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フグが毒をもつ魚であることはよく知られている話ですが、フグの種類や収穫した場所や季節または個体によっても、毒力、毒性、体の中で毒をもつ場所が異なるという事実を知っている人は少ないのではないでしょうか?生きている状態で棘の有無や、体の紋様などを根拠に魚種を鑑別し、有毒部位を完全に取り除く技術がなければ、フグを安全においしく食べることはできません。広島市ではこういった正しい知識を持った人をフグ処理者として認定し、フグ処理者の資格を持った人のみがフグの取り扱いをするよう指導しています。
また、私たちが多く口にする機会があるフグはトラフグ属の魚で、違う種と交配して子供ができる交雑種が比較的簡単に生まれることでも知られています。こうして生まれた交雑種のフグはどこに毒を持つかが全くわからないため、種の判断がつかないフグは食べてはいけません。
日本国内で年に何度かフグによる食中毒が起こり、そのほとんどは自分で釣ったフグを自分で調理をしたり、よくわからないまま人にもらって調理したりなど、いわゆる素人調理による家庭で発生したものです。また、死亡例もあります。自分で釣ったフグを自家調理したり、人にあげたりしないようにしてください。また、人からもらって食べることもやめましょう。
(厚生労働省「フグによる食中毒発生状況<外部リンク>」より作成)
魚種などの生物の種類を特定し、系統図などに分類をしていく方法については、模様やヒレ、尾の形や棘の有無による形態学的に行う方法と、遺伝子配列を基に行う方法の2パターンあります。
フグの食中毒が起きた時、その食べたフグの種類を特定することはとても大事ですが、食べ残しがあったとしてもすでに調理済みの切り身やアラなどで、形態学的に判断することはとても難しいです。
そこで、衛生研究所では切り身やアラなどからDNAを抽出してフグの種類を調べる方法を実施しています。検査にはシークエンサーというDNAの配列を調べることができる機械を使います。写真の切り身はコモンフグという種類でした。
コモンフグは、形態学的にはショウサイフグやクサフグと似ており、間違えられることもありますが、遺伝的に最も近いのはムシフグと考えられています。筋肉のみ食べてもよい可食部位として確認されていますが、東北の太平洋沖で獲れるコモンフグは筋肉も毒性が高いため、食用不可となっています。
衛生研究所では、フグの食中毒が起きた際にはフグの毒性を調べるほかこのような魚種鑑別も行っており、これからも安全な食の提供について貢献できる検査・研究を続けていきます。
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