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放射線による被害
原子爆弾の特徴は、通常の爆弾では発生しない大量の放射線が放出され、それによって人体に深刻な障害が及ぼされたことです。
放射線は、人体の奥深くまで入り込み、細胞を破壊し、血液を変質させるとともに、骨髄などの造血機能を破壊し、肺や肝臓等の内臓を侵すなどの深刻な障害を引き起こしました。
放射線による障害は、爆心地からの距離やさえぎる物の有無によって、その程度が大きく異なっています。爆発後1分以内に放射された初期放射線によって、爆心地から約1キロメートル以内にいた人は、致命的な影響を受け、その多くは数日のうちに死亡しました。また、外傷がまったくなく、無傷と思われた人たちが、被爆後、月日が経過してから発病し、死亡した例も多くあります。
さらに原爆は、爆発後、長時間にわたって残留放射線を地上に残しました。このため、肉親や同僚などを捜して、また救護活動のため被爆後に入市した人たちの中には、直接被爆した人と同じように発病したり、死亡する人もいました。
被爆直後から短期間に現れた熱線、爆風や放射線による一連の症状を急性障害といい、吐き気や食欲不振、下痢、頭痛、不眠、脱毛、倦怠感、吐血、血尿、血便、皮膚の出血斑点、発熱、口内炎、白血球・赤血球の減少、月経異常などのさまざまな症状を示しました。
これらは全く新しい病気ではなく、放射線の影響や食糧事情などにより、外傷がさらに悪化したり、病原菌への抵抗力が減退して発病したものや、また、外傷がなくても、脱毛や出血症状、白血球の減少といった症状が現れ、多くの人が死亡していきました。
急性障害は、約5か月後の12月末にはほぼ終息し、原爆の影響はこれでおさまったと考えられました。しかし、放射線の影響はこれで終わるものではありませんでした。