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ページ番号:0000000206更新日:2016年10月25日更新印刷ページ表示

衛研ニュース/アスベスト調査について

 環境科学部では河川水や地下水、土壌、空気、雨水の有害化学物質による汚染状況を把握するための調査を行っています。
 今回は大気環境中のアスベスト調査について紹介します。

アスベストについて

 アスベストは石綿(いしわた、せきめん)とも呼ばれる天然に産出する繊維状鉱物の総称です。
 ILO(国際労働機関)では表に示す6種類の繊維状鉱物をアスベストと定義しています。代表的なものは蛇紋石系のクリソタイル(白石綿)、角閃石系のアモサイト(茶石綿)クロシドライト(青石綿)の3種類です。

 アスベストは安価で優れた耐熱性・耐薬品性・絶縁性を持つため、以前は建築物の断熱材・耐火材など様々な用途に使用されていました。

アスベストの種類
分類 石綿名
じゃもんせきけい
蛇紋石系
しろせきめん
クリソタイル(白石綿)
かくせんせきけい
角閃石系
ちゃせきめん
アモサイト(茶石綿)
あおせきめん
クロシドライト(青石綿)
ちょくせんせき
アンソフィライト(直閃石)
とうかくせんせき
トレモライト(透角閃石)
ようきせんせき
アクチノライト(陽起閃石)

アスベストはどこにあるのか

 現在日本では、アスベストの製造・輸入等は法律で禁止されているので、アスベストが使われた製品等見かけることはありません。

 しかし、アスベストは規制が始まった昭和50年まで建材や電化製品など様々な用途に使用されており、昭和30年代~50年代初頭には多くの建築物で断熱材・耐火材として使用されてきました。現在、それらの建築物は解体時期に入っています。
 そのため、アスベストを使用した建築物の解体やアスベストの除去を行う際は、アスベストの飛散を防ぐため外気と隔離された空間でアスベストの除去を行う必要があります。

 また、アスベストは天然の鉱物ですので、一般大気中にもほんの少し存在します。

アスベストによる健康影響

 アスベスト自体には毒性はありませんが、アスベストは非常に細い繊維のため、大気中に飛散すると人が吸入してしまう恐れがあります。アスベスト繊維は吸入されると肺の中に残り、多量のアスベストの吸入は肺がんや中皮腫、アスベスト肺(*)といった病気の原因となります。

(*)アスベスト肺:アスベストが肺内に蓄積することにより生じる肺線維症

アスベストを見てみよう

クリソタイル(白石綿)
クリソタイル(白石綿)の写真

アモサイト(茶石綿)
アモサイト(茶石綿)の写真

クロシドライト(青石綿)
クロシドライト(青石綿)の写真

 写真は、代表的なアスベストの標準品です。それぞれのアスベストの色は名前の通り、クリソタイル(白石綿)は白、アモサイト(茶石綿)は茶、クロシドライト(青石綿)は青です。また、すべてのアスベストが細い繊維状であることがわかるでしょうか。

クリソタイル(走査型電子顕微鏡写真)
クリソタイルの走査型電子顕微鏡写真

 これはクリソタイルを電子顕微鏡という特殊な顕微鏡で撮影した写真です。

 写真の赤いをつけたクリソタイルの太さは約0.4μmです。人間の髪の毛の太さが約70μmなので、このクリソタイルの太さは髪の毛の約180分の1と、とても細い繊維であることがわかります。(1μm=0.001mm)

採取方法

 アスベストによる大気汚染の現状を把握するため、広島市では毎年、住宅地域、商工業地域、幹線道路沿線等でアスベスト調査を実施しています。

 実際に大気中に飛んでいるアスベストはとても細く短いため、肉眼で確認することは困難です。そこで、大気中のアスベストの測定は顕微鏡で行っています。

 試料採取装置の概形図を示します。

試料採取装置概形図
試料採取装置の概形図

 専用ホルダーにろ紙をセットし、ポンプで空気を吸引します。

 空気中に浮遊している物質はろ紙の表面に捕集されます。

調査風景
調査風景の写真

測定方法

 アスベストを採取したろ紙を顕微鏡で観察し、繊維状のもの1つ1つについてアスベストかそうでないかの判定を行います。測定方法は「アスベストモニタリングマニュアル(環境省)」(以下「マニュアル」と言います。)で定められています。

 マニュアル(第3版)(平成19年5月改訂)では位相差顕微鏡と生物顕微鏡の2つの顕微鏡を用いてアスベストを測定します。2つの顕微鏡では、アスベスト(主にクリソタイル)の見え方が異なることを利用して判定します。このため、測定結果(アスベスト濃度)は主にクリソタイルの本数を反映した結果となります。クリソタイルは日本で多く使用されてきたアスベストですが、第3版の方法では、クリソタイル以外のアスベストが見逃される可能性があります。このことから、マニュアルの見直しが行われ、平成22年6月に第4.0版への改訂が行われました。

 マニュアル(第4.0版)では、まず位相差顕微鏡でアスベスト以外の繊維を含むすべての繊維の大気中濃度(総繊維数濃度)を求め、この結果が1f/L(*)を超えた場合は走査型電子顕微鏡で繊維を観察し、アスベストであるかどうかを判定します。この方法ではクリソタイル以外のアスベストも判定することができます。

 当所では、平成26年度まではマニュアル(第3版)に基づいて測定を行っていましたが、平成26年度に走査型電子顕微鏡を導入し、平成27年度からは第4.0版に基づいて対応しています。

(*)アスベストの大気中濃度には「f/L」という単位を使います。f/Lとは「空気1リットル(L)中の繊維の本数(f)」を示しています。

走査型電子顕微鏡
走査型電子顕微鏡の画像

 走査型電子顕微鏡にはエネルギー分散型X線分光器が付属しており、繊維にどんな元素が含まれているかを測定できます。繊維に含まれる元素の種類や割合などから、その繊維がアスベストか、その他の繊維かを判定します。

位相差顕微鏡写真
位相差顕微鏡での観察像

 

走査型電子顕微鏡写真(クリソタイル)
走査型電子顕微鏡写真(クリソタイル)

エネルギー分散型X線分光器の測定結果(クリソタイル)
エネルギー分散型X線分光器の測定結果(クリソタイル)

 

走査型電子顕微鏡写真(ロックウール)
走査型電子顕微鏡写真(ロックウール)

エネルギー分散型X線分光器の測定結果(ロックウール)
エネルギー分散型X線分光器の測定結果(ロックウール)

測定結果

 マニュアル(第4.0版)に基づいて測定した平成27年度の広島市の測定結果を表に示します。マニュアル(第4.0版)では、アスベスト以外の繊維を含むすべての繊維の大気中濃度(総繊維数濃度)を測定しているため、第3.0版のアスベスト濃度に比べ、見かけ上高い値となることが考えられます。

平成27年度の総繊維数濃度(単位:f/L)
地域 地域区分 最小値~最大値 平均値
バックグラウンド地域 住宅地域 0.11f/L~0.87f/L 0.47f/L
商工業地域 0.23f/L~0.98f/L 0.59f/L
発生源周辺 幹線道路沿線 N.D.~0.73f/L 0.34f/L

 (注)N.D.:定量下限値(0.056f/L)未満

 総繊維数濃度が1f/Lを超えていなかったので、走査型電子顕微鏡での同定は行いませんでした。
平成27年度の測定結果はすべての調査地点で「大気汚染防止法」によって定められるアスベスト製品製造工場などの境界線における大気中濃度の基準の許容限度(10f/L)を下回っていました。

【参考】平成17年度から平成26年度の10年間の測定結果についてグラフに示します。平成26年度までは、マニュアル(第3版)に基づいて測定を行っています。

平成17年度から平成26年度のアスベスト濃度

 平成26年度までの測定結果も、すべての調査地点で10f/Lを下回っていました。

 環境省ではアスベストによる大気汚染の状況を把握するため、広島県を含む全国のアスベスト濃度の調査を実施しています。また地方公共団体における調査結果についても集計しています。それぞれの結果は、環境省のホームページで公開されています。(詳しくは「関連情報」からご確認ください)

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