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ページ番号:0000000225更新日:2020年12月7日更新印刷ページ表示

衛研ニュース/食品中の重金属について

重金属について

 重金属とは、比重が4以上の金属元素とされています。一般に軽金属と呼ばれるナトリウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属やアルミニウムを除く約60種類の金属が重金属に相当します。

 例えば、カドミウム、鉛、亜鉛、銅、マンガン、鉄、コバルトなどです。重金属と聞くと、人体に有害で危険な物質というイメージがあると思います。一般的に、重金属は毒性が強いものが多く、微量であっても繰り返し摂取すると体内で蓄積されて有害です。

 ただし、重金属は有害であるばかりではありません。元素には、生元素あるいは生体元素と呼ばれる生物にとって大変重要な役割を持つものがあります。次の表に示すものがそれらで、生物体を構成している11種の主要元素と、生命維持に必須とされている15種の微量元素です。この微量元素のうち、ケイ素、フッ素、ヨウ素を除く12種の元素は重金属なのです。

生元素(生体元素)(※1)
主要元素(成人1日必要量が100mg以上) 水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、塩素、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム
微量元素(成人1日必要量が100mg以下) 鉄、亜鉛、銅、マンガン、バナジウム、クロム、ニッケル、コバルト、ヒ素、セレン、モリブデン、スズ、ケイ素、フッ素、ヨウ素

(※1)「衛生試験法・注解2020,日本薬学会編,204(2020)」より引用

 また、食品に含まれる有害元素はその存在形態によって毒性が大きく違うため、元素の存在量だけで議論することはできません。

 例えば、無機ヒ素は毒性が高いにもかかわらず、ジメチルアルシン酸やアルセノシュガー等の有機ヒ素化合物は毒性がはるかに低いということが分かっています。参考までに、有害元素の急性毒性量を次の表に示します。

有害元素の急性毒性(※2)
LD50(mg/kg)(注1) 元素名
高度毒性
1~10
経口
(注2)
ヒ素(3価)、黄リン、プルトニウム(4価、6価)、セレン(4価)、テルル(4価)、タリウム(1価)
静注
(注3)
プルトニウム(4価、6価)、テルル、ベリリウム、カドミウム、クロム(6価)、水銀、鉛、硫黄(-2価)、ウラン(6価)、バナジウム(5価)
中等度毒性
10~100
経口 カドミウム、銅、フッ素、水銀、鉛、アンチモン、ウラン、バナジウム
静注 金、バリウム、カルシウム、セリウム、コバルト、フッ素、ガリウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニオブ、ニッケル、プラセオジム、白金、アンチモン、スズ、タンタル、トリウム、キセノン、亜鉛
わずかな毒性
100~1000
経口 アルミニウム、ホウ素、バリウム、鉄、インジウム、モリブデン、タンタル、トリウム、タングステン、亜鉛、ジルコニウム
静注 ホウ素、クロム(3価)、ゲルマニウム、ランタン、リチウム、レニウム(7価)、ストロンチウム、イットリウム、亜鉛
比較的無害
1000以上
経口 臭素、塩素、セシウム、ヨウ素、ナトリウム、ルビジウム、カルシウム、カリウム、ランタン、レニウム(7価)

(※2)「衛生試験法・注解2020,日本薬学会編,431(2020)」より引用
(注1) 50%Lethal Doseの略で半数致死量のこと。ある化学物質を実験動物に投与した時、その実験動物の半数が死亡する量を表す。例えば、LD50=10mg/kgとは、体重1kgあたり10mg投与すると半数が死ぬ事を示している。
(注2) 口から投与すること。
(注3) 静脈注射により投与すること。

食品中の重金属の基準

 食品衛生法で定められている規格基準のうち、食品中の重金属の基準は次の通りです。

重金属類に関する規格基準
区分 規格基準
ミネラルウォーター類 成分規格 アンチモン:0.005mg/l以下であること
カドミウム:0.003mg/l以下であること
水銀:0.0005mg/l以下であること
セレン:0.01mg/l以下であること
銅:1mg/l以下であること
鉛:0.05mg/l以下であること
バリウム:1mg/l以下であること
ヒ素:0.01mg/l以下であること
マンガン:0.4mg/l以下であること
六価クロム:0.05mg/l以下であること
スズ:150.0ppm以下(金属製容器包装入りのものについて)
ミネラルウォーター類以外の清涼飲料水 ヒ素、鉛:検出しないこと
スズ:150.0ppm以下(金属製容器包装入りのものについて)
粉末清涼飲料水 ヒ素、鉛:検出しないこと
スズ:150.0ppm以下(金属製容器包装入りのものについて)
穀類
米(玄米及び精米)
カドミウム及びその化合物:0.4ppm以下(カドミウムとして)
魚介類(注4) 暫定的規制 総水銀0.4ppmかつメチル水銀0.3ppm(水銀として)
ただしマグロ類(マグロ、カジキ及びカツオ)及び内水面水域の河川産の魚介類(湖沼産の魚介類は含まない)、並びに深海性魚介類等(メヌケ類、キンメダイ、ギンダラ、ベニズワイガニ、エッチュウバイガイ及びサメ類)については適用しない。

(注4) 日本人の平均的な食生活からすると、魚介類に含まれるメチル水銀摂取により健康に影響がでるようなことはありません。しかし、体内に取り込まれたメチル水銀により、胎児の健康に影響を与える可能性があることが、近年の研究で報告されています。この影響とは、音を聞いた場合の反応が1/1000秒以下のレベルで遅れるようになる可能性があるというものです。
 そのため、メチル水銀を比較的多く含む一部の魚介類を、妊婦の方が偏って多量に食べることを避け、胎児の健康を保護するため、次のような食べ方の目安が、厚生労働省から示されています。

重金属の測定について

 それでは食品中の重金属の測定は具体的にはどうするのでしょうか。まず、当所で行っている、食品中のカドミウム、鉛、スズなどの検査を紹介します。

食品中のカドミウム、鉛、スズなどの検査

 食品中にはタンパク質、脂質、糖分などの有機物が多くあり、これらを分解して取り除く必要があります。分解方法は様々ありますが、硫酸と硝酸を用いた湿式分解法という一般的な分解法を採用しています。

硝酸と硫酸の写真

1 検査する食品を包丁やフードプロセッサー(下図)を用いて細かく砕き、混合することで均一化します。

 ◆ 重金属について

 検査に用いる試料は、ヒトが普通食べる部位(可食部)だけを取って細かく砕きます。例えば、貝は貝殻を除いたむき身を用います。

細かく砕いた後の試料

 上の写真は貝の貝殻を取り除き、身の部分をフードプロセッサーで細かくしたものです。ドロドロの液体のようになっています。

2 ケルダールフラスコに秤量した試料と硝酸を入れ、加熱しながら分解します。

分解初期の状態

 有機物の分解が始まると、茶色の窒素酸化物のガスがモクモク出てきます。

3 液量が半分程度になったら、加熱を止め放冷後に濃硫酸を加え再度加熱を行います。

分解途中の状態

 加熱を続けると煙の色が薄くなってきます。有機物が分解され減ってきたためです。

4 時々、硝酸を加えて加熱を続けます。硫酸白煙を生じた時に、内容物が無色透明~淡黄色であれば分解終了です。

分解終了時の状態

 食品の固形物を含んでいた液体がこのようにきれいになりました。放冷後に飽和シュウ酸アンモニウム溶液を加えて加熱し、硝酸と硫酸による加熱で生成した物を除去します。

 続いて、この液から重金属を取り出す方法を説明します。

5 液を分液ロートに移し、金属塩の析出を抑えるためにクエン酸アンモニウム溶液を加えて、アンモニア水で中和します。次に、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム溶液を加えると、金属がキレート錯体になります。

キレート錯体生成の模式図

6 このキレート錯体はクロロホルムなどの有機溶媒に溶けやすい性質があるため、分液ロートにクロロホルムを加えて振ると、キレート錯体はクロロホルムへ移ります。分液ロートの液体は二層に分かれていますが、下層がクロロホルムです。

分液ロートの液体

7 クロロホルムを蒸発させ、残渣に硝酸を加えて加熱した後に放冷します。残渣を塩酸溶液で溶かして試験溶液の出来上がりです。

食品中の重金属検査の試験溶液

 続いて、試験溶液の測定を行います。測定手法には様々ありますが、当所では、原子吸光分析を採用しています。

(原子吸光分析について)

 原子吸光分析とは、特定波長の光の吸収を測定する分析方法で、共存物質の影響が比較的少ないのが特徴です。

 まず、作成した試料溶液を高温の炎中に噴霧したり、電気炉で加熱することで、試料に含まれる元素を基底状態の原子に解離させます。
 基底状態の原子に、測定したい元素に対応したホロカソードランプ(その元素に特有の輝線スペクトルを強く発するランプ)で光をあて、外側電子が基底状態から励起状態へ遷移する際の吸収を測定します。
 この光吸収の度合(吸光度)が濃度に比例するため、元素の量を測定することができます。これが原子吸光分析です。

 基底状態というのは、取りうるエネルギーのうちで最も低いエネルギーの状態を言います。基底状態の原子に、その原子特有の決まった波長の光を当てると、原子が光エネルギーを受け取って高いエネルギーを持った励起状態となります。

原子吸光の原理図
原子吸光分光光度計の写真

 

 次に紹介するのは魚介類の水銀検査です。前述した分解法では、気化しやすい水銀は気体となり損失します。そのため、硫酸と硝酸を用いた湿式分解で生じたガスを冷却し、液体として戻す分解法を用います。

魚介類の水銀検査

1 魚の内臓や頭などを取り除き、可食部をフードプロセッサーで均一化し、二つ口フラスコに量り取ります。

検体を二つ口フラスコに量り取る

2  硝酸と硫酸を加えます。

硝酸と硫酸を加える

3  加熱を始めると、有機物が分解され窒素酸化物のガスが出てきます。気化した水銀は上部の冷却管で冷やされ、フラスコに戻って来ます。

加熱する

4  約2時間加熱すると、有機物はほとんど分解され内容物が淡黄澄明な液体となります。

約2時間加熱後の状態

5  尿素溶液を加えて加熱し、硝酸と硫酸による加熱で生成した物を除去します。

尿素溶液を加えて加熱する

6  硝酸と硫酸による加熱では、完全に有機物が分解されないため、更に過マンガン酸カリウムを加えた加熱で、わずかに残った有機物を分解します。

過マンガン酸カリウムを加えて加熱する

7  塩酸ヒドロキシルアミン溶液を加え、過マンガン酸カリウムを分解すると液が透明になり、水を加えて試験溶液の出来上がりです。水銀と一口に言っても、金属水銀、無機水銀、有機水銀と言った様々な形態のものがありますが、この段階では、全て酸化されて二価の水銀の形態になっています。

魚介類の水銀検査の試験溶液

 続いて、試験溶液の測定を行います。

8  これは、還元気化-冷原子吸光光度法による水銀測定装置です。試験溶液の入った試験管に、塩化第一スズ溶液が投入され、二価の水銀塩は還元され原子状水銀となります。更に試験管に空気が送り込まれると、原子状水銀は気化して装置本体へ導入され測定されます。

水銀測定装置

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