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家庭用品とは、私たち一般消費者が通常生活で使用する製品のことです。例えば、家の掃除に使用する洗浄剤、毎日身に着ける下着等の衣類、カーテンやベッドカバー等の繊維製品も家庭用品です。
家庭用品には様々な化学物質が機能の向上や品質向上等の目的で使用されています。
「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」は家庭用品(※1)に含まれる化学物質による健康被害を防ぐために、必要な規制を行っています。
(※1)ただし、食品、食器、おもちゃ等の「食品衛生法」が適用されるもの、医薬品、化粧品等の「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」が適用されるものを除きます。
例えば、洗浄剤であれば汚れをよく落とすため、繊維製品であれば繊維の着色や加工のためなど、目的や性質に応じて、酸、アルカリ、有機溶剤等様々な化学物質が家庭用品には使用されています。しかし、場合により、これらの化学物質による健康被害が生じることがあります。
家庭用品に含まれる化学物質による健康被害の多くは、家庭用品を正しく使用することで未然に防ぐことができます。まず、製品の説明書や注意書きを読み、家庭用品に含まれる化学物質の性質や種類に応じ、正しく使用しましょう。
広島市衛生研究所では、広島市保健所からの依頼により「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」に基づき、繊維製品中のアゾ化合物及びホルムデヒドについて試験検査を行っています。
平成31年度から令和5年度までの5年間で、113検体の繊維製品について検査を行いましたが、全て基準に適合していました。
アゾ化合物は世界中で広く使用されており、繊維製品、革製品の染色に用いられています。しかし、これらアゾ染料の一部は、皮膚表面や腸内細菌、肝臓等で還元分解され、発がん性又はそのおそれが指摘されている特定芳香族アミン(※2)を生成する可能性があります。
(※2)芳香族第一アミンの中には人への発がん性又はそのおそれが指摘されるものがあり、これらを特定芳香族アミンと呼びます。「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」では24物質が特定芳香族アミンに指定されています。
ホルムアルデヒドは、繊維製品の防しわ剤・防縮剤として用いられますが、プラスチックや接着剤の原料等、様々な製品に含まれています。
高濃度のホルムアルデヒドは、眼や鼻、呼吸器などに刺激を与えたり、身体に接触することで皮膚炎の原因となることがあります。そのため、化学物質に対する感受性が高い乳幼児の衣類や、身体に直接、長時間接触する家庭用品には基準値が設定されています。
また、ホルムアルデヒドは、空気や水蒸気を通じて、他のものに吸着・吸収されやすい性質があるため、製品完成後にホルムアルデヒドが含有されていなくても、倉庫等での保管中、店頭での販売中に他の製品や環境中から、繊維製品にホルムアデヒドが移る(移染)ことがあります。
特に、乳幼児用製品は影響が大きいので注意が必要です。製品ごとに袋に入れて販売されていますので、袋から取り出さないように気を付けましょう。
ここからは、検査方法について紹介します。
家庭用品に含まれる有害物質の検査方法は「家庭用品中の有害物質試験法」に化学物質、家庭用品の種類ごとに示されています。
1.まず、検査する繊維製品を色、材質別に分けます。
(色別に分けたところ)
2.分別した部分を細かく裁断し、反応容器に量り取り、薬品で処理し、アゾ化合物から特定芳香族アミン類を生成させます。
(色別に量り取る)
(薬品を加え、特定芳香族アミン類を生成)
3.カラムに負荷し、溶剤で特定芳香族アミン類を溶出させます。得られた溶液を濃縮した後、ガスクロマトグラフ-質量分析装置で分析します。
(特定芳香族アミン類を溶剤で溶出)
(ガスクロマトグラフ-質量分析装置)
4.得られたクロマトグラムより、特定芳香族アミン類の検出、定量を行います。
以上の操作を行い、アゾ化合物の検査を行っています。
1.まずは、繊維製品の身体と接触する部分を細かく裁断し、フラスコに正確に量り取ります。
2.精製水を正確に加え、密栓をし、40℃で1時間抽出します。
3.この液をろ過し、試験溶液とします。
4.試験溶液に試薬を加え反応させ、分光光度計で測定します(※3)。
(※3)ホルムアルデヒドが含まれる場合、試験溶液は試薬と反応して黄色く着色します。この着色の強さを分光光度計で測定しています。
現在、アゾ化合物、ホルムアルデヒドを含め21種類の化学物質が「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」で規制されています。有害物質を含有する家庭用品の規制基準については以下のリンク先をご覧ください。