ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 総合トップページ > 衛研ニュース > 生物科学部 > 感染症、食中毒等に関すること > 衛研ニュース/腸炎ビブリオ食中毒を防ぎましょう

本文

ページ番号:0000000235更新日:2011年2月21日更新印刷ページ表示

衛研ニュース/腸炎ビブリオ食中毒を防ぎましょう

腸炎ビブリオとは

 腸炎ビブリオ(学名:Vibrio parahaemolyticus)は、ビブリオ属に属する好塩性のグラム陰性桿菌で、沿岸海水域および汽水域(海水と河川水の交わる水域)の海水中、海底の泥、プランクトン、魚介類などに分布しています。

 塩水を好み、塩濃度3%で最もよく発育し、真水では生息できません。また、塩濃度10%以上でも発育できません。
 20℃以上で旺盛に発育し、35~37℃で最もよく増殖するといわれています。15℃以下では増殖が抑制されます。このため、海水温が上昇してくると、海水および魚介類から腸炎ビブリオが検出されるようになります。

 本菌は、他の食中毒起因菌に比べて発育がきわめて速く、最適な条件が揃えば8~10分に1回二分裂して増殖します。

 食中毒患者から分離される本菌の多くが、TDH(Thermostable direct hemolysin:耐熱性溶血毒)またはTRH(TDH-related hemolysin:耐熱性溶血毒類似毒)を産生しますが、環境由来のほとんどの本菌はTDHおよびTRHを産生しないため、これらの毒素の産生性が病原性に深く関わっていると言われています。

【図1】 腸炎ビブリオ走査型電子顕微鏡写真
腸炎ビブリオ走査型電子顕微鏡写真
(大きさ:0.3~0.5×1~5μm)

腸炎ビブリオによる食中毒

感染源および感染経路

 病原性を持つ腸炎ビブリオが高濃度に付着した海産魚介類の摂取、または海産魚介類に触れた調理器具・手指などによって二次的汚染された料理の摂取により感染・発症します。感染の成立にはおよそ10の6乗個以上の生菌の摂取が必要と言われています。

潜伏期間

 通常10~24時間。食品中の菌量が多い場合などでは6時間程度でも発症する場合があります。

症状

 激しい腹痛、下痢を主症状とし、嘔吐、発熱を伴うこともあります。

食中毒事例の発生状況

 本菌による食中毒は夏場に多く発生します。6月~9月頃に発生が見られ、8月に発生がピークとなります。また、冬場はほとんど発生しません。

 経年変化をみると、1980年代前半までは細菌性食中毒事例のおよそ半数を占めていましたが、1980年代後半からは減少傾向となりました。しかし、1998年をピークとして血清型(*)O3:K6の腸炎ビブリオによる食中毒の流行があり、この流行に伴って、本菌による食中毒事例数が増加し国内年間発生事例数が839件にも上りましたが、近年は再び減少傾向にあります。

 なお、平成21年の国内での食中毒事例数は14件でした。

(*)血清型:細菌の抗原の構造に基づいて分類した型。腸炎ビブリオは、菌体表面のO(糖鎖)抗原とO抗原を覆っているK(夾膜)抗原により型別される。

食中毒の防止対策

 腸炎ビブリオの大きな特徴である、

「(1)増殖速度が非常に速いこと、(2)塩水を好み真水に弱いこと、(3)二次汚染による食中毒の発生が多いこと」

を踏まえて対策を行うことが重要です。

 広島市保健所(健康福祉局食品保健課)では、次の対策を呼び掛けています。

  1. 魚介類は水道水(真水)でよく洗いましょう。
  2. 冷蔵保管を徹底しましょう。
  3. 冷蔵庫から出したらなるべく早く食べましょう。
  4. 購入した寿司や刺身等は、すぐに持ち帰り、冷蔵庫に入れ、早めに食べましょう。
  5. アサリ等の貝の砂だしをする時は、容器にふたをしましょう(貝のふき水が他の食品にかからないようにしましょう)。
  6. 魚介類専用の調理器具(包丁やまな板等)を準備・使用しましょう。

腸炎ビブリオの温度別の増殖実験

 腸炎ビブリオの腸管感染の成立には、一般的におよそ10 6個以上の生菌の摂取が必要と言われています。
 本菌は、他の食中毒起因菌に比べて増殖速度がきわめて速く、最適な条件が揃うと8~10分に1回分裂します(他の食中毒起因菌では、およそ20分に1回)。このため、菌の増殖を抑える温度管理が非常に重要です。

 そこで、流通過程および調理後の温度管理の一助とすることを目的に、腸炎ビブリオの温度別の増殖速度を実験的に比較しました。

方法

 腸炎ビブリオが好む塩分濃度である3%のNaClを含有する増菌培地(TSB)に一定量の腸炎ビブリオを添加し、4℃、25℃および35℃で培養し、その菌数を2時間間隔で計測しました。

結果

 4℃では、6時間後もほとんど増殖がみられず、むしろ若干減少していました。25℃では、対数増殖期においては、2時間でおよそ10倍、35℃では、およそ100倍に増殖していました。

【図2】 腸炎ビブリオの温度別の増殖
腸炎ビブリオの温度別の増殖

【図3】 温度別の腸炎ビブリオの増殖の様子

【図3】 温度別の腸炎ビブリオの増殖の様子の画像

考察

 生食用鮮魚介類の成分規格では、「腸炎ビブリオの最確数は、1gにつき100以下でなければならない」とされています。

 この成分規格に適合する鮮魚介類であっても、35℃に2時間放置されたものを100g摂取した場合、食中毒を発症するといわれている菌数である10 6個の腸炎ビブリオを摂取することになります。

 これらのことから、温度管理は非常に重要で、特に気温・室温の上昇する夏場は、購入後に「冷やして持ち帰る」などの喫食までの温度管理が食中毒予防の重要なポイントであるといえます。

補足説明

対数増殖期

 増殖環境がよく、細菌が一定の時間ごとに二分裂して増殖するとき、時間に対して菌数の対数が直線となる。このような時期を対数増殖期とよぶ。

最確数(MPN:Most Probable Number)

 検体の連続希釈液をそれぞれ3本ないしは5本ずつ液体培地に接種・培養して、陽性となった本数から、検体中の菌数の最も確からしい数を確立論的に求めた数。