本文
2024年3月27日「市政車座談義」の開催結果
概要
「農林水産業の新たな担い手の確保について」をテーマに、農林水産業に従事し、先進的な取組を行っている方や地域の活性化に取り組んでおられる団体の方々に集まっていただき、市政車座談義を開催しました。
市長は、「人々の食だけでなく、我々が住んでいる地域コミュニティそのものを根底から支えている農林水産業という産業を、このまちで、この地域で育てられるように、あるいは長続きするように、今までやっていることプラス何が必要か、そして、それに沿う国の政策をしっかり活用して生かすようにする、そんな思いでやっていきたい。」と述べ、参加者と積極的な意見交換を行いました。
結果
1 日時
令和6年(2024年)3月27日(水曜日)13時30分~15時30分
2 開催場所
広島大学東千田キャンパス 総合校舎L棟 SENDALAB(センダラボ)
3 参加者
8名(※敬称略)
- 広島修道大学(商学部) 学長(教授) 矢野 泉(やの いずみ) ※進行役
- 福田農園 代表 福田 卓己(ふくだ たくみ)
- 半林半X移住者支援事業 第1期生 奥村 明尚(おくむら あきひさ)
- 向井水産 向井 一宏(むかい かずひろ)
- 中池農園 代表 中池 哲平(なかいけ てっぺい)
- アグリ アシストとも 代表 西本 正憲(にしもと まさのり)
- アグリ アシストとも 事務局 上垣内 保之(うえごうち やすゆき)
- アグリ アシストとも 事務局 山内 美穂(やまうち みほ)
4 テーマ
農林水産業の新たな担い手の確保について
5 傍聴者
6名
6 発言内容
政策企画課長
それでは時間になりましたので、ただ今から「市政車座談義」を開催いたします。
皆様方には、御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
私は、本日の司会を務めさせていただきます広島市企画総務局企画調整部政策企画課長の戸政と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
本日は「農林水産業の新たな担い手の確保について」というテーマで、農林水産業に従事しておられる方々や、農業等を通じて地域の活性化に取り組んでおられる団体の方々と市長とで意見交換を行っていただきます。
お手元に本日の次第、配席図、また、意見交換の際に御紹介いただく各参加者の活動について5種類の資料をお配りしていますので、御確認いただければと思います。
資料はよろしいでしょうか。それでは、開会に当たりまして、市長から一言御挨拶を申し上げます。
市長
本日はお忙しい中、市政車座談義に参加いただき、ありがとうございます。皆様方には、本市の農業、林業、あるいは水産業の最前線で御活躍いただいており、感謝申し上げます。
本市は御存知のように、大都市という側面をもちながら、豊かな自然に囲まれた都市でありまして、この自然を生かして、新鮮な農林水産物の供給が実際行われていますが、今後もこれが続くようにしていくという、このいい状態を続けたいなと思い、また実現していこうとしたときには、この業そのものがしっかりとその役割を果たせるようにしないといけない、そしてそのことが市民全体が安全・安心な生活ができる、こういう関係にあると思います。そして、農林水産業が直接的に人々の食という部分を支えるだけでなく、様々な産業活動を行っていく上で、あるいは、生態系の維持や、景観の確保、文化の継承、あるいは災害の備え等々といった様々な意味で、我々が住んでいる地域コミュニティそのものを根底から支えている面もあり、ある意味で多面的な機能、あるいは役割をもった産業という捉え方ができると思います。それがどうなっているか、少子・高齢化の中でこれへの参加者は間違いなく減っている、これは作業そのものが大変だということよりは、ひょっとするとこういった産業に従事することが、自らの生計の基盤を考えたときに十分なのだろうかと計算などをしたときになかなか踏み切れない、実際大変な問題があるということで、参加できないのではないかという面もあると思います。
実際に統計を見てまいりますと、本市の第一次産業の従事者数は2017年度、平成29年度に6,300人おられましたが、5年後の令和4年度、2022年度には5,700人と、5年間で1割減少すると、こういう状況です。これに伴い、生産力の縮小、更には農地などについては荒廃地がどんどん増えていくということ、そして先ほど言った様々な面での悪影響が顕在化する、こういう悪循環に陥っているということが言えると思います。これが進むと様々な面で機能不全が起こる、これをとにかく阻止しないといけない、歯止めをかけないといけないと考えています。
そうした中でこれを市単独でやるかというと、なかなか事は大変です。ただ、朗報は、国の方で、今までの国策、農業関係の政策を見直さないといけないということがようやく明らかになってきてまいりました。と言いますのは、昨今の直接的には不安定な国際情勢を受け、食料安全保障、いわゆる開かれたグローバルな貿易体系にしておけば、農産物は一番安くできるところを購入してやっていけばいいのではないかと、いわば経済原理を信じてやっていましたが、紛争が起こるとそうはいかないということが目の前にやってまいりまして、国内の農業をもう少し守る、ただ、今までの農業が保護と規制ということだったのを、1990年代に様々な産業の規制を緩和して競争させて生産性を高めるという目標の下に、海外とのお付き合いも一生懸命やるという大政策転換をした、それで何とかきていますから、それを根源的に戻すということはできないとすると、微調整しながらということで、例えば緊急時の食料安全保障という観点から今までのやり方をどこか見直していかないといけない、そういうプロセスに入っている。そうした中で農地・担い手の確保、食料自給率の維持向上をどうすれば図られるかということ、しかもそれが不測の事態が起こった時ではなくて、少し前から、平常時においても農業を維持するという考え方の下に農業に関する基本的な法律を変えていくという検討が進んでいると、そういう状況も聞いています。
そうした中で本市を見てまいりますと、実は、担い手の育成・支援であるとか、農地の利活用、販路の拡大、この三つを掲げて、農業政策について私なりに今までの問題に先に気づいて対応してきていたという自負があります。ただ、これを総合的に展開していくにはまだまだ力不足でありまして、国のそういったことをうまく利用してやることが理想の効果をもたらすと思いますが、それをやるに当たり、皆様方の現状、どんな取組でどんな問題があるかを聞かせていただき、それら問題意識を共有し、それに対する今の対策の事実評価と国の政策をうまくcompromise(コンプロマイズ)して、それを生かしていくといった展開をしたいと思っておりますので、この時間の中でそういったことが分かる御発言・御意見を頂戴したいと考えています。どうかよろしくお願いいたします。以上です。
政策企画課長
ありがとうございました。
それでは続いて、本日御参加の皆様を御紹介します。お名前をお呼びしますので、それぞれ一言ずつ簡単に御挨拶をお願いできればと思います。
まず、本日のコーディネーターを務めていただきます、広島修道大学学長、商学部教授の矢野泉先生です。
矢野氏(コーディネーター)
皆様こんにちは。矢野でございます。広島修道大学の学長という職を今務めておりますが、元々は商学部で流通論という科目を担当しております。商学部ですが、研究の領域は農産物・水産物の流通を専門に研究しております。いろいろ市の農業政策にも関わらせていただいております。こういった場で皆様とお会いして意見交換できるのを大変楽しみに参りました。よろしくお願いいたします。
政策企画課長
次に、福田農園、代表の福田卓己様です。
福田氏
白木町から参りました、広島市農業振興協議会会長もさせていただいております、福田と申します。農業は始めて20年ぐらいになります。施設栽培で軟弱野菜の小松菜、ほうれん草などを栽培しております。いろいろ、農業に対しての問題点を少しでも皆様と共有できればと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
政策企画課長
次に、半林半X移住者支援事業、第1期生の奥村明尚様です。
奥村氏
湯来町から来ました奥村といいます。「半分林業をして、半分好きな仕事をしませんか、湯来町に移住して。」という支援事業に参加しました。8年くらい経つと思います。よろしくお願いします。
政策企画課長
次に、向井水産、向井一宏様です。
向井氏
向井一宏といいます。江波の方で牡蠣の養殖業をしております。今回、水産業が僕一人ということでちょっと緊張しています。よろしくお願いします。
政策企画課長
次に、中池農園、代表の中池哲平様です。
中池氏
福田さんと同じく白木町から参りました、中池農園の中池と申します。
元々葉物野菜で農業を始めましたが、4年前から経営を転換しまして、いちごの栽培をして、今現在観光農園として経営しています。本日はどうぞよろしくお願いします。
政策企画課長
次に、協同労働団体、アグリ アシストとも、会長の西本正憲様です。
西本氏
安佐南区から参りました。西本です。農業が嫌いだった自分がアグリ アシストを作りまして、だんだん年寄りと仲良くできるこの楽しみを今感じております。今日はよろしくお願いします。
政策企画課長
次に、同じくアグリ アシストとも、事務局の上垣内保之様です。
上垣内氏
皆さんこんにちは。アグリ アシストで事務局を担当しております。
今日はいろんな問題点とか夢を語りたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
政策企画課長
次に、同じくアグリ アシストとも事務局の山内美穂様です。
山内氏
はい、こんにちは。同じく事務局の山内と申します。
私は小さな畑を借りてですね、楽しく今野菜づくりを学んでいる素人です。皆様とお話しできることを楽しみに参りました。よろしくお願いいたします。
政策企画課長
ありがとうございました。ではここから矢野先生に進行をお願いしたいと思います。先生、よろしくお願いいたします。
矢野氏(コーディネーター)
はい。よろしくお願いいたします。
広島で農林水産業に関わる者として今回この車座談議に農林水産業関連のテーマを設定いただきまして、ありがとうございました。実際に広島市で活動されている皆様方のお話を聞いて意見交換する貴重な機会になると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
ただ、終了時刻は15時30分を予定しております。短い、限られた時間ではございますが、活発な議論ができればと思っています。
本日はまずそれぞれの活動内容について御紹介いただきたいと思います。参加者の皆様がどのような取組を展開されていらっしゃるのか、この場で共有することから始めたいと思っております。またそれを踏まえて、農林水産業の新たな担い手を確保していくためにはどのような取組が考えられるのか、これを併せて意見交換をしていきたいと思います。
早速ですがそれでは、まず5組の皆様にそれぞれ5分程度、順番に従事されております業務や活動内容を紹介いただきたいと思います。
順番に福田農園の福田様から御発表をお願いいたします。
福田氏
それでは失礼いたします。広島市農業振興協議会会長の福田卓己と申します。安佐北区の白木町から参りました。
この度は、市政車座談議に出席させていただきましたこと、誠にありがとうございます。そして、松井市長におかれましては、先般2月に市長と農業者との懇談会にお越しいただきましたこと、大変うれしく思いましたし、大変勉強になりました。ありがとうございました。
それでは、始めさせていただきます。
始めに、当農園の紹介をさせていただきます。
まず、ビニールハウス13棟42aで小松菜、ほうれん草など軟弱野菜の生産・出荷をしております。そのほか、露地50aで春から秋にかけましては水稲を栽培しており、冬には裏作で小松菜を栽培し、農地の有効活用をしております。主体となる軟弱野菜の年間出荷量は、30万束、年間約60トンです。広島東部市場と全農ひろしま、その他産直市などを販路としております。
私が営農する白木町の景観は、三篠川が流れ、神ノ倉山からのパラグライダーなどがとても盛んな活気のある地域です。また荒谷山からの雲海が、大変今、若者たちに人気のスポットとなっており、そのような自然豊かで、観光資源豊富な景観の中で営農をさせていただいております。
私が農業を始めました背景を御紹介させていただきます。
大学を卒業後、一般企業に就職しまして約13年間会社員として勤めてまいりましたが、元々の夢でありました農業に挑戦したく、一念発起しまして当時の広島県農林水産局に相談したところ、研修先として安佐北区白木町の中川農園を紹介していただきました。
中川和義さんの出会いで、生涯、農業者としての決意をし、安佐南区から白木町に移住してまいりました。中川農園で実務を学ぶ中、中川和義さんから“ひろしま活力農業”経営者育成事業を紹介していただき、応募したところ、採用となり、広島市農林水産振興センターにおいて研修を1年間、現地での実地研修を含め、2年間の研修を経て35歳のときに独立し、就農し、現在に至っております。
中川和義さんとは現在も親身にしていただいておりまして、今では株式会社中川農園の役員を務めさせていただくようになり、育てていただいて大変感謝しているところです。
私の経営理念としまして、広島の食の安全を守るための安定出荷、お客様との信頼・信用を大切にということを変わらぬ理念として現在も続けております。
当農園の具体的な取組内容を御紹介しますと、耕畜連携による地域資源の有効活用の一環として、白木町の畜産農家さんの堆肥を循環活用させていただくことです。積極的な機械導入による省力化、安定出荷のための土づくり及び土壌検査の実施、新規販路の開拓、特に最近では関西方面への出荷、セブンイレブン等加工業者への販路の拡大をしております。
人材育成として広島県知事より指導農業士の認定を受けまして、新規就農者と若手農家への栽培経営指導をしております。地域との関わりとして伝統行事、草刈り、柵の設置など地域の共同作業へ積極的に参加しております。これらの写真は、導入した機械です。これが自動袋詰機で、袋詰めの効率化を実現し、こちらが6条の自動播種機です。こちらはハウスで肥料を攪拌(かくはん)し、混ぜて短時間で肥料散布できるという機械です。
地域の魅力の発信として、多様なイベントに参加しております。芸備線マルシェ、元気市、安佐北元気フェスタ、フードフェスタなど、白木町のPRと地元産品の販促をしております。こちらは芸備線マルシェで、覚えていただいておりますでしょうか、市長に一緒に写真を撮っていただきまして、大変感激いたしまして、内容も非常に有意義なイベントでございました。こういったイベントで地元の産品のPRをしております。その他地元での農業体験の受入れなども積極的に行っております。今見ていただいたように、このように農業者と市場との情報交換、そういったことも実施しております。
就農から20年経過しまして、現在も無事に経営を続けておりますが、先ほど市長の御挨拶でも御案内ありましたように、昨今のウクライナ侵攻や物価高・人件費の高騰により、同じ品目でも、就農当時と現在では収支が大きく変わってまいりました。
左側が就農当時でございます。当初は広島市の活力農業経営者育成事業では、30aのビニールハウスで年間1,000万円の売上げに対し、所得50%を目指す営農がテーマでございました。
しかし現在では収支の内容も大きく変わりまして、右図が現在の収支でございますが、所得部分が30%のような状況となっております。所得の維持のためには、おのずと小人数での売上げの向上が必要となっている次第です。
一番の大きな要因は掛かる経費に対しまして、農産物への価格転嫁が伴ってこないことです。それでも何とかやりくりして、営農は続けていますが、生活費の担保と新規品目への挑戦に対し、投資する余裕がないのが現状です。
これは私だけではなく、多くの農業者全体に起こっている深刻な問題だと感じております。日々の営農の中で私事のみならず、地域や農業を取り巻く環境改善に対し、積極的に働くことが次世代へつなぐ持続可能な農業を実現するために必要不可欠であると考えるようになりました。
私の課題は先ほど述べてきたことでありますけれども、本日の市政車座談義のテーマに掲げる担い手の問題は、今後の農地保全と産地の形成のあり方が大きな鍵となってくるのではないかと思っております。
以上で、私の自己紹介は一旦終わらせていただきますが、その先の、地域課題・担い手の問題に対して、後ほど具体的に御提案をさせていただければと思っております。
以上でございます。
矢野氏(コーディネーター)
ありがとうございました。では続きまして、半林半X移住者支援事業、第1期生の奥村様お願いします。
奥村氏
はい、奥村明尚といいます。よろしくお願いします。
僕は東広島市の高屋町出身で、広島市の都市部の方でいろいろ働いておりました。
そのあと33歳のときに、半林半X移住者支援事業の第1期生として、湯来町の水内(みのち)地区に移住しました。3年間の林業の研修を修了して、今は湯来町と近隣の市町の林業事業体の下で働きながら、自伐林業団体「KINTA MOUNTAIN」というのを作りまして、その代表として今、いろいろと動いています。なぜこの事業に参加したかというと、おばさんが民宿を湯来町でやっていて、そういう縁があって、湯来町で林業をしながら、自分のやりたい仕事ができる暮らしがしたいなと思って参加しました。
取組は、林業は、山間部での育林、保育間伐、里山整備、竹林整備などをやっております。都市部では緑地帯での危険木の伐採補助などをやっております。自伐林業団体では、自伐型の林業ができる山林を探しつつ、地域の方々の要望で危険木などの伐採や剪定を実施しております。メンバーは募集中でございます。自伐林業というのが、山にできるだけ負荷をかけないような作業道を作りながら、全体これはあくまで目安ですけど、造林地の1~3割程度を目安に少しずつ木を切って搬出していく小規模の林業のことです。他の仕事は、今は、キャンプ用の薪や薪割り台等の制作と納品、米づくりなどをやっています。
今後取り組もうと考えていることは、引き続き定住へ向けて、湯来町で自伐林業できるフィールドを探す活動、現在はCtoCで行える作業として、土地の所有者さんの依頼を実施しています。事業地で活動するためには、何人もの土地の所有者の許可が必要であり、たくさんの所有者さんと会って地籍調査や測量、踏査を行う必要があり、活動ができるようになった場合でも、ほかの仕事との時間調整やなど採算のとれる計画など、いろいろ検討する必要はあるので、頑張っていきます。
「この人に荒れた山の手入れをしてもらいたい」と思ってもらえるような仕事をできるようにやっていきたいです。
以上、よろしくお願いします。
矢野氏(コーディネーター)
はい、ありがとうございました。続きまして、向井水産、向井様お願いいたします。
向井氏
僕のプロフィール、皆さん表紙を作っていて、僕はしていなくて、失敗したなと思っています。
僕は、近畿大学産業理工学部で経営を習っていました。その後、父親が代表をしている向井水産に就業しています。その後に潰瘍性大腸炎という難病を発症し、手術を経験し、ブルーカラーとして働けるのかっていうことに疑問を覚えて、県立広島大学大学院経営管理研究科に2年前に入学しまして、この間卒業修了したという経緯があります。
就業のきっかけなんですけど、一番大きかったとすれば就活に失敗したことです。僕が三代目になる予定なんですが、向井水産は、向井吾郎という祖父が作った、牡蠣養殖の会社です。創業理由がちょっとおもしろくて、冬しっかり稼げば夏は遊べるというふうなことだったので、おじいさんは始めたっていうことがあります。今は代表が二代目の父親なんですけど、67歳で現役バリバリに働いていて、無敵なんじゃないかなと思っています。
ここからが現在の取組なんですが、環境問題みたいなところを結構大きく、牡蠣養殖業界では言われてまして、そこでこれは大学の研究の一環でやったのですが、高耐久の筏にしたら環境負荷が減って、かつ経済合理性も高まるのではないかというので、ちょっと取り組んでみました。このような感じで試験的に運用してみて、牡蠣の成長と筏の耐久性を見ていく状況です。今のところ問題なく牡蠣も成長し、筏も耐久性を保ったまま、ごみが散乱しないまま、運用が行われています。収穫はもうちょっと先になって、来年の3月あたりかなという形になっています。こんな感じで生産をしています。この場合は、通常の筏と高耐久筏の、通常の価格で比較して計算したんですが、通常の価格と経済合理性がなかったっていう結果になってしまって、ちょっと自走は難しいのかなという形でした。今回、補助金が8割出たのですが、その8割の補助金が出た状態でやっと15年後ぐらいに経済合理性があるという結果になっています。補助金なしだと、この素材だと難しいという形になっています。しかし、これぐらい経済合理性があったとしても、在庫は残ってしまって、営業しないと売れない状況にこの素材はなっていたので、経済合理性ではなく心理的部分がやっぱり大きく影響している。素材を変えるといのは心理的抵抗があるのだなということを実感した結果になっています。
今後取り組もうと思っているところなんですけど、ちょっと経営としましては、生産量を増やせばいけるんじゃないか、儲かるんじゃないかと結構いろんなとこから言われるんですが、需要と供給の問題で、おそらく生産量を増やしたところで、利益というのは頭打ちになっていって、どこかしらから下がっていくものだと僕は思っているので、ちょっとそこら辺の生産量からの脱却というのは一つ、資源も枯渇していきますし、ここら辺の見直しというのは必要なのではないかと思っています。活動といたしましては、もうちょっと広島県全体の牡蠣業界を構想してみようかなというふうに思っていて、技術とか数字とかで解決できない感情とかと向き合わないといけないのかなというのが今思っているところです。
もう1つが牡蠣生産者ならではの地域貢献というので、いろんな学校の人たちに連携して、牡蠣の養殖とはこうですよというプログラムを実施していけないかなとは考えています。
もう1件は、地域イベントへの参加で、もうちょっと牡蠣を普及させていければなと思っているというのが現状です。
私は広島県立大学でMBAを取得したのですが、結局感情と向き合わないとだめだなと感じたので、今年から京都芸術大学で芸術を学ぼうと思って、もう入学が決定し4月から京都芸術大学の大学院で、学際デザインを学ぶ予定になっております。以上です。
矢野氏(コーディネーター)
はい、ありがとうございました。続きまして、中池農園の中池様お願いします。
中池氏
実は、カンペを用意していたのですが、今手元になく筋が通った話ができるか大変不安ではございますが、よろしくお願いします。
中池哲平です。現在37歳です。1987年2月に農家の次男として誕生、福田さんと同じく中川農園で1年半研修をして、その後、就農に至っております。当初は、6代目の代表となり葉物野菜の生産をしていたのですが、2020年からいちごの栽培の取組を始めて、今年で4年目、いちご栽培4年生です。もともと葉物野菜だったのですが、現在は葉物野菜は作っておらず、いちごとぶどうの栽培に取り組み始めているところです。
続きまして、就農のきっかけは、子供の頃から祖父が農業する背中を見て育ち、私も祖父のような生き方がしたいという思いで、就農を決意しております。今考えると、祖父からお小遣いをもらいながらの手伝いということで、お小遣い欲しさで手伝っていた部分もあるのかなと思っています。
現在の取組なんですが、生産品目は先ほども申したとおり、いちご栽培とぶどうは育成中ということで、去年からアールスメロンの栽培に取り組んでおります。
事業内容ですが、農業生産部門、観光農園部門、キッチンカー部門の大きく三つに分けて経営をしています。その中のキッチンカー部門は、市のチャレンジ応援金を活用して、キッチンカーを購入させていただき、ロスいちごが一定量出る中で、ロスいちごを使ったデザートを農園やイベント等に出店して販売しています。
続きまして、農業生産部門なんですが、3棟のビニールハウスで、3,800平方メートルで21,000株のいちごを栽培しております。新しい施設ではあるんですけど、暖房機や循環扇、二酸化炭素発生機、この二酸化炭素発生機というのは、野菜が成長する上で二酸化炭素は必要というところなんですけど、そういう二酸化炭素を変化する機器やカーテン、カーテンは、光の調整、保温二つを兼ね備えているのですが、前置きが長くなったのですが、こういうことを全て一つの機械に統合して、その統合した機械が各機械に指示を出す制御盤を使って栽培をしています。結果的にちぐはぐにならない、指示の一本化ができ、さらに、常にクラウド上にデータが保存されるので、過去の状況を確認しながら今どう栽培をしたらいいかを常に更新しながら栽培をしているというところです。オリジナルパッケージで量販店にいちごを卸し、顧客に観光農園の周知もしています。下にも写真を載せているのですが、うちの観光農園の主要なターゲットとなる消費者はファミリー層なんですが、ファミリー層にアピールするに当たって、デザイン構成を考えてパッケージを作っています。一番最後のチェックになりますが、空調服を支給し、労働環境の最適化。これは、どうしてもビニールハウス内での作業になるので、労働者の負担を考え、スタッフ全員に空調服を支給し、少しでも楽に作業ができるように取り組んでおります。
続きまして、観光農園部門ですね、うちの経営理念として、「農業を通じた感動産業の創出」というところでやっております。昨年度の集客は約16,000人、その前の18,000人を目標にやってきたところなんですが、去年のゴールデンウィーク以降、コロナが収束し、県外に出かける方が増えたということで、2,000人の減を生んでいると思っています。
次のチェックにいきまして、滞在環境を意識し、多目的トイレ付きの水栓トイレを整備。これも、市の補助金を活用したり、県の観光連盟の補助金を活用して整備しております。
次のチェック、公式LINEを活用し、リピーターの確保(2024年1月23日現在、登録者12,412人)。直接携帯を鳴らす手段として公式LINEを使って、情報を発信しています。観光農園の経営をしているのですが、どうしてもいちごが余ったときに、こうした公式LINEが役に立っていて、ちょっと余ったから来ない?といった連絡を流したり、うちは市内から40分圏内の立地にあるので、午後から公式LINEで促しても、割とお客さんには来ていただきやすいのかなと思っています。
続きまして、キッチンカー部門については、先ほども申し上げたとおり、ロスいちごを活用して、デザートを販売しております。オフシーズンはイベントへの出店を行い、周知も含めて運営しているところです。
最後に、中池農園の向かうところなんですが、いちご栽培を核として、地域を巻き込んだ観光地にというところで考えております、将来的にはぶどう園(約40a)も併設し、年間を通して来客のある観光地を目指そうとしております。さらに、飲食ブースの設置や、加工品の生産ほかアウトドア事業の開始など多角化も検討しております。この左下の写真が、ロスいちごを活用したいちごジャム、右側は、市議の安佐北区選出の山下議員と割と懇意にしてもらっていて、キャリア教育の一環として子供に来てもらって、生産から販売までをやっていただく取組を今年度行っております。以上です。
矢野氏(コーディネーター)
ありがとうございました。続いてアグリ アシストともはどなたか代表でお願いします。
西本氏
農業の困りごとは私らにということで。農業ができない人間が最近はようやく農業が分かってきたアグリアシストともです。
私たちの地域は広島市安佐南区、元沼田町と言っていました。4号トンネルが開通し、アストラムラインが開通し、トンネルができたおかげでこころという大きな団地ができました。
それにアジア大会もありました。その当時はまだ田舎だなって思っていたんですが、トンネルとアストラムラインがついたおかげで、地主さんが二分されたと思うんですよ。土地が売れてホクホクした地主さん、山が残って泣いている地主さん、土地が残りましたということで、土地が残った人を少しでも助けようかなということで始めたのが「アグリアシストとも」です。
活動のきっかけですけど、高齢者が増えて後継者がいないということもあります。我々の年代は農業であれば農業を継ぐというのが、子供の頃から頭の中にありました。現在の人はそれがないと思いますけれども、その関係と先ほど言いました、土地が売れて田畑が無くなった人は喜んでいますけど、残った人は、まちがきれいになって荒れた土地があると、非常に情けないと、近所がきれいにしていると気になった方を何とか助けようと始めました。
農機具の修理をするところもJA広島市さんにも、昔は修理工場もあったんですけど、遠くの方に移転され、農業の機械を直すのが非常に大変になりました。農業機械というのは使う時期が同時です。ということで、業者もなかなか来てくれないというのもあります。それから、農業を個人で請け負って、稲刈りから何からする人もいましたが、これも高齢化と大きな機械を買っても耕地面積が非常に狭いということで、業務の委託を受ける人も小さい田んぼは受けないということがあります。それを何とかしようということで、我々が活動を始めたということです。
メンバー14人で何とかしようとチームを作りました。そのときに、広島市の協同労働という、非常に事業を支援してくれる制度があると教えていただいて、協力いただいて、この団体を発足することができました。現在は17名、女性も2名で活動しています。14人でスタートしたわけですが、この地区が六つに分かれてそれぞれ地域がございます。ここにそれぞれメンバーを配置しています。その地域の細かい困りごとを集約しようとメンバーが担当を決めて活動しています。これにはJA伴支店の職員の方も一軒一軒こまめに廻っておられ、のときに困りごとのアンケートを集めてくださいまして、だんだんと情報が集まってくるようになっています。
アグリ アシストとも一番大事にていることは、地域まるごとということです。もちろん町内会や行政、安佐南区の出張所や沼田公民館、こういうところを利用して、広島市農協の会場を借りての打ち合わせ、会議、これも毎月やってまいりました。それから地域の諸団体、たくさん書いてありますけれども、とにかく町内会、伴・大塚コミュニテイ全ての我々の地区にある施設に、こういう活動をしていますというのをPRして、仲間にしようと活動をしています。メンバーがずいぶんと回ってくれまして、こういった団体が協力してくれる団体にようやく仕上がりました。特に、町内会で我々アグリのチラシを回覧の中に入れていただいて、個々に回るようにして、要するに皆様アグリを知ってもらおうという活動をして広めていきました。
主な取組としては、皆さん御存知の草刈り、それから除草剤を撒くとか芝刈り、植木の撤去・剪定、いのししの柵づくりや田んぼの水漏れの対応、農業に関すること、それ以外にも皆さんがいずれお世話になる西風館の草刈りをさせていただいています。それと地域にあます火山館(ひやまかん)、(沼田)出張所の草刈りもアグリアシストともを信頼いただき発注を頂いています。また農機具の修理もやっています。要するに田んぼが無くなったりして機械が要らなくなった方の機械の処分、それからまだ使える機械は必要な方に安くお譲りする仲介をするとか、農機具に関しても我々は活動をしています。写真に映っています、皆さん御存知ないかもしれませんが、田んぼの田植えの前の代掻(しろか)き、それから右は地域の方ではないんですけど地元に土地を借りて、さつまいもをたくさん植えて子供たちにも提供される方の畑づくり、さつまいもが植えられる準備をしてあげることとか、山の木が田んぼに来るということで山の木を切ったり、川の草刈り、こんなことをやっています。
それから、大学から学生に体験させてくれという希望がありまして、もちろん我々のところに来て、研修というか実践していただくと単位が取れるという素晴らしいことをやっていただきまして、大学生を受け入れたり、JA伴支店の担当者が、農作物の担当者の方がいらっしゃるんですけど、この人たちの協力を得て野菜づくりをやろうということで、始めたこともあります。今は、農業の体験、下にありますさつまいもの植え付けと収穫、それから最近全部で4回行いましたけど、野菜づくりカフェ、女性が映っていますがこれが担当でですね、野菜を美味しく作って食べようという仲間を集めてくれまして現在4回行っています。4回目のときは50名近くが参加して、写真のように一生懸命に講義を聞いて、実践を今後やっていこうということで活動しています。農業の作業ばかりではなしに、地域において、我が地区が一つのモデルになるような、皆で野菜を作って食べようとか、こういうことも今後広げていきたいと考えています。
ということで現在は、1月2月は寒い時期なので休んでいますが、またこれから活動していき、困っている方を助けていきたいということで、頑張っていきたいと思っています。
矢野氏(コーディネーター)
ありがとうございました。
少し時間が押していますので、私の感想は短く。皆さんの話をいろいろお伺いして、共通点として感じたのは、皆さん活動や経営の持続性というものをかなり意識されているということです。経営を持続させるためには効率化とかイノベーション、採算性というものを常に意識されているということが、これがまず印象に残った一点目です。
もう一点共通に感じましたのは、人の思いや、地域を想定しながら活動されているというところで、こういったところをですね、私自身、地方ならではの強みだと思っています。単に農業といったものが、経営優先に走らずに、人や地域を巻き込みながら形づくっていくことができるというところを、皆さんのお話から感じました。特に、最後に御紹介いただいたアグリ アシストともさんは、活動そのものが農業を通じて地域を支えられている取組ということで、皆さん全て人や地域と対峙されて、やられているんだなという感じがしました。これはですね、この後、担い手をどうやって呼び込むかというところの課題にもつながっていくのではないかと考えておりますので、またそれについては皆様のお考えを聞かせていただければと思います。続けて市長から皆さんの発言を受けてコメントをいただければと思います。よろしくお願いします。
市長
ありがとうございました。
皆さんそれぞれの農林水産にわたる事業を地域密着型でやっておられるという話を聞かせていただきましてありがとうございました。
ただ、こういった事業をやりながら、どなたも頭の片隅か全面で、どれくらい続けられるか、どうやって続けていくか、続けるということについての問題意識を持っていらっしゃるのではないかと感じながら聞かせていただきました。農林水産業という産業は我々を取り囲む自然環境というものに直接手をかけて、それとの関係で業を営む、利活用しながら業を営むということで、製造業などと違った形態の産業でありまして、人類がこの世に生まれて以来、この業を抜きに人類は生きてきていないわけですね。ですから、マクロで言うと必ずあるんです。ただ、それに携わる方が、安んじてずっと長くできる環境があったかというと、地球全体で見ると農業の適地が、次の製造業やサービス業に変わって適地が無くなったんですね。他の未開の地に行ってそこでという。多分今、地球の多くのところに人間が手を掛けてしまって、ある意味未開の地が無くなっているイメージだと、日本の中では特にそうなんですね。そして手を掛けたところを放置して、生産物を他の大陸、他の国から頂いて生きている中で、ずっと自分が住んでいる環境でもう少し大事にしながらやる方法はないかと、それを組織的にやれないのが、今の資本主義経済の中で、効率性とか採算性を求めて産業がシフトしてしまって、ある意味そういった物差しからいって非効率な産業についてトータルで手を掛けないようにしている、そこに問題があるということですね。私自身は、皆さんから頂く税金を個々人では利益追求するのに相応しくないかもしれない産業にもう一度投入して、皆でそれが維持できる仕掛けをもう少し考えてもいいのではないかと思っています。国全体でできないにしても地域を限定して、このゾーンの中では地域問題を解決する一助としてそういったものに取り組み、そしてそれに携わる方がきちんと生活できるような仕掛けを作るために何がいるかと、お困りごとの中で何がいるかといったことを言っていただき、それを実現する方途を皆で考えたいなと、こういった思いでいます。
例えば6年度からは、新たな仕掛けを試そうと思っていまして、名前は「中山間地域好循環創出支援事業」といいますけれども、これはモデル事業としてやってみようと思うのですが、就農者の方が作る作物をこれだけの値段で売りますと約束しますよね、ですが市場価格の変動で約束の価格よりも安く売らざるを得なくなったときに、それにかけたコストとの採算が取れないですよね。誰が保証してくれるか、今は全部自前ですね。この約束を行政として認知しておいて、その幅を縮めるための支援をさせていただくと。昔、食管会計(食糧管理特別会計)というものがあったのですが、これのイメージは、お米を作るのに売るときは1キロ8千円で売るのに、生産するのに1万円かかったとすると、2千円分は就農者に出すと、食管会計はいつも赤字だったから当たり前なんですね。そういう意味で就農者を助ける制度もありました。ただこれは経済が発展していく中でそれをやり続けると財政が破綻するからということでやめました。そういった中で農業政策を変えてもっと競争して効率的なものにしなさいと。良いものを作って高く売ってというふうに変えてきて、とどのつまりがここなんですね。もう少し地域ごとに工夫していいのではないかと。
それから、就農などをするときに、鳥獣被害、野生が荒らすと。これを作る方そのものの損害というか、その人がまずそういったものを退治することを原則にしながら、それを退治するための縄、道具、猟銃の資格取得、縁辺のところを少し支援してあげているのですけれども、担う方の意欲が失せてしまうとできないですよね。鳥獣被害というものは被害じゃなくて、土砂災害みたいな災害と見立てると、そういったものを個人ではなくて人類として鳥獣を寄せ付けるようにしてしまったのだから、それをもう少し行政が主体となって対処してあげると。それをもう少ししてあげられないだろうかということを考えながらやっていました。そのためには、個々ではなくて地域の方々と連携して、まちづくりの一環として合意してそういったことをやろうと、まち全体でそういった仕掛けにしたいのだけれど、市役所がそれを支援してくれないかと。こういった形での対話をする中でまちづくりの一環としてお金を出すと。そのやり方に国に注目してもらって国からの支援を引き出すといった循環ができないかということを思いながらやっています。
そして、協同労働もその発想で少し動き始めました。それは専業の方とは違った枠組みなんですけれども、そういった方々を見ながら、自分たちができることは限られてはいるけれど助けなければいけないと、いろいろな能力をもった方々が集まって、うまく、儲け話ではないけれども、一定の収入を得ながら良いことをやるグループとして、いろいろなことにチャレンジして地域の皆さんとどういった対応をしたらよいかということを話し合って、議論しながら物事をやっていくという仕掛けですから、個々で農林水産業をやっておられる方で、ちょっと困りごとがあってなかなか人手を頼んでもすぐに来ないときに協同労働のグループにお願いして年間ずっとではないけれども、助けてくれないかということをやる環境を作っていただくと比較的安価にやっていただけるはずです。つまり、利益目的ではないんですね。そして、その中でそういった働き方をすることで満足を感じる方もいますから、決して多く払わなくてもできるということになっているんですね。そういった場を通じて可能性を追求していただくということがあるかなと思っています。
引き続き、今申し上げたような問題意識を持っていますので、個々の課題なり問題を提示していただきたいと思います。以上です。
矢野氏(コーディネーター)
ありがとうございます。
今の市長のコメントにもありましたようにここからは、特に今回のテーマであります、新たな担い手を呼び込むために、先ほど市長からも新たな施策を考えられているという話がありましたが、地域との関わりの中でどういったことが必要か、あるいは労働の環境としてどういったことが必要か、特に行政にこういった支援があればというような御意見があれば、具体的にいろいろ出していただければと思っております。
先ほど発表の中で課題を後ほどというふうに言っていただきました。一人一人にまたお聞きしたいと思いますけれども、福田さんからまず課題やこれからの取組についてお話しいただいてよろしいでしょうか。スライドを御用意いただいているということで、続きのスライドも表示していただければと思います。よろしくお願いいたします。
福田氏
今回の担い手の問題として、いろいろ私なりに考えてまいりました。これは、私の地元の白木町の有志、皆の意見も多数含まれております。
農園の課題は先ほど申し上げましたとおり、所得、労働力の確保、省力化、異常気象への対応、地域との関わり、これは個人の問題でありまして、それぞれ皆、どこの農家もですね、思い、工夫を凝らして頑張っています。それに伴って、地域の課題というのが、下の枠表にありますけれども、農地保全が全ていろいろなことに関わっている問題として、私ども白木町では、こういう農地保全から、所得、担い手、農地利用、鳥獣、地域、連携、こういったことが全て大元になっていく今後の課題になるのではないかなと思っております。
そこをあえてですね、今回、担い手の問題として、議題というかテーマがフォーカスされておりますので、そこを御説明させていただければと思います。
私、広島市の食育委員会に参加させていただいておりますので、そういった食の教育とか、学校教育の現場から農業をどのように変えていけるのかっていうことを考えております。
端的に申し上げます。
まず、学校教育の観点から申し上げます。
学校給食における地元の農畜産物の更なる使用率の向上。
一つ、学校教育の現場に農業者を講師として活用する。学校教育に農場の現状や将来的危惧、それに伴う地産地消の重要性などを組み込み、生徒児童により一層の理解醸成を図る。例えば、農業体験・インターンシップの展開など、学校の授業カリキュラムとして積極的に取り入れていく。
一つ、農業分野、新規就農者を増やす取組として、例えば、高等教育において最近一部取り組まれていると思うんですけど、未来志向型PBLというのがありまして、地域の問題解決型の実践教育、生徒に考えさせ、課題を提起し、地元の産業と共同で地域の問題を積極的に自分たちで考える力を養うという、これは私が指導農業士会で、先日、庄原実業(高等学校)に行って見させていただいて、生徒たちといろいろと交流させていただいたんですが、非常に高校生とは思えないぐらいハイレベルな地域課題、畜産の問題とか、地元の卵、そういったものをどうやったらうまく売り込んでいけるのかとか、そういうのを積極的に頑張って、チームを組んで1年生から2年生、3年生へと課題を引き継ぎ、その成果を発表し、企業と自分たちで実践してということで、大変興味深いもので、これは非常に、将来自分たちが何をこれから社会に出て問題を捉えてやっていかないといけないかということで、実践力を養う取組で大変良いことだなと思っております。
これは、農業に関わりのないところでも、やはりそういった人材というのを今後はどんどん進めていかないといけないと思います。
それに伴って、広島市の高等教育に農業科又はコースを新設しまして、都市部からでも農業を学んで、非農家からでも将来の職業の選択肢として実感できる教育課程を構築していくということは、今後、都市部から新規就農者を呼び込むという上では必要なことではないかなと私は思っております。定員人数は限られたものでも大丈夫だと思うんですけども、農業の専門を学ぼうと思うと、やっぱり農業は田舎に行って学ぶものだという先入観と言うか、そういうものがやっぱりあると思って、このコロナ禍において、ある一定の都市部の方が田舎に回帰するとか、田舎に興味を持つとか、そういった関心が高まったところがあると思うんですが、実際に、それで農業を生業として考えるかどうかということでいくと、全く別物だと思っております。
農業のファンを増やすという意味で、いろいろ農業体験やインターンシップということを申し上げましたけれども、週末だけ農業に関わりたいから週末に市民農園などを利用して楽しみに来るとか、そういったことというのはPRの上では大事なんですが、やはり基幹的農業人口を今後どう増やしていくかということに対して考えるんであれば、全く違った、教育の観点から変えていかないといけないのかなというふうに私は感じております。
是非、小学生、中学生、高校生、広島の平和教育と、やっぱりこの食糧の問題、食糧危機とか、そういったものを、広島の食育推進計画の中に目標として掲げられているのが「健全な食生活を実践する市民を増やします」ということで書いてあります。「健やかな体と豊かな心を育みます」と。それを実践していくためには、まず、やはり日本の今の食と農というものが、現場にどんどん来て、現実というのを小中高と段階を経て教えていかないといけないと思って。高校生くらいになってくると、将来的にその中の誰か1人でも、現実的に「お母さん、僕、農業やってみたいな」と思って、そう言っても、「あなたどうするの」という世界観なんだと思うんですよ。私も非農家だったので、農業というのは農家の息子がやるものだと思っていたので、そこに行きつくガイダンスが全然感じられなかった。
やっぱり今、農業科に行かれる専門課程を学ばれる子というのは、おそらく、農業の跡取りとか、そういった子たちが主体となっていると思うんですけれども、今はそういう問題ではなく、都市部からでも現実的に農業という仕事を選択できるんだという道筋を、ある程度これからつけていかないといけないかなと思っております。
少し話が逸れてすみません。広島市の新規就農者の育成事業の観点から申し上げますと、一つ、現在、主たる新規就農者育成事業である施設野菜栽培のみならず、土地利用型での野菜、穀物の栽培や畜産など多様な担い手育成事業を推進する。一つ、担い手育成に関し、広島県農政との協調、地域の核となる先進農家がその地域の担い手を育成する事に関わる仕組みづくりというのが必要だと思っています。現在広島県指導農業士として、私も活動しておりますが、これは広島県農林水産局に事務局が設置されている組織です。新規就農者の研修先として、積極的に指導農業士の下へ誘導していただく。また、今後の広島市内の指導農業士の更なる新規認定の拡充をする。今現在、広島市に指導農業士として認定されているのが4名おりますが、これは皆、施設野菜栽培の4人で、他の品目はございません。
それと、市内の畜産農家さんで跡取りが決まっているところはほとんどありません。多岐にわたる農業種において、特に水稲農家も含め新規認定を進めて、地域に根付いた指導農業士が、地域で根付く農家を育てていくシステムを強化していかなくてはならないと思っております。
あと、担い手の問題は農地の利用の観点からもアプローチされないといけないと思っております。将来的に実効性のある地域計画の実現のために、今後の政策として重要なことを述べます。
耕作放棄地、遊休農地の再生利用のための支援継続と拡充。現在、広島市では、耕作放棄地再生利用のための支援事業をしていただいておりますが、更なる拡充をお願いします。
それに伴う新規就農者、認定農業者への優良農地の確保と情報提供の強化、こちらも情報提供いただいておりますが、再生農地の再区画化とあわせ新規農業者に利用価値の高い農地情報を回していっていただきたい。今まさに、国が進める地域計画に対し、認定農業者の意見が反映されていく契機になると思っております。地域計画策定の背景にある現状の問題点として、ほ場整備田、いわゆる財政投資によって整備されている優良農地でさえ、今現在、耕作放棄の兆しが出始めているので、かなり喫緊の課題だと思っております。
その他、未整備田に関しましては、ソーラーパネルの設置とか、農地転用が急速に進んでおります。周辺の生産者だけでは優良農地の維持も困難となってきている状況下で、離農された地権者自身の産地振興に対する意識低下が顕著になっているのではないかと思っております。地権者自身がその農地を自分の代で終わらせてしまう、言い方はちょっと語弊があるんですが、次世代にそれを引き継ぐことを躊躇してしまう農業情勢が顕著に広がってきているのではないかなと思っております。
ほ場整備田に関しましては、規制上転用が利かないので、問題になってくるのが、相続問題です。そのことは、今後の土地の利用権設定において、大きな弊害になってくると思われます。それこそ、相続の義務化がもう始まることになっておりますけれども、そのことによって、国に帰属する農地が急増するおそれがあります。今現在のところではまだ微妙な状況ですが、今後、それが常態化してしまうと、これもまた問題なのではないかと感じております。
周辺の生産農家だけでは優良農地の維持が困難になってきているので、離農された地権者ご自身に対して、産地の振興に対する理解醸成を進めなくてはならないと思っております。なかなか強制的なことが難しい事案ではありますが、農地問題の解決と併せて生産者の所得が向上なされない限り、担い手確保という一番重要なことにも影響が及ぶと考えています。
その所得の向上の観点から申し上げると、大産地の影響を受けにくい強固な広島の市場を形成していかなければなりません。
こちらは先ほど市長から話がありました政策にも一部関わってくることになると思います。
その他、新規品目の挑戦やスマート化への支援、農業者とメーカーが地域に合った農業機械を開発できる仕組みづくりと支援、機械設備投資への助成、七大葉物野菜と並ぶ推奨品目の確立、気候特性を生かした、品目品種栽培体系等の研究等、広島市農業振興センターでも、更なる推進をお願いできればと思っております。
土地利用型農業での優良経営の確立。施設栽培農家の育成だけでは、空いていく農地は増えます。なぜ起こるかというと、端的に言えば作ってくれる人がいないからです。
新規の就農者が、土地利用型で優良経営を目指すということは、現実的に機械投資や農業集積、改廃等のコストの部分で、採算上、かなりハードルが高いんですね。あえて言うならば、そこを行政で事業化してチャレンジし、優良経営を収められる人材のモデルケースを作っていかなくてはならない時代が来ると私自身は思っております。
土地利用型の農業経営者の育成事業の推進だけで終わらず、その後の持続可能な生産・流通・販売までのバリューチェーンの構築が大切です。新規就農者が単に増えただけでは、市場と消費は回りません。
生産資材や人件費の高騰、また輸送問題に伴う生産コスト増大部分が価格に転嫁がなされる必要があるということは、先ほど申し上げましたとおりですけれども、現在、国会で農作物の価格転嫁が法制化に向けて、議論されておりますが、消費者に対してどれだけ理解を得られるかということが論点になると思います。やはり、農産物を今後起こりうる食糧危機の中にあっても、もしかしたら10年後20年後、作ってくれる人がいなくなるかもしれないという危機感を、恐らくほとんどの消費者が持っておりません。少しスーパーで値が上がったことによって、消費者はすぐに買い控えを起こします。夏場になれば暑くなり、また忙しければ、生鮮物やお米の家庭で調理し消費する行動は鈍ります。少子高齢化や核家族、共働きなどのいろいろな要因も重なって、食のあり方が多様になり、家庭での消費が格段に落ちているのも現実なのかと思います。
食育推進会議、先ほど申し上げましたように、今後市民に対して食に対する考え方を、健康福祉の側面だけではなく、もちろんよく噛んで食べるとかまず大切なことですが、将来起こりうる食糧有事を含め、消費者一人一人の消費により生産現場が救われること、地産地消の大切さを更に教育で理解を得てもらえるような取組は大切なことだと改めて思います。
地域の連携の観点から、耕畜連携は今後ますます大切です。しかし、畜産農家の衰退に伴う畜糞堆肥の枯渇も今から非常に進んでまいります。私自身も、有機物を積極的に利用し、野菜を栽培していくということが、今後必要になることは明白なんですが、地元での堆肥の入手に難しさを非常に感じてきております。
畜産農家の高齢化に伴い、今後、何年先まで地域での循環農業が成り立つのかということも感じます。畜産農家への支援と、その担い手育成の重要性が問われていくのではないかと思っております。
地域との連携との意味合いで言いましたら、地域の定住型の農業者の人材の育成が必要です。週末だけ田舎に通って、少し週末農業をするということでは本質的な解決にはならないと思っています。もちろん、農村が地域に対しての関係人口を増やすという意味では、それはそれで大切なことですが、新規就農者を育て、就農したらやはりその地元に根付かせる定住型の農業者の人材育成は絶対必要です。
通勤農業が定着してしまうと、地域の農業振興と農村の多面的機能維持に対して無関心になるからです。我が事のビジネスを一生懸命することは大切なのですけれども、地域の人口減少や将来にわたる集落維持に対して、事情を把握することもなく発言する機会もないというものが現実だと思っております。
新規就農する若者が地域のコミュニティを重要視して理解し、地域の農業の発展に寄与する意識付けをしなければ農業環境の維持は困難となってくるのではないかと思っています。
すみません。長くなりましたが、こういったことが私の考えていることでございます。以上でございます。
矢野氏(コーディネーター)
たくさんの課題と今後の対応をいろいろと御提案いただきまして、ありがとうございました。
少し時間が迫ってきておるんですけれども、とりあえず皆様に一言ずつでも課題を挙げていただければと思いますので、お願いいたします。
奥村氏
はい。林業の課題をまとめるのは、僕はできなかったので、湯来の薪工場の方に聞いたところ、「工場に杉・ヒノキの原木が安定的に入ってこないので、対策の一つとして崩れにくい作業道を作ってほしい」と。湯来は急峻な山ではあるんですが、そこにもし作ってくれたならば、搬出の間伐もできて、2時間登って山の現場に行くというのも少なくなり、新しい担い手さんも入りやすくなるんじゃないかというのを伝えてほしいということだったので、お伝えします。以上です。
矢野氏(コーディネーター)
作業道の支援ということで、ありがとうございます。続いて向井さん、お願いします。
向井氏
はい。新たな担い手に関しては、漁業については漁業権があるので、結構難しいのかなっていうのは、新規参入は難しいのかなというふうに思います。
そこで、新たな担い手を従業員の側面で見た場合は、もう少し持続できるような環境を作ってほしいなというのが率直な意見です。と言うのが、今年、今シーズン、牡蠣殻で2月に「生産やめてくださいね」みたいな話が中国新聞で取り上げられたと思うんです。
こういう目の前数か月みたいなことがちょくちょく起こってしまうと、「この産業は大丈夫なのか」というふうに思われると思うんですよ。
そんな中で、そういった牡蠣屋さんだけは解決できない、業界全体を巻き込まないと解決できない問題を、もうちょっとみんなで考える場づくりというか、そういうのが欲しいんじゃないかというのが率直な意見です。
それと、もう一点が江波の話になってしまうので恐縮なんですが、江波はまちづくりがされてきて、漁業者がちょっと居づらい環境になっている。臭いが気になるであったりとか、音がうるさいであったりとか、苦情がちょくちょく起きています。
これも、ちょっと漁業者だけでは解決できないので、もう少し皆さんと漁業者で話し合って解決していけたらと思っています。
僕からは以上になります。ありがとうございました。
矢野氏(コーディネーター)
ありがとうございました。続いて中池さん、お願いします。
中池氏
新たな担い手づくりっていう話にはならないかもしれないですが、中山間地の農地がだんだん荒れてきているというのが現実だと思うんですが、反面、僕個人的な意見としては、すごくもったいないなと思っていて、法面、ある程度傾斜がないとできない作物っていうのが片やあるというところだと思うんですけれども、岡山県だったら、ぶどうとかももとか、そういうものは、逆に傾斜地で作って、傾斜地じゃないと良いものができない。瀬戸内のみかんも同じだと思うんですけど、ピンチをチャンスに変えるじゃないですけど、そういう創意工夫もしながら、ただ、水路問題も片やあったりする中で、そういう手助けを、何なら僕がしてもいいというぐらいな感じなんですけど、チャレンジ意欲がある農家に関しては、プレゼンなどもしてもらいながら、イレギュラーな予算を組んでもらうというのは一つ手なんじゃないかなと、私個人的には思います。それを、そういうプログラムを組んで、新たな担い手をやってもらうという段階、何段階かに分けて、事業というのを作っていったらいいんじゃないかなと私個人的には思います。以上でございます。
矢野氏(コーディネーター)
はい、ありがとうございました。
アグリ アシストともの皆様には、用意していただいた課題について御発表していただいてもいいですし、これまでいろいろ出た農地政策でありますとか、教育などについても日々考えられていることがあるかと思いますので、この度お伝えいただければと思います。
上垣内氏
それではアグリ アシストともからは、アグリ アシストともが今後持続可能な活動に向けての課題、それから、今後取り組もうと思っていることについて、簡単に、上垣内と山内で説明をさせていただきます。
まずは、持続可能な活動に向けての課題についてですが、「お金・もの」、「ひと」とありますが、まずは「お金・もの」についてです。、発足時、設立時ですね、5年前なんですけど、助成金をいただいて以来、5年間助成金は、いろいろ努力しましたけど、思うようにいただけませんでした。このために、必要な機械が買えない。会員のほとんどが農業経験者でありますので、自身の機械を持ち寄って、それを借用させていただいて、今日まで耐えてきました。しかし、その機械も、もう6年目となり、陳腐化をして、順次購入していかなくてはならない状況です。個人の費用負担が増えてきます。よって、持続可能な活動にはならないという問題点を抱えています。これからはお願いですが、広島市が必要機械を保有して機械をレンタルさせていただく方式を取っていただくか、特定の助成金を確実に出せる制度を構築していただきたいというふうに思っています。なぜなら、私たちは市に認定された協同労働の団体です。また、どのような使える助成金、補助金があるかという情報を我々に提供してほしいと思います。
それから「ひと」についてですが、構成メンバーのほとんどが70歳以上の高齢者で後継者が不足しております。先ほど代表から説明がありましたけど、市の雇用推進課、協同労働プラットフォームに、地域、町内会要望を情報提供していますが、これといった良策は得られません。昨年は市役所の紹介で叡啓大学の皆さんに研修に来ていただきました。大変好評でしたので期待しておりましたが、今年度は申し込みありませんでした。なかなか長続きがしません。また、学生のメンバーを探していますが、農業に興味のあるアルバイト、近隣大学のアプローチが必要だと思っております。後ほど山内事務局からも提案がありますけど、地域からの情報、町内会の地域団体、JAを含めて、農に関心を持つ人が気軽に相談できる窓口とマッチングを行う体制が取れておりません。これが私たちの問題です。協同労働アグリ アシストともを継続していくために、地域・市・協同労働プラットフォームにて私達の悩みを共有していただき、解決策及びアドバイスを提案していただける組織が必要と思います。我々の悩みが市の担当者に届いていないようにも思います。
それから、三番目の「周知情報」でございますが、地域農業の関連情報は、地域ではアグリ アシストともが一番詳細なことを把握していると自負しております。今月、伴学区LMOが開設され、会員として、登録をさせていただきました。今後伴学区LMOにおいて、協同労働団体としてのまちづくりの役割を担えればと思っております。しかし、特に協同労働についての住民の認識が低く、私たちの取組が御理解いただけていないと感じます。大変残念です。そのために助成金を含めた扱いがおろそかになっているように思います。
広島市に協同労働団体が、30団体程度あるとお聞きしておりますが、ひろしまLMOに加入している団体は、ほんの4団体とお聞きしております。広島市も、もっと地域に踏み込んでいただいて広報をしていただきながら、後方支援もいただき、協同労働が地域で認識され、よりよいまちづくりが進むことを期待しております。以上お願い・検討事項を協力して解消いただき、持続可能なオンリーワンの活動を実施して他地域に類を見ない伴学区LMOのまちづくりに寄与したいと考えております。
矢野氏(コーディネーター)
ありがとうございました。
山内氏
私は非農家ですが、まちづくりの視点から見ると、農地景観を守りいかすためには、もっと私のような素人が農地に足を踏み入れるきっかけ、入口を、いっぱい作ってほしい、作りたいと考えています。畑で野菜を自分で育てたいという方は少なくありません。ただ、その最初の一歩と、その後の継続を一人でというのは、よほどしっかりとした意思を持っていらっしゃる方、そして経験を持っていらっしゃる方でなければ難しいとも感じています。市民農園があるからそこでどうぞと言われても、やはり思いがなかなかそこにつながらないという方もいらっしゃいます。農業・自然環境のことに興味があるという方がいらっしゃっても、働いているから行くことはできないという方、あるいは子どもに農業体験や環境に関する学ぶ場を作りたいけれども、収穫体験だけでは思うような形につながっていかないという声も聞いています。
私たちは、地域の方々に身近な農地に足を運んでいただくきっかけを作りたいと思っています。それは、明日、明後日の話ではなくて、5年、10年先になるかもしれませんが、必ず新たな担い手、もっと言えばまちの魅力や誇りにつながります。私はアグリ アシストともの活動に違う区から通っているのですが、ただ農地がそこにあるから行っているではなくて、思いを持つ人々との出会いや、非常に親切に指導下さるJA広島市伴支店があるからです。JA広島市伴支店、広島市や安佐南区の農業ご担当課、市農業委員会の皆さまにご指導いただけて感激をしています。いきなり就農とか営農になるとハードルが高いですが、その手前の裾野を広げ、農のある暮らしの入口をつくる、ともに楽しめるプラットフォームのような機能、多様な立場で農につながるような拠点を、私たちは、広島市、農業委員会、JA広島市からご支援、ご協力をいただきながら、伴・大塚でともにつくれたらと思っています。先ほど事務局長の上垣内がお伝えしましたように、伴・大塚に限らず、伴・大塚は中山間地域ではないですけれども、戸山、湯来、安佐北区の久地、白木には同じ協働労働の団体もありますし、地域間で連携できたらと考えます。伴・大塚地域が担う役割として、農の入口となる機能、拠点がつくれるよう自分たちも頑張ろうと思っております。
矢野氏(コーディネーター)
ありがとうございました。何か市長から簡単に皆さんからの要望にコメントできるようでしたらお願いしたいと思います。
市長
いろんな思いを聞かせていただいて、ありがたいなと思いました。私自身の農業についての基本的な認識を述べようと思います。日本の明治期に入る前、あるいは入ってしばらくは、働いている人の8割は農業者だったんですね。それが明治期に入って工業化して戦後になって、我々が小中学校で社会科を学ぶ頃、今は数%と教わりました。これは、産業構造を変えるという国家意思の下に来ているんですね。申し上げたように、これはちょっと行き過ぎなんじゃないかなと、ここにどれほど皆が着目して、その流れに歯止めをかけるかということをやらなきゃいけないくらいの状況じゃないかと思うんですね。それに更に拍車をかけたのが、戦争に負けた後、農地解放ということをやりました。まだ戦前は、大農地を持っている、いわゆる、今で言えば株式会社のようなもので、大きな地主さんがおられて、自分の資産を維持するために、営業として農地を持っている。そこで働くための人を小作農といいますか、いろいろな農業をする方々を雇うという雇用形態だと思ってください。そうすると産業としてそれなりに維持された。ところが戦後それを、個々人の方に全部資産として小売りにして取得させた。そうすると、その当時はまだ仕事がそういう状況ですから一生懸命それを使って農業生産するんですけれども、次の代になると、工業化するということが起こっているので、農地を手放していく、あるいはそこを工業用地として売ったりするといった形で、経済環境そのものが変わるように仕掛けてきているんです。その中で皆さん頑張っておられるんですよね。そんな中でまだ頑張っておられるのは、血を流し、大変な状況の中でより工夫して、何とか生き延びている。そういった中で、先ほど言ったように、このいわば兼業農家の問題じゃなくて専業農家の問題として考える人がいたり、しかし現実は農家の方々は8割9割兼業農家ですよ。専業農家では飯が食えなくなっている。更にそこに持ってきて、その農業に携わってみたいと言われる、LMOなどの、あるいは協同労働とかいろいろの形で参加者がいる。だから農業に関する意識はあるんですけれど、それを産業化するというところまでの仕掛けが実は出来ていないと思っています。そこで、市としてどうするかと思ったときに、個々人の所有地のままで、それについていろいろな施策を展開する。土地というものを使ってモノを生産するのであれば、その生産元地を、所有権がそれぞれあるとしても、それを集約化して使えるという環境設定をする。特定の個人を対象にするのではなく、地域の中で行政も入れてそれを耕すということで、託すというシステムを作って、それに参加する方々が、地域単位の中で、共同作業を例えばするという。それに必要な原資などを調達するときに、ベースの部分を支援する。そうすると、それを維持するためには生産物を運搬・販売するというシステムまで整わないと入会しませんから、当然そのシステム全体を面倒見るという、まさにこういったことを基礎自治体が地域の皆さんとやっていくということができないかなと実は思っているんですね。最初に申し上げた鳥獣被害なんかもそうです。そういったものを、行政体が皆さんと一緒になってそれを防ぐ。そして、いわゆる就農環境を整える。それが出来たものを上手く地産地消で販売する。そういうシステムを作った上で、我が地域の農業はこうなんですよと、小学生・中学生・高校生の皆さんに見てみませんかと、我が地域だとこういうふうにしてやっているので、将来の職業としてもやっていけるんですよと。それを抜きにして、業があるからなんかやると子供が先走っても、親が心配して、「その仕事で将来食べていけるのか」となったら、その道をあきらめてしまう。だから同時進行でやらないと、関係者の理解を得られないと思いました。
そして協同労働に関しては、本当に一生懸命やっていただいて、その前のところで、興味を持ちながら参加したいんだけれど、協同労働に対していろんな意味でピンと来てないという方々に、今度一生懸命宣伝していますのは、LMOを作った時に、協同労働の考え方も肯定してくださいと。そうすると、LMOの集団の中に協同労働団体の方がおられて、これを評価してこの活動に必要となる費用を自分たちも出そうじゃないかと言われるようにしていただいたら、一時的に原資はそこから出ます。まずはそれを狙っていただきたい。そしてそれらの必要性が見えてくると、LMOに出す支援額を上げていく中で、出す金額を上げていこうというようなことを思っています。個別に協同労働団体だけとなると、いろんなグループがおられるので、私も私もとなりますから、地域の中で一緒にやる活動グループとして認知していただいて、その中での分け前をくださいという交渉をしてください。そこで年間計画なども出して、協同労働はこんなに良いことなのだから、皆のためになるんだからというような進め方でやれないかという思いを持っています。そんなことが基本にありまして、それに向けてちょっとずつやらせていただきます。
そして、林業については、確かに今から手をかけて、木材を切り出し、あるいは間伐をやらなきゃいけないという理由は増えている。そのための作業道をまず作らないと、山持ちの方々も、山は持っているんだけどお金がかかって儲からないから放っておくというところがありますから、そこのところはまず、搬出するために必要な整備を行うというところから着手しないと、物事は始まらない、そのぐらいの気持ちがあります。
漁業については、もっと問題が大きくて、瀬戸内海の海水温度が上がったりして、漁業地に適しているかどうかという問題が出てくる、いわゆる養分が浄化槽とかをきれいにしてしまって、濁りがなくなって、エサが増えない。そして、河川から入ってくる近くに大きな牡蠣が育つけれど、水の動きが悪いところはいくらやっても大きな牡蠣が育たないとか、今までやってきていた養殖のためのプラスチック材や、また、ハリガネなどが大きくなって環境汚染につながっている。負の問題が大型化している中で、広島の特産物は牡蠣ですと、言っている宣伝と足元のギャップが大きくなりすぎて、これをもう少し宣伝して、商品価値があると言うのであれば、そちらにも手をかけて、きちんとした生産ができる体制にすること。そして四季を通じて採れるかというと採れない中で、今は冷凍業者などを使って、生産する方とそれを買い貯めて冷凍庫に貯めて上手く販売して上手く儲けている方と、ギャップが出てまいりまして、生産者と中間販売者の間が上手くいっているのかなという問題があります。これをもうちょっと調整しないと、現場で牡蠣を採る若い方々は気にしているんですね。そして労働力がないから外国人労働に頼ってやっていて、そこで人件費を削減して値段調整して価格転嫁できないままやっているという悪循環になっている。そんな問題がありまして、それをやるためには、部分的ではなく経済構造そのものをうまく調整するという何かしらをしなければならないと思っています。答えまでいってないんですけども、課題は明確になっていると思っています。
矢野氏(コーディネーター)
ありがとうございました。まだまだ御意見あるかと思いますけど、予定の時間も過ぎつつあるところでございます。
本日の議論としましては、このあたりで終了させていただきたいと思いますので、最後に本日の談議に参加していただいた感想を一言ずつお願いできればと思います。
福田氏
大変勉強になりまして、今市長から、おっしゃっていただいた今後の展望をお聞きしまして、大変それを糧に我々農業者一同頑張ってまいりますので、どうぞ御指導、御鞭撻いただければと思います。よろしくお願いいたします。皆さんも本当にありがとうございました。
奥村氏
ありがとうございました。
向井氏
結構時間が押して、皆さんがいろいろな課題を抱えているんだなっていうのは、改めて実感いたしました。行政にお伝えしたいのは、担当の課の垣根を越え、意思決定者も含めて、現場に足を運んでもっと課題に向き合ってもらえればなというふうに、皆様思っていると思うので、よろしくお願いいたします。
中池氏
本日はありがとうございました。私なんか若造を呼んでいただき大変緊張しましたが、有意義な時間を過ごせました。ありがとうございました。
西本氏
今日は参加させていただきましてありがとうございました。我々がやっていることは間違いないなということを感じました。
また、これを広めていくことが今後の課題であるというふうに感じました。貴重なお時間をいただきましてありがとうございました。
上垣内氏
貴重な時間をいただきありがとうございます。協同労働を5年間やってきてですね、やっぱりいろいろ今までやってきたことが間違いなかったなということと、それから、今日皆さんのいろんな活動をお聞きしまして、ますます元気が出ました。一生懸命頑張ります。ありがとうございました。
山内氏
今日はありがとうございました。皆様の思いだったり、課題だったりを今日はお聞きできて、私たちも地域に戻って改めていろんなことを仲間と一緒に話をしながら、進めていきたいなと思いました。ありがとうございました。
矢野氏(コーディネーター)
皆様ありがとうございました。私からも一言感想を述べさせていただきます。
最初の市長のお話にもありましたように、現在、「食料・農業・農村基本法」が国で議論されておりますことを皆様よく御存知かと思いますが、その中で担い手についても、いろんな議論が噴出しています。2020年からの食料・農業・農村基本計画で半農半Xなど多様な担い手というのが示されていたのですが、今回の基本法の最初の原案の中では、そういったものが一切なくなってしまって、効率的な経営というものだけが打ち出されている状況でした。その後、様々なパブリックコメント等を募集する中で、私たち研究者も学会等で多様な担い手の重要性について声明を出したりしてまいりました。
その結果、多様な担い手への言及がまた原案に組み込まれ、先月2月末に国会に上げられたんですけれども、その後の国の委員会での検証議論で再びやはりそういった非効率的な、例えば自給型の農業生産者に対して国の税金を投下する、言わば保護していくのはいかがなものかというような意見が出ております。
こうした政策的動きに対して懸念を持っていたところ、今日のお話の中で、皆さんから多様な担い手のあり方のお話を伺いましたし、市長からも効率が全てではないと、非効率な部分がどうしても残されてしまうことに対して、行政として、支援をしていくことの重要性を伺えたことが今日は私としては、良かったなといいますか、得たもののように思いました。広島市では、多様な担い手によって、地域と農林水産業が共に持続していくということを実感として感じられる都市規模だと思っていますので、是非そういったリーダー都市になることを期待しております。
本学も、広島のこの里山・里海と共生する都市環境、そういった未来の都市の姿を作り上げていくことに貢献できる新しい学部というのも構想中ですので、是非、大学としましては、そういった人材育成に関しましてもいろいろと貢献できればと思っております。是非またいろいろと御指導いただければと思います。よろしくお願いいたします。
市長
アグリ アシストともに学生を…。
矢野氏(コーディネーター)
そうですね。具体的にまた御相談させていただければと思っております。
では最後に市長から全体を総括してコメントをいただきたいと思います。
市長
ありがとうございます。先ほども長々と御発言させていただきましてありがとうございます。いずれにしても、農業というものを我々人類の大事な産業として育てる。専業農家の方が生活できる基盤を造ることを目指すとともに、農業に関心のある方々も参加できる仕掛けを、まち全体として、地域としては、そういったものを目指したいと思います。私自身は、そういう意味で農業に携わる農家ではなく、農業者といいますかね、事業体としてやっていきたいんですね。農家というのは個人所有の土地があって、それを耕すという考えですから、その方の意思で産業として成り立つかどうか非常に不安定になります。農業者という産業を担う方をこのまちで、この地域で育てられるように、あるいはそれが長く続くようにするために、今までやっていることプラス何がいるか。国策でそれに沿う良い政策が出てきたら、それをしっかりと活用して生かすようにする、そんな思いで、これからもやっていきたいと思います。よろしくお願いします。今日は本当にありがとうございました。
矢野氏(コーディネーター)
ありがとうございました。それでは、マイクを事務局にお返しいたします。
政策企画課長
本日は活発に御議論いただきまして、ありがとうございました。
頂きました多くの御意見、御提案につきましては、今後、市の施策に生かしていくとともに、この車座談義を機に、皆様の取組がより活発に展開されていくことを期待したいと思います。
それでは、これをもちまして市政車座談義を終了いたします。本日は誠にありがとうございました。