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太田川の水産資源を増やす取組
太田川は、中国山地の冠山を源流とし、幾つもの渓流を合わせながら、主要支川である根の谷川、三篠川と合流後、下流で6本の派川に分派し、広島湾へ注ぎ込む中国地方有数の一級河川です。
太田川の水は、森に降った雨が、葉や腐葉土の中に蓄えられ、その過程で栄養分が溶け込み、ゆっくりと広島湾へ流れていきます。その結果、広島湾には、全国有数のカキ養殖漁場が広がっており、養殖されているカキ筏の下は、様々な生き物の育成場となっていて、日本を代表する里海と言われています。
このように、太田川の存在は、市民の皆さまにとって、飲み水やふれあいの場としてだけでなく、森・川・海、そして私たちの住む里を密接に繋ぐ貴重な存在となっています。
しかし近年、里山の荒廃や流域周辺の開発等に伴い、太田川の環境は、大きく変化してきました。太田川流域に生息するアユやシジミはもちろん、河川と繋がっている広島湾のカキや様々な魚介類の漁獲量減少など、本市の水産業に対して多大な影響が出てきています。
このため本市では、太田川、引いては広島湾の水産資源を増やして太田川を再生し、市民の皆さまに新鮮で豊かな「食」を提供するため、行政機関、漁協、有識者からなる懇談会において議論を行い、平成25年度に策定した「太田川再生方針」に基づき、アユやシジミを増やすための様々な取組を進めています。
太田川再生プロジェクト検討委員会(平成18年8月~平成20年3月)
都市開発に伴い、森林の荒廃やダムの整備等が進み、太田川の環境は大きく変化しました。このことで、広島湾の環境にも影響を与え、カキの成育不良の原因になっているとの意見が漁業団体から出されました。
そのため、太田川の現況を調査し、変わってしまった太田川の環境を再生させる策を検討するため、平成18年度「太田川再生プロジェクト検討委員会」を設置しました。当初委員会では、 森林保全、環境保全、市民のふれあいの場の検討等、太田川が有する多面的機能からの再生策が議論されました。
その結果、平成20年度に、太田川再生プロジェクト検討委員会から「太田川の流量、河川環境、アユ等に関する提言」が出されました。
太田川再生フォローアップ委員会(平成21年4月~平成25年3月)
平成20年度、太田川再生プロジェクト検討委員会から出された提言を受けて、平成21年度「太田川再生フォローアップ委員会」を設置しました。委員会では、提言に基づいて、太田川の水産振興にとって望ましい河川の流量等について専門的な評価が行われました。
最終的に、水産振興策の面から太田川再生を目指す方向に集約され、平成25年度に再生のための指標資源として、太田川を代表するアユとシジミに限定し、資源を増やすための具体的な方策「太田川再生方針」を取りまとめました。
太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会(平成25年4月~現在)
平成26年度からは、太田川再生方針に基づき、「太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会」を毎年開催しています。
アユとシジミを増やすための様々な取組を効果的に推進することを目的に、短期、中期、さらに長期的な方策と段階的に区分して、有識者や関係機関と調整を図りながら、各取組やその効果検証を実施しています。
方策 | 区分 | 手法 | 取組内容 |
---|---|---|---|
短期的な方策 (実施を推進) |
稚魚 | 生産施設における種苗の放流 | 放流場所・時期・サイズなどの技術的な検討(放流後の追跡調査) |
繁殖場 | 産卵場の維持・造成 | 場所・時期・規模などの技術的な検討(放流後の追跡調査) | |
中期的な方策 (科学的根拠を基に検討) |
親魚 | 禁漁期間延長 | モニタリングを通じた科学的な裏付けを基に検討する |
晩期親魚放流 | |||
禁漁区間の設定・拡大 | |||
漁法の制限 | |||
長期的な方策(河川管理者などと調整) | 稚魚 | アユ稚魚遡上促進 | 河川管理者や水利権者などへ個別の時期に増水放流の検討を依頼 |
親魚 | 親魚流下促進 | ||
繁殖場 | アユ仔魚流下促進 | ||
保育場 | 太田川放水路の活用 | 太田川放水路における積極的なアユ稚魚育成を狙って、増水放流や堰のゲート操作等を依頼 |
方策 | 区分 | 手法 | 取組内容 |
---|---|---|---|
短期的な方策 (実施を推進) |
資源添加 |
種苗放流 (他産地種苗) |
他産地からの入手が困難になることを想定し、人工種苗へ力点を移していく |
種苗放流 (人工種苗) |
広島市水産振興センターなどの種苗生産施設を活用して集約的に生産し、放流場所・時期・サイズなどの技術的な検討を行う(定着率の調査等) | ||
繁殖場 | ネット、塩ビ管等による食害防止 | ネット、塩ビ管等の設定場所・時期・サイズなどの技術的な検討を行う(定着率、生存率の調査等) | |
中期的な方策 (科学的根拠を基に検討) |
資源管理 | 操業日の制限 |
モニタリングを通じた科学的な裏付けを基に検討する 順応的管理型漁業の導入を目指す |
禁漁区間の設定・拡大 | |||
漁獲サイズの制限 | |||
漁獲量の制限 | |||
成育・繁殖場所 | 稚貝の着底や成育に適した浅場の整備 | 科学的な裏付けを基に検討する |
開催根拠
・太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会開催要綱 [PDFファイル/99KB]
構成員
開催状況(会議資料・会議録)
・令和3年度太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会(書面開催)
・令和2年度第1回太田川産アユ・シジミの資源再生懇談会(令和元年度延期による開催)
開催案内