被爆80周年事業 令和7年度「若者による相互理解・交流促進事業」実施結果について
1 概要
令和5年度に締結した平和記念公園と米国パールハーバー国立記念公園との姉妹公園協定に基づき、令和7年度は、被爆80周年事業としてハワイの若者を受け入れ、本市の若者との交流や文化体験の機会を設定し、異文化理解の促進を図る取組みを実施しました。あわせて、被爆の実相に触れるプログラムを実施し、双方の若者が被爆者を交えて意見交換を行いました。※ 令和6年度は、本市の若者と被爆者をホノルル(パールハーバー)に派遣
本市の若者たちは、事前学習やハワイの若者受入れのプログラムを振返り、互いの歴史や文化を尊重しながら相互理解を深めることで、国境や文化の壁を超えて平和を構築するネットワークが広がり、持続可能な平和社会の実現につながると感想を述べてくれました。
2 参加者
(1) ハワイ側(5名)
大学生1名、高校生4名
(2) 広島市側(5名)
李 承圭(い すんぎゅ) 広島国際学院広島インターナショナルスクール11年生
入江 琉奈(いりえ るな) AICJ高等学校3年生
江盛 泰生(えもり たいき) 9月に大学進学予定
水谷 杯林(みずたに はいりん)広島国際学院広島インターナショナルスクール9年生
渡邉 勇蘭(わたなべ ゆら) 広島国際学院広島インターナショナルスクール11年生
※ 本事業参加時の所属
3 事前研修
派遣中の活動の効果を高めるため、3日間にわたり以下のとおり研修を実施しました。
本市の国際交流事業及び姉妹公園協定の取組、本市の平和への取組、太平洋戦争の歴史、パールハーバー攻撃前と攻撃後の日系人、パールハーバー国立記念公園(現地からのオンライン講義)、異文化理解学習、平和記念資料館見学、平和記念公園フィールドワーク、被爆体験講話聴講及び被爆者との意見交換
4 受入れ活動内容と感想
(1) 平和記念資料館視察及び被爆体験講話の聴講(8月3日)
平和記念資料館館長による案内のもと、1時間にわたり原爆投下前後の広島及びそこに暮らしていた人々の様子などについて説明を受けました。その後、 八幡照子証言者の被爆体験講話を聴講するとともに、八幡証言者を交え、意見交換を行いました。
<参加者の感想>
・ 原爆投下の日に何が起こったのか、どんな思いでその日を生き抜いたのかという体験談を聞きながら、私たちは皆、言葉を失うほどの衝撃を受けました。特に「二度と同じことを繰り返させないために語り続けている」という言葉を聞いたとき、ホノルルの参加者も深くうなずき、目を潤ませていた姿が印象的でした。その姿を見て、国や文化が違っても、平和を願う気持ちは同じなのだと強く感じました。(本市若者)
・ 被爆体験講話を聴講することは、これまでにも経験がありますが、今回、被爆者の方と深く関わることができ、これまでになかった新鮮な経験をすることができました。(本市の若者)
・ アメリカ側の視点からの原爆についてしか学んだことがありませんでした。原子爆弾の長期的な身体への影響などアメリカの歴史の教科書では知ることのできないことを知ることができました。(ハワイの若者)
・ 出来事を別の新たな視点から見つめることは未来を志向する上で重要だと思います。(ハワイの若者)
・ 普通は辛い経験を敢えて人に話そうとすることは精神的な負担を要するし、やりたくないと思います。その中で被爆者が何をモチベーションとして語り続けるのかに興味があります。アメリカに敵意を抱いたのか。自分の生活を一瞬のうちに破壊し、自分の親友を殺した国を憎いとは思わないのか。(ハワイの若者)
(2) 似島での歴史学習(8月3日)
ユーハイム似島歓迎交流センターの職員から、第一次世界大戦から原爆投下に至るまでの似島の歴史について説明を受けた後、周辺の遺構(桟橋、防空壕、馬匹焼却所等)を巡り、解説をしていただきました。
参加者は全員、似島で起きた惨状や出来事を聞くことが初めてであり、検疫所の役割を果たし、多くの犠牲者が埋葬されている似島について、真剣な表情で学んでいました。特に、診療所で負傷者が治療を受けていた際のエピソードは、参加者にとって非常に衝撃的だったようでした。
<参加者の感想>
・ 暑い中で似島に関わる当時の記録や遺構を見ながら、ホノルルの参加者が「自分の国でも伝えていきたい」と話してくれたのが心に残っています。彼らと同じ時間を過ごすことで、平和の学びとは、「歴史を知ること」だけでなく、「想いを共有し、つなげていくこと」だと気づきました。(本市若者)
・ この日を通して、平和とは国や言葉を超えて、人と人が理解し合い、支え合う中で築かれていくものだと実感しました。私達若い世代がその思いを受け継ぎ、世界へ発信していくことが大事だと思います。(本市若者)
(3) 平和のシンボルを作るワークショップ(8月4日)
前年度にホノルルへ派遣された若者とともに、「平和のシンボルを作る」をテーマにワークショップを開催しました。
まず、ハワイと本市の若者がペアとなり、自身にとっての平和について意見交換を行い、その内容を踏まえ、平和のシンボルを作成、全体に共有する活動を行いました。
その後、個々の平和に対するイメージを他のメンバーのものとリンクさせ、それぞれが作成したシンボルの特徴を取り入れながら、1つのシンボルを作成しました。
<参加者の感想>
・ それぞれのグループが、異なる文化的背景や価値観を持ち寄り、意見を交換しながら一つの形を作り上げていく過程はとても印象的でした。平和という抽象的なテーマを具体的な作品として表現する中で、多様な考え方を尊重し合うこと自体が平和の実践であると感じました。(本市若者)
・ 特に、ハワイの生徒たちとの協働は非常に刺激的でした。彼らは異なる歴史的背景や教育環境の中で「平和」という概念を学んでおり、その視点の違いに多くの気づきを得ましたた。例えば、彼らは「平和」を単に「戦争が無い状態」としてではなく、「人と人との相互理解や思いやりがある状態」として捉えており、その考え方に深く共感しました。(本市若者)
・ 英語で意見を交わす中で、自分の考えを言葉にして伝える難しさと同時に、文化を超えて共通の理想を共有できる喜びを感じました。彼らの明るさや積極的な姿勢にも刺激を受け、自分自身のコミュニケーションのあり方を見直すきっかけになりました。(本市若者)
(4) ハワイの若者と広島女学院高等学校生徒との交流(8月4日)
広島女学院高等学校グローバルイシューズ(※)に所属する生徒10名と、ハワイからの若者5名が交流を行いました。(本市若者5名は不参加)
冒頭、生徒たちから、広島市の歴史、文化、スポーツなどについての紹介があり、その後、小グループに別れて「アメリカ本土とハワイの間での平和学習の違い」、「あなたにとっての平和とは何か」、「世界はずっと平和であると考えるか」などについて話し合いました。
交流には、リック・ブランジャルディ ホノルル市長や、トム・レザーマン パールハーバー国立記念公園管理監督者及びアイリーン・アッターダイク 太平洋歴史公園会長も参加し、若者たちと意見交換や文化体験を行いました。
(※)世の中の問題(Global Issues)解決のために行動を起こせるヒロシマ発のリーダー育成を目指した学習を行う場。平和学の授業や、国内外の学校との意見交流会などを行う。毎年ホノルルを訪問しており、令和6年度からは、姉妹公園協定に基づく取組の一環で本市が仲介し、パールハーバー国立記念公園において、管理監督者と意見交換の場を設けている。
(5) 平和記念公園フィールドワーク(8月5日)
本市若者が、ハワイの若者に対し、原爆死没者慰霊碑、原爆の子の像、原爆ドーム等の説明を行いました。ハワイの若者は、説明に対し真剣な面持ちで耳を傾け、慰霊碑前では、本市若者とともに一輪の菊を献花しました。
その後、令和6年度にハワイに派遣された才木証言者とともに、ハワイの参加者が作成した折り鶴のリースを原爆の子の像に奉納しました。その際、才木証言者は、折り鶴に込める思いを語られ、5ミリメートル大の折り鶴を参加者全員に提供され、併せて、平和記念公園に訪れる方に渡してほしいと約50羽の折り鶴を託されました。一行は、国立原爆死没者追悼平和祈念館も訪問し、被爆証言の映像を視聴しました。
(6) 平和貢献活動(8月5日)
平和記念公園で、世界各地から訪れた人たちに平和のメッセージをもらう「平和貢献活動」を行いました。本市の若者が企画したこの活動は、メッセージカード「テーマ:あなたにとっての平和」を書いてもらい、横断幕に貼り付けてもらうというもので、ハワイと広島の若者がペアになり、活動の趣旨の説明やメッセージの依頼を行いました。
メッセージには、「家族や友人と過ごす充実した時間」「空がキレイなままであること」「明日が楽しみなこと」などが書かれてあり、個人によって、「平和」の捉え方が異なることを知る機会となりました。また、この活動に対し、「真珠湾攻撃が起きたハワイと原爆が落とされた広島の若者が2人組となって平和への取組を行っていることに意味がある」などの感想が寄せられました。
<参加者の感想>
・ 様々な国、様々な年齢の方から平和に対する意見を聞くに当たって、実に多様な意見をもらいました。否定的な意見も、その人の意見として尊重しながら色々な考えに触れることができました。(本市若者)
・ 異なる文化や価値観を持つ仲間と協力し、平和記念公園を訪れた人と実際に関わることで、平和の多様な捉え方や、今後の活動をする際の工夫点を考えるきっかけとなりました。(本市若者)
・ 平和貢献活動では、同じ平和を願っているが、方向性が違う方々と出会い、最初は中々折り合いがつきそうもありませんでした。しかし、話すうちに相手の思いを知ることができ、最終的にはこれからの世界を任せたと言ってもらえ、本当の意味での相互理解というものに触れることができました。同時に、難しさも肌で感じ、良い機会となりました。(本市若者)
(7) 平和記念式典参列(8月6日)
<参加者感想>
・ 初めて平和記念式典に参列しました。テレビ中継でも全体を通して見ることが無かったため、小学生から大人まで幅広い年齢層の人たちがスピーチを通して平和を願っていることを知り、その想いの広がりを実感しました。(本市若者)
・ 厳粛な雰囲気の中、鐘の音や献花の光景は、過去を悼むだけでなく、未来への誓いを新たにするものであると感じました。(本市若者)
・ 事実だけを伝えるのではなく、若い世代が平和を発信していることに感銘を受けました。(本市若者)
(8) 振返り(8月6日)
平和記念式典参列後、本市とハワイの若者がペアになって、これまでのプログラムを振り返えるとともに、多くの外国人が式典に参加していることに着目し、「式典に参列するだけで十分であるか」について意見交換を行いました。若者からは、式典は大切な場であるが、実際にその地を訪れ、歴史を学び、遺構や被爆者の話に触れて知見を深めたうえでの式典への参列が必要であるなど、様々な意見や感想が出されました。
(9) 松井市長訪問(8月6日)
市長訪問では、協力して折り鶴を折り、それらで地球や宇宙をコラージュした横断幕を作成したこと、また、その横断幕を使用し、ハワイと広島の若者がペアとなり、平和記念公園で協力して平和貢献活動を行ったことを報告しました。
若者たちは、平和貢献活動で得たメッセージカードが様々な言語で書かれていることを紹介し、多様な国の方々に協力してもらえたこと、平和に対する様々な定義があること、どの国に属そうと、平和に対する思いは皆同じであること、などの感想を述べました。
また、ハワイの若者からは、双方の若者との交流を通して様々な考えを共有できたこと、被爆者が描いた絵を通して被爆の実相に触れたこと、被爆体験講話や似島で学んだことが印象に残ったとの感想があり、広島の若者の存在が無ければ、こうした学びは得ることができず、彼らからたくさんの事を学んだと述べました。
市長は、「一緒になって共同作業をする中で、異なる立場であるが共通のコンセプトがあるから仲良くなる。将来に向けて一緒に何かができるということを確認してくれた。皆さんの祖父母の世代が国という立場で争いをする時、市民に犠牲を与えた。これを仕方ないではなく、あってはいけない、二度と起こさないように未来志向で工夫していく。平和を創る基本を学んでくれたのではないかと思う。言葉が違う、考え方も違う、こうした中に共通のコンセプトを見出してこれからも頑張ってほしい。」と若者たちを激励しました。
5 事後活動
青少年の国際交流活動発表会(11月16日)
令和7年11月16日、広島国際会議場で開催された国際フェスタ2025「青少年の国際交流活動発表会」において、ハワイの若者を受入れた活動について学んだことや意見等を発表しました。
本市の若者たちは、それぞれのプログラムについて説明し、以下のように感想を述べました。
このプログラムは4日間という短い時間でしたが、ハワイから来た仲間たちと深い関係をつくれたことが最も印象に残っています。共に活動する中で、互いの文化の違いに気づいたりする場面が多くありました。同じ場所に立って感じたことをその場でハワイの仲間と共有できたことは、対面プログラムならではの特徴であると思います。このような姉妹公園協定に基づく国際事業は、互いの歴史や文化を尊重しながら相互理解を深め、次世代の平和の担い手を育てる上で大きな役割を果たしていると感じました。この活動を続けていくことで、国境や文化の壁を超えて、平和を構築するネットワークが広がり、持続可能な平和社会の実現につながるのだと信じています。今回の学びや気づきを身近なひとたちにも伝えていくだけでなく、より多くの若者がこのような体験に参加できるよう、自分にできることを考えて行動していきたいです。
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