道路防災工事において不適切な設計変更が行われたと思料されることの是正を求める措置請求(令和6年11月11日)

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ページ番号1030632  更新日 2025年2月16日

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広島市監査公表第36号

令和6年11月11日

令和6年9月19日付け第844号で受け付けた広島市職員に関する措置請求について、その監査結果を地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第5項の規定により、別紙のとおり公表する。

広島市監査委員 古川 智之

同 井戸 陽子

同 定野 和広

同 石田 祥子

別紙

広監第160号

令和6年11月11日

請求人

(略)

広島市監査委員 古川 智之

同 井戸 陽子

同 定野 和広

同 石田 祥子

広島市職員に関する措置請求に係る監査結果について(通知)

令和6年9月19日付け第844号で受け付けた広島市職員に関する措置請求(以下「本件措置請求」という。)について、地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第5項の規定により監査を行ったので、その結果を同項の規定により次のとおり通知する。

第1 請求の要旨

請求書の記載内容から、請求の要旨は次のとおりと整理できる。

道路防災工事において不適切な設計変更が行われたと思料されることの是正を求める措置請求

(1) 監査請求の概要

広島市では、佐伯区役所が担当して「一般国道433号(大古谷)道路防災工事(5-1)」(工期 令和5年7月14日~令和6年1月30日。当初契約 51,150,000円)が行われた。

この工事は、途中(令和5年11月7日)で、契約金額の約4割に当たる約2,000万円の減額変更と約1,740万円の増額変更がなされている。

この異常な契約変更については、以前、住民が問題視して、令和6年2月に住民監査請求が提出され、監査が実施された。

その結果が公表され、伐採木の引取条件に変更があったとして、約500万円の増額変更が行われたことが明らかになった。(令和6年4月15日付け広島市監査公表第5号及び第6号)

この変更は、本件工事の支障物である立木の受け入れ先のC団体が、当初約束していた搬入条件に反して新たな条件を課し、その結果追加作業が必要となって、その作業分として500万円を増額したものとのことであった。

事実として、わずかな作業量の増加は必要になるものの、その作業量は1万円程度であると思料されるに過ぎないものであり、大部分は、作業費用の2重計上と実態と大きくかけ離れた過大な単価見積りによるものであり、500万円の増額は、不当な財務会計処理にあたることが分かった。

令和6年7月、この500万円の増額変更が行われたことに疑義を唱える住民監査請求が提出され、監査が実施された。監査結果は、2024年8月29日付けで明らかとなっている。(広島市監査公表第31号及び第32号)

監査結果は、「当初設計時に認知していなかった条件を示されたため、当該条件を満たすための作業を追加で実施する必要があると判断したものであり、当該市の判断について、不適当とはいえない。」として、請求を棄却する結論となっている。

しかし、この監査では、追加作業が必要となる事実があると結論付けただけで、その金額が500万円であることが妥当であるか、不当に高額で、不当な財務会計処理となっていないのかの判断はしていない。

いままでの監査結果等によって、以下の事実が明らかとなっている。

【事実】

ア 実際に、必要とされた追加作業は、別途何日もかかったわけではなく、当初設計分の作業として要した2日間の中でまかなわれている。

イ この伐採・運搬等の一連の作業は、2次下請会社の延べ6人の作業員で、1日6時間計36時間で行っている。この作業には元請及び1次下請会社の職員延べ6人で延べ12時間関与している。その結果、全体で延べ48時間の作業量で作業を完了している。

ウ この作業には直接の工事費として、当初設計で144万円、追加作業分として312万円、合計456万円が設計計上され、工事価格べースでは約730万円が計上された。

(456万円×1.6≒730万円)

エ 延べ48時間の作業に730万円を支払ったことから、1時間当たり単価は約15万2千円で、1日(8時間)の1人当たりの日当は約121万6千円となった。

オ 公共工事による積算は、適正価格で行わなければならないとされている。

カ 作業は8月7日と8日の2日で終わったが、その2週間後に追加工事の3社見積を徴取し(288万円、312万円、336万円)、その中間に位置する見積で積算している。

キ 見積は、作業量を事前に推定し、事前に金額を確定するために徴取するもので、作業が完了してその作業量が実際に確定している段階での見積徴取は、その趣旨を逸脱している。

ク 当該工事の監督員が現場で作業の履行状況を確認している。その結果、実際にかかった作業量を把握している。

以下、追加作業に対する増額について述べる。

作業には、ラフタークレーン、8トントラック、チェンソーなどが使われているが、それは、当初計上されている作業でもともと計上されているものであり、延べ2日間の賃料等は当初作業に含まれていることから、機械器具損料等が追加で必要になることはない。500万円の増額変更を行ったということは、結局、当初作業で計上されている機械器具と人件費の他に、1人工分として約83万円という途方もない追加が税金から行われたということである。

これは、公共工事での積算としてあり得ない過大な金額となっていることから、市民として、座視したり是認することはできない。

監督員が現場で作業の履行状況を確認しているし、2日間延べ6人工の作業で終えている事実もある。

そのような事実に対して、増額変更によって、全体で730万円も支払ったことは、不適切で不当な積算による不当な支払いであると断言できる。

ポケットマネーなどからの支出であればとやかく言うことはないが、税金からの支出であることから、不当な財務会計処理の是正が住民全体の利益のために必要で、公益の代表者としての立場で住民監査請求を行う。

広島市監査公表第31号及び第32号で公表された監査結果には、以下のことが記されている。

(1) 当初設計には、一般的な作業内容となる伐採(立木の伐倒)、集積・積込(伐採木の集材、運搬車への積込)、伐採運搬費(本件工事場所から薪加工場までの運搬費)を本件工事での必要作業として計上している。

(2) 薪加工場から、

ア 全ての伐採木について枝打ち等により薪材に加工可能な部分とそれ以外の部分を分別すること

イ 薪材に加工可能な部分は薪加工場内の所定の場所に収まる長さ等に調整すること

ウ 薪加工場内へ搬入した伐採木の荷降ろし作業を行うこと、その際には薪材に加工可能な部分とそれ以外の部分をそれぞれ薪加工場内の所定場所に仕分けすること

が搬入に当たっての必要な条件として示された。

(3) 当初から見込んでいる作業を超える作業に対する費用として、広島市は受注業者に約500万円を支払った。

(2)のアは、幹の部分から枝を取り除き、幹(薪材に加工可能な部分)と枝葉を分ける作業。イは、幹材のトラック搬入での一般的な長さである4m程度以下にして所定の置き場所に収まるようにせよという指示。ウは、区分して置くように指示しているだけである。

当初設計ではトラックでの運搬を見込んでいるので、4m程度に小切りしないと積込めないことからイの作業は当初設計に含まれている。

トラックの運搬費には当然に荷降ろしを含んでいる(そうでなければ、当初設計に「荷降ろし」が必要になるが、どの類似の工事にもない。)ので、幹材と枝葉を区分して降ろすことも当初設計に含まれている。

結局、アの幹から確実に枝を取り除く作業が、当初設計にない作業ということになる。

本件で伐採した立木は多く見積もっても20本程度で、それぞれの木々は先頭に近い部分まで枝がない。実際に必要な枝打ちは、先端に近い部分だけであるからその作業量はわずかである。

実際に伐採した本数が明示されていないので、伐採直前のグーグルストリートビューの写真と伐採後の写真を比較して推定する。

伐採前(2023年6月)

(省略)

伐採後

(省略)

写真の見比べでは10数本と考えられる。そこで、20本程度と見込んでおけば計算上十分だと思われる。

〈写真〉伐採木をトラックに積み込める長さに小切りした状態(当初設計に含まれている)

(省略)

〈写真〉幹と枝の状況。先端近くまで枝はない。

(省略)

〈写真〉幹の枝払い。チェンソーで手早く取り除く(当初設計に含まれている)

(省略)

〈写真〉トラックへの積込状況。太い幹材が見られる。

(省略)

〈写真〉薪加工場での荷降ろし。薪に利用できない枝葉の荷降ろし状況。(当初設計に含まれている)工事写真に幹材の荷降ろし写真はない。

(省略)

枝葉が荷降ろしされている写真の場所は、現在では、搬入してきた材料を降ろす場所であり、下の写真のように、2024年9月8日時点では、幹材が置かれている。

〈写真〉ほかのトラックから搬入された薪の材料(長さは4m程度)

(省略)

林野庁の歩掛には、100本あたりの伐倒木の枝払いとして、特殊作業員約0.3人、普通作業員約0.3人が計上されている。

20本では、特殊作業員0.06人、普通作業員0.06人となることから、特殊作業員の労務費約26,000円、普通作業員の労務費約22,000円で計算すると、0.06人×26,000円+0.06人×22,000円=2,880円となる。

実際に、幹から枝を払う作業はチェンソーで簡単に行えることから、20本程度の枝払いは短時間の作業で終わる。

そうすると、追加作業に係る費用は、作業性を考慮して割高に見積もっても1万円程度にしかならない。

監査結果の報告書には、監督員が現場で作業の履行を確認していると記載されているので、少なくとも監督員は作業量を正しく把握している。

500万円という額は、最終的には受注業者と広島市との変更協議で合意して決まったものであるが、実態と大きくかけ離れており、極めて悪質と考えられる。

広島市監査公表第31号及び第32号には、以下の通り、当初設計に計上されている作業と追加で計上された作業の内容が表にまとめられている。

伐採木に係る作業の概要

当初

変更後

作業内容

伐採

伐採

立木を伐採

小切り

法面にてラフテレーンクレーンで降ろすことができる長さに小切り

集積

法面にてラフテレーンクレーンで降ろすことができるよう集積

荷降ろし

法面から道路上へラフテレーンクレーンで荷降ろし

小切り

薪加工場の条件に合うように小切り・枝打ち(1メートル程度)

集積・積込

集積・積込

伐採木を集積・積込

運搬

運搬

伐採木を運搬

荷降ろし

薪加工場にてアーム作業で荷降ろし

荷分け

薪加工場にてアーム作業で幹・枝葉を仕分け

※ 当初は、伐採後に伐採木を道路上に運び出し、道路上で、トラックの荷台に積みこむことができる程度の長さに切ることとしていた。

当初設計では、「伐採」「集積・積込」「運搬」の各工種のみによって、伐採しトラックに積込み運搬して薪加工場で荷降ろしする全過程を行うこととして、その費用が計上されており、変更後も、その費用は削除されていない。

この表には、注釈として「当初は、伐採後に伐採木を道路上に運び出し、道路上で、トラックの荷台に積みこむことができる程度の長さに切ることとしていた。」と記載されているが、そもそもそうすればよいことである。

  • 変更後の「小切り(法面でラフタークレーンで降ろすことができる長さに小切り)」は、当初設計においても当然行わなければトラックに積み込めないことであり、追加作業ではない。
  • 変更後の「集積(法面でラフタークレーンで降ろすことができるよう集積)」は、当初設計においても当然行わなければトラックに積み込めないことであり、追加作業ではない。
  • 変更後の「荷降ろし(法面から道路上へラフタークレーンで荷降ろし)」は、当初設計においても当然行わなければトラックに積み込めないことであり、追加作業ではない。
  • 変更後の「小切り(薪加工場の条件に合うように小切り・枝打ち(1メートル程度))」は、事実と全く異なる。
    1m程度にするのは、下の写真の通り、薪加工場自身が薪にする作業であり、1m程度に小切りすることを薪加工場は搬入条件としていない。偽りが記載されている。

〈写真〉薪加工場で作られた薪製品(長さ1m程度)

(省略)

〈写真〉薪の加工設備。長い幹材を切断しながら割り、薪にしていく。

(省略)

  • 変更後の「荷降ろし(薪加工場にてアーム作業で荷降ろし)」は、当初設計においても、行わなければトラックに積んだままになり運搬作業が終わらないため必要な作業であり、追加作業ではない。
  • 変更後の「荷分け(薪加工場にてアーム作業で幹・枝葉を仕分け)」は、そもそもトラックに積み込む段階で仕分けて積込まれているので、不要である。

受注業者は伐採作業着手日に伐採木を運ぶことを薪加工場に伝え、薪加工場から、荷降ろしに際しては薪材に加工可能な部分(幹)とそれ以外の部分を仕分けして搬入することを求められた(監査結果報告書に記載)のであるから、積込む段階で仕分けられている。

この表に記載されていることは、ほとんどが当初設計に含まれていることであり、だからこそ、8月7日と8日の2日間の作業で追加作業も含めて終えることができている。500万円の追加支出が作業量に見合う支出ではなく、業者に不当な利益を与える支出であることは、どんな理屈を展開するまでもなく、事実が証明している。

広島市監査公表第31号及び第32号には、以下の通り経緯が記載されている。

主な経緯

当該伐採工に係る主な経緯を整理すると、次のとおりである。

年月日

内容

令和4年11月15日

経済観光局農林水産部農林整備課から各区役所に対し、木材の地産地消による地域の活性化のため、発生した伐採木を薪加工場に搬入するよう依頼があった。

令和5年2月

工事担当課は、伐採木の引取条件を経済観光局農林水産部農林整備課に問い合わせ、伐採木の種類、枝葉の有無、幹の径等は問わず、無償で引き取るとの説明を受けた。

3月7日

上記の説明を受けたことから、工事担当課は、工事費の積算に当たり、一般的な作業内容となる伐採、集積・積込、運搬作業の見積りを徴取した。

6月9日

工事担当課は、入札後資格確認型一般競争入札にて入札公告を行い、見積単価及び労務歩掛等を積算参考資料及び工事設計書で公表した。

7月14日

受注者と請負契約を締結した。

8月上旬

  • 受注者は、伐採木の受入施設である薪加工場から、受入の条件として伐採木を薪加工場内の所定の場所に収まる長さに調整すること、搬入した伐採木の荷降ろし作業を行うこと、その際には薪材に加工可能な部分とそれ以外の部分を所定場所に仕分けすることなどを示された。
  • 工事担当課は薪加工場の所管課である佐伯区農林建設部農林課を通じ、引取条件の内容についてC団体に確認した。
  • 工事担当課は、受注者から追加で必要となる費用の概算額を聴取した。

8月1日

受注者はA社(1次下請業者)と伐採工に係る下請契約を締結した。

5日

A社(1次下請業者)はB社(2次下請業者)と伐採工に係る下請契約を締結した。

7日

  • 受注者は、薪加工場から付された引取条件について、工事担当課と協議した。
  • 工事担当課は、引取条件を満たすため伐採木に係る施工条件を変更する旨を受注者に回答した。

7日8日

  • 受注者及び下請業者(A社、B社)は、伐採、集積・積込、小切り、荷降ろし、荷分け作業を行った(2日間、延べ12人で実施)。
  • 受注者は、他人に委託することなく自社により車両4台分22.3トンの伐採木を、薪加工場に運搬した。

21日

工事担当課は三者から小切り、荷降ろし、荷分け作業の見積りを徴取した。

10月31日

工事担当課は技術管理課と、伐採木に係る引取条件の変更について設計変更協議を行った。

11月7日

  • 受注者と、請負代金額の変更契約を締結した。
    変更内容(抜粋)
    伐採木の引取条件の変更 増額 約500万円
  • 受注者は、工事完成を通知した。

9日

受注者は、工事完成検査を受けた。

令和6年1月30日

請負契約期間終了

それによれば、伐採作業が終わって2週間後になる8月21日に、佐伯区地域整備課は3者から追加工事に対する見積を徴取している。

しかし、全体の伐採作業が、作業員3人で2日間で終わった事実があるにも関わらず、3者がそれぞれ追加作業分として500万円以上になる見積を出したことは信じがたい。すでに実態が分かっているにも関わらず法外な見積となっている。このことからは、広島市が直接見積依頼したのではなく、広島市合意のもとで3者の相見積りを提出したのではないかとの疑念も出てくる。
既に作業が終わっているので、実態に合わせて追加作業分を積算するか、標準歩掛に基づいて積算すべきで、それ以外に方法はない。これでは特定業者に不当に利益を与えることとなって、適正な財務会計処理とはならない。

標準歩掛に照らして考えると以下の通りになる。

広島市にはないが、島根県土木部技術管理課長通達に、伐採、集積・積込の標準歩掛がある。これは、見積によらず積算する場合に適用されるもので、この積算額は非常に参考になる。

(省略)

実際に金額を当てはめると、100平方メートルあたりで

伐採(省略)

急斜面であり難易度が高いことから10%の割増をすると

22,522×1.1=24,774.2円

従って、1平方メートルあたりでは、248円となり、見積による800円は、そもそも高額である。

集積・積込(省略)

従って、1平方メートルあたりでは、357円となり、見積による2,000円は、そもそも高額である。

このように、標準歩掛に照らしてみていくと、作業面積が480平方メートルであることから、伐採+集積・運搬で以下の通りとなる、

ア 標準歩掛では、480平方メートル×(248+357)円/平方メートル=290,400円

イ 当初設計額は、480平方メートル×(800+2,000)円/平方メートル=1,344,000円(←見積による。見積が高すぎる)である。

実際に、2日間、延べ6人の作業員で実施していて、作業員の平均単価を25,000円と仮定すると、6×25,000=150,000円しかかかっていない。これに機械器具損料が多少加わるが、標準歩掛の約30万円で十分すぎる利益が確保できる。これは、直接工事費であって、元請には約6割の諸経費が加算されて支払われる。(元請・下請職員の経費は、諸経費でまかなわれる。)

当初設計額は144万円(現場管理費、一般管理費等の経費を込めると工事価格は1.6倍程度になるから、144万円×1.6≒230万円)であることから、元請業者は、当初設計額だけで十分過ぎる利益を確保している状態になっているといえる。

本件工事では、当初設計において、落石防護工を実施する区域の立木等を取り除く工事として「伐採工(伐採、集積・積込、伐採運搬費)」を準備費に計上しており、施工条件で、伐採木を湯来町麦谷にある薪加工場に搬入することを明示している。

広島市は、C団体と協議の上、工事に支障となる木々は、伐採してC団体の薪加工場に出荷して薪としてリサイクルすることとし、そのために必要となる費用を当初設計に計上していて、受注業者も、その施工条件のもとに、必要経費を自ら積算して入札に臨み、落札して、伐採木を薪加工場に搬入することを約した工事請負契約を広島市と締結している。

ところが、工事に着手したのち、設計計上されている金額だけでは実施できず、約500万円の増額が必要になったとして、令和5年11月7日に契約の変更が行われている。

増額理由は、設計の「変更理由書」に以下の通り記載されている。

「伐採作業の施工に際し、伐採木の搬出先(湯来町麦谷の薪加工場)において協議を行ったところ、伐採木を薪に加工するため、引き取りの条件として、荷降ろし、小切り、荷分け作業を行うよう依頼があったことから、これに係る費用を追加するものである。」

「工事週報」、「安全衛生指示書・安全日誌」、「伐木の搬入集計表」、「警備員集計表」によれば、この「伐木」、「集積・積込み(場内小運搬含む)」、「運搬」、「小切り・荷下ろし・荷分け」の全作業は、2023年8月7日と8日の2日間で、1日3人の作業人員(延べ6人)で行われており、薪加工場への運搬数量は、8t車によって、8月7日に2回(計13.91t)、8月8日に2回(計8.39t)合計4回で22.3t運搬されていることが記録されている。それ以外の日に伐採木に係る作業は行われていない。

また、作業が終わった後で行われた広島市からの見積依頼に答えて、3者がそれぞれ1平方メートルあたり6,000円、6,500円、7,000円の見積を提出した。その中間の1平方メートルあたり6,500円を採用して500万円の追加になった。

なお、追加作業を設計変更で対応することは8月7日当日の工事打合せ簿による変更協議で合意されているが、その額等について定めがない。

本件伐採工の積算内訳について、まとめる。

当初計上項目と変更後計上項目は下表の通りである。

(省略)

当初設計では、「伐採」「集積・積込」「運搬」の3項目で、立木を伐採して薪加工場に運搬し荷降ろしするまでの全ての工程を含んでいる。

つまり、「伐採」「集積・積込」「運搬」の3項目で完了できるよう積算されているのであるから、変更後追加した「小切りア」はそもそも「伐採」に含まれており、「集積」はそもそも「集積・積込」に含まれており、「荷降ろし」も「集積・積込」に含まれており、「小切りイ」では1m程度に小切りすることはそもそも求めておらず、「処分先荷降ろし」及び「荷分け」はそもそも「運搬」に含まれているので、変更追加した項目はほとんどすべて2重計上になっている。

2重計上分は、明らかに積算ミスであるから是正されなければならない。

最後に重要な点に触れる。

薪加工場は、薪の材料になるものだけを受け入れるところであり、薪の材料にならないものは搬入して欲しくない。薪加工場は、単に、枝葉まで一緒に搬入するのではなく、薪に加工可能な幹材のみの搬入にするよう要望しただけなのである。このことは、薪加工場に確認して明らかなことであり、監査委員が確認すれば一層はっきりする。

受注業者も広島市も、そのことが分かっていながら、薪加工場側が当初の約束を反故にして厳しい条件を付けたと、さも大変な追加作業が必要になったように装って、法外な追加変更を行ったものといえる。

幹材は先端付近まで枝がないのであるから、枝がない部分の幹材のみ薪加工場に運搬すれば追加作業は全く必要ない。

8月7日当日に薪加工場に搬入連絡をして初めて、当初の約束と違って追加作業が必要になったとしているが、薪加工場側は、魚切の防災工事について広島市に提出した文書で、雑木等の受入はしておらず搬入できないことをすでに明らかにしている。このことは7月18日には分かっていたことである。

5~6頁の伐木の小切り状態の写真、6頁の積込みの写真には、立派な幹材が写っているが、7ページの荷降ろしの写真には、それらの幹材はないし、全ての工事写真においても幹の荷降ろしの写真はない。

証拠写真を写していないことによって、幹材の薪加工場への搬入の事実を証明できず、かつて恵下埋立地の建設工事であったように、幹材を木材市場で売却した疑いも晴れない。

薪にならない部分は、ほぼ同時期に伐採が実施され、薪加工場から搬入を断られた「主要地方道五日市筒賀線(魚切)道路防災工事(5-1)」「主要地方道五日市筒賀線(打尾谷)道路防災工事(5-1)」及び「一般県道長野葛原線道路防災工事(5-1)」同様に、産業廃棄物として処分することになるので、産廃処分とすべきであった。

それらまで薪加工場に搬入すると、結局、薪加工場側が産廃等として適切な処分をしなければ、薪加工場自身が廃棄物処理法違反で犯罪行為を働くこととなってしまう。

そもそも、排出事業者が不要物として排出したものを別の事業者が有用物として無償で受け入れる場合であっても運搬段階では廃棄物に該当するので、廃棄物処理法上の手続が必要であるが、受注者はそれをしておらず違法である。

この点も十分に監査すべきである。

以上の通り、明らかになっている事実や添付した事実証明書を客観的に判断すれば、不当な財務会計処理となっていることは自明であるから、その是正を求めて監査請求するものである。

(2) 請求の対象となる職員

広島市長

佐伯区長

佐伯区農林建設部長

佐伯区地域整備課長

都市整備局技術管理課長

財政局工事契約課長

その他この工事手続及び支払いに関係する職員

(3) 損害の推定

約499万円(設計変更で追加された500万円から実際に必要な追加作業の概算額1万円を差し引いた額)

(4) 請求する措置

過大に支払った額の返還を行うこと

違法・不当な処理をした職員に対する応分の処分を行うこと

(事実を証する事実証明書として次の書類が提出されているが、添付を省略する。)

【事実証明書1】「一般国道433号(大古谷)道路防災工事(5-1)」の実施概要の分かる広島市調達情報公開システムの表示

【事実証明書2】令和6年4月15日付け広島市監査公表第5号及び第6号の公表内容のうち「第4 監査の結果 1 事実の確認 (2) 主な経緯」の契約変更に係る記載

【事実証明書3】当初設計書及び変更設計書における準備費の計上内容(上段:当初、下段:変更)

【事実証明書4】伐採木を湯来町麦谷にある薪加工場に搬入することを明示した土木工事施工条件

【事実証明書5】採木の引取条件の変更を明記した変更理由書

【事実証明書6】「工事週報」(伐採に関わる部分)

【事実証明書7】「安全衛生指示書・安全日誌」(伐採に関わる部分)

【事実証明書8】「伐木の搬入集計表」

【事実証明書9】「警備員集計表」(伐採に関わる部分)

【事実証明書10】作業が完了した後に実施された見積依頼に対する3者の見積書

【事実証明書11】伐採を開始した8月7日に受注業者から発議され同日広島市が設計変更で対応することを約束した工事打合せ簿

【事実証明書12】ほぼ同時期に伐採が実施され、薪加工場に薪材として搬出する設計となっていた「主要地方道五日市筒賀線(魚切)道路防災工事(5-1)」「主要地方道五日市筒賀線(打尾谷)道路防災工事(5-1)」及び「一般県道長野葛原線道路防災工事(5-1)」において、薪加工場が搬入を断った文書

【事実証明書13】伐採工に係る全ての工事写真

【事実証明書14】排出事業者が不要物として排出したものを別の事業者が有用物として無償で受け入れる場合であっても廃棄物に該当すること(東京都ホームページより)

第2 請求の受理

本件措置請求は、地方自治法第242条第1項の所定の要件を具備するものと認め、令和6年10月1日に、同年9月19日付けでこれを受理することを決定した。

第3 監査の実施

1 請求人による証拠の提出及び陳述

地方自治法第242条第7項の規定に基づき、請求人に対し、証拠の提出及び陳述の機会を設けたところ、請求人から次の書類の提出があった。なお、陳述は行われなかった。

(1) 追加証拠の提出

ア 提出日

令和6年10月8日

イ 提出された証拠

道路防災工事において不適切な設計変更が行われたと思料されることの是正を求める措置請求(令和6年9月19日付け第844号受理分)の追加証拠の提出

【事実証明書追加1】本件工事の準備費に計上されている伐採にかかる作業の積算(「伐採」、「集積・積込」、「伐採運搬費」)のための見積及び見積からの単価決定

【事実証明書追加2】島根県土木部技術管理課長の通達

【事実証明書追加3】林野庁森林整備部整備課長の通達

【事実証明書追加4】高エネルギー吸収型ポケット式落石防止網工の積算のために徴取した見積(1者見積)

【事実証明書追加5】設計変更で過大な増額をして市職員が逮捕された「安佐北区4区2号線道路改良工事(21-1)」に関する市長の記者会見

(添付を省略する。)

2 広島市長(佐伯区役所農林建設部地域整備課)の意見書の提出

広島市長に対し、意見書及び関係書類等の提出を求めたところ、令和6年10月7日付け広伯整第493号により職員措置請求に伴う意見書の提出が、また、同月22日付け広伯整第523号により追加証拠提出に伴う意見書の提出があった。なお、陳述は行われなかった。

これら意見書の主な内容は、次のとおりである。

(1) 本市の意見の趣旨

請求人が主張しているような違法・不当な支出は生じていないことから、本件措置請求は棄却されるべきである。

(2) 本市の意見の理由

ア 請求人の主張に対する反論について

(ア) 伐採工の追加作業に対する約500万円の増額変更は、不適切・不当であり、また、2重計上は明らかな積算ミスであり是正されなければならないとの主張について

請求人は、伐採工の追加作業に対する約500万円の増額変更は、実質一人工分約83万円の増額であり、不適切・不当であると主張している。

ここで請求人の主張する約500万円には、本件工事の全体に係る安全対策や資機材の搬出入に要する費用、労働者の確保に要する費用、会社を運営する費用等の諸経費(共通仮設費、現場管理費、一般管理費)及びそれらに係る消費税相当分が含まれており、そのすべてが当該追加作業に対する費用ではない。

当該追加作業に係る費用については、その作業内容が土木工事積算基準書に定められていないものであることから、三者見積りを徴収のうえ、基準に則り適正に単価を決定したものであるが、一般的に見積単価は、労務費や燃料費など見積時点の市場情勢や現場の施工性・制約など、多岐に渡る条件を反映した実勢価格であるところ、本件工事の見積り単価においては、急遽、追加作業が必要になったことによる調整、急峻な法面における施工性や時間的な制約などの条件及び市場情勢を反映していると考えられ、その単価の多寡について、国や他県が示している標準歩掛により算出した単価とそもそも比較できるものではなく、当該追加作業の見積単価について何ら不当なものはない。

なお、伐採作業時には、請求人が指摘する二次下請業者の作業員3名以外にも、一次下請業者及び元請業者の3人の作業員も従事していることを確認できている。

また、請求人は、当該追加作業について、当初設計に計上されている「伐採工(伐採、集積・積込、伐採運搬費)」の費用に全て含まれており2重計上であると主張している。

当初設計に計上されている「伐採工(伐採、集積・積込、伐採運搬費)」は、一般的な作業内容となる伐採(立木の伐倒)、集積・積込(伐採木の集材、運搬車への積込)、伐採運搬費(本件工事場所から薪加工場までの運搬費)であるが、「小切りア」、「集積」、「荷降ろし」は、当初見込んでいる伐採の後に行う法面上での作業であり、また、「小切りイ」は薪加工場の条件に合うように、小切り・枝打ち(1メートル程度)を行っているものである。

また、枝葉と幹を一緒に8トントラックへ集積・積み込みし、薪加工場へ搬入した後の「処分先荷降ろし」及び「荷分け」においては、枝葉と幹部分の荷降ろしと仕分けを薪加工場内で行っているものであって、上述のいずれの追加作業においても、当初計上している伐採工の費用には含まれていないものであり、変更追加した項目は2重計上になっているという請求人の指摘は当たらない。

(参考)伐採木に係る作業の概要

当初

変更後

作業内容

伐採

伐採

立木を伐採

小切り

法面にてラフテレーンクレーンで降ろすことができる長さに小切り

集積

法面にてラフテレーンクレーンで降ろすことができるよう集積

荷降ろし

法面から道路上へラフテレーンクレーンで荷降ろし

小切り

薪加工場の条件に合うように小切り・枝打ち(1メートル程度)

集積・積込

集積・積込

伐採木を集積・積込

運搬

運搬

伐採木を運搬

荷降ろし

薪加工場にてアーム作業で荷降ろし

荷分け

薪加工場にてアーム作業で幹・枝葉を仕分け

(イ) 排出事業者が不要物として排出したものは、廃棄物処理法上の手続が必要であるが、受注者はそれをしておらず違法であるとの主張について

請求人は、受注者が廃棄物処理法上の手続をしておらず違法であると主張しているが、本件工事の当初設計に当たり、経済観光局農林水産部農林整備課への事前の聞き取りにおいて、薪加工場では、伐採木の幹、枝葉も含めて再生利用するため、一連の伐採木全てを搬入可能であることを確認しており、国の通知(令和3年4月14日付け環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課長通知(環循規発第2104141号))においては、廃棄物に該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべきものである旨が示されていることも踏まえ、枝葉についても幹と同様に産業廃棄物には該当しないと判断していることから、廃棄物処理法上の手続が必要であるという請求人の指摘は当たらない。

イ 請求人の追加証拠による主張に対する反論について

請求人は、実際に必要とした作業員の人数や機械器具損料等を計上(いわゆる出面)して、妥当な変更額として定めなければならないと主張しているが、これは請求人の一方的な考えによるものであり、本市において、そのような定めはなく、請求人の主張は当たらない。

また、請求人は、島根県等が公表している伐採の標準歩掛によって、見積額の妥当性を判断することができると主張しているが、当該標準歩掛はあくまで概算費用を算出するものであり、「急傾斜であるなど、現地の状況が厳しい場合、大幅な設計変更が想定されるため、増額予算を十分に考慮しておくこと。」と明記されている。

ここで、本件工事現場は、急峻で地面の起伏も激しく、法下の河川との落差も大きいなど、危険で足場も悪い条件下での伐採作業や、伐採後の国道上での作業は、16時までに交通解放を行わなければならない時間的な制約がある中、更に、法面下には重要インフラ施設である橋りょうや照明施設等があり、非常に厳しい施工条件下において、難易度の高い作業を行っているものであり、他県が示している標準歩掛により算出した単価で見積額の妥当性を判断できるという請求人の主張は認められない。

当該追加作業に係る費用については、その作業内容が土木工事積算基準書に定められていないものであることから、基準に則り三者見積りを徴収のうえ、適正に単価を決定したものであり、当該追加作業の見積単価について何ら不当なものはない。

(3) 結論

以上のことから、請求人が主張する内容については、いずれも根拠が認められず、違法・不当な支出は生じていないことから、本件措置請求は棄却されるべきである。

3 広島市長(都市整備局技術管理課)の意見書の提出

広島市長に対し、意見書及び関係書類等の提出を求めたところ、令和6年10月8日付け広都技第56号により意見書が提出された。なお、陳述は行われなかった。

意見書の主な内容は、次のとおりである。

(1) 広島市長(都市整備局)の意見

広島市職員措置請求の対象となっている「一般国道433号(大古谷)道路防災工事(5-1)の変更契約(以下「本件変更契約」という。)」については、佐伯区農林建設部地域整備課(以下「工事担当課」という。)が、都市整備局技術管理課(以下「技術管理課」という。)と協議した上で工事担当課が工事の施行変更の決定を行い、工事担当課より変更契約の締結を依頼された財政局契約部工事契約課が、本件変更契約の締結事務を行ったものである。

工事担当課と技術管理課との協議については、広島市監査公表第31号及び第32号 2判断(2)判断にもあるとおり、変更契約に際しては広島市建設工事設計変更ガイドラインに基づき技術管理課に協議を行っており、適正に手続されたものである。

4 広島市長(財政局契約部工事契約課)の意見書の提出

広島市長に対し、意見書及び関係書類等の提出を求めたところ、令和6年10月8日付け広契工第9号により意見書が提出された。なお、陳述は行われなかった。

意見書の主な内容は、次のとおりである。

(1) 広島市長(財政局)の意見

広島市職員措置請求の対象となっている本件変更契約については、工事担当課が、技術管理課と協議した上で工事の施行変更の決定を行い、引き続き財政局契約部工事契約課に対し、変更契約締結の依頼を行ったものであって、同課は、当該依頼に基づいて本件変更契約の締結事務を行ったものである。

同課の職務権限であるが、工事担当課の依頼に基づき、契約締結の事務手続を行うことであって、工事担当課が行う工事の設計内容及び施行の決定(工事の変更を含む。)に及ばない。ただし、契約締結に必要な書面が整っていない、明らかな法令違反があるなどの場合は、工事担当課への確認や指導を行うことができるものである。

本件変更契約について、同課は、工事担当課から同課に提出された施行変更伺兼契約依頼変更伺を確認したところ、当該工事の設計内容及び施行の変更は、工事担当課が技術管理課と協議した上で工事担当課の裁量により決定されたものであり、書面は整えられ、かつ明らかな法令違反はないと判断したことから、変更契約の締結事務を行ったものである。

5 監査対象事項

請求人は、伐採木の引取条件の変更に伴う約500万円の増額変更は高額であり、この増額変更契約及びこれに伴う経費の支出は、違法又は不当な公金の支出及び違法又は不当な契約の締結、履行に当たると主張していると認められる。また、伐採木の薪加工場への運搬について、受注者が廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)に定める手続を行わなかったことは違法であると主張していると認められる。

このため、伐採作業に係る追加費用の計上等について、違法又は不当な点がないか監査した。

6 監査の実施内容

請求人から提出された広島市職員措置請求書及び事実を証する書類、請求人から提出された追加証拠、広島市長から提出された意見書のほか関係書類を確認するとともに、関係職員への聴取りを行うほか、別添の令和6年8月29日付け広島市監査公表第31号で監査結果(以下「監査公表第31号監査結果」という。)を公表した広島市職員に関する措置請求(以下「監査公表第31号措置請求」という。)等、これまでに実施した監査での知見を活用し、本件措置請求において述べられている事実関係について確認した。

第4 監査の結果

1 事実の確認

本件工事の請負契約における伐採作業に係る追加費用の計上及び伐採木の薪加工場への運搬に係る廃棄物処理法上の取扱いについて、本件措置請求において述べられている事実関係と監査公表第31号措置請求において述べられている事実関係は同一のものであると認められる。

したがって、本件措置請求に対する判断の基となる事実関係については、監査公表第31号監査結果において確認した事実関係のとおりである。

なお、工事担当課は、伐採作業に係る追加費用の見積単価について、急峻で地面の起伏も激しく、法下の河川との落差も大きいなど、危険で足場も悪い条件下において急遽必要となった追加作業であることや、伐採木を薪として活用するため伐採木自体を丁寧に取扱う必要があるといった特殊な事情を有した難易度の高い作業であることなどを踏まえ、作業経験のある専門業者から見積りを徴したものであり、その額は適切であると判断していた。

2 判断

(1) 請求人及び市長の主張

請求人は、伐採木の引取条件の変更に伴う約500万円の増額変更は高額であり、この増額変更契約及びこれに伴う経費の支出は、違法又は不当な公金の支出及び違法又は不当な契約の締結、履行に当たると主張していると認められる。また、伐採木の薪加工場への運搬について、廃棄物処理法に定める手続を行わなかったことは違法であると主張していると認められる。

これに対し、市長は次のとおり主張する。

  • 請求人の主張する約500万円には、本件工事の全体に係る安全対策や資機材の搬出入に要する費用、労働者の確保に要する費用、会社を運営する費用等の諸経費(共通仮設費、現場管理費、一般管理費)及びそれらに係る消費税相当分が含まれており、そのすべてが当該追加作業に対する費用ではない。
    当該追加作業に係る費用については、その作業内容が土木工事積算基準書に定められていないものであることから、三者見積りを徴収のうえ、基準に則り適正に単価を決定したものであるが、一般的に見積単価は、労務費や燃料費など見積時点の市場情勢や現場の施工性・制約など、多岐に渡る条件を反映した実勢価格であるところ、本件工事の見積り単価においては、急遽、追加作業が必要になったことによる調整、急峻な法面における施工性や時間的な制約などの条件及び市場情勢を反映していると考えられ、その単価の多寡について、国や他県が示している標準歩掛により算出した単価とそもそも比較できるものではなく、当該追加作業の見積単価について何ら不当なものはない。
  • 本市において、実際に必要とした作業員の人数や機械器具損料等を計上(いわゆる出面)して、妥当な変更額として定めなければならないという定めはない。
  • 島根県等が公表している伐採の標準歩掛は、あくまで概算費用を算出するものであり、「急傾斜であるなど、現地の状況が厳しい場合、大幅な設計変更が想定されるため、増額予算を十分に考慮しておくこと。」と明記されている。
    本件工事現場は、急峻で地面の起伏も激しく、法下の河川との落差も大きいなど、危険で足場も悪い条件下での伐採作業や、伐採後の国道上での作業は、16時までに交通解放を行わなければならない時間的な制約がある中、更に、法面下には重要インフラ施設である橋りょうや照明施設等があり、非常に厳しい施工条件下において、難易度の高い作業を行っているものであり、他県が示している標準歩掛により算出した単価で見積額の妥当性を判断できるという主張は認められない。
  • 当初設計に計上されている「伐採工(伐採、集積・積込、伐採運搬費)」は、一般的な作業内容となる伐採(立木の伐倒)、集積・積込(伐採木の集材、運搬車への積込)、伐採運搬費(本件工事場所から薪加工場までの運搬費)であるが、「小切りア」、「集積」、「荷降ろし」は、当初見込んでいる伐採の後に行う法面上での作業であり、また、「小切りイ」は薪加工場の条件に合うように、小切り・枝打ち(1メートル程度)を行っているものである。
    また、枝葉と幹を一緒に8トントラックへ集積・積み込みし、薪加工場へ搬入した後の「処分先荷降ろし」及び「荷分け」においては、枝葉と幹部分の荷降ろしと仕分けを薪加工場内で行っているものであって、上述のいずれの追加作業においても、当初計上している伐採工の費用には含まれていないものである。
  • 本件工事の当初設計に当たり、経済観光局農林水産部農林整備課への事前の聞き取りにおいて、薪加工場では、伐採木の幹、枝葉も含めて再生利用するため、一連の伐採木全てを搬入可能であることを確認しており、国の通知(令和3年4月14日付け環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課長通知(環循規発第2104141号))においては、廃棄物に該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべきものである旨が示されていることも踏まえ、枝葉についても幹と同様に産業廃棄物には該当しないと判断している。
  • 変更契約に際しては広島市建設工事設計変更ガイドラインに基づき技術管理課に協議を行っており、適正に手続されたものである。
  • 本件変更契約について、工事契約課は、工事担当課から提出された施行変更伺兼契約依頼変更伺を確認したところ、当該工事の設計内容及び施行の変更は、工事担当課が技術管理課と協議した上で工事担当課の裁量により決定されたものであり、書面は整えられ、かつ明らかな法令違反はないと判断したことから、変更契約の締結事務を行った。

(2) 判断

上記1の事実関係から、本件措置請求に対する判断は、監査公表第31号監査結果における判断のとおりとする。

なお、市は、急遽、追加作業が必要になったことによる調整、急峻な法面における施工性や時間的な制約などの条件を踏まえ、当該追加費用の見積単価は適切であると判断したものであり、当該市の判断について、不適当とはいえない。

3 結論

請求人の行った本件措置請求については、理由がないものであることから、請求を棄却する。

(別添)

広島市監査公表第31号

令和6年8月29日

令和6年7月2日付け第442号で受け付けた広島市職員に関する措置請求について、その監査結果を地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第5項の規定により、別紙のとおり公表する。

広島市監査委員 古川 智之

同 井戸 陽子

同 定野 和広

同 石田 祥子

別紙

広監第59号

令和6年8月29日

請求人

(略)

広島市監査委員 古 川 智 之

同 井 戸 陽 子

同 定 野 和 広

同 石 田 祥 子

広島市職員に関する措置請求に係る監査結果について(通知)

令和6年7月2日付け第442号で受け付けた広島市職員に関する措置請求(以下「本件措置請求」という。)について、地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第5項の規定により監査を行ったので、その結果を同項の規定により次のとおり通知する。

第1 請求の要旨

請求書の記載内容から、請求の要旨は次のとおりと整理できる。

道路防災工事の変更契約の是正を求める措置請求

(1) 監査請求の概要

広島市では、佐伯区役所が担当して「一般国道433号(大古谷)道路防災工事(5-1)(以下「本件工事」という。)」(工期 令和5年7月14日~令和6年1月30日。当初契約 51,150,000円)が行われた。

この工事は、途中(令和5年11月7日)で、契約金額の約4割に当たる約2,000万円の減額変更と約1,740万円の増額変更がなされている。

この異常な契約変更については、以前、住民が問題視して住民監査請求書が提出され、監査が実施され、その結果が公表された(令和6年4月15日付け広島市監査公表第5号及び第6号)。

その公表内容のうち「第4 監査の結果 1 事実の確認 (2) 主な経緯」の記載によって、以下のことが明らかにされている。

令和5年11月7日に広島市は受注者と請負代金額の変更契約を締結した時、伐採木の引取条件に変更があったとして、約500万円の増額を行ったこと。

本件工事では、当初設計において、落石防護工を実施する区域の立木雑草等を取り除く工事として「伐採工(伐採、集積・積込、伐採運搬費)」を準備費に計上しており、施工条件で、伐採木を湯来町麦谷にある薪加工場に搬入することを明示している。

広島市は、C団体と協議の上、工事に支障となる木々は、伐採してC団体の薪加工場に出荷して薪としてリサイクルすることとし、そのために必要となる費用を当初設計に計上していて、受注業者も、その施工条件のもとに必要経費を自ら積算して入札に臨み、落札して、伐採木を薪加工場に搬入することを約した工事請負契約を広島市と締結している。

ところが、工事に着手したのち、設計計上されている金額だけでは実施できず、約500万円の増額が必要になったとして、令和5年11月7日に契約の変更が行われている。

増額理由は、設計の「変更理由書」に以下の通り記載されている。

「伐採作業の施工に際し、伐採木の搬出先(湯来町麦谷の薪加工場)において協議を行ったところ、伐採木を薪に加工するため、引き取りの条件として、荷降ろし、小切り、荷分け作業を行うよう依頼があったことから、これに係る費用を追加するものである。」

しかしながら、そこに記載のある「荷降ろし」「小切り」「荷分け」の各作業が新たに発生するという事実や、その作業を行うために新たな費用が必要となるという事実を確認することができず、この増額変更に伴う支出は、違法・不当と思料されることから、是正を求めて監査請求を行う。

本件工事の工事請負契約書等によれば、工事区域の「伐採」に要する費用は、当初請負契約において、木を伐り薪加工場に運搬する直接的な費用として、144万円が設計計上されている。

その後、薪加工場が厳しい引取条件を課したということのようで、その条件をクリアするために「小切り・荷降ろし・荷分け」が必要となり、その直接費用は456万円に膨れ上がることとなった。

この問題に、広島市は、当初請負契約を変更して対応した。

「工事週報」、「安全衛生指示書・安全日誌」、「伐木の搬入集計表」、「警備員集計表」によれば、この「伐木」、「集積・積込み(場内小運搬含む)」、「運搬」、「小切り・荷降ろし・荷分け」の全作業は、2023年8月7日と8日の2日間で、1日3人の作業人員(延べ6人)で行われており、薪加工場への運搬数量は、8t車によって、8月7日に2回(計13.91t)、8月8日に2回(計8.39t)合計4回で22.3t運搬されている。

それ以外の日に伐採木に係る作業は行われていない。

「小切り・荷降ろし・荷分け」作業は、作業に要する直接的な費用が312万円も必要となる大作業であるが、この作業が追加になっても、伐木・運搬も含めて8月7日と8日のわずか2日間延べ6人で全作業が完了している。

「小切り」作業は、通行止めにしていた道路(国道433号線)上に木を伐り出したのち、トラックに積み込むまでの間に、その道路上で行われたものと推測される。

「荷降ろし」作業は、薪加工場での荷降ろしと推察される。

「荷分け」作業は、トラックに積み込む荷(幹、枝、葉等)の仕分けと推察される。

しかし、これらの作業は、すでに当初設計の伐採工(伐採、集積・積込、伐採運搬費)に完全に含まれている。

薪加工場での木材の搬入条件は、トラックに通常積み込む長さ以下であればよく、小切りと言っても4m程度までであるから、これは当然に当初設計に含まれている。また、枝が張っているなどの場合には、トラックに積み込める状態に小切りすることとなるが、それは当初から想定されている作業であり、当然に当初設計に含まれている。通常、幹と枝は完全に区分するのであるから、新たな費用は発生しない。

荷降ろし作業は、トラックに積み込んだ荷物を降ろす作業であるから、これも当然に当初設計に含まれている。

荷分け作業は、幹、枝、葉等に区分けしてトラックに積みやすいようにするものであるから、これも当然に当初設計に含まれている。

従って、新たに「小切り、荷降ろし、荷分け」作業が生じることは考えられない。

薪加工場で伐採木を引き取る条件として約500万円が必要となった理由は、薪加工場と協議したところ、引取条件として、「荷降ろし、小切り、荷分け作業を行うよう依頼があった」である。

このことに関して情報開示請求をし、工事完成図書等を確認したところ、以下のことが分かった。

ア この追加作業について受注業者又は広島市と薪加工場との協議議事録は存在しない。

イ この追加作業についての工事写真は存在しない。

ウ この追加作業についての出来高確認書類は存在しない。

エ この追加作業を明記した「工事週報」「安全衛生指示書・安全日誌」は存在しない。

オ この追加作業についての工事打合せ簿は存在しない。

カ この追加作業について工事担当課は技術管理課と設計変更事前協議を行っていない。

情報開示請求の結果は、追加された「小切り、荷降ろし、荷分け」作業が、実際には存在していないことを限りなく示唆している。

2日間延べ6人での作業に500万円の追加があるということは、その作業が人的作業であることから、当初計上分に加えて、1人1日83万円(500万円÷6人)が追加作業分として支払われたということになる。

明確で適正な積算基準によって人件費等の必要経費を算出する公共工事においては、あり得ない金額である。このことに対する工事完成図書もない。

そこで、500万円もの追加が必要な作業の存在が疑われる(存在していないと思料される)結果が導かれることとなる。

仮に、この作業が、薪加工場に搬入した後に薪加工場内で行う作業というのであれば、C団体の仕事の代行となるから、受注業者は、C団体と契約を行い、本件工事と全く関係のない別の作業としてC団体に代金の請求を行われなければならない。

道路工事であるとして道路財源から支払われたのであれば、違法行為(詐欺行為等)にあたると考えられる。

以上のことから、約500万円もの支出を必要とする「小切り、荷降ろし、荷分け」作業は、実際には存在せず、存在しない作業に対して支払いが行われたと思料される。

なお、薪加工場では原料を購入しているのであるから、運搬された伐採木については、設計書に売却益の計上(マイナス計上)が必要であるが計上されていない。C団体に便宜を図って無償提供しているのであれば、伐採木は産業廃棄物として扱い、マニフェスト(産業廃棄物管理票)を作成した上で産業廃棄物の収集運搬許可を有する業者によって産業廃棄物として運搬しなければならない。

また、有償取引であっても、運搬費や販売可能な条件にするための経費が売却額より高額になれば「逆有償」となって産業廃棄物の扱いとなる。この時も、同様に産業廃棄物として扱わなければならない。

ウェブ上での閲覧によれば、薪加工場に36t搬入してその売却額が216,000円(1t当たり6,000円)であったとの報告がある。

本件工事での薪加工場への出荷量は22.3tであるから、1t当たり6,000円とすると133,800円の売却益があることとなる。この売却益があり、かつ当初設計の運搬費96,000円のままで出荷できるのであれば、本件工事においても逆有償にはならず産業廃棄物としての扱いは不要であった。しかし、売却益は計上されず(工事契約上無償提供)かつ出荷のために500万円も追加で必要となっている。

このような事実から、本件工事では産業廃棄物として運搬しなければならない。

しかし、マニフェストが作成されておらず、廃棄物処理法に違反している。

C団体は、先に示したように搬入される伐採木を有償で購入している。C団体は広島市とは全く別の組織であるから、広島市が市の財産である伐採木を無償で提供することはできない。そのようなことをすれば、広島市の不利益になるとともに、道路事業費の特定団体への権限なき利益供与となる。

設計書に計上すべき売却益が計上されず、事実としても、売却益が広島市の会計に入っていないので、この会計処理も違法・不当なものと思料される。

工事を実施するために伐採した木々には、薪の原料とならない小さな枝や葉、草木も含まれている。これらは、薪加工場での受け入れができないため、産業廃棄物として産業廃棄物の処分施設に運搬しなければならない。しかし、設計書には「処分費」が計上されておらず、マニフェストも存在していない。

この結果からは枝葉・草木が不法投棄(薪加工場に運搬しても不法投棄)された可能性が高く、そうであれば、廃棄物処理法に違反している。

以上の通り、様々な問題があるので、監査の実施を求める。

(2) 請求の対象となる職員

広島市長

佐伯区長

佐伯区農林建設部長

佐伯区地域整備課長

都市整備局技術管理課長

財政局工事契約課長

その他この工事手続き及び支払いに関係する職員

(3) 損害の推定

約500万円

(4) 請求する措置

架空の作業に対して支出された額の返還を行うこと

違法・不当な処理をした職員に対する応分の処分を行うこと

(事実を証する事実証明書として次の書類が提出されているが、添付を省略する。)

【事実証明書1】「一般国道433号(大古谷)道路防災工事(5-1)」の実施概要の分かる広島市調達情報公開システムの表示

【事実証明書2】令和6年4月15日付け広島市監査公表第5号及び第6号の公表内容のうち「第4 監査の結果 1 事実の確認 (2) 主な経緯」の契約変更に係る記載

【事実証明書3】当初設計書及び変更設計書における準備費の計上内容(上段:当初、下段:変更)

【事実証明書4】伐採木を湯来町麦谷にある薪加工場に搬入することを明示した土木工事施工条件

【事実証明書5】採木の引取条件の変更を明記した変更理由書

【事実証明書6】「工事週報」(伐採に関わる部分)

【事実証明書7】「安全衛生指示書・安全日誌」(伐採に関わる部分)

【事実証明書8】「伐木の搬入集計表」

【事実証明書9】「警備員集計表」(伐採に関わる部分)

第2 請求の受理

本件措置請求は、地方自治法第242条第1項の所定の要件を具備するものと認め、令和6年7月19日に、同月2日付けでこれを受理することを決定した。

第3 監査の実施

1 請求人による証拠の提出及び陳述

地方自治法第242条第7項の規定に基づき、請求人に対し、証拠の提出及び陳述の機会を設けたところ、請求人から次のとおり、証拠が提出されるとともに本件措置請求の内容に沿って陳述が行われた。

(1) 追加証拠の提出

ア 提出日

令和6年7月30日

イ 提出された証拠

道路防災工事の変更契約の是正を求める措置請求の追加証拠

【事実証明書追加1】伐木の処理に関する写真

【事実証明書追加2】薪加工場の現状等に関する写真

【事実証明書追加3】ある工事の電子マニフェストを出力したもの

【事実証明書追加4】主要地方道五日市筒賀線(魚切)道路防災工事(5-1)外2件の工事の設計書(上段:当初、下段:変更)のうち伐採木に関する部分及び伐採木に係る施工条件

(添付を省略する。)

(2) 陳述

ア 陳述日

令和6年8月2日

イ 主な陳述内容

  • 伐採の量や伐採のやり方を写真で見ると、当初設計で組み込まれていた金額で十分実施できたと思われる。約500万円の増額は妥当だったのか。
  • 約500万円の増額が必要となった作業は、実体のない架空の請求ではないか。

2 広島市長(佐伯区役所農林建設部地域整備課)の意見書の提出

広島市長に対し、意見書及び関係書類等の提出を求めたところ、令和6年7月26日付け広伯整第312号により意見書が提出された。なお、陳述は行われなかった。

意見書の主な内容は、次のとおりである。

(1) 本市の意見の趣旨

請求人が主張しているような違法・不当な支出は生じていないことから、本件措置請求は棄却されるべきである。

(2) 本市の意見の理由

ア 請求人の主張に対する反論について

(ア) 伐採工に係る当該追加作業の増額変更に伴う支出は違法・不当であるとの主張について

請求人は、当該追加作業について、当初設計に計上されている「伐採工(伐採、集積・積込、伐採運搬費)」の費用に含まれているものと主張している。

本件工事の当初設計で見込んでいる伐採工については、搬出先である薪加工場の所管元課である経済観光局農林水産部農林整備課(以下「所管元課」という。)への事前の聴き取りにより、搬出する伐採木について、その種類や枝葉の有無、幹の径等は問わないとのことであったため、一般的な作業内容となる伐採(立木の伐倒)、集積・積込(伐採木の集材、運搬車への積込)、伐採運搬費(本件工事場所から薪加工場までの運搬費)を本件工事での必要作業として決定し、当該作業に係る費用の見積書を徴取のうえ、その費用を当初設計に計上したところである。

しかし、受注者が伐採作業着手日に伐採木を搬出する旨、薪加工場に伝えたところ、薪加工場からは、全ての伐採木について枝打ち等により薪材に加工可能な部分とそれ以外の部分を分別すること、薪材に加工可能な部分は薪加工場内の所定の場所に収まる長さ等に調整すること、薪加工場内へ搬入した伐採木の荷降ろし作業を行うこと、その際には薪材に加工可能な部分とそれ以外の部分をそれぞれ薪加工場内の所定場所に仕分けすることを薪加工場への搬入に当たっての必要な条件として示されたとして受注者から報告を受けた。このため、当課と受注者が協議のうえ、薪加工場から示された条件を満たすための作業を追加で実施することとし、本件工事の伐採木を薪加工場へ搬出したものである。

当該追加作業は、当初設計時には認知しておらず、徴取した見積書の見積条件に示していない内容であり、当然ながら、当初設計に計上している伐採工の費用には反映されていないことから、その作業に伴う費用は増額されるべきものである。

よって、当該追加作業に係る費用は当初設計に計上されている伐採工の費用に含まれているという請求人の指摘は当たらない。

また、請求人は、情報開示請求の結果から、当該追加作業が実際には存在していないことを限りなく示唆していると主張している。

請求人の指摘するアからカについては以下のとおりである。

ア 当該薪加工場との協議議事録は存在しない

当課から薪加工場の所管課である佐伯区農林建設部農林課を通じ、薪加工場が伐採木の搬入に当たって当該条件を示していることを確認している。

イ 工事写真は存在しない

当該追加作業を含めた準備工に係る伐採工の施工についての状況写真は撮影している。なお、本市監督員が現場において作業の履行を確認している。

ウ 出来高確認書類は存在しない

伐採工は、準備工であるため出来高確認書類の作成は必須ではないが、伐採範囲の立会確認等により出来高は確認している。

エ 工事週報等は存在しない

当該追加作業は伐採工に含まれる一連の作業であり、伐採工の工事週報、安全衛生指示書・安全日誌は存在している。

オ 工事打合せ簿は存在しない

工事打合せ簿は存在している。

カ 技術管理課と設計変更事前協議を行っていない

当該追加作業に係る変更手続きについて、広島市建設工事設計変更ガイドライン(以下「ガイドライン」という。)により、技術管理課との設計変更事前協議は必要としない。

このように、本件工事の施工に当たっては、適正な事務手続のもと、伐採工の履行確認等も行っており、情報開示請求の結果から当該追加作業が実際には存在していないことを限りなく示唆しているという請求人の指摘は当たらない。

また、当該追加作業に係る費用については、その作業内容が土木工事積算基準書に定められていないものであることから、三者見積りを徴取のうえ、基準にのっとり適正に単価を決定したものであり、この点においても、何ら不当なものはない。

なお、伐採作業時には、請求人が指摘する二次下請業者の作業員3名以外にも、一次下請業者及び元請業者の作業員も従事していることを危険予知活動表により確認できている。

(イ) 薪加工場へ伐採木を無償提供することは、特定団体への利益供与であり違法・不当であるとの主張について

請求人は、広島市が市の財産である伐採木を薪加工場へ無償提供することは、特定団体への利益供与であり、違法・不当なものであると主張している。

薪加工場は、佐伯区湯来町において、地域内での新たな雇用、森林資源の有効活用を図ることなどを目的として、令和元年度に本市が整備し、管理運営については、本市の要請により設立された町内会の代表者等で組織する「C団体」と管理協定を締結してC団体に包括的管理を委ねているものである。

こうした中、薪加工場では、薪の取引活動の拡大により、薪の材料となる木材の入手に苦慮していることから、佐伯区内において伐採木が発生する公共工事については、伐採木を無償譲渡により搬出してもらいたい旨、薪加工場の所管元課から依頼があった。薪加工場での取組は、地域住民等の所得の向上や地域内での新たな雇用創出等、地域の活性化等に資するものとして本市が政策的に推し進めている事業であることを鑑み、本市の行政施策推進に寄与するという公益上の観点から、本件工事において伐採木を無償譲渡により薪加工場へ搬出することとしたものであり、これに関してC団体への利益供与に当たらず、違法・不当なものであるとの請求人の主張は認められない。

更に請求人は、薪加工場へ無償提供により搬出された伐採木について、産業廃棄物としてのマニフェスト(産業廃棄物管理票)が作成されておらず、また、薪加工場での受け入れができない枝葉については、産業廃棄物の処分施設に運搬しなければならないが、設計書に「処分費」が計上されていないことから、廃棄物処理法に違反していると主張している。

本件工事の当初設計に当たり、所管元課への事前の聴き取りにおいて、薪加工場では、伐採木の幹、枝葉も含めて再生利用するため、一連の伐採木全てを搬入可能であることを確認しており、枝葉についても幹と同様に産業廃棄物には該当しないため、産業廃棄物の処分施設に運搬しなければならないという請求人の指摘は当たらない。

(3) 結論

以上のことから、請求人が主張する内容については、いずれも根拠が認められず、違法・不当な支出は生じていないことから、本件措置請求は棄却されるべきである。

3 広島市長(都市整備局技術管理課)の意見書の提出

広島市長に対し、意見書及び関係書類等の提出を求めたところ、令和6年7月26日付け広都技第16号により意見書が提出された。なお、陳述は行われなかった。

意見書の主な内容は、次のとおりである。

(1) 広島市長(都市整備局)の意見

「一般国道433号(大古谷)道路防災工事(5-1)の変更契約(以下「本件変更契約」という。)」については、佐伯区農林建設部地域整備課(以下「工事担当課」という。)が、都市整備局技術管理課(以下「技術管理課」という。)と協議した上で工事担当課が工事の施行変更の決定を行い、工事担当課より変更契約の締結を依頼された財政局契約部工事契約課が、本件変更契約の締結事務を行ったものである。

工事担当課と技術管理課との協議については、ガイドラインに基づいて行うものであり、本件変更契約についても、ガイドラインに従って適正に手続されたものである。

なお、請求の概要にある伐採木の引取条件の変更は、ガイドラインに基づく設計変更事前協議を要しないものである。

4 広島市長(財政局契約部工事契約課)の意見書の提出

広島市長に対し、意見書及び関係書類等の提出を求めたところ、令和6年7月25日付け広契工第5号により意見書が提出された。なお、陳述は行われなかった。

意見書の主な内容は、次のとおりである。

(1) 広島市長(財政局)の意見

本件変更契約については、工事担当課が、技術管理課と協議した上で工事の施行変更の決定を行い、引き続き財政局契約部工事契約課に対し、変更契約締結の依頼を行ったものであって、同課は、当該依頼に基づいて本件変更契約の締結事務を行ったものである。

同課の職務権限であるが、工事担当課の依頼に基づき、契約締結の事務手続を行うことであって、工事担当課が行う工事の設計内容及び施行の決定(工事の変更を含む。)に及ばない。ただし、契約締結に必要な書面が整っていない、明らかな法令違反があるなどの場合は、工事担当課への確認や指導を行うことができるものである。

本件変更契約について、同課は、工事担当課から同課に提出された施行変更伺兼契約依頼変更伺を確認したところ、当該工事の設計内容及び施行の変更は、工事担当課が技術管理課と協議した上で工事担当課の裁量により決定されたものであり、書面は整えられ、かつ明らかな法令違反はないと判断したことから、変更契約の締結事務を行ったものである。

5 監査対象事項

請求人は、変更理由書に記載のある「荷降ろし」「小切り」「荷分け」の各作業が新たに発生するという事実や、その作業を行うために新たな費用が必要となるという事実を確認することができないとして、この増額変更契約及びこれに伴う経費の支出は、違法又は不当な公金の支出及び違法又は不当な契約の締結、履行に当たると主張していると認められる。

このため、新たに発生するとされた各作業の施工及びこれに伴う新たな費用の計上について、違法又は不当な点がないかについて監査した。

6 監査の実施内容

請求人から提出された広島市職員措置請求書及び事実を証する書類、請求人の陳述内容、広島市長から提出された意見書のほか関係書類を確認するとともに、関係職員への聴取りを行うなどして監査した。

第4 監査の結果

1 事実の確認

(1) 本件工事における当該伐採工の概要

ア 一般国道433号(大古谷)道路防災工事(5-1)請負契約の概要

(ア)工事場所 佐伯区湯来町大字葛原

(イ)工期 令和5年7月14日から令和6年1月30日まで

(ウ)請負代金額

5,115万円(当初契約)

4,855万6,200円(変更契約)

(エ)受注者 D社

(オ)契約日

令和5年7月14日(当初契約)

令和5年11月7日(変更契約)

(カ)工事内容 道路防災工事

施工延長 50メートル

落石防護工 約510平方メートル

落石予防工、法面工、擁壁工、排水構造物工、構造物撤去工、舗装工、区画線工、仮設工 一式

イ 設計図書上の記載

本件工事の土木工事施工条件及び工事設計書には、当該伐採工について、次の内容が記載されている(関係部分を抜粋)。

(ア) 土木工事施工条件

建設副産物関係

建設発生木材(伐採木)

本工事で発生する建設発生木材(伐採木)は、下記の受入施設に搬出することとする。受入施設の利用条件は次の通りである。

  • 毎週火曜日の午前中及び日曜日は受入不可
  • 受入可能量に制限があるため、受入施設と密に連絡を取り調整すること

なお、工事着手後、有価物として売却可能な伐採木があることが判明した場合は、木材市場に搬出し売却することとし、売却等に伴う一切の手続きは受注者が行うこと。また、建設発生木材(伐採木)の数量、売却金額(手数料等を除く)等については、変更対象とする。

受入施設 備考

C団体

佐伯区湯来町大字麦谷の「C団体」(片道運搬距離13.7キロメートル)に搬出するよう見込んでいる。

ただし、受入可能量等により搬出が困難となった場合は別途協議すること。

(イ) 工事設計書(変更数量等)

名称

単位

当初数量

変更数量

準備費

     
伐採

平方メートル

480

480

集積・積込

平方メートル

480

480

伐採運搬費

4

4

伐採工

小切・荷降ろし・荷分け

平方メートル

480

(2) 伐採木に係る作業の概要

当初

変更後

作業内容

伐採

伐採

立木を伐採

小切り

法面にてラフテレーンクレーンで降ろすことができる長さに小切り

集積

法面にてラフテレーンクレーンで降ろすことができるよう集積

荷降ろし

法面から道路上へラフテレーンクレーンで荷降ろし

小切り

薪加工場の条件に合うように小切り・枝打ち(1メートル程度)

集積・積込

集積・積込

伐採木を集積・積込

運搬

運搬

伐採木を運搬

荷降ろし

薪加工場にてアーム作業で荷降ろし

荷分け

薪加工場にてアーム作業で幹・枝葉を仕分け

※ 当初は、伐採後に伐採木を道路上に運び出し、道路上で、トラックの荷台に積みこむことができる程度の長さに切ることとしていた。

(3) 公共土木工事に伴う伐採木の薪加工場への搬入について

令和4年11月15日に、薪加工場に係る事業の制度所管課である経済観光局農林水産部農林整備課は、各区役所に対し、公共工事で発生する伐採木を薪加工場へ搬出するよう依頼を行った。その内容は次のとおりである。

  • 農林整備課では、佐伯区湯来町水内地区に薪加工場、木材集積場及び薪ボイラーを整備し、地域内における木質バイオマスエネルギーの循環(木材の地産地消)による地域の活性化に取り組んでいる。
  • 薪加工場、木材集積場及び薪ボイラーの稼働については、佐伯区湯来町水内地区の住民で構成する「C団体」が担っているところ、C団体では、市内のアウトドアショップにキャンプ用の薪を卸すなど、活動の幅を拡大しているが、薪の材料となる広葉樹の入手に苦慮している。
  • 一方で、本市が発注する公共土木工事で発生する伐採木は、その大半が産業廃棄物として処分されているが、中には薪として活用できる広葉樹も多く含まれている。
  • このため、薪加工場(木材集積場)において、公共工事で発生する伐採木の受入を行うため、昨年度に車両計量器を整備したところであり、薪加工場への搬入が可能な伐採木がある場合は、個別に調整するので連絡してほしい。

(4) 薪加工場について

経済観光局農林水産部農林整備課によると、薪加工場の事業の目的等は次のとおりである。

ア 事業の目的

本市の中山間地域を中心とする区域は、戦後植えられたスギやヒノキ等の約2万ヘクタールの人工林が伐採期を迎えているが、長く続いている木材価格の低迷により森林所有者の管理意識が低下し、放置され管理不足となっている森林が増加しており、森林の持つ土砂災害の防止、水源の涵養、二酸化炭素の吸収等の公益的機能の低下が危惧されている。

このため、平成28年度から、森林所有者や地域住民等が、地域の森林から間伐後、森林内に放置されている未利用材を搬出し、チップや薪等の木質バイオマス燃料として利活用する取組を支援する「中山間地域自伐林業支援事業」に取り組んでおり、これにより森林所有者等の管理意識の向上による適切な森林整備の促進を図るとともに、地域住民等の所得の向上による中山間地域の活性化を目指している。

このため、佐伯区湯来町において、未利用材を地域住民団体が薪に加工し、公共施設の薪ボイラーの燃料として地域内で消費する「小さな循環モデル」として、薪加工場の整備及び温浴施設である「クアハウス湯の山」へ令和2年度に薪ボイラーの設置を行った。

イ 薪加工場の概要(令和元年度整備)

(ア)場所:佐伯区湯来町大字麦谷

(イ)面積:5,048平方メートル(うち建屋117.6平方メートル)

(ウ)稼働日:原則土曜・日曜・祝日を除いた、9時から16時まで

(エ)車両計量器(令和3年度整備)

型式 マルチロードセル式(ピットレス型)

ひょう量 30,000キログラム

最小測定量 200キログラム

積載寸法 3,000×10,500ミリメートル

目量 10キログラム

(オ)薪の生産目標数:年間600立方メートル(クアハウス湯の山で使用する1年分の燃料)

ウ 運営を行う地元団体の概要(令和元年度設立)

(ア)団体名:C団体

(イ)構成員:27名(令和6年8月現在)

(5) 主な経緯

当該伐採工に係る主な経緯を整理すると、次のとおりである。

年月日

内容

令和4年11月15日

経済観光局農林水産部農林整備課から各区役所に対し、木材の地産地消による地域の活性化のため、発生した伐採木を薪加工場に搬入するよう依頼があった。

令和5年

2月

工事担当課は、伐採木の引取条件を経済観光局農林水産部農林整備課に問い合わせ、伐採木の種類、枝葉の有無、幹の径等は問わず、無償で引き取るとの説明を受けた。

3月7日

上記の説明を受けたことから、工事担当課は、工事費の積算に当たり、一般的な作業内容となる伐採、集積・積込、運搬作業の見積りを徴取した。

6月9日

工事担当課は、入札後資格確認型一般競争入札にて入札公告を行い、見積単価及び労務歩掛等を積算参考資料及び工事設計書で公表した。

7月14日

受注者と請負契約を締結した。

8月上旬

  • 受注者は、伐採木の受入施設である薪加工場から、受入の条件として伐採木を薪加工場内の所定の場所に収まる長さに調整すること、搬入した伐採木の荷降ろし作業を行うこと、その際には薪材に加工可能な部分とそれ以外の部分を所定場所に仕分けすることなどを示された。
  • 工事担当課は薪加工場の所管課である佐伯区農林建設部農林課を通じ、引取条件の内容についてC団体に確認した。
  • 工事担当課は、受注者から追加で必要となる費用の概算額を聴取した。

8月1日

受注者はA社(1次下請業者)と伐採工に係る下請契約を締結した。

5日

A社(1次下請業者)はB社(2次下請業者)と伐採工に係る下請契約を締結した。

7日

  • 受注者は、薪加工場から付された引取条件について、工事担当課と協議した。
  • 工事担当課は、引取条件を満たすため伐採木に係る施工条件を変更する旨を受注者に回答した。

7日

8日

  • 受注者及び下請業者(A社、B社)は、伐採、集積・積込、小切り、荷降ろし、荷分け作業を行った(2日間、延べ12人で実施)。
  • 受注者は、他人に委託することなく自社により車両4台分22.3トンの伐採木を、薪加工場に運搬した。

21日

工事担当課は三者から小切り、荷降ろし、荷分け作業の見積りを徴取した。

10月31日

工事担当課は技術管理課と、伐採木に係る引取条件の変更について設計変更協議を行った。

11月7日

  • 受注者と、請負代金額の変更契約を締結した。
    変更内容(抜粋)
    伐採木の引取条件の変更 増額 約500万円
  • 受注者は、工事完成を通知した。

9日

受注者は、工事完成検査を受けた。

令和6年1月30日

請負契約期間終了

(6) 履行状況等

  • 工事担当課は、薪加工場に係る事業の制度所管課である経済観光局農林水産部農林整備課からの依頼を受け、市の行政施策推進に寄与するという公益上の観点を理由として、本件工事において伐採木を無償譲渡により薪加工場へ搬出することを決定していた。
  • 本件工事の設計図書において、「工事着手後、有価物として売却可能な伐採木があることが判明した場合は、木材市場に搬出し売却することとし、売却等に伴う一切の手続は受注者が行うこと。」等とされているところ、受注者から売却可能な有価物に該当する伐採木に係る連絡がなかったことから、工事担当課は全ての伐採木が薪加工場へ搬出されたものと判断していた。
  • 工事担当課は、薪加工場から示された条件を満たすための作業について、これに要する概算費用を受注者に口頭で確認の上、追加で作業を実施することを決定していた。
  • 当該追加作業に要する費用の計上について、三者から見積りを徴取の上、市の基準にのっとって単価を決定し、当該単価に基づき変更契約を行っていた。
  • 当該追加作業の施工について、当初設計に計上した伐採工との重複はなく、また、工事担当課の指示のとおり実施されたものと認められた。
  • 伐採木に係る引取条件の変更について、工事担当課は、設計変更に先立ち、技術管理課とガイドラインに基づく設計変更協議を行っていた。なお、伐採木の引取条件の変更については、ガイドラインに基づく設計変更事前協議の対象ではないことから、事前協議は行っていなかった。
  • 工事担当課は、薪加工場では、伐採木の幹、枝葉も含めて再生利用するため、一連の伐採木全てを搬入可能であることを経済観光局農林水産部農林整備課に確認していた。また、枝葉についても幹と同様に産業廃棄物に該当しないと判断していた。
  • 枝葉については薪加工場へ搬入後、チップとして再生され、また、本件工事において除草は行っていなかった。

2 判断

(1) 請求人及び市長の主張

請求人は、変更理由書に記載のある「荷降ろし」「小切り」「荷分け」の各作業が新たに発生するという事実や、その作業を行うために新たな費用が必要となるという事実を確認することができないとして、この増額変更契約及びこれに伴う経費の支出は、違法又は不当な公金の支出及び違法又は不当な契約の締結、履行に当たると主張していると認められる。

これに対し、市長は次のとおり説明する。

  • 受注者が伐採作業着手日に伐採木を搬出する旨、薪加工場に伝えたところ、薪加工場からは、全ての伐採木について枝打ち等により薪材に加工可能な部分とそれ以外の部分を分別すること、薪材に加工可能な部分は薪加工場内の所定の場所に収まる長さ等に調整すること、薪加工場内へ搬入した伐採木の荷降ろし作業を行うこと、その際には薪材に加工可能な部分とそれ以外の部分をそれぞれ薪加工場内の所定場所に仕分けすることを薪加工場への搬入に当たっての必要な条件として示されたとして受注者から報告を受けた。このため、工事担当課と受注者が協議のうえ、薪加工場から示された条件を満たすための作業を追加で実施することとし、本件工事の伐採木を薪加工場へ搬出したものである。
    当該追加作業は、当初設計時には認知しておらず、徴取した見積書の見積条件に示していない内容であり、当然ながら、当初設計に計上している伐採工の費用には反映されていないことから、その作業に伴う費用は増額されるべきものである。
  • 当該追加作業に係る費用については、その作業内容が土木工事積算基準書に定められていないものであることから、三者見積りを徴取のうえ、基準にのっとり適正に単価を決定したものであり、この点においても、何ら不当なものはない。
    なお、伐採作業時には、請求人が指摘する二次下請業者の作業員3名以外にも、一次下請業者及び元請業者の作業員も従事していることを危険予知活動表により確認できている。
  • 薪加工場では、薪の取引活動の拡大により、薪の材料となる木材の入手に苦慮していることから、佐伯区内において伐採木が発生する公共工事については、伐採木を無償譲渡により搬出してもらいたい旨、薪加工場の所管元課から依頼があった。薪加工場での取組は、地域の活性化等に資するものとして本市が政策的に推し進めている事業であることを鑑み、本市の行政施策推進に寄与するという公益上の観点から、本件工事において伐採木を無償譲渡により薪加工場へ搬出することとしたものである。
  • 本件工事の当初設計に当たり、所管元課への事前の聴き取りにおいて、薪加工場では、伐採木の幹、枝葉も含めて再生利用するため、一連の伐採木全てを搬入可能であることを確認しており、枝葉についても幹と同様に産業廃棄物には該当しない。
  • 工事担当課と技術管理課との協議については、ガイドラインに基づいて行うものであり、本件変更契約についても、ガイドラインに従って適正に手続されたものである。
    なお、請求の概要にある伐採木の引取条件の変更は、ガイドラインに基づく設計変更事前協議を要しないものである。

(2) 判断

市は、薪加工場での取組は、地域の活性化等に資するものとして政策的に推し進めている事業であることに鑑み、公益上の観点から、本件工事において伐採木を無償譲渡により薪加工場へ搬出することとしていた。

こうした中、市は薪加工場から、搬入に当たっての必要な条件として、伐採木の長さ等の調整や、搬入した伐採木の荷降ろし作業、荷降ろしの際の仕分け作業を行うことなど、当初設計時に認知していなかった条件を示されたため、当該条件を満たすための作業を追加で実施する必要があると判断したものであり、当該市の判断について、不適当とはいえない。

また、当該追加で実施することとした作業と、当初設計時に見込んだ作業に内容の重複はなく、これらの伐採木に係る作業については、市の指示どおりに実施されたものと認められ、当該追加作業に要する費用については、三者から見積りを徴取し、市の基準にのっとって単価を決定の上、変更契約に際してはガイドラインに基づき技術管理課に協議を行っており、適正に変更契約手続が行われたものと認められる。

また、市が、本件工事において薪加工場へ搬出することとした伐採木の幹及び枝葉が産業廃棄物に該当しないと判断していたことについて、国の通知(令和3年4月14日付け環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課長通知(環循規発第2104141号))では、廃棄物に該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべきものである旨が示されており、これを踏まえると、市の判断は不適当とはいえない。

なお、枝葉については薪加工場へ搬入後、チップとして再生され、また、本件工事において除草は行っていなかった。

以上のことから、伐採作業に係る追加費用の計上及び追加作業の施工について、違法又は不当な点があるとは認められない。

3 結論

請求人の行った本件措置請求については、理由がないものであることから、請求を棄却する。

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