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眺望景観保全・形成の考え方
1 原爆ドーム及び平和記念公園周辺の景観誘導の経緯
本市では、昭和56年3月に「広島市都市美計画」を策定し、良好な景観形成に向けた施策展開を早くから進め、平和記念公園及びその周辺の区域については、平成7年9月の原爆ドームの世界遺産への推薦に当たり、「原爆ドーム及び平和記念公園周辺建築物等美観形成要綱」(以下「美観形成要綱」という。)を策定するなど、世界遺産の周辺にふさわしい景観の形成に取り組んできました。
平成18年3月に策定した「平和記念施設保存・整備方針」の中で、「平和記念公園から見た原爆ドームの背景について、世界遺産にふさわしい景観を誘導する」ことを平和記念公園周辺の民有地を含む空間整備の基本方針と定め、同年11月、美観形成要綱を改正し、これまでの形態意匠に加えて建築物等の高さ制限を設けました。
平成24年2月以降は、様々なテーマで景観シンポジウムを開催し、建物の形態や意匠、高さなどが調和したまちのあり様などについて、市民・事業者・行政による議論を進め、平成26年7月には、景観形成の方針や形態・色彩の具体的な基準を定めた「広島市景観計画」を策定し、原爆ドーム及び平和記念公園周辺地区については、景観計画重点地区として特に厳しい基準を定めています。さらに、同地区においては、その他にも、「景観法に基づく届出等に係る取扱い要綱」により建築物等の高さの基準も設け、良好な景観の形成に取り組んできました。
また、平成28年5月の米国大統領訪問などにより、平和記念公園から原爆ドームを望む眺望景観が全世界に発信され、この眺望景観を大切にする必要性が国内外の多くの人に改めて認識されたものと考えています。
2 眺望景観保全・形成の背景(南北軸線上の眺望景観)
原爆ドームを含む平和記念公園は、核兵器廃絶と世界恒久平和を祈念する場、被爆の惨禍を後世に伝える場、平和を学び・考え・語り合う場、人々が集い、憩う場としての役割を有しています。
この平和記念公園は、昭和24年の広島平和記念都市建設法の策定に伴い、平和記念施設事業として記念公園が整備されることとなり、協議設計の公募により入選した丹下健三氏らによる作品に基づき、昭和29年に整備されました。当時の設計コンセプトの柱として、平和記念資料館本館、原爆死没者慰霊碑及び原爆ドームが東西に走る平和大通りに直交する南北線上に配置されました。
この南北軸線上の眺望景観は、平成19年2月に平和記念公園が国の名勝に指定された際、『平和大通りから平和記念資料館のピロティと原爆死没者慰霊碑のアーチを経て原爆ドームへと延びる中軸線上の通視は、原爆死没者の慰霊と世界恒久平和への願いを確実に表現するものであり、視覚と慰霊の行為を関係づけようとする丹下氏の優れた空間意匠及び構成が読み取れる』ものとしてその価値が評価されています。
なお、南北軸線上の眺望景観においては、原爆ドームを望む代表的なポイントとして、平和記念資料館本館下を視点場としています。
視点場と南北軸
3 眺望景観保全・形成の目的(目指すべき姿の実現)
原爆ドーム及び平和記念公園周辺における良好な景観形成に努めることは、平和に関する取組を推進するとともに、原爆ドーム及び平和記念公園の役割をより確かなものとし、平和のメッセージを全世界に発信していくための重要課題です。
中でも、視点場からの南北軸線上の眺望景観は、平和都市広島を象徴する景観として特に重要な役割を担っており、原爆ドームの背景として大切にすべき範囲において、建築物等の景観を阻害するものが何も見えないような環境を目指し、その実現に向けた景観づくりを進めます。
なお、この目指すべき姿の実現に当たっては、建築物等の高さの最高限度の基準を設けるとともに、平和記念公園内の植栽による背後の建築物等の遮蔽効果を考慮し、良好な景観の保全・形成を図ることとしています。
目指すべき姿
(南北軸線上の眺望景観の原爆ドームの背景として大切にすべき範囲内において、
建築物等が何も見えない姿。植栽により一部の建築物等を遮蔽したもの。)
原爆ドームの背景として大切にすべき範囲
(視点場を起点とし、南北軸線を中心とした17度の幅を原爆ドームの背景として大切にすべき範囲とします。)
4 眺望景観保全・形成の範囲
⑴ 原爆ドーム北側眺望景観保全エリア(重複する景観計画重点地区と一般区域)
建築物や工作物の高さ制限する範囲を原爆ドーム北側眺望景観保全エリアとし、高さの最高限度の基準や良好な景観の形成のための基準を設定します。
同エリアは、景観計画重点地区である、「原爆ドーム及び平和記念公園周辺地区(A~C地区)」、「不動院周辺地区」、「広島城・中央公園地区」、「リバーフロント・シーフロント地区」及び「一般区域」と重複しています。
原爆ドーム北側眺望景観保全エリア
⑵ 原爆ドームの背景となる阿武山
原爆ドーム北側眺望景観保全エリアのさらに北に位置する阿武山(安佐南区八木町と安佐北区安佐町筒瀬にまたがる山)は、視点場から約12kmに位置し、その山頂付近は、平和記念資料館本館下の視点場から原爆ドームを望んだ際に、原爆ドームの背景となります。
原爆ドームの背景となる阿武山では、原爆ドームの背景として視認できる、目指すべき姿に影響を及ぼす建築物や工作物の建設、照明装置の設置が制限されます。
目指すべき姿
阿武山の位置図
※阿武山のうち、標高230mを超える範囲(鳥越峠より南西の権現山の範囲を除く。)を、本基準における阿武山の範囲(眺望景観保全・形成のための範囲)に設定しています。