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衛研ニュース/フロン類をめぐる情勢と広島市内のフロン類濃度について

ページ番号:0000000211 更新日:2021年11月10日更新 印刷ページ表示

はじめに

 当所では、大気環境中のフロン類の濃度とその推移を把握するため、平成4年度から調査を実施しています。年2回(夏期、冬期それぞれ3日間)、市内4地点(広島市役所、南原峡、五月が丘団地、衛生研究所)で調査を実施してきましたが、平成29年度から有害大気汚染物質モニタリング調査に合わせて、市内5地点(令和元年度は4地点)で毎月(24時間)調査を実施しています。

フロン類とは

 フロンとは、フルオロカーボン(フッ素と炭素の化合物)の総称です。フロン排出抑制法では、CFC(クロロフルオロカーボン)、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)を『フロン類』と定義しています。

 不燃性、化学的に安定、比較的毒性が低いなどといった性質を持っていることから、エアコンの冷媒や精密機器の洗浄剤などに使用されてきました。

 『特定フロン』と呼ばれるCFC、HCFCは、オゾン層破壊効果があり、温室効果も大きいことがわかり、オゾン層保護対策として現在は生産・輸入が規制されています。

 特定フロンに代わる物質として『代替フロン』と呼ばれるHFCへの転換が進められてきましたが、HFCは、オゾン層破壊効果は無いものの、二酸化炭素の 100 倍から 10,000 倍以上の大きな温室効果があります。地球温暖化の防止のためフロンの排出を抑制するとともに、ノンフロンや温室効果の低い物質に転換していくことが必要となっています。 

 フロン類は構造の違いによって多くの種類が存在し、物質の違いにより用途が異なります。一般的に炭素(C)、水素(H)、フッ素(F)の数によって番号付きで表され、構造の違いにより添え字付きで表されます。ここで、広島市で調査しているフロン類等について、以下の表に示します。

【表】広島市で調査しているフロン類等一覧

物質名

化学式

オゾン層破壊係数(1)

地球温暖化係数(2)

主な用途

CFC-11

CFCl3

1

4750

空調機などの冷媒、断熱材の発泡剤

CFC-12

CF2Cl2

1

10900

断熱材の発泡剤、冷蔵庫・カーエアコンの冷媒

CFC-113

C2F3Cl3

0.8

6130

電子機器や精密機器の洗浄剤

CFC-114

C2F4Cl2

1

10000

スプレー噴射剤、工業原料

HCFC-22

CHF2Cl

0.055

1810

断熱材の発泡剤、エアコンの冷媒

HCFC-123

C2HF3Cl2

0.02-0.06

77

大型冷凍機用冷媒、工業原料

HCFC-141b

CH3CFCl2

0.11

725

断熱材の発泡剤、精密機器の洗浄剤

HCFC-142b

CH3CF2Cl

0.065

2310

断熱材の発泡剤、工業原料

HCFC-225ca

CF3CF2CHCl2

0.025

122

ドライクリーニング溶剤、洗浄剤

HCFC-225cb

CF2ClCF2CHClF

0.033

595

ドライクリーニング溶剤、洗浄剤

HFC-134a

CH2FCF3

0

1430

冷媒、CFC-12の代替

ブロモメタン

CH3Br

0.6

5

土壌用の殺虫剤

1,1,1-トリクロロエタン

CH3CCl3

0.1

146

洗浄剤、ドライクリーニング溶剤

四塩化炭素

CCl4

1.1

1400

消火剤、洗浄剤、殺虫剤

(注1)オゾン層破壊係数:CFC-11を1としたときのオゾン層の破壊に与える効果の相対値
(注2)地球温暖化係数:二酸化炭素を1としたときの地球温暖化に与える効果の相対値

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【写真1】 エアダスター
エアダスターの写真

 かつてはフロンが使用されていたエアダスターも、最近はノンフロンタイプのものが主流となっています。

フロン類をめぐる情勢

フロン回収・破壊法から、フロン排出抑制法へ

 フロン類の排出規制としては、平成13年に「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収・破壊法)」が制定され、業務用冷凍空調機器の整備時・廃棄時のフロン類の回収、回収されたフロン類の破壊等が進められてきました。

 その後、冷凍空調機器の冷媒用途用のHFC排出量の急増 、冷媒の廃棄時回収率の低迷、機器使用中の大規模漏えいの判明等の問題について、ノンフロン・低GWP(地球温暖化係数)製品の技術開発・商業化の進展、HFC の世界的な規制への動きといったフロン類をとりまく状況の変化も踏まえて対応をすることが必要となってきました。

 そのため、これまでのフロン類の回収・破壊に加え、フロン類の製造から廃棄までのライフサイクル全体にわたる包括的な対策を講じることを目的として、平成25年に法改正がなされ、名称も「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)」と改められました。

フロン排出抑制法の改正

 低迷していた廃棄時回収率向上のため、令和元年に業務用冷凍空調機器からフロン類を回収せずに廃棄した場合の直接罰の創設や、フロン回収をしない業務用冷凍空調機器の処分・リサイクルの禁止などの改正が行われました(令和2年4月1日施行)。

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調査方法

 試料採取及び分析法は、有害大気汚染物質である揮発性有機化合物の分析法と同様であり、キャニスターと呼ばれる試料採取容器へ大気試料を採取後、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS)で分析します。

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【写真2】 大気試料採取風景
大気試料採取風景の写真

分析結果

 広島市で測定を行っているフロン類について平成21年から令和2年までの年平均値の推移をグラフに示します。

【図】 フロン類濃度の年平均値の推移
フロン類濃度の年平均値の推移のグラフの画像1

フロン類濃度の年平均値の推移のグラフの画像2

フロン類濃度の年平均値の推移のグラフの画像3

注 採取地点及び採取回数等は以下のとおりです。


・平成28年度までは、4地点(市役所、南原研修所、五月が丘公民館及び衛生研究所)、3日間、年2回の平均値です。
・平成29年度から平成30年度は、5地点(井口小学校、安佐南区役所、比治山測定局、楠那中学校及び阿戸出張所)、24時間、年12回の平均値です。
・令和元年度は、4地点(井口小学校、安佐南区役所、比治山測定局及び楠那中学校)、24時間、年12回の平均値です。
・令和2年度は、5地点(井口小学校、安佐南区役所、比治山測定局、楠那中学校及び大林小学校)、24時間、年12回の平均値です。

 平成29年度から、採取地点及び採取回数等が変わったため、物質によっては変化がみられました。

 平成29年度からHFC-134aの結果が高くなった理由は、楠那中学校で高めの値となったためです。楠那中学校の値を除くと、これまでと同様の値となっていました。

 大気中の有害大気汚染物質とは違い、大気中のフロン類には環境基準などの基準はありませんが、今後も平常時の濃度把握を行うため、引き続き調査を継続していく予定です。

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