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ページ番号:0000000225更新日:2012年4月19日更新印刷ページ表示

衛研ニュース/食品中の重金属の測定

重金属について

 重金属とは、比重が4以上の金属元素とされています。一般に軽金属と呼ばれるナトリウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属やアルミニウムを除く約60種類の金属が重金属に相当します。

 例えば、カドミウム、鉛、亜鉛、銅、マンガン、鉄、コバルトなどです。重金属と聞くと、人体に有害で危険な物質というイメージがあると思います。一般的に、重金属は毒性が強いものが多く、微量であっても繰り返し摂取すると体内で蓄積されて有害です。

 しかし、次の表に示すように、一部の重金属は微量摂取することが生命維持に必要不可欠であると言われています。このように、生命維持に必須とされる元素は微量元素(微量必須元素)と呼ばれ、生元素(私たちの体を作っている元素;生体元素)の一部を構成しています。

生元素(生体元素)
主要元素
(成人1日必要量が100mg以上)
水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、塩素、
ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム
微量元素
(成人1日必要量が100mg以下)
鉄、亜鉛、銅、マンガン、バナジウム、クロム、
ニッケル、コバルト、ヒ素、セレン、モリブデン、
スズ、ケイ素、フッ素、ヨウ素

衛生試験法・注解2005,日本薬学会編,169(2005)

 また、食品に含まれる有害元素はその存在形態によって毒性が大きく違うため、元素の存在量だけで議論することはできません。

 例えば、無機ヒ素は毒性が高いにもかかわらず、ジメチルアルシン酸やアルセノシュガー等の有機ヒ素化合物は毒性がはるかに低いということが分かっています。参考までに、有害元素の急性毒性量を次の表に示します。

有害元素の急性毒性
LD50(mg/kg)(1) 元素名
高度毒性
1~10
経口(2) ヒ素(3価)、黄リン、プルトニウム(4価、6価)、セレン(4価)、
テルル(4価)、チタン(1価)
静注(3) プルトニウム(4価、6価)、テルル、ベリリウム、カドミウム、
クロム(6価)、水銀、鉛、硫黄(-2価)、ウラン(6価)、バナジウム(5価)
中等度毒性
10~100
経口 カドミウム、銅、フッ素、水銀、鉛、スズ、ウラン、バナジウム
静注 金、バリウム、カルシウム、セリウム、コバルト、フッソ、ガリウム、
カリウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニオブ、ニッケル、
プラセオジム、白金、アンチモン、スズ、タンタル、トリウム、キセノン、亜鉛
わずかな毒性
100~1000
経口 アルミニウム、ホウ素、バリウム、鉄、インジウム、モリブデン、
タンタル、トリウム、タングステン、亜鉛、ジルコニウム
静注 ホウ素、クロム(3価)、ゲルマニウム、ランタン、リチウム、
レニウム(7価)、ストロンチウム、イットリウム、亜鉛
比較的無害
1000以上
経口 臭素、塩素、セシウム、ヨウ素、ナトリウム、ルビジウム、
カルシウム、カリウム、ランタン、レニウム(7価)

衛生試験法・注解2005,日本薬学会編,381(2005)

注釈(1)LD50:50%Lethal Doseの略で半数致死量の事。ある化学物質を実験動物に投与した時、その実験動物の半数
が死亡する量を表す。例えば、LD50=10mg/kgとは、体重1kgあたり10mg投与すると半数が死ぬ事を示している。
注釈(2)経口:口から投与すること。
注釈(3)静注:静脈注射により投与すること。

食品中の重金属の基準

 食品衛生法で定められている規格基準のうち、食品中の重金属の基準は次の通りです。

重金属類に関する規格基準
区分 規格基準
清涼飲料水 成分規格 ヒ素、鉛、カドミウム:検出しないこと
スズ:150.0ppm以下
粉末清涼飲料水 成分規格 ヒ素、鉛、カドミウム:検出しないこと
スズ:150.0ppm以下
穀類
米(玄米及び精米)(*)
成分規格 カドミウム及びその化合物:0.4ppm未満(カドミウムとして)
魚介類 暫定的規制 総水銀0.4ppmかつメチル水銀0.3ppm(水銀として)
ただしマグロ類(マグロ、カジキ及びカツオ)及び内水面水域の河川産の魚介類(湖沼産の魚介類は含まない)、並びに深海性魚介類等(メヌケ類、キンメダイ、ギンダラ、ベニズワイガニ、エッチュウバイガイ及びサメ類)については適用しない。

(*)食品成分規格基準の改正(厚生労働省)に伴い、米中のカドミウムの基準値が以下のように改正されました。これは、食品安全委員会の食品健康影響評価結果として、カドミウムの耐容週間摂取量が7μg/kg体重/週とされたことを踏まえ、定められたものです。
米のカドミウムの基準値 玄米及び精米 0.4ppm以下(旧基準 玄米 1.0ppm未満)(平成22年4月8日公布、平成23年2月28日より適用)

重金属の測定について

 それでは食品中の重金属の測定は具体的にはどうするのでしょうか。ここでは測定法を簡単に説明します。

 重金属を測定するには、まず食品中に含まれている有機物を分解して除去する必要があります。

 分解方法は様々ありますが、ここでは硫酸と硝酸を用いた湿式分解法という分解を紹介したいと思います。

硝酸と硫酸の写真

1 検査する食品を包丁やフードプロセッサー(下図)を用いて細かく砕き、混合することで均一化します。

 ◆ 重金属について

 検査に用いる試料は、ヒトが普通食べる部位(可食部)だけを取って細かく砕きます。例えば、貝は貝殻を除いたむき身を、ジュース等の液体はそのまま用います。

細かく砕いた後の試料

 上の写真は貝の貝殻を取り除き、身の部分をフードプロセッサーで細かくしたものです。ドロドロの液体のようになっています。

2 ケルダールフラスコに秤量した試料と濃硝酸を入れ、加熱しながら分解します。

分解初期の状態

 分解が始まると茶色の煙がモクモク出てきます。

3 濃硫酸を加えてさらに分解し、内溶液が無色透明~淡黄色になるまで加熱します。

分解途中の状態

 加熱を続けると煙の色が薄くなってきます。

4 内容物が炭化することなく、硫酸白煙を生じるようになったら分解終了です。

分解終了時の状態

 食品の固形物を含んでいた液体がこんなにきれいになりました。

5 冷却後、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(DDTC)という薬品でキレート錯体を作り、クロロホルムで抽出します。

キレート錯体生成の模式図

6 クロロホルムを蒸発させ、残渣を塩酸で溶かして試験溶液の出来上がりです。

試験溶液

7 試験溶液の分析を行います。分析手段には原子吸光分析(フレーム、電気加熱)、ICP発光分光分析など様々ありますが、当所では原子吸光分析で分析を行っています。

原子吸光分析について

 原子吸光分析とは、特定波長の光の吸収を測定する分析方法で、共存物質の影響が比較的少ないのが特徴です。

 まず、作成した試料溶液を高温の炎中に噴霧したり、電気炉で加熱することで、試料に含まれる元素を基底状態の原子に解離させます。
 この基底状態の原子に、測定したい元素に対応したホロカソードランプ(その元素に特有の輝線スペクトルを強く発するランプ)で光をあて、外側電子が基底状態から励起状態へ遷移する際の吸収を測定します。
 この光吸収の度合(吸光度)が濃度に比例するため、元素の量を測定することができます。これが原子吸光分析です。

 基底状態というのは、取りうるエネルギーのうちで最も低いエネルギーの状態を言います。基底状態の原子に、その原子特有の決まった波長の光を当てると、原子が光エネルギーを受け取って高いエネルギーを持った励起状態となります。

原子吸光の原理図

原子吸光分光光度計
原子吸光分光光度計の写真

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