道路防災工事の変更契約の是正を求める措置請求(令和6年8月29日)広島市監査公表第32号

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ページ番号1030623  更新日 2025年2月16日

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広島市監査公表第32号

令和6年8月29日

令和6年7月8日付け第470号で受け付けた広島市職員に関する措置請求について、その監査結果を地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第5項の規定により、別紙のとおり公表する。

広島市監査委員 古川 智之

同 井戸 陽子

同 定野 和広

同 石田 祥子

別紙

広監第61号

令和6年8月29日

請求人

(略)

広島市監査委員 古川 智之

同 井戸 陽子

同 定野 和広

同 石田 祥子

広島市職員に関する措置請求に係る監査結果について(通知)

令和6年7月8日付け第470号で受け付けた広島市職員に関する措置請求(以下「本件措置請求」という。)について、地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第5項の規定により監査を行ったので、その結果を同項の規定により次のとおり通知する。

第1 請求の要旨

請求書の記載内容から、請求の要旨は次のとおりと整理できる。

道路防災工事の変更契約の是正を求める措置請求

(1) 監査請求の概要

広島市では、佐伯区役所が担当して「一般国道433号(大古谷)道路防災工事(5-1)(以下「本件工事」という。)」(工期 令和5年7月14日~令和6年1月30日)が行われた。

この工事は、途中(令和5年11月7日)で、契約金額の約4割に当たる約2,000万円の減額変更と約1,740万円の増額変更がなされている。

この異常な契約変更については、過去に、住民が問題視して住民監査請求書が提出され、監査が実施され、その結果が公表された(令和6年4月15日付け広島市監査公表第5号及び第6号)。

その公表内容のうち「第4 監査の結果 1 事実の確認 (2) 主な経緯」の記載によって、以下のことが明らかにされている。

令和5年11月7日に広島市は受注者と請負代金額の変更契約を締結した時、伐採木の引取条件に変更があったとして、約500万円の増額を行ったこと。

本件工事では、当初設計において、落石防護工を実施する区域の立木雑草等を取り除く工事として「伐採工(伐採、集積・積込、伐採運搬費)」を準備費に計上しており、施工条件で、伐採木を湯来町麦谷にある薪加工場に搬入することを明示している。

本件工事では、C団体と協議の上、工事に支障となる木々は、伐採してC団体の薪加工場に出荷して薪としてリサイクルすることとし、そのために必要となる費用を当初設計に計上している。

受注業者も、その施工条件のもとに必要経費を自ら積算して入札に臨み、落札して、伐採木を薪加工場に搬入することを約した工事請負契約を広島市と締結している。

ところが、工事に着手したのち、設計計上されている金額だけでは実施できず、約500万円の増額が必要になったとして、令和5年11月7日に契約の変更が行われている。

増額理由は、設計の「変更理由書」に以下の通り記載されている。

「伐採作業の施工に際し、伐採木の搬出先(湯来町麦谷の薪加工場)において協議を行ったところ、伐採木を薪に加工するため、引き取りの条件として、荷降ろし、小切り、荷分け作業を行うよう依頼があったことから、これに係る費用を追加するものである。」

しかしながら、そこに記載のある「荷降ろし」「小切り」「荷分け」の各作業が新たに発生するという事実や、その作業を行うために新たな費用が必要となるという事実を確認することができず、この増額変更に伴う支出は、違法・不当と思料されることから、是正を求めて監査請求を行う。

本件工事の工事完成図書等によれば、工事区域の「伐採」に要する費用は、当初請負契約において、木を伐り薪加工場に運搬する直接的な費用として、144万円が設計計上されている。

その後、薪加工場が厳しい引取条件を課したということのようで、その条件をクリアするために「小切り・荷降ろし・荷分け」が必要となり、その直接費用は456万円に膨れ上がることとなった。

この問題に、広島市は、当初請負契約を変更して対応した。

「工事週報」、「安全衛生指示書・安全日誌」、「伐木の搬入集計表」、「警備員集計表」によれば、この「伐木」、「集積・積込み(場内小運搬含む)」、「運搬」、「小切り・荷降ろし・荷分け」の全作業は、2023年8月7日と8日の2日間で、1日3人の作業人員(延べ6人)で行われており、薪加工場への運搬数量は、8t車によって、8月7日に2回(計13.91t)、8月8日に2回(計8.39t)合計4回で22.3t運搬されている。

それ以外の日に伐採木に係る作業は行われていない。

「小切り・荷降ろし・荷分け」作業は、作業に要する直接的な費用が312万円も必要となる大作業であるが、この作業が追加になっても、伐木・運搬も含めて8月7日と8日のわずか2日間延べ6人で全作業が完了している。

「小切り」作業は、通行止めにしていた道路(国道433号線)上に木を伐り出したのち、トラックに積み込むまでの間に、その道路上で行われたものと推測される。

「荷降ろし」作業は、薪加工場での荷降ろしと推察される。

「荷分け」作業は、トラックに積み込む荷(幹、枝、葉等)の仕分けと推察される。

しかし、これらの作業は、すでに当初設計の伐採工(伐採、集積・積込、伐採運搬費)に完全に含まれている。

薪加工場での木材の搬入条件は、トラックに通常積み込む長さ以下であればよく、小切りと言っても4m程度までであるから、これは当然に当初設計に含まれている。また、枝が張っているなどの場合には、トラックに積み込める状態に小切りすることとなるが、それは当初から想定されている作業であり、当然に当初設計に含まれている。通常、幹と枝は完全に区分するのであるから、新たな費用は発生しない。

荷降ろし作業は、トラックに積み込んだ荷物を降ろす作業であるから、これも当然に当初設計に含まれている。

荷分け作業は、幹、枝、葉等に区分けしてトラックに積みやすいようにするものであるから、これも当然に当初設計に含まれている。

従って、新たに「小切り、荷降ろし、荷分け」作業が生じることは考えられない。

薪加工場で伐採木を引き取る条件として約500万円が必要となった理由は、薪加工場と協議したところ、引取条件として、「荷降ろし、小切り、荷分け作業を行うよう依頼があった」である。

このことに関して情報開示請求をしたところ、以下のことが分かった。

ア この追加作業について受注業者または広島市と薪加工場との協議議事録は存在しない。

イ この追加作業についての工事写真は存在しない。

ウ この追加作業についての出来高確認書類は存在しない。

エ この追加作業を明記した「工事週報」「安全衛生指示書・安全日誌」は存在しない。

オ この追加作業についての工事打合せ簿は存在しない。

カ この追加作業について工事担当課は技術管理課と設計変更事前協議を行っていない。

情報開示請求の結果は、追加された「小切り、荷降ろし、荷分け」作業が、実際には存在していないことを限りなく示唆している。

2日間延べ6人での作業に500万円の追加があるということは、その作業が人的作業であることから、当初計上分に加えて、1人1日83万円(500万円÷6人)が追加作業分として支払われたということになる。

明確で適正な積算基準によって人件費等の必要経費を算出する公共工事においては、あり得ない金額である。このことに対する工事完成図書もない。

そこで、500万円もの追加が必要な作業の存在が疑われる(存在していないと思料される)結果が導かれることとなる。

仮に、この作業が、薪加工場に搬入した後に薪加工場内で行う作業というのであれば、C団体の仕事の代行となるから、受注業者は、C団体と契約を行い、本件工事と全く関係のない別の作業としてC団体に代金の請求を行われなければならない。

道路工事であるとして道路財源から支払われたのであれば、違法行為(詐欺行為等)にあたると考えられる。

以上のことから、約500万円もの支出を必要とする「小切り、荷降ろし、荷分け」作業は、実際には存在せず、存在しない作業に対して支払いが行われたと思料される。

なお、薪加工場では原料を購入しているのであるから、運搬された伐採木については、設計書に売却益の計上(マイナス計上)が必要であるが計上されていない。C団体に便宜を図って本当に無償提供しているのであれば、伐採木は産業廃棄物として扱わなければならない。

また、有償取引であっても、運搬費や販売可能な条件にするための経費が売却額より高額になれば「逆有償」となって産業廃棄物の扱いとなる。

この時の運搬は、マニフェスト(産業廃棄物管理票)を作成した上で産業廃棄物の収集運搬許可を有する業者によって産業廃棄物として行わなければならない。

ウェブ上での閲覧によれば、薪加工場に36t搬入してその売却額が216,000円(1t当たり6,000円)であったとの報告がある。

本件工事での薪加工場への出荷量は22.3tであるから、1t当たり6,000円とすると133,800円の売却益があることとなる。この売却益があり、かつ当初設計の運搬費96,000円のままで出荷できるのであれば、本件工事においても逆有償にはならず産業廃棄物としての扱いは不要であった。しかし、売却益は計上されず(工事契約上無償提供)かつ出荷のために500万円も追加で必要となっている。

このような事実から、本件工事では産業廃棄物として運搬しなければならない。

しかし、マニフェストが作成されておらず、廃棄物処理法に違反している。

C団体は、先に示したように搬入される伐採木を有償で購入している。C団体は広島市とは全く別の組織であるから、広島市が市の財産である伐採木を無償で提供することはできない。そのようなことをすれば、広島市の不利益になるとともに、道路事業費の特定団体への権限なき利益供与となる。

設計書に計上すべき売却益が計上されず、事実としても、売却益が広島市の会計に入っていないので、この会計処理も違法・不当なものと思料される。

工事を実施するために伐採した木々には、薪の原料とならない小さな枝や葉、草木も含まれている。これらは、薪加工場での受け入れができないため、産業廃棄物として産業廃棄物の処分施設に運搬しなければならない。しかし、設計書には「処分費」が計上されておらず、マニフェストも存在していない。

この結果からは枝葉・草木が不法投棄(薪加工場に運搬しても不法投棄)された可能性が高く、そうであれば、廃棄物処理法に違反している。

以上の通り、様々な問題があるので、監査の実施を求める。

(2) 請求の対象となる職員

広島市長

佐伯区長

佐伯区農林建設部長

佐伯区地域整備課長

都市整備局技術管理課長

財政局工事契約課長

その他この工事手続き及び支払いに関係する職員

(3) 損害の推定

約500万円

(4) 請求する措置

架空の作業に対して支出された額の返還を行うこと

違法・不当な処理をした職員に対する応分の処分を行うこと

(事実を証する事実証明書として次の書類が提出されているが、添付を省略する。)

【事実証明書1】「一般国道433号(大古谷)道路防災工事(5-1)」の実施概要の分かる広島市調達情報公開システムの表示

【事実証明書2】令和6年4月15日付け広島市監査公表第5号及び第6号の公表内容のうち「第4 監査の結果 1 事実の確認 (2) 主な経緯」の契約変更に係る記載

【事実証明書3】当初設計書及び変更設計書における準備費の計上内容(上段:当初、下段:変更)

【事実証明書4】伐採木を湯来町麦谷にある薪加工場に搬入することを明示した土木工事施工条件

【事実証明書5】採木の引取条件の変更を明記した変更理由書

【事実証明書6】「工事週報」(伐採に関わる部分)

【事実証明書7】「安全衛生指示書・安全日誌」(伐採に関わる部分)

【事実証明書8】「伐木の搬入集計表」

【事実証明書9】「警備員集計表」(伐採に関わる部分)

第2 請求の受理

本件措置請求は、地方自治法第242条第1項の所定の要件を具備するものと認め、令和6年7月19日に、同月8日付けでこれを受理することを決定した。

第3 監査の実施

1 請求人による証拠の提出及び陳述

地方自治法第242条第7項の規定に基づき、請求人に対し、証拠の提出及び陳述の機会を設けたところ、請求人からは証拠の提出はなく、陳述も行われなかった。

2 広島市長(佐伯区役所農林建設部地域整備課)の意見書の提出

広島市長に対し、意見書及び関係書類等の提出を求めたところ、令和6年7月26日付け広伯整第313号により意見書が提出された。なお、陳述は行われなかった。

意見書の主な内容は、次のとおりである。

(1) 本市の意見の趣旨

請求人が主張しているような違法・不当な支出は生じていないことから、本件措置請求は棄却されるべきである。

(2) 本市の意見の理由

ア 請求人の主張に対する反論について

(ア) 伐採工に係る当該追加作業の増額変更に伴う支出は違法・不当であるとの主張について

請求人は、この追加作業について、当初設計に計上されている「伐採工(伐採、集積・積込、伐採運搬費)」の費用に含まれているものと主張している。

本件工事の当初設計で見込んでいる伐採工については、搬出先である薪加工場の所管元課である経済観光局農林水産部農林整備課(以下「所管元課」という。)への事前の聴き取りにより、搬出する伐採木について、その種類や枝葉の有無、幹の径等は問わないとのことであったため、一般的な作業内容となる伐採(立木の伐倒)、集積・積込(伐採木の集材、運搬車への積込)、伐採運搬費(本件工事場所から薪加工場までの運搬費)を本件工事での必要作業として決定し、この作業に係る費用の見積書を徴取のうえ、その費用を当初設計に計上したところである。

しかし、受注者が伐採作業着手日に伐採木を搬出する旨、薪加工場に伝えたところ、薪加工場からは、すべての伐採木について枝打ち等により薪材に加工可能な部分とそれ以外の部分を分別すること、薪材に加工可能な部分は薪加工場内の所定の場所に収まる長さ等に調整すること、薪加工場内へ搬入した伐採木の荷降ろし作業を行うこと、その際には薪材に加工可能な部分とそれ以外の部分をそれぞれ薪加工場内の所定場所に仕分けすることを薪加工場への搬入に当たっての必要な条件として示されたとして受注者から報告を受けた。このため、当課と受注者が協議のうえ、薪加工場から示された条件を満たすための作業を追加で実施することとし、本件工事の伐採木を薪加工場へ搬出したものである。

当該追加作業は、当初設計時には認知しておらず、徴取した見積書の見積条件に示していない内容であり、当然ながら、当初設計に計上している伐採工の費用には反映されていないことから、その作業に伴う費用は増額されるべきものである。

よって、当該追加作業に係る費用は当初設計に計上されている伐採工の費用に含まれているという請求人の指摘は当たらない。

また、請求人は、情報開示請求の結果から、当該追加作業が実際には存在していないことを限りなく示唆していると主張している。

請求人の指摘するアからカについては以下のとおりである。

ア 当該薪加工場との協議議事録は存在しない

当課から薪加工場の所管課である佐伯区農林建設部農林課を通じ、薪加工場が伐採木の搬入に当たってこの条件を示していることを確認している。

イ 工事写真は存在しない

当該追加作業を含めた準備工に係る伐採工の施工についての状況写真は撮影している。なお、本市監督員が現場において作業の履行を確認している。

ウ 出来高確認書類は存在しない

伐採工は、準備工であるため出来高確認書類の作成は必須ではないが、伐採範囲の立会確認等により出来高は確認している。

エ 工事週報等は存在しない

当該追加作業は伐採工に含まれる一連の作業であり、伐採工の工事週報、安全衛生指示書・安全日誌は存在している。

オ 工事打合せ簿は存在しない

工事打合せ簿は存在している。

カ 技術管理課と設計変更事前協議を行っていない

当該追加作業に係る変更手続きについて、広島市建設工事設計変更ガイドライン(以下「ガイドライン」という。)により、技術管理課との設計変更事前協議は必要としない。

このように、本件工事の施工に当たっては、適正な事務手続のもと、伐採工の履行確認等も行っており、情報開示請求の結果からこの追加作業が実際には存在していないことを限りなく示唆しているという請求人の指摘は当たらない。

また、当該追加作業に係る費用については、その作業内容が土木工事積算基準書に定められていないものであることから、三者見積りを徴取のうえ、基準にのっとり適正に単価を決定したものであり、この点においても、何ら不当なものはない。

なお、伐採作業時には、請求人が指摘する二次下請業者の作業員3名以外にも、一次下請業者及び元請業者の作業員も従事していることを危険予知活動表により確認できている。

(イ) 薪加工場へ伐採木を無償提供することは、特定団体への利益供与であり違法・不当であるとの主張について

請求人は、広島市が市の財産である伐採木を薪加工場へ無償提供ことは、特定団体への利益供与であり、違法・不当なものであると主張している。

薪加工場は、佐伯区湯来町において、地域内での新たな雇用、森林資源の有効活用を図ることなどを目的として、令和元年度に本市が整備し、管理運営については、本市の要請により設立された町内会の代表者等で組織する「C団体」と管理協定を締結してC団体に包括的管理を委ねているものである。

こうした中、薪加工場では、薪の取引活動の拡大により、薪の材料となる木材の入手に苦慮していることから、佐伯区内において伐採木が発生する公共工事については、伐採木を無償譲渡により搬出してもらいたい旨、薪加工場の所管元課から依頼があった。

薪加工場での取組は、地域住民等の所得の向上や地域内での新たな雇用創出等、地域の活性化等に役立てるものとして本市が政策的に推し進めている事業であることを鑑み、本市の行政施策推進に貢献するという公益上の観点から、本件工事において伐採木を無償譲渡により薪加工場へ搬出することとしたものであり、これに関してC団体への利益供与に当たらず、違法・不当なものであるとの請求人の主張は認められない。

更に請求人は、薪加工場へ無償提供により搬出された伐採木について、産業廃棄物としてのマニフェスト(産業廃棄物管理票)が作成されておらず、また、薪加工場での受け入れができない枝葉については、産業廃棄物の処分施設に運搬しなければならないが、設計書に「処分費」が計上されていないことから、廃棄物処理法に違反していると主張している。

本件工事の当初設計に当たり、所管元課への事前の聴き取りにおいて、薪加工場では、伐採木の幹、枝葉も含めて再生利用するため、一連の伐採木全てを搬入可能であることを確認しており、枝葉についても幹と同様に産業廃棄物には該当しないため、産業廃棄物の処分施設に運搬しなければならないという請求人の指摘は当たらない。

(3) 結論

以上のことから、請求人が主張する内容については、いずれも根拠が認められず、違法・不当な支出は生じていないことから、本件措置請求は棄却されるべきである。

3 広島市長(都市整備局技術管理課)の意見書の提出

広島市長に対し、意見書及び関係書類等の提出を求めたところ、令和6年7月26日付け広都技第16号により意見書が提出された。なお、陳述は行われなかった。

意見書の主な内容は、次のとおりである。

(1) 広島市長(都市整備局)の意見

「一般国道433号(大古谷)道路防災工事(5-1)の変更契約(以下「本件変更契約」という。)」については、佐伯区農林建設部地域整備課(以下「工事担当課」という。)が、都市整備局技術管理課(以下「技術管理課」という。)と協議した上で工事担当課が工事の施行変更の決定を行い、工事担当課より変更契約の締結を依頼された財政局契約部工事契約課が、本件変更契約の締結事務を行ったものである。

工事担当課と技術管理課との協議については、ガイドラインに基づいて行うものであり、本件変更契約についても、ガイドラインに従って適正に手続されたものである。

なお、請求の概要にある伐採木の引取条件の変更は、ガイドラインに基づく設計変更事前協議を要しないものである。

4 広島市長(財政局契約部工事契約課)の意見書の提出

広島市長に対し、意見書及び関係書類等の提出を求めたところ、令和6年7月25日付け広契工第6号により意見書が提出された。なお、陳述は行われなかった。

意見書の主な内容は、次のとおりである。

(1) 広島市長(財政局)の意見

本件変更契約については、工事担当課が、技術管理課と協議した上で工事の施行変更の決定を行い、引き続き財政局契約部工事契約課に対し、変更契約締結の依頼を行ったものであって、同課は、この依頼に基づいて本件変更契約の締結事務を行ったものである。

同課の職務権限であるが、工事担当課の依頼に基づき、契約締結の事務手続を行うことであって、工事担当課が行う工事の設計内容及び施行の決定(工事の変更を含む。)に及ばない。ただし、契約締結に必要な書面が整っていない、明らかな法令違反があるなどの場合は、工事担当課への確認や指導を行うことができるものである。

本件変更契約について、同課は、工事担当課から同課に提出された施行変更伺兼契約依頼変更伺を確認したところ、この工事の設計内容及び施行の変更は、工事担当課が技術管理課と協議した上で工事担当課の裁量により決定されたものであり、書面は整えられ、かつ明らかな法令違反はないと判断したことから、変更契約の締結事務を行ったものである。

5 監査対象事項

請求人は、変更理由書に記載のある「荷降ろし」「小切り」「荷分け」の各作業が新たに発生するという事実や、その作業を行うために新たな費用が必要となるという事実を確認することができないとして、この増額変更契約及びこれに伴う経費の支出は、違法または不当な公金の支出及び違法または不当な契約の締結、履行に当たると主張していると認められる。

このため、新たに発生するとされた各作業の施工及びこれに伴う新たな費用の計上について、違法または不当な点がないかについて監査した。

6 監査の実施内容

請求人から提出された広島市職員措置請求書及び事実を証する書類、広島市長から提出された意見書のほか関係書類を確認するとともに、関係職員への聴き取りを行うなどして監査した。

第4 監査の結果

1 事実の確認

(1) 本件工事におけるこの伐採工の概要

ア 一般国道433号(大古谷)道路防災工事(5-1)請負契約の概要

(ア)工事場所 佐伯区湯来町大字葛原

(イ)工期 令和5年7月14日から令和6年1月30日まで

(ウ)請負代金額

5,115万円(当初契約)

4,855万6,200円(変更契約)

(エ)受注者 D社

(オ)契約日

令和5年7月14日(当初契約)

令和5年11月7日(変更契約)

(カ)工事内容 道路防災工事

施工延長 50メートル

落石防護工 約510平方メートル

落石予防工、法面工、擁壁工、排水構造物工、構造物撤去工、舗装工、区画線工、仮設工 一式

イ 設計図書上の記載

本件工事の土木工事施工条件及び工事設計書には、当該伐採工について、次の内容が記載されている(関係部分を抜粋)。

(ア) 土木工事施工条件

建設副産物関係

建設発生木材(伐採木)

本工事で発生する建設発生木材(伐採木)は、下記の受入施設に搬出することとする。受入施設の利用条件は次の通りである。

  • 毎週火曜日の午前中及び日曜日は受入不可
  • 受入可能量に制限があるため、受入施設と密に連絡を取り調整すること

なお、工事着手後、有価物として売却可能な伐採木があることが判明した場合は、木材市場に搬出し売却することとし、売却等に伴う一切の手続きは受注者が行うこと。また、建設発生木材(伐採木)の数量、売却金額(手数料等を除く)等については、変更対象とする。

受入施設 備考

C団体

佐伯区湯来町大字麦谷の「C団体」(片道運搬距離13.7キロメートル)に搬出するよう見込んでいる。

ただし、受入可能量等により搬出が困難となった場合は別途協議すること。

(イ) 工事設計書(変更数量等)

名称

単位

当初数量

変更数量

準備費

     
伐採

平方メートル

480

480

集積・積込

平方メートル

480

480

伐採運搬費

4

4

伐採工

小切・荷降ろし・荷分け

平方メートル

480

(2) 伐採木に係る作業の概要

当初

変更後

作業内容

伐採

伐採

立木を伐採

小切り

法面にてラフテレーンクレーンで降ろすことができる長さに小切り

集積

法面にてラフテレーンクレーンで降ろすことができるよう集積

荷降ろし

法面から道路上へラフテレーンクレーンで荷降ろし

小切り

薪加工場の条件に合うように小切り・枝打ち(1メートル程度)

集積・積込

集積・積込

伐採木を集積・積込

運搬

運搬

伐採木を運搬

荷降ろし

薪加工場にてアーム作業で荷降ろし

荷分け

薪加工場にてアーム作業で幹・枝葉を仕分け

※ 当初は、伐採後に伐採木を道路上に運び出し、道路上で、トラックの荷台に積みこむことができる程度の長さに切ることとしていた。

(3) 公共土木工事に伴う伐採木の薪加工場への搬入について

令和4年11月15日に、薪加工場に係る事業の制度所管課である経済観光局農林水産部農林整備課は、各区役所に対し、公共工事で発生する伐採木を薪加工場へ搬出するよう依頼を行った。その内容は次のとおりである。

  • 農林整備課では、佐伯区湯来町水内地区に薪加工場、木材集積場及び薪ボイラーを整備し、地域内における木質バイオマスエネルギーの循環(木材の地産地消)による地域の活性化に取り組んでいる。
  • 薪加工場、木材集積場及び薪ボイラーの稼働については、佐伯区湯来町水内地区の住民で構成する「C団体」が担っているところ、C団体では、市内のアウトドアショップにキャンプ用の薪を卸すなど、活動の幅を拡大しているが、薪の材料となる広葉樹の入手に苦慮している。
  • 一方で、本市が発注する公共土木工事で発生する伐採木は、その大半が産業廃棄物として処分されているが、中には薪として活用できる広葉樹も多く含まれている。
  • このため、薪加工場(木材集積場)において、公共工事で発生する伐採木の受入を行うため、昨年度に車両計量器を整備したところであり、薪加工場への搬入が可能な伐採木がある場合は、個別に調整するので連絡してほしい。

(4) 薪加工場について

経済観光局農林水産部農林整備課によると、薪加工場の事業の目的等は次のとおりである。

ア 事業の目的

本市の中山間地域を中心とする区域は、戦後植えられたスギやヒノキ等の約2万ヘクタールの人工林が伐採期を迎えているが、長く続いている木材価格の低迷により森林所有者の管理意識が低下し、放置され管理不足となっている森林が増加しており、森林の持つ土砂災害の防止、水源の涵養、二酸化炭素の吸収等の公益的機能の低下が心配されている。

このため、平成28年度から、森林所有者や地域住民等が、地域の森林から間伐後、森林内に放置されている未利用材を搬出し、チップや薪等の木質バイオマス燃料として利活用する取組を支援する「中山間地域自伐林業支援事業」に取り組んでおり、これにより森林所有者等の管理意識の向上による適切な森林整備の促進を図るとともに、地域住民等の所得の向上による中山間地域の活性化を目指している。

このため、佐伯区湯来町において、未利用材を地域住民団体が薪に加工し、公共施設の薪ボイラーの燃料として地域内で消費する「小さな循環モデル」として、薪加工場の整備及び温浴施設である「クアハウス湯の山」へ令和2年度に薪ボイラーの設置を行った。

イ 薪加工場の概要(令和元年度整備)

(ア) 場所:佐伯区湯来町大字麦谷

(イ) 面積:5,048平方メートル(うち建屋117.6平方メートル)

(ウ) 稼働日:原則土曜・日曜・祝日を除いた、9時から16時まで

(エ) 車両計量器(令和3年度整備)

型式 マルチロードセル式(ピットレス型)

ひょう量 30,000キログラム

最小測定量 200キログラム

積載寸法 3,000×10,500ミリメートル

目量 10キログラム

(オ) 薪の生産目標数:年間600立方メートル(クアハウス湯の山で使用する1年分の燃料)

ウ 運営を行う地元団体の概要(令和元年度設立)

(ア) 団体名:C団体

(イ) 構成員:27名(令和6年8月現在)

(5) 主な経緯

当該伐採工に係る主な経緯を整理すると、次のとおりである。

年月日

内容

令和4年11月15日

経済観光局農林水産部農林整備課から各区役所に対し、木材の地産地消による地域の活性化のため、発生した伐採木を薪加工場に搬入するよう依頼があった。

令和5年2月

工事担当課は、伐採木の引取条件を経済観光局農林水産部農林整備課に問い合わせ、伐採木の種類、枝葉の有無、幹の径等は問わず、無償で引き取るとの説明を受けた。

3月7日

上記の説明を受けたことから、工事担当課は、工事費の積算に当たり、一般的な作業内容となる伐採、集積・積込、運搬作業の見積りを徴取した。

6月9日

工事担当課は、入札後資格確認型一般競争入札にて入札公告を行い、見積単価及び労務歩掛等を積算参考資料及び工事設計書で公表した。

7月14日

受注者と請負契約を締結した。

8月上旬

  • 受注者は、伐採木の受入施設である薪加工場から、受入の条件として伐採木を薪加工場内の所定の場所に収まる長さに調整すること、搬入した伐採木の荷降ろし作業を行うこと、その際には薪材に加工可能な部分とそれ以外の部分を所定場所に仕分けすることなどを示された。
  • 工事担当課は薪加工場の所管課である佐伯区農林建設部農林課を通じ、引取条件の内容についてC団体に確認した。
  • 工事担当課は、受注者から追加で必要となる費用の概算額を聴取した。

8月1日

受注者はA社(1次下請業者)と伐採工に係る下請契約を締結した。

5日

A社(1次下請業者)はB社(2次下請業者)と伐採工に係る下請契約を締結した。

7日

  • 受注者は、薪加工場から付された引取条件について、工事担当課と協議した。
  • 工事担当課は、引取条件を満たすため伐採木に係る施工条件を変更する旨を受注者に回答した。

7日

8日

受注者及び下請業者(A社、B社)は、伐採、集積・積込、小切り、荷降ろし、荷分け作業を行った(2日間、延べ12人で実施)。

受注者は、他人に委託することなく自社により車両4台分22.3トンの伐採木を、薪加工場に運搬した。

21日

工事担当課は三者から小切り、荷降ろし、荷分け作業の見積りを徴取した。

10月31日

工事担当課は技術管理課と、伐採木に係る引取条件の変更について設計変更協議を行った。

11月7日

  • 受注者と、請負代金額の変更契約を締結した。
    変更内容(抜粋)
    伐採木の引取条件の変更 増額 約500万円
  • 受注者は、工事完成を通知した。

9日

受注者は、工事完成検査を受けた。

令和6年1月30日

請負契約期間終了

(6) 履行状況等

  • 工事担当課は、薪加工場に係る事業の制度所管課である経済観光局農林水産部農林整備課からの依頼を受け、市の行政施策推進に貢献するという公益上の観点を理由として、本件工事において伐採木を無償譲渡により薪加工場へ搬出することを決定していた。
  • 本件工事の設計図書において、「工事着手後、有価物として売却可能な伐採木があることが判明した場合は、木材市場に搬出し売却することとし、売却等に伴う一切の手続は受注者が行うこと。」等とされているところ、受注者から売却可能な有価物に該当する伐採木に係る連絡がなかったことから、工事担当課は全ての伐採木が薪加工場へ搬出されたものと判断していた。
  • 工事担当課は、薪加工場から示された条件を満たすための作業について、これに要する概算費用を受注者に口頭で確認の上、追加で作業を実施することを決定していた。
  • 当該追加作業に要する費用の計上について、三者から見積りを徴取の上、市の基準にのっとって単価を決定し、この単価に基づき変更契約を行っていた。
  • 当該追加作業の施工について、当初設計に計上した伐採工との重複はなく、また、工事担当課の指示のとおり実施されたものと認められた。
  • 伐採木に係る引取条件の変更について、工事担当課は、設計変更に先立ち、技術管理課とガイドラインに基づく設計変更協議を行っていた。なお、伐採木の引取条件の変更については、ガイドラインに基づく設計変更事前協議の対象ではないことから、事前協議は行っていなかった。
  • 工事担当課は、薪加工場では、伐採木の幹、枝葉も含めて再生利用するため、一連の伐採木全てを搬入可能であることを経済観光局農林水産部農林整備課に確認していた。また、枝葉についても幹と同様に産業廃棄物に該当しないと判断していた。
  • 枝葉については薪加工場へ搬入後、チップとして再生され、また、本件工事において除草は行っていなかった。

2 判断

(1) 請求人及び市長の主張

請求人は、変更理由書に記載のある「荷降ろし」「小切り」「荷分け」の各作業が新たに発生するという事実や、その作業を行うために新たな費用が必要となるという事実を確認することができないとして、この増額変更契約及びこれに伴う経費の支出は、違法または不当な公金の支出及び違法または不当な契約の締結、履行に当たると主張していると認められる。

これに対し、市長は次のとおり説明する。

  • 受注者が伐採作業着手日に伐採木を搬出する旨、薪加工場に伝えたところ、薪加工場からは、全ての伐採木について枝打ち等により薪材に加工可能な部分とそれ以外の部分を分別すること、薪材に加工可能な部分は薪加工場内の所定の場所に収まる長さ等に調整すること、薪加工場内へ搬入した伐採木の荷降ろし作業を行うこと、その際には薪材に加工可能な部分とそれ以外の部分をそれぞれ薪加工場内の所定場所に仕分けすることを薪加工場への搬入に当たっての必要な条件として示されたとして受注者から報告を受けた。このため、工事担当課と受注者が協議のうえ、薪加工場から示された条件を満たすための作業を追加で実施することとし、本件工事の伐採木を薪加工場へ搬出したものである。
    当該追加作業は、当初設計時には認知しておらず、徴取した見積書の見積条件に示していない内容であり、当然ながら、当初設計に計上している伐採工の費用には反映されていないことから、その作業に伴う費用は増額されるべきものである。
  • 当該追加作業に係る費用については、その作業内容が土木工事積算基準書に定められていないものであることから、三者見積りを徴取のうえ、基準にのっとり適正に単価を決定したものであり、この点においても、何ら不当なものはない。
    なお、伐採作業時には、請求人が指摘する二次下請業者の作業員3名以外にも、一次下請業者及び元請業者の作業員も従事していることを危険予知活動表により確認できている。
  • 薪加工場では、薪の取引活動の拡大により、薪の材料となる木材の入手に苦慮していることから、佐伯区内において伐採木が発生する公共工事については、伐採木を無償譲渡により搬出してもらいたい旨、薪加工場の所管元課から依頼があった。薪加工場での取組は、地域の活性化等に役立てるものとして本市が政策的に推し進めている事業であることを鑑み、本市の行政施策推進に貢献するという公益上の観点から、本件工事において伐採木を無償譲渡により薪加工場へ搬出することとしたものである。
  • 本件工事の当初設計に当たり、所管元課への事前の聴き取りにおいて、薪加工場では、伐採木の幹、枝葉も含めて再生利用するため、一連の伐採木全てを搬入可能であることを確認しており、枝葉についても幹と同様に産業廃棄物には該当しない。
  • 工事担当課と技術管理課との協議については、ガイドラインに基づいて行うものであり、本件変更契約についても、ガイドラインに従って適正に手続されたものである。
    なお、請求の概要にある伐採木の引取条件の変更は、ガイドラインに基づく設計変更事前協議を要しないものである。

(2) 判断

市は、薪加工場での取組は、地域の活性化等に役立てるものとして政策的に推し進めている事業であることに鑑み、公益上の観点から、本件工事において伐採木を無償譲渡により薪加工場へ搬出することとしていた。

こうした中、市は薪加工場から、搬入に当たっての必要な条件として、伐採木の長さ等の調整や、搬入した伐採木の荷降ろし作業、荷降ろしの際の仕分け作業を行うことなど、当初設計時に認知していなかった条件を示されたため、この条件を満たすための作業を追加で実施する必要があると判断したものであり、この市の判断について、不適当とはいえない。

また、この追加で実施することとした作業と、当初設計時に見込んだ作業に内容の重複はなく、これらの伐採木に係る作業については、市の指示どおりに実施されたものと認められ、この追加作業に要する費用については、三者から見積りを徴取し、市の基準にのっとって単価を決定の上、変更契約に際してはガイドラインに基づき技術管理課に協議を行っており、適正に変更契約手続が行われたものと認められる。

また、市が、本件工事において薪加工場へ搬出することとした伐採木の幹及び枝葉が産業廃棄物に該当しないと判断していたことについて、国の通知(令和3年4月14日付け環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課長通知(環循規発第2104141号))では、廃棄物に該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に検討して判断すべきものである旨が示されており、これを踏まえると、市の判断は不適当とはいえない。

なお、枝葉については薪加工場へ搬入後、チップとして再生され、また、本件工事において除草は行っていなかった。

以上のことから、伐採作業に係る追加費用の計上及び追加作業の施工について、違法または不当な点があるとは認められない。

3 結論

請求人の行った本件措置請求については、理由がないものであることから、請求を棄却する。

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