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衛研ニュース/魚切ダム貯水池の水質状況と水環境の改善

ページ番号:0000000217 更新日:2022年3月22日更新 印刷ページ表示

はじめに

 魚切ダムは、広島市佐伯区を流れる八幡川に多目的ダムとして建設され、昭和56年に竣工しました。貯水容量は846万m3、ダム流域の居住人口は約5,000人です。

 湖沼など水が滞留する場所では、自然と窒素や燐(りん)が蓄積されてゆき、これを栄養とするプランクトンなどが増殖します。これを富栄養化といい、さらに進行するとアオコが発生したり、水道水の異臭味の原因になります。魚切ダムでも平成12年度に水道水の異臭問題が発生しました。

 

ダム貯水池の水質環境基準と水質状況

 環境省や広島県では、ダムの利水目的に応じて維持することが望ましい基準値として表1のように生活環境の保全に関する環境基準を設けています。貯水池の水質の状況は表2のとおりで、魚切ダムは他のダムと比較して栄養塩等の濃度が高く、中栄養~富栄養の状況です。

【表1】 広島県のダム貯水池の水質環境基準(一部)

水系名

水域名等

COD

(mg/L)

全窒素

(mg/L)

全燐

(mg/L)

太田川

温井ダム貯水池

3以下

-

0.01以下

江の川

土師ダム貯水池

3以下

0.2以下
(0.43)

0.01以下
(0.018)

八幡川

魚切貯水池
(魚切ダム貯水池)

-

-

-

※温井ダム貯水池は、全窒素の項目が基準から除かれている
※土師ダム貯水池の全窒素・全燐の()は暫定目標(達成年度:令和2年)
※魚切貯水池は、貯水量が1,000万立方メートル未満のため湖沼としての環境基準は定められていない

 

【表2】 広島県のダム貯水池の水質調査結果(令和元年度)   (mg/L)

水系名

水域名等

測定機関

COD

(平均)

COD

(75%値)

全窒素

全燐

太田川

温井ダム貯水池

中国地方整備局

2.2

2.6

0.28

0.009

江の川

土師ダム貯水池

中国地方整備局

3.2

3.6

0.58

0.021

八幡川

魚切貯水池

(魚切ダム貯水池)

広島市

2.9

2.9

0.89

0.062

※CODは全層の年間平均値および75%値(値の低い順に並べて全体の75%の位置にあるデータ)、全窒素・全燐は表層の年間平均値

 

魚切ダム貯水池と貯水池上流河川の水質状況

 表3は、魚切ダム貯水池と、貯水池より上流の河川水(以下、貯水池上流)の水質調査結果とその減少率をまとめたものです。2つを比べてみると、特に燐酸態燐(=燐酸イオンの状態で水に溶けている燐のこと)の濃度が、貯水池上流と比べて貯水池で大きく減少しています。

 全燐は、水に含まれる燐成分の合計であり、燐酸態燐はそのうち生物が利用可能な無機態の燐成分です。

 燐酸態燐の濃度変動を詳しく見てみると、図1に示したように、多くの月で魚切ダム貯水池の燐酸態燐はごく低濃度です。貯水池上流と比べて貯水池の燐酸態燐濃度が低いということは、貯水池内の燐酸態燐がプランクトンの増殖によって消費されていることが考えられます。したがって、ダムに流入する河川水の燐濃度を下げることは富栄養化を防ぐために必要と考えられます。

 

【表3】 水質調査結果(令和2年度) (年間平均値)

 

全窒素

(mg/L)

全燐

(mg/L)

燐酸態燐

(mg/L)

魚切ダム貯水池上流

0.64

0.031

0.018

魚切ダム貯水池(表層)

0.58

0.025

0.004

減少率

9%

19%

78%

          

【図1】 燐酸態燐の月別濃度変動 (令和2年度)【図1】 燐酸態燐の月別濃度変動 (令和2年度)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魚切ダム貯水池の水質改善対策

 広島県では、貯水池内に曝気循環装置を設置し水を強制的に鉛直循環させています。この装置により、表層の水が底層の低温の水と混合することで水温が低下すること、及びプランクトンが光の届かない深い場所に引き込まれることで、アオコなどの発生が抑制されます。

 また、広島県総合技術研究所保健環境センターはアオコ発生予測手法を研究しています。予測をもとにして曝気循環装置を運転制御することでアオコの発生を予防することができ、水道水の異臭防止に役立っています。

 さらに、流入河川部に黒ボク土を用いた土壌による浄化施設を設置し、燐除去を行っています。

 

水環境の改善

 魚切ダム貯水池の水質は、全窒素・全燐の濃度が高くなっています。水環境を健全化するため、未処理生活排水の対策をするなど、富栄養化の原因物質である窒素・燐の削減対策が必要です。

 広島市では、下水道や農業集落排水処理施設が計画されていない区域において、平成20年度から市営浄化槽事業を行うなど水環境の改善に取り組んでいます。水を守るために皆さんの環境への心配りも大切です。

 

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