢児を換算する「0歳児換算」で計算すると、公立保育園は約312千円、私立保育園は約279千円となり、公立保育園の方が高コストで運営されていることが分かった。
こうした現状を念頭に置き、広島市として、保育の質を向上させ、多様な保育サービスの提供、待機児童解消というハード・ソフト両面にわたる行政課題に対応していくためには、厳しい財政状況の中で限られた財源を最大限有効に活用する必要があることから、公立保育園は他の政令指定都市の取組を参考に、コスト面で有利であり、保護者ニーズに柔軟に応えている私立保育園へ保育園の運営をシフトしていくことが、効率的で効果的なサービス提供につながると言える。
広島市は、このような考えの下、平成20年12月に「保育園のあり方について」及び「公立保育園の民間移管に関するガイドライン」を策定し、平成21年には民間移管する予定園9園を公表し、保護者への説明会や意見交換会を行うなど民間移管を進めていたが、取組を一旦中止しており、民間移管された実績はない。その理由をヒアリングで聴取したところ、平成23年に、ある社会福祉法人の不祥事が発覚し、社会福祉法人に対する不安を払拭する対応を優先しているためとのことであった。しかし、こども未来局保育指導課及び健康福祉局監査指導室は、当該社会福祉法人を含む私立保育園を運営する全ての社会福祉法人に対して定期的に指導監査を行い不祥事発生のリスクを検証しており、他都市において民間移管を進めている中、7年以上前の1社会福祉法人の不祥事が原因で公立保育園の民間移管が進められないというのは、施策を事実上凍結している理由として不合理である。
このように、広島市の厳しい財政状況の中で、限られた財源を最大限有効に活用することを前提にしながら、より良い保育サービスを提供していくため、中長期的な視点から公立保育園の民間移管に向けた取組を再開するべきである。
対応の内容
本市では、平成20年に、保育園に求められる役割や機能の多様化・複雑化、保育需要の増大といった状況に対応するため、公立保育園としての役割を果たすために必要な園は残して充実し、それ以外の園を順次民間に移管することとする「保育園のあり方について」を策定した。
その後、本市の乳幼児数の推移をみると、平成25年度以降減少が続いており、今後の更なる少子化の進展により、近い将来には幼児教育・保育全体の需要も減少に転じることが予想され、いずれは現在の幼児教育・保育の提供体制やサービスを維持していくことが難しくなることが懸念される状況にある。
こうした状況を踏まえ、公立・私立、幼稚園・保育園等を問わず、全体最適の視点に立って、幼児教育・保育の一体的な質の向上を図るとともに、持続可能な提供体制を構築していく観点から、令和2年3月に改めて「広島市幼児教育・保育ビジョン」を策定し、保護者ニーズに柔軟に対応してきている私立園が提供体制の中心を担うことを基本とし、公立園は、私立園の取組支援や、私立園では提供が難しいものの公益性の観点から実施すべき部分を担うこととした。この役割分担を踏まえ、公立園の役割を果たすために必要な園は残しつつ、幼児教育・保育の需要の減少には、地域の将来を含めた需給状況の実情等を考慮した上で、基本的に、公立園の定員削減・統廃合により対応することとした。今後は、このビジョンに基づいて具体的な取組を進めていく。
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