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PCB廃棄物の処分に向けた取り組みについて
PCBとは ~背景と現状~
ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、化学的に安定している、電気絶縁性が高い、不燃性であるなどの性質を有する物質であり、変圧器(トランス)・コンデンサー等の電気機器の絶縁油、各種工業における加熱・冷却用の熱媒体、感圧複写紙など、幅広い用途に使用されていました。昭和43年(1968年)にカネミ油症事件が発生し、その毒性が社会問題化したことから、昭和47年(1972年)に製造が停止されましたが、処理体制の構築が進まず、既に製造されていたPCB使用製品が廃棄物となった後も、事業者等によって保管が続けられてきました。
保管の長期化に伴い、PCBの紛失や漏えいなどによる環境汚染が懸念される中、国は平成13年(2001年)に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(PCB特措法)を制定し、PCB廃棄物の処分完了に向けた取り組みを推進することとしました。また、処理体制についても、平成16年(2004年)12月から中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)による高濃度PCB廃棄物の処分が開始され、平成21年(2009年)11月に国による無害化処理認定制度が適用されるなど、徐々に整備されてきています。
引き続きPCB廃棄物の確実かつ適正な処理を推進していくため、平成24年(2012年)12月にPCB特措法施行令の一部が改正され、平成28年(2016年)7月までとされていたPCB廃棄物の処分の期間が令和9年(2027年)3月末までに延長されました。また、平成26年(2014年)6月に国のPCB廃棄物処理基本計画が変更され、JESCOの5つのPCB処理事業所ごとに計画的処理完了期限等が定められました。この期限内の処理完了に向け、使用中の機器を含めた早期・計画的な処理が進められましたが、残された時間が短くなっていく中、高濃度PCB廃棄物の処分をまだ委託していない事業者や、高濃度PCB使用製品を使用し続ける事業者も存在し、期限内処理の達成が容易でない状況となりました。
こうした状況を踏まえ、期限を遵守して一日でも早く確実に処理を完了するため、必要な制度上の追加的措置を講じることとなり、平成28年(2016年)5月にPCB特措法の一部が改正され、高濃度PCB廃棄物及び高濃度PCB使用製品は計画的処理完了期限の1年前までを処分期間と定め、原則この処分期間内に処分することなどが義務付けられました。また、都道府県等による報告徴収や立入検査の権限強化、高濃度PCB廃棄物の処分に係る代執行等の規定が盛り込まれるほか、環境大臣が定めることとされていたPCB廃棄物処理基本計画が閣議決定により定めることとなりました。
JESCOの北九州事業対象地域にある広島市では、令和3年(2021年)3月31日をもって、全ての高濃度PCB廃棄物の処分期間が終了しました。国内唯一の処分機関であるJESCOでの処分終了後は、高濃度PCB廃棄物を各事業者において保管を継続することとなります。
また、引き続き低濃度PCB廃棄物の確実かつ適正な処理を推進していく必要があります。
PCB廃棄物処理基本計画<外部リンク> (環境省ホームページ)
PCB廃棄物の定義
PCB廃棄物は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)施行令第2条の4において、次のように規定されています。
区分 |
内容 |
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PCB廃棄物 |
廃PCB等 |
廃PCB及びPCBを含む廃油 |
PCB汚染物 |
PCBが染み込んだり付着したりした汚泥、紙くず、木くず、繊維くず、廃プラスチック類、金属くず、陶磁器くず、がれき類 |
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PCB処理物 |
上記の物を処分するために処理したもので、判定基準に適合しないもの |
また、PCB原液が廃棄物となったもの及び含有するPCB濃度が5,000mg/kgを超えるもの(PCB濃度が5,000mg/kgを超え100,000mg/kg以下の可燃性の汚染物等を除く)は「高濃度PCB廃棄物」、それ以外は「低濃度PCB廃棄物」に区分され、「低濃度PCB廃棄物」は、さらに「微量PCB汚染廃電気機器等」と「低濃度PCB含有廃棄物」に区分されます。
区分 |
具体例 |
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PCB廃棄物 |
高濃度PCB廃棄物 |
変圧器(トランス)・コンデンサー等の重電気機器、蛍光灯等の安定器など |
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低濃度PCB |
微量PCB汚染廃電気機器等 |
変圧器(トランス)・コンデンサー等の重電気機器など、微量のPCBに汚染された絶縁油に由来するもの (1) 微量PCB汚染絶縁油 (2) 微量PCB汚染物 (3) 微量PCB処理物 |
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低濃度PCB含有廃棄物 |
1 PCB濃度が5,000mg/kg以下のPCB廃棄物のうち、微量PCB汚染廃電気機器等を除くもの (1) 低濃度PCB含有廃油 (2) 低濃度PCB含有汚染物 (3) 低濃度PCB含有処理物
2 PCB濃度が5,000mg/kgを超え100,000mg/kg以下の可燃性の汚染物等 |
ビルなどの施設では、受電設備としてPCB含有機器が使用されていたり、照明器具にPCB使用安定器が使用されている場合があります。これらの使用を停止して廃棄する際には、製造メーカーに問い合わせる、絶縁油中のPCB濃度を測定するなど、必ずPCB廃棄物に該当するかどうか確認してください。
確認の結果、絶縁油中のPCB濃度が0.5mg/kgを超える場合は、PCB廃棄物として適正に保管する必要がありますので、下記の「保管事業者の責務」を参考にしてください。
なお、PCB汚染物等の該当性判断基準 [PDFファイル/175KB]に基づき、PCB廃棄物に該当しないと判断される場合でも、材質に応じて、産業廃棄物として適正に処分してください。
保管事業者の責務
PCB廃棄物の保管事業者には、法令等に基づき、次のような責務があります。
保管等の届出 (PCB特措法第8条)
広島市内でPCB廃棄物を保管する事業者は、保管及び処分状況等の届出など、各種届出書を広島市長に提出する必要があります。
届出をしなかった場合や虚偽の届出をした場合は、罰則が適用されるものもあります。
詳しくは、関連情報の「PCB廃棄物の届出」をご覧ください。
期間内の処分 (PCB特措法第10条、第14条及び第18条)
広島市内でPCB廃棄物を保管する事業者は、高濃度PCB廃棄物の変圧器・コンデンサー等を平成30年(2018年)3月31日まで(終了)、安定器・汚染物等を令和3年(2021年)3月31日まで(終了)、低濃度PCB廃棄物を令和9年(2027年)3月31日までに処分しなければなりません。
また、使用しているものであっても、処分期間が終了すると原則廃棄物とみなされ、法の規制対象となります。
詳しくは、下記の「PCB廃棄物の処分」、関連情報の「高濃度PCB廃棄物の処分方法」「低濃度PCB廃棄物の処分方法」をご覧ください。
譲渡し・譲受けの制限 (PCB特措法第17条)
PCB廃棄物を譲り渡し、譲り受けることは禁止されており、これに違反した場合は罰則が適用されます。
ただし、会社が倒産してPCB廃棄物を保管することができなくなった場合など、やむを得ない場合に認められることがあります。
このためには、譲り渡す側・譲り受ける側の双方から、広島市長に申請する必要がありますので、必ず産業廃棄物指導課までご相談ください。
特別管理産業廃棄物保管基準の遵守 (廃棄物処理法第12条の2第2項)
PCB廃棄物は、廃棄物処理法で定める特別管理産業廃棄物に該当するため、特別管理産業廃棄物保管基準に従い、適正に保管しなければなりません。
特別管理産業廃棄物の保管基準 [PDFファイル/238KB]
特別管理産業廃棄物管理責任者の設置 (廃棄物処理法第12条の2第8項)
保管事業者は、そのPCB廃棄物の管理を適切に行うため、保管する事業場ごとに特別管理産業廃棄物管理責任者を設置しなければなりません。
なお、特別管理産業廃棄物管理責任者の資格要件等については、関連情報の「特別管理産業廃棄物管理責任者の設置」をご覧ください。
PCB廃棄物の処分
PCB廃棄物は、含有するPCB濃度により「高濃度PCB廃棄物」と「低濃度PCB廃棄物」に区分され、それぞれ処分方法が異なります。このため、処分を委託するにあたっては、保管するPCB廃棄物がどちらに該当するかを確認する必要がありますので、PCB使用・不使用の見分け方 [PDFファイル/148KB]や判定基準表 [PDFファイル/2.94MB]を参考にし、製造メーカーに問い合わせるなどしてください。
区分 |
種類 |
処分場所 |
処分期間 |
手続き等 |
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高濃度PCB廃棄物 |
廃PCB等及び廃変圧器等 |
中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)<外部リンク> 所在地:北九州市若松区響町一丁目(終了) 電話番号:093-522-8588(終了) 北海道PCB処理事業所(令和6年8月30日閣議決定、受入期間未定) 所在地:室蘭市仲町14番地7 電話番号:0143-22-3111 |
平成28年(2016年)8月1日~平成30年(2018年)3月31日 (終了)
特例処分期限日 平成31年(2019年)3月31日 (終了) |
見つかった場合は、速やかに産業廃棄物指導課へ連絡してください。 中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)西日本分室へ処理申込をしてください。 処理申込書到着期限 令和6年12月13日まで |
安定器・汚染物等 |
平成28年(2016年)8月1日~令和3年(2021年)3月31日 (終了)
特例処分期限日 令和4年(2022年)3月31日 (終了) |
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低濃度PCB廃棄物 |
微量PCB汚染廃電気機器等
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国の認定を受けた処理施設又は都道府県知事等の許可を有する処理施設 ※処理施設については、関連情報の「低濃度PCB廃棄物の処分方法」をご覧ください。 |
平成28年(2016年)8月1日~令和9年(2027年)3月31日 ※施設の稼働状況については、各処理施設に確認してください。 |
各処理施設のホームページ等で確認してください。 |
運搬
PCB廃棄物を保管場所や処理施設などまで運搬する場合は、PCB廃棄物収集・運搬ガイドライン<外部リンク>(環境省ホームページ)に沿って行う必要があります。
また、運搬を他人に委託する場合は、PCB廃棄物の収集運搬業許可業者に委託しなければなりません。
関係法令等
ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特措法)<外部リンク> (環境省ホームページ)
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)<外部リンク> (総務省ホームページ法令データ提供システム)
広島市ポリ塩化ビフェニル廃棄物適正管理指導要綱(市指導要綱) [PDFファイル/153KB]、市指導要綱別表 [PDFファイル/209KB]