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アサリやホタテ、カキなどの二枚貝は、植物プランクトンを食べています。しかし、この植物プランクトンに毒素を発生するものがあり、二枚貝が毒素を作るプランクトンを食べてしまうことがあります。その結果、毒素が貝に蓄積され、毒化した貝を食べることで中毒症状を起こすことがあります。
代表的な貝毒として、麻痺性貝毒と下痢性貝毒があり、日本でもこの2つが規制対象となっています。
麻痺性貝毒では、毒化した貝を食べることで手足の麻痺等が生じ、重症の場合は呼吸困難を引き起こすことがあります。代表的な原因物質として、サキシトキシンが挙げられます。
一方で、下痢性貝毒は毒化した貝の食用により、下痢、吐き気、嘔吐、腹痛の症状が現れます。原因物質として、オカダ酸またはその同族体が挙げられます。
いずれの毒も、加熱しても解毒されません。中毒を防ぐには、毒化した貝を食べないことが最大の予防策になります。
行政でも、毒化した貝が出回らないように対策を講じています。
わが国では食品衛生法により、麻痺性貝毒は4MU/g、下痢性貝毒は0.16mg/kg(オカダ酸当量)と規制値が定められており、規制値を超えたものの販売等をしてはならないこととされています。なお、MU(マウスユニット)とは毒量の単位であり、麻痺性貝毒において1MUは、体重20gのマウスを15分で死亡させる毒の量に相当します。
広島県内でも、規制値を超えたものは生産出荷の自主規制をさせるとともに、テレビや新聞等で規制した海域をお知らせしています。また、2MU/g(規制値の半分)を超過する麻痺性貝毒が検出された場合は、注意体制に入り、プランクトン調査や貝毒検査を強化しています。潮干狩りに行く際には、規制海域の情報が無いか、確認してください。
また、広島市衛生研究所でも定期的に、貝毒の検査を行っています。
今回は、下痢性貝毒の検査手法をご紹介します。
1 貝の剥き身を採取し、フードプロセッサーで均一化させます。
剥き身を取り出すため、衛生研究所の職員がアサリの殻を剥いています。
カキは剥き身を水切りし、均一化してから使用します。
2 メタノール等の試薬を用い、貝毒成分を抽出します。
均質化した貝の剥き身にメタノールを加え、貝毒成分を溶出させます。
3 水酸化ナトリウムを加え、76℃で40分間加水分解します。
放冷後、塩酸で中和します。
4 ヘキサンにより、脂質を除去します。
5 不要な成分を除去し、貝毒成分を濃縮します。
(左)固相抽出という手法により、不純物を除去しています。
(右)ロータリーエバポレータという検査機器を使い、貝毒成分を濃縮します。
6 LC-MS/MS(液体クロマトグラフ・タンデム型質量分析計)という精密機器を使用して、毒量を定量します。
*本検査における手法について、広島市衛生研究所ではその妥当性について評価したうえで、検査を行っております。
以下の表のとおりです。なお、( )内の数字は、検査の件数を示しています。
直近5年においては、規制値を超える貝毒は検出されていません。
平成25年度 |
平成26年度 |
平成27年度 |
平成28年度 |
平成29年度 |
|
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アサリ |
検出せず |
検出せず |
検出せず |
検出せず |
検出せず |
カキ |
検出せず |
検出せず |
検出せず |
検出せず |
検出せず |
ムラサキイガイ |
- |
- |
検出せず |
- |
- |
平成25年度 |
平成26年度 |
平成27年度 |
平成28年度 |
平成29年度 |
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アサリ |
- |
- |
検出せず |
- |
- |
カキ |
検出せず |
検出せず |
検出せず |
検出せず |
検出せず |