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ページ番号:0000000237更新日:2012年4月19日更新印刷ページ表示

衛研ニュース/農薬のはなし

農薬のはじまり

 狩猟・採取により食料を得ていた人類が、安定的に食料を確保するために農耕を始めて1万年位と言われていますが、人類は常に病害虫に悩まされ続けてきました。

 そこで、食料の安定的生産を実現するため、効果的な農薬が開発されるようになりました。しかし、農薬の誕生期にはその急性・慢性毒性や環境破壊について気がついていませんでした。

 近代的な農薬としては、日本では、江戸時代初期、トリカブトや樟脳など五種類の薬品を混合したもの(ウンカや猪に効果があると言われている)、18世紀に欧州では除虫菊粉、19世紀になるとフランスではワインの原料であるぶどうの殺虫剤として石灰硫黄合剤とボルドー液(硫酸銅と石灰の混合物)、アメリカでは青酸・亜ヒ酸・硫酸ニコチン(タバコの成分)が使われ始めました。

安全性への取り組み

 食料の安定的生産に大きく寄与した農薬には、使用目的によりたくさんの種類があります。農薬は、野菜や果物などの農産物に使用される言わば薬のようなものですが、薬は本来正しい使い方をすることによって、その効能を発揮するものです。かつての古い農薬については、やがて、殺虫剤に対する薬剤耐性(連続してまいていると、やがてその殺虫剤では死なない虫が繁殖するという現象)の問題やPCP(除草剤、殺菌剤)による魚の大量死の社会問題が発生するなど、生態系や環境に対する様々な弊害が現れるようになりました。このため、農薬の安全性評価が厳しくなされるようになり、高活性・低毒性の農薬の発明も相次ぎ、古い農薬は姿を消していきました。

 1966年にいもち剤の非水銀化、1967年に急性毒性の高い農薬の生産中止、1969年には水銀剤及びDDT・BHCなどの塩素系殺虫剤の水田使用禁止など、農薬の安全性を高める努力がなされてきました。

 徐々に高まっていた農薬の毒性に対する関心や明らかになってきた自然への影響などを考慮して、1971年に農薬取締法の大幅な改正がなされ、農薬を登録する際に各種毒性試験(急性毒性、慢性毒性、発ガン性、催奇形性など)や自然界への残留試験などが義務づけられました。
 また、この改正により、DDT・水銀剤・BHC・2,4,5-Tなどそれまで中心的な役割を果たしてきた農薬が使用禁止となりました。

 現在では、さらに多くの毒性試験項目が追加されていますが、基本的にはこの改正が「近代農薬」から「現代農薬」への脱皮のきっかけになり、より安全な農産物の生産に力が注がれるようになりました。農産物に散布された農薬は、殺虫、除草、殺菌など其々の役割を果たし、その後自然に分解されていきますが、農産物や土壌の中に残留することもあります。

 残留する農薬の量は、農薬の種類・使用時期・使用量・使用回数、農産物の種類などによって異なります。このため、農薬が適正に使用されるよう農薬及び農産物の種類毎に、農薬の使用時期及び使用量などが農薬取締法で定められています。また、消費段階で食の安全・安心を確保するため、食品衛生法でその残留基準が定められています。

残留基準が変わります

 1968年に食品衛生法に基づき、初めて、きゅうり、トマト、ぶどう、りんごの4農産物についてBHC、DDT、鉛、パラチオン及び砒素の5農薬に対し残留基準が設定されました。その後、逐次、農産物毎に残留基準が追加設定され、2005年12月1日現在、250農薬、137農産物に対して設定されています。

 これまで、残留基準が設定されている農薬については規制がなされていましたが、残留基準が設定されていない農薬については、いくら残留があっても規制できないため、食の安全確保上の大きな問題となっていました。

 このため、2006年5月29日から、残留基準が設定されていない農薬についても、一律基準(0.01ppm)が適用されることになりました。つまり、ネガティブリスト制(原則規制がない状態で、規制する農薬についてリスト化)からポジティブリスト制(原則規制された状態で、使用を認める農薬についてリスト化)へ移行することになります。

 これにより、残留基準設定農薬数が250から548に増加することに加え、新たに、全ての農産物に一律基準(0.01ppm)が適用されることとなり、飛躍的に基準設定項目が増加します。

現行の農薬残留基準値のイメージ(ネガティブリスト制)
    137種類の農産物
農薬名 大豆 きゅうり みかん ばれいしょ トマト ほうれんそう
250種類の農薬 アジムスルフェロン 0.10ppm - - - - - -
キャプタン - - 5.0ppm - - - -
メタミドホス - 0.05ppm 1.0ppm - 0.25ppm 2.0ppm -
メプロニル 2.0ppm - 1.0ppm - - - 1.0ppm
レナシル - - 0.3ppm 0.3ppm 0.3ppm 0.3ppm 0.3ppm

(―:現在、残留基準が設定されていないもの)

基準設定農薬の増加され、以下のようになりました。

平成18年5月29日以降の農薬残留基準値のイメージ(ポジティブリスト制)
    137種類の農産物
農薬名 大豆 きゅうり みかん ばれいしょ トマト ほうれんそう
548種類
の農薬
アジムスルフェロン 0.02ppm 0.1ppm 0.02ppm 0.02ppm 0.02ppm 0.02ppm 0.02ppm
キャプタン 5.0ppm 5.0ppm 5.0ppm 5.0ppm 0.05ppm 5.0ppm 5.0ppm
メタミドホス 0.01ppm 0.05ppm 1.0ppm 1.0ppm 0.25ppm 2.0ppm 0.5ppm
メプロニル 2.0ppm 0.01ppm 1.0ppm 0.01ppm 1.0ppm 1.0ppm 1.0ppm
レナシル 0.01ppm 0.01ppm 0.30ppm 0.30ppm 0.30ppm 0.30ppm 0.30ppm
新たな298農薬 0.01ppm 0.01ppm 0.01ppm 1.0ppm 0.01ppm 0.01ppm 0.01ppm
0.01ppm 0.20ppm 0.01ppm 0.01ppm 0.01ppm 0.01ppm 0.01ppm
0.01ppm 0.01ppm 0.01ppm 0.01ppm 0.50ppm 0.01ppm 0.01ppm

太字で示した数値は新たに残留基準が設定されるもの。

農薬検査の取り組み

 広島市では、現在、食品中の残留農薬173種類の検査を行っています。

 農薬の検査は、農産物及び農薬の種類毎に適切な前処理(均質化、農薬成分以外を除去するための抽出・ろ過操作、微量成分を検出するための濃縮操作など)を行った後、高速液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフ、ガスクロマトグラフ・質量分析計、高速液体クロマトグラフ・質量分析計などの精密機器を使用して測定しています。

1.サンプル

サンプル(きゅうりとほうれんそう)

2.均質化(ホモジナイズ)

回転するカッターによる試料の粉砕・均質化

3.抽出(クリーンアップ)

クリーンアップカラムによる抽出

4.濃縮(ロータリーエバポレータによる)

ロータリーエバポレータによる濃縮

5.高速液体クロマトグラフ

高速液体クロマトグラフによる分析

 最近3年間(平成20~22年度)では、439検体、延べ43,691項目の残留農薬検査を行いました。その結果、ねぎ、りんご、きゅうりなど34種類の農産物から、フルフェノクスロン、クロルフェナピルなど48種類の農薬が延べ151回検出されました。このうち、残留基準値を超える農薬が検出されたのは、しいたけ1検体(クロルピリホス0.05ppm)、牛脂肪5検体(BHC0.04~0.08ppm)でした。

 食品に残留する農薬等については、食品衛生法に基づく「食品、添加物等の規格基準」で食品ごとに残留基準が順次設定されており、また、基準が設定されていない農薬については、ポジティブリスト制度による一律基準(0.01ppm以下)が適用されます。

平成20~22年度中の残留農薬検出状況
No. 農薬名 検査対象農産物と検出数 検出数計
1 BHC 牛の脂肪(ウデ):5、牛の筋肉(ウデ):1 6
2 DDT 牛の脂肪(ウデ):5、牛の筋肉(ウデ):1 6
3 アセタミプリド りんご:2、きぬさや:1、枝豆:1、きょうな:1、ピーマン:1 6
4 イプロジオン ブルーベリー:2、レーズン:1、にんじん:1、広島菜:1、
ピーマン:1
6
5 イミダクロプリド 枝豆:2、きぬさや:1、ほうれんそう:1、なす:1 5
6 インドキサカルブ 枝豆:1、はくさい:1 2
7 エトフェンプロックス 枝豆:2、はくさい:1、なす:1 4
8 オキサジキシル トマト:1 1
9 オキサミル 大根(根):1 1
10 カルバリル 日本なし:1 1
11 クレソキシムメチル ねぎ:2、りんご:1、日本なし:1 4
12 クロチアニジン ねぎ:2、トマト:1、きゅうり:1、日本なし:1、レタス:1 6
13 クロルピリホス りんご:1、しいたけ:1 2
14 クロルフェナピル きゅうり:3、広島菜:3、なす:2、ピーマン:2、きょうな:1、
みずな:1、ふき:1、ぶどう:1
14
15 クロロタロニル 広島菜:1 1
16 シアゾファミド 広島菜:3、みずな:1、ほうれんそう:1 5
17 ジエトフェンカルブ トマト:2 2
18 ジクロルボス なす:1 1
19 ジコホール レモン:1 1
20 シフルトリン りんご:2 2
21 シプロジニル ブルーベリー:2 2
22 シペルメトリン 枝豆:3、春菊:1、りんご:1 5
23 シメコナゾール ねぎ:1 1
24 ジメトエート ピーマン:1 1
25 シラフルオフェン かき:2 2
26 ダイアジノン 春菊:1 1
27 チアクロプリド トマト:1 1
28 チアベンダゾール グレープフルーツ:1、レモン:1、オレンジ:1、スウィーティ:1 4
29 チアメトキサム ねぎ:2、きゅうり:1、はくさい:1、日本なし:1、みずな:1 6
30 テフルトリン 春菊:1 1
31 トリアジメノール いんげん:2、きぬさや:1 3
32 トルクロホスメチル にんじん:1 1
33 ピリダベン ピーマン:1 1
34 ピリプロキシフェン グレープフルーツ:1 1
35 フェナリモル ピーマン:1 1
36 フェンバレレート ブロッコリー:1、レタス:1、はくさい:1 3
37 フェンピロキシメート 枝豆:1、なす:1、グレープフルーツ:1 3
38 フェンプロパトリン りんご:2、レモン:1 3
39 フルバリネート かき:1 1
40 フルフェノクスロン ねぎ:4、きょうな:3、広島菜:3、きゅうり:2、
ほうれんそう:2、みずな:1、小松菜:1
16
41 プロシミドン キャベツ:2、ピーマン:2、きゅうり:1 5
42 プロチオホス 日本なし:1 1
43 ペルメトリン ぶどう:1 1
44 ボスカリド りんご:2、ブルーベリー:1、日本なし:1 4
45 ホスチアゼート きゅうり:2 2
46 ミクロブタニル きぬさや:1、ピーマン:1 2
47 メソミル いんげん:1、ブロッコリー:1 2
48 メチダチオン 日本なし:1 1
    151

新たなポジティブリスト制に向けて

ポジティブリスト制が施行されると、多くの農薬を検査する必要があることから、市民の方々の食の安全・安心を確保するため、迅速・正確な農薬検査法の確立、厚生労働省科学研究課題「農薬等のポジティブリスト化に伴う検査の精度管理に関する研究」(県・市9地方衛生研究所の共同研究)への取り組み、高速液体クロマトグラフ・質量分析計の新たな導入など、検査体制の充実を図っています。

高速液体クロマトグラフ質量分析計
高速液体クロマトグラフ質量分析計の画像