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2022年5月26日記者会見「令和4年第5回広島市議会定例会提出案件について外4件」
動画は下記からご覧ください。
(「広島市公式チャンネル(YouTube)(市長記者会見)」のページへジャンプします<外部リンク>)
日時 令和4年(2022年)5月26日(木)午後2時00分~午後2時48分
場所 市役所本庁舎11階第1会議室
■市からの発表案件■
【令和4年度第5回広島市議会定例会提出案件について】
市長
6月7日(火曜日)に開会予定であります令和4年第5回広島市議会定例会に提出する議案は、一般会計補正予算案など18件であります。
まず、補正予算案についてでありますけれども、今回の補正予算の規模は、お手元の資料の「令和4年度6月補正予算の概要」のとおり、全会計で、22億9,057万1千円となっております。
その内訳としては、まず、利用料金の減収に伴う指定管理料の追加措置についてです。
新型コロナウイルス感染症の影響により利用が減少している施設の指定管理者が適切に管理運営できるよう、指定管理料を追加措置いたします。
次に、広島城三の丸にぎわい施設整備についてです。
広島城三の丸にPark-PFIを活用したにぎわい施設を整備するため、債務負担行為を設定いたします。
次に、社会福祉施設、児童養護施設等の従事者への支援についてです。
感染拡大予防に努めながら、献身的に、高齢者や障害者、児童を介護、養育している従事者に特別手当等を支給する社会福祉施設、児童養護施設などに対して、その手当等に要する経費を補助いたします。
次に、低所得の子育て世帯への生活支援特別給付金の支給についてです。
児童扶養手当の受給者など低所得の子育て世帯に対する生活支援特別給付金の支給に要する経費を計上します。
次に、物価高騰に伴う学校、保育園等給食食材購入費の追加措置についてです。
コロナ禍において物価高騰に直面する保護者などの負担を増やすことなく、学校や保育園等において栄養バランスや量を保った給食が提供できるよう、食材購入費を追加措置いたします。
以上の補正措置を行った結果、補正後における全会計の総予算規模は、1兆2,237億8,648万6千円となります。
最後に、予算以外の議案としては、広島市議会議員及び広島市長の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例の一部改正案など条例案11件、その他の議案6件を提出いたします。
以上が今議会に提出する議案の概要であります。
私からの説明は以上です。
■市政記者クラブからの代表質問■
【路線バスの「上下分離方式」の導入検討について】
記者
1問目の質問なんですけれども、広島市が路線バスで車両の維持・管理などを受け持つ「上下分離方式」を検討していることについてお伺いします。このような検討を市として行うことになった背景と、現在の検討状況を教えてください。
また、市長は導入への課題や実現可能性についてどのようにお考えでしょうか。
市長
まず、背景や検討状況といったことについてお答えいたします。
公共交通につきましては、人口減少・少子高齢化、あるいはモータリゼーションの進展などによりまして非常に厳しい経営環境にある中にあって、コロナ禍における輸送需要の大幅な減少に直面いたしまして、事業者として、これまでどおりの経営努力だけでは事業を存続させ難い非常に困難だと、そんな状況になっております。
一方で、今後も人口減少・少子高齢化が進んでいく中にありまして、広域的な経済圏を維持・発展させようというふうに考えたときには、地域活性化に欠かせない公共交通ネットワーク、これを持続可能で利便性の高いものとして存続させて、最大限活用する必要があると、こういった課題があろうかと思っています。
このため、これまでは事業者任せになっていたと言って差し支えない鉄道やバスなどの公共交通、これを例えば道路と同じように社会インフラと捉えた上で、地域、そして交通事業者、さらに関係自治体と一体となって、競争から協調へと舵を切り替えて、持続性の高い新たな公共交通体系の構築に取り組んでいくのがいいのではないかというふうに考えたわけであります。そうした中で、昨年より、バス事業につきまして、事業者と持続性の高い新たな公共交通体系を構築するための協議を始めたところでありまして、今年の4月になりまして、事業者の方から上下分離方式などの検討を進めてはといった要請がありました。
また、現在、国の方を見てまいりましても、『アフターコロナに向けた地域交通の「リ・デザイン」有識者検討会』で、路線バスなどに係る新たな官民連携のあり方の議論も進められております。本市においても、地元バス事業者8社と市で構成いたします「上下分離方式導入に係る検討会議」こういったものを立ち上げたところであります。この会議におきましては、バスの車両、車庫、バス停などの資産管理を事業者と市が設立する会社が行うということにし、また、バス事業者と市で作る新たな組織体で合意いたしました運行計画に従って事業者が運行管理を行うといった、いわば「広島型」の上下分離方式の導入といったことに向けて、現在、導入後の収支見込みの整理や、今後の方向性についての検討を進めているところで、そんな状況にあります。そうした上で、この課題の実現可能性等についてなんですけれども、これにつきましては、公共交通といったものは事業者の経営努力だけで事業存続させることが困難になっていると、こういうことは、「経営努力」というものに加えて、これを怠るわけではありません。経営努力プラス、何らかの処方箋が必要であるということになろうかと思います。その際、この処方箋というのは問題の性質から考えてみまして、対症療法的なものではなく、根源的な、あるいは根本的な、そういったものにならざるを得ないのかなというふうに捉えています。そうした中で、上下分離方式は、それに応えうるものであるというふうに思うんですけれども、その導入そのものは、大がかりなものにならざるを得ないことから、国と自治体の役割といったものを明確にして、国の積極的な支援、これを引き出していくことが肝要であるというふうに捉えています。そういう意味で、国の動向も注意しながら引き続き検討を進めていきまして、年内を目途に具体的な方向性を取りまとめ、そして国に対して必要となる制度改正などを要望していくというふうにしていきたいと考えています。そういう意味で、市としては、上下分離方式の導入のような抜本的な対策が実現しなければ地域活性化に欠かせない公共交通ネットワークの崩壊が起きるといったような判断に至って、上下分離方式の導入の実現に向けて国も巻き込みながら、不退転の決意で取り組んでいきたいというふうに考えています。以上です。
記者
大体、年内のいつぐらいに方向性を出そうとお考えですかね。
市長
タイミングですか。なるべく早くはしたいというのも。国の方で7月には検討会などの結論が出るというふうなこともいわれていますので、それを出て検証して、8、9月とやり、そして、地元の事業者とも整理して、9、10月とかいうことですかね。10月、11月、まあ年内というのは、少し遅くなりますけどね。11月か12月、そんなタイミングになるんじゃないかなというふうに思っていますけど。
【平和記念式典の開催内容について】
記者
新型コロナウイルス感染拡大の影響で縮小してきた平和記念式典について伺います。先日、今年の式典の開催規模や行事内容の予定が発表されました。一般席などが3年ぶりに設けられ、参列者席が昨年より大幅に増えることになりましたが、開催規模などを決定するに当たっての市長の思いをお聞かせください。また、初めて参列希望者の事前募集をされますが、その意図をお聞かせください。
市長
平和記念式典は、慰霊碑が平和記念公園に建立された昭和27年以来、途切れることなく続けてきているものでありまして、そういった意味で、原爆死没者の霊を慰めるということ、そして、「被爆の実相を守り、広め、伝える」ということ、これによって被爆の実相に理解を深めて「ヒロシマの心」を共有していただくこと、それが広島の使命であるということですね。それをずっと実践し続けているというふうに捉えております。国内のみならず世界中の多くの方々に来ていただくということを願いながらやってきているところであります。ところが、こうした重要な式典であるにもかかわらず、新型コロナウイルス感染症の世界的流行ということがございまして、令和2年および令和3年、やむかたなく規模を縮小して開催ということをしたわけであります。海外の来賓の方は原則として駐日大使、日本におられる大使に限定いたしまして自治体、そして一般席および外国人席は設けず、また被爆者、被爆者遺族席についても被爆者団体等からの推薦のあった方のみの席を用意するということにとどまらざるを得ないということがありました。しかし今年は、感染症に関わる様々な制限が緩和されて社会経済活動、通常に戻りつつあることから、少なくとも過去2年よりも開催規模拡大は見込めると、そういった状況下にありまして、そこで私としては次世代を担う全国の子供たちの平和学習の機会を確保するとともに、できるだけ多くの方々に式典に参列していただけるようにと考えて、同時に感染防止対策、熱中症対策、熱中症予防、そういったことに適切に取り組んだ上で、自治体席とか一般席等を設け、また被爆者、被爆者遺族席を増やすということにしたところであります。
次に、参列者、参列希望者を事前に募集することにいたしましたのは、新型コロナウイルス感染症対策と、これをしっかりやるという中で、式典当日の朝、予約制度なければ席を確保するためにより多くの方が集まってしまうと、そうすると当然、密集とか混乱が起きるということが予想されますので、それを回避するという目的で募集ということをやりました。そして、それと併せて式典の前後、一定時間、公園内の入場規制といったことも行うようにしたところであります。いずれにしても、本市としては、こうした適切な措置を講じながら一般の方などの今年については参列も得て、式典を円滑に執り行うことによって、ポストコロナに向かって、一歩踏み出した式典だなと感じていただけるようにしたいというふうに思っています。
記者
今年の平和(記念)式典でロシアの大統領と駐日大使を招待しないと、広島市が招待しないということに対して、ロシア側が反発をしているようでして、昨日、ロシアのガルージン駐日大使がSNSで「式典に招待しないのは恥ずべき措置である」と批判したり、あるいは「ロシアがウクライナで核兵器使用をもくろんでいるという、ばかげた作り話をあらゆる手を尽くして拡散している」などとSNS上で発信しています。このことについて、市長はどのように受け止めていらっしゃるかお聞かせいただけますでしょうか。
市長
多分、ロシアの大使、ガルージン(駐日)大使のSNS等でのコメントをベースに質問されたと思うんですけれども、私自身も担当者にチェックしてもらったところ、コメントの招待しないことに関してのいろいろな要素込められたコメントであるんですけれども、私の見るかぎり、コメントをよく読むと今回の招待の有無にかかわらず、ガルージン(駐日大使)さん、私も大使館に行ってお話しして、ぜひといった話をした中で、少なくとも一度来ていただいて、直接お会いしたりしているといったこともあるんでしょう、コメントの中で平和記念式典は重要な行事であると、そういう儀式であるというふうに認識していただいているようでありますので、この扱いについての様々な見解は述べられているようでありますけれども、式典そのものが支障なく執行できる状況だろうというふうに捉えているわけであります。そして、ロシア関係の方に対しては、いずれにしても今後、国際情勢が改善して招待できる環境が整えば、当然、式典に来ていただくという申し入れは以前と同じようにあるというつもりでいるわけであります。そんな状況であります。ちなみに招待状を見送るといった経緯なり理由、少し開襟いたしますと、ロシアによるウクライナの侵略、これを機に軍事力による暴挙というものは軍事力によって抑え込むしかないんじゃないかとか、軍事的な抑止力なくしては維持できないという考え方は、どうも勢いづいているというか、世論としても、そうだなというふうな風潮がどうもあるようであります。しかし、この77年前に、被爆による大きな惨禍を体験したこの本市といたしましては、為政者に対しては、いかに武力を増強し相手を脅し上げるかといったような、いわゆる短期的な発想で物事に取り組むのではなくて、どんなに道は険しくとも長い時間軸をおいて、いかにこういった事態を乗り越えるか、あるいはこういった事態が派生しないようにしていくかという発想にたった上で、理想の世界の実現に向けて、あらゆる努力を行っていただくべき、そういうタイミングであるというふうに思っているわけであります。そういう意味で、為政者やその代理人の方に、緊迫した状況にある今こそ、こうした考え方を持っていただく必要性が高まっているという認識でありますから、平和の式典、平和記念式典に来ていただいて、被爆の実相に直接触れる。そして、ひとたび核兵器使用したらこんな結末になるという、その真の姿、実相を理解していただくということですね。そういう意味では、絶好の機会を提供するのが招待ということになるという基本的な考え方、変わっておりません。そうした考え方にあって、実際、EU(欧州連合)の大統領が来たときにも、大統領が「非常にナーバスな問題だけれども、広島市はロシアのプーチン大統領を呼んだりすることを考えていますか」と言われたんで、「それは考えていますよ」ということを申し上げたら、「えっ」と驚かれたようで、「えっ」とか言われたんです。「それは考えていますよ」ということでお答えした経緯がありまして。実際、今申し上げたような基本におきながら、式典詳細につきまして、外務省と協議をいたしました。そうしたところ、こういった招待を今のタイミングで、ロシアの大統領とか、(ロシア)駐日大使とか、駐日ベラルーシの大使、式典に招待するということにすると、多分、出席するかしないかといった有無にかかわらず、その招待するということ自体が、ロシアによるウクライナ侵攻に対する日本の姿勢といったものについて、姿勢として、各国の代表者の方々、例えば式典に出欠するための判断材料にするということになったときに、招待するということで、結局、式典をうまくしようとしていることに支障はないんでしょうかというふうなことは言われたりとか、そういうこともあるかなというふうなことを思い、至ったわけであります。そこで、今言ったようなことも十分考慮して、式典主催者であります、本市でありますから、我が市の意図に反して、式典執行自体が支障をきたす恐れがないということも十分重きを置いて考えなきゃいかんということで、最初の理想的な考え方、それとよくよく吟味した中で、今年については、先ほど申し上げたように、大使には一度、御本人来ていただいたこともありますので、今回はお呼びしないということを。ですから、従来のような式典案内状の発送を見送るといったようなことをしたわけでありますね。ですから、今言ったような状況で、式典がうまくいくというような状況、環境になれば、当然来ていただくということはしたいと思います。実際、もう一つの式典前夜、いつも(8月)5日に晩餐会といいますかね。食事会もやっているんですが、今年は引き続き食事会はしない。式典に出ていただくためにということで、それに集中したいというふうに思っています。直前、いろいろな大使同士が食事の場で会ったりすると、招待状がどなたに来ている来ていないとか、そういったことで執行に支障をきたすかどうか分かりませんが、そんなことの議論が起こらなくてもいいようにというふうな気持ちも込めて、そういう運用にしたいというふうに思っているところです。
記者
すみません、一応確認なんですけれども、大使が来られたことと、大使が来られた時期と、あと市長が面会された時期というのは、いつか御記憶でしょうか。
市長
数年前だと思います。長崎の市長と数年前行きまして、すごく日本語が堪能なんですよ。日本大使館にずっと勤務していて、我々よりか上手な日本語を使う方で、日本通ですよね。だから、よく分かった上でいろいろお話されます。そして、そのときもそうでしたけれども、やりとりしながら、終戦後のロシアの対応、当時はソ連ですけれどもね。ソ連の対応なんかもお話しすればしたで、「いやいや、アメリカがこうじゃないか」とかすごく世界情勢もよくご存じの上でお話しされていて、極めて理性的な方である、優れた外交官だと思いますよ。
記者
ちなみに、広島にお越しになったときにお話しをされたのか、それとも大使館でお話しされたのか。
市長
大使館ですごく話しして、こちらに見えたときにも御挨拶はいたしました。
記者
先ほどのようなお話は大使館でされたということ。
市長
人柄を評価したのは大使館で、時間かけて予定よりか長くお話ししたことがあります。
記者
今のロシアの質問に関連してなんですけれども、確認なんですが、要は(ロシアを)招待してしまうと他国が誤解というか、他国が逆に、ロシアが参加するのであれば式典には参加しないというような状況になってしまう。
市長
あるかも分からないということで。
記者
可能性があるということ。
市長
そういう可能性も考えましたね。
記者
それを踏まえると、本末転倒ではないですけれども混乱が生まれるということですか。
市長
ロシアの方は理解していただいて、広島の対応は分からんでもないけど自分たちの立場の主張はするということに多分なるでしょうと。実際されましたしね。言われていることは、ロシアの立場とすれば、それなりに筋が通っているわけです。だけど、ああいった中で、「アメリカが謝らないからいかんのじゃないか」とか、だったらロシアは、シベリアの抑留といいますか、戦後入ってきて、「それをどうするんですか」「いや、それはちょっと次元が違うでしょう」と、こういう議論になるわけです。そういったことでいろいろ議論させていただいて、分かった上で言っておられるということですから、先ほど申し上げたように、式典は大変重要だと言っていただいている点は見逃せないなというふうに思ったわけであります。
記者
今回のSNSでのガルージンさんの投稿について、何か広島市の方から反応というか、そういうことはされる。
市長
していません。
記者
先ほどのロシアのことに関連してなんですけれども、やはり世の中、世界がこういう核兵器に対して緊迫している情勢で、そのロシアが当事者であるということだからこそ、式典にやはり呼んで、実際に被爆の実態を見てもらうべきではないかというような被爆者の声も聞くんですけれども。
市長
それを最初に申し上げているだろうということで検討を始め、そして、その呼ぶことについての反応を検証してみて控えたということであります。
記者
呼ぶことについての反応を検証したということなんですけれども、例えば具体的に、どういうふうな。
市長
内部で検討したんですよ、職員と外務省との協議の中で、いろいろ試行錯誤いたしました。
記者
どういうふうな懸念というか、そういうことが。
市長
今申し上げたとおりです。
記者
先ほど言った、他の国が来ないかもしれないということですか。
市長
呼ぶことで、各国に呼びかけることで、世界情勢はロシア支持派とアメリカ支持派に二分されている状況があります。例えば今だって、他のところでは、ポルトガルのリスボンの市長さんから私に、平和首長会議の会員であることについての問題提起がありまして。「ロシアにウクライナ侵攻について抗議したのはいいんだけど、アメリカが核実験したことについて抗議するようでは、世論を二分するから自分は脱退を考えなきゃいかん」と、「どうしてくれるんだ」というようなお手紙が来たりしまして。それは、広島の被爆者の心は理想の世界めがけて、どちらに対してもそういったことのないようにしてくださいという立場で申し上げておりますと。どちらの勢力に加担するということなく、そういった混乱がないようにするための主張をしていて誤解なきようにというお手紙を、そういう主旨で返事するようにしているんですけども、その類いなんです。ですから、式典というものをきちっと行うために、今時点でどちらがいいかというふうに判断したということであります。
記者
やはり市長としても、その判断に至ったというところはかなり難しい判断だったんですか。
市長
難しいというか、なかなか厳しいものだと思いますけど。思いはあるけれども、実際式典を主催する立場として、式典そのものがうまくいくことが重要ですし。実際、NPT(核兵器不拡散条約)も同じ時期にありますけど、NPTには出席できないから式典に力を入れてしっかりやると。市から平和発信をしっかりやりたいと、こういうことであります。政争の具にされたくないことです、式典を。
記者
今のロシアのところで関連して、外務省の方から、ウクライナ侵攻しているロシアに対する日本の姿勢の誤解を招く可能性があるというふうなところで話があったということだと思うんですが、具体的に日本のどういう姿勢がどう誤解されるというふうなことなんですか。どういうふうに松井市長は今受け止めていらっしゃいますか。
市長
その姿勢というか、今申し上げたように、核兵器(軍縮)を強化するとか(核兵器)不拡散をしっかり進めなきゃいけない、最終的には廃絶を目指すということを皆さんにお伝えするための式典とやっている中で、さて、こちらの状況どうですかと聞いたときに、今、ガルージン(駐日ロシア)大使はSNSでは、「核の使用なんかほのめかしてないけど勝手に言っている」と言われるけど、実際にプーチン(ロシア連邦大統領)さんの発言を聞くと、核の使用をほのめかしているというのは事実あります。その中でそういうことを言っていなくて、情報を作り上げて言っていると、こういうような状況もありますと。すると、そういった方を呼んで、そして今意味あるんでしょうかということを、そうでない立場の方が言うと。じゃあ、「あなたを呼んで、あなたを呼ばないっていうのはどういうことですか」とかなったりしますから、そうすると今少なくとも起こっているこの状況の中で、そういうことをほのめかしているような方について実際来ていただいて、聞いてください、見てくださいと言ってもなかなか効果が出ないことに加えて、そのこと自体について、他の参加する方々がどうなんだろうということになれば、式典どころではなくなるかも分からないから、そういったことを避けようということを思ったわけでございます。
記者
今回、式典に参加して。
市長
式典で、いわゆるロシア賛成派・アメリカ賛成派でどっちがと色分けするとか、そういったことをやるつもりもないわけでありますから。先ほど申し上げたように、どちらの政府にしても核保有国に対しても、核が増える、核を増強するっていうような行為についてはやめていただきたいということを、どちらに向けても言わなければいけない立場ですからね。現にそういったことをほのめかしている方、だけど、その方に理解を深めていただくために今、今回来ていただくということをあえてやらなければいけないかというふうに考えたと。今までも来ていただいて、先ほど言ったようにガルージン大使、来ていただいて見ていただいているんですね。だから機会があれば、許せば今後とも必ず来ていただくようにすると。今回はやめておこうと、こういうふうにしたということであります。
記者
今おっしゃったのは政府、外務省の方のそういうふうなこの提案というか。
市長
外交問題でそういうこともあり得るということを協議の過程で言われたから、そういうこともあるんだなと。外交官というのは各国の国の代理人ですから、国の立場を代表して来るということになります。そうすると、様々な判断をされるから、そういった行為をすることで反応があるでしょうというふうに言われるから、そうですねというふうに受け止めたわけであります。
記者
なるほど。それは日本の立場の誤解っていうのと別に、ロシアとは全く別の国との日本との外交問題にもなりかねないというふうに外務省から市長の方に言われたということですかね。
市長
その協議の中でね。皆さんにそういったことが伝われば、反応様々になりますよと。そうですよねというふうに思いついたわけです。
記者
市長はEU(欧州連合)の大統領が来られたときの会見で、「今だからこそ呼ぶべきだ」とおっしゃっていたと思うんですが。
市長
そのときの気持ちを申し上げて、先ほど申し上げたように「微妙な問題なので、言うのはいいかどうかだけれども、質問したいんだけど」と言われたので、「当然検討しています」というふうに申し上げたんです、その場でね。
記者
もう一度いいですか、すいません。聞き取れなかった。今のところ、もう一度いいですか。
市長
EUの大統領が私に質問するときに、2つほど質問するという1つで「とても微妙な質問なんですけれども、どうされていますか」と言われたから、当然広島の立場とすれば来ていただくことを検討していますと申し上げたら、「えっ」っていう感じで驚かれたというのがそのときの状況でしたと申し上げました。
記者
そのときに松井市長は呼びたいとおっしゃっていて。
市長
呼ぶ方向で検討していますと申し上げました。
記者
呼ぶ方向で検討しているとおっしゃっていて、そのあと外務省との協議で国際問題にも外交問題になりかねないし、支障が出る可能性があると、誤解される可能性があると。それに対して、松井市長として今の受け止めとしては、そのときのお考えとは変わっていないとおっしゃっていたと思うんですが。
市長
ベースは変わっていません。それは先ほど申し上げたように式典を円滑に執行するというのが一番だと。
記者
分かりました、ありがとうございます。
記者
式典のことでロシアとは離れてなんですけれども。今回、3年ぶりに規模を少し戻してというか、開催になったということですけれども、この2年間はなかなか本当に限られた人のみによる式典になっていたわけですが、今回それが戻るということで市長の率直なお気持ちとして多くの人に来て、参列してもらえることに対する思いをちょっと聞かせてもらっていいですか。
市長
今申し上げたように式典、とても大事な式典に、ある意味で今こそ、またなっているのではないかと思うんですね。そして一番の論点はそれぞれの政治家、為政者の世界観、価値観によって核抑止論といういろいろなことを言われますけれども、それが必ずしも成立しえないということが私は明らかになったんじゃないかなと思うんですね。核抑止っていうのは、為政者というのは似たような発想の元で物事を考えるから、こうなればこうなると。そうすると向こうも、きっとこう合理的に考えてやるから、ある程度こういう脅し方をすると対応を控えるだろうと。だから間違いなくそれをさせないために、こういった脅し方というか、こういう注意喚起をするという発想で成り立って、かつ、それを確実に、そういった脅しの材料をコントロールできますよということを見せつけるという、この2つの要素で成り立っていると思うんですけれども、あにはからずや相手の方がそういった方法で発想しない。全然次元の違った考え方で発想したということになると、全部外れるということですね。そして逆の立場で、「いやいや自分はこう思っているんだよ、お宅こそおかしいんじゃないか」って今まさにエスカレートしていると、こういう状況ですね。だからこれがまさに核兵器の恐ろしさ、そういったものに直結すると。一旦間違うと単に相手を滅ぼすとか殺すだけじゃなくて人類全体を揺らしかねない。そういった道具を使って脅し合うことをやることが本当にいいんでしょうかということを問われていると思うんですね。そして、そういったことを二度と繰り返さないようにしましょうということを言っているこのヒロシマですから、短期的な形で収めるために軍事力強化とか、脅し合いっていうことをやる中で、抑止が効くということを皆さん信じてやっておられるんですけれども、人間っていうのは長いおつきあいしていかなきゃいけないわけですからね。そういったことを考えたときに、もう少し理性的に冷静に考えるということを、今こそやっていただきたいし、そういうことを指示する多くの市民社会というか、市民を増やすということこそ重要だと。そういう意味で少しでも多くの方に来ていただいて、一緒にそういうことを感じていただきたい。ただ、今申し上げたようにコロナ感染症対策もやらざるを得ないから、その中で2年前よりかは少し増やすといったことを何とかして開催までにしっかり準備しようと、そんな思いでいるということであります。
記者
市長としては、今回増やせたということは喜ばしいというふうにやっぱり受け止めておられますか。
市長
はい。
記者
先ほど、ポストコロナに向けた式典にしていきたいというような発言もあったかと思うんですけれども、また何か新しい式典に向けて。
市長
やってみないと分かりませんけど、今回、前回と違った工夫をいたしますのでそれでどういった成果があるかということだと思うんですけどね。
■その他の質問■
【市立保育園の5歳男児の死亡事案について】
記者
来週の月曜日(5月30日)に保育園児死亡事故の検証委員会の第1回目が開かれると思うんですけれども、この間、こども未来局に聞くと市職員が検証委員会の中に入るというふうに言っていたんですけれども、例えば他市の事例ではこういった検証委員会を開く場合、もう事前に委員の人たちには資料を渡して説明をして、市職員は検証委員会の中に入らないという事例もあるんですけれども。例えば神戸市のいじめ検証委員会とかですね。市長はその点、検証委員会の客観性とか公平性についてはどのように担保していこうとお考えですか。
市長
個別の話はまだ受けていないのであれですけど、一般論として検証というその言葉そのものを見たときに分かりますけれども、正しく事態を把握してそれを分析してどうするかという議論をするという意味では、正確な資料と客観的な議論ができるという場を設定することがとても重要だということが明白だと思うんですね。そうしたときに、その当該事案に関わった方をどう関わらせるかというのが、客観性、中立性といいますか、公正性を保つかということになるかと思うんですね。例えばその検証委員会を問題を起こした当事者が、あるいは当事者の立場に近い方が主催するとかであれば、これは誰が見てもそれはちょっと本当でしょうかとなりますですね。ですけれども、そういったものを動かしていく上で第三者の立場で判断できるような構成にした上で、起こった事象について詳しく、その当事者の立場での説明を求めるとか、情報提供をしていただく。つまりその仕組みの中での役割をしっかり決めて、それを利用しながら議論させるということは、これは効果があることだと思うんですね。ですからその参加のさせ方といいますかね、役割というかそういうのをルール化してきちんとやれば入ることそのものはいきなり悪いとかいうことではないと思うんですよ。そのところをしっかりと整理してやるということが肝要かなと思いますけどね。一般論で申し訳ない、そう思いますよ。
市職員
今、毎日新聞社さんが言われているのは、検証委員会のメンバーに市職員がいるということをおっしゃられているわけですよね。
記者
そうです。委員会の中に。
市職員
事務局として物理的に同じ場所に市職員がいるということはありますけど、検証委員会のメンバーに市職員はおりません。
記者
市職員の同席そのものを排除している自治体もある。
市長
だから私はそういう意味で役割を決めて、要するに、いることで、なんというか、「しゃべりにくい」といったようなことまで配慮されるということかもわかりませんけど。実際問題、いてね、にらみ効かせて議論をしにくくするとか、そういうことは多分、させないというか、そういうことがないとすれば、マスコミ、皆さんが入って議論の中身をオープンにして、それを、どうせ事務局も読んだりして、対応することも求められれば進行するし、議論するということをやれば、そんなに問題があるように思いませんけどね。どうでしょうか。
【オバマ元大統領が訪問されたことの評価と影響について】
記者
明日で、オバマ(元)大統領が来られて6年になると思うんですけれど、6年たって当時訪問されたことの評価と、今回G7が来年、広島で開催されるということも決まりましたけれど、来られたことの影響なんかをどういうふうに思われているかというのを、ちょっとお伺いできますでしょうか。
市長
そうですね、広島の市長というか、市の立場でいきますと、平和という問題についての関わり方は、あくまで国内の基礎自治体ですから市民の方々の生活とかっていうものをベースにしながら、ただ、そのベースを安定させるためには、世の中が戦争がない状況、そして、被爆をしたこのヒロシマとして核兵器がないということが一番重要だといったことを、きちんと受け止めて、それが実現できるような状況をあらゆる場面で努力して、その上で市民の生活を安定させるということをやるのが、市の使命ですよというふうに規定されていると思います。それをやり続けていると思うんですけれども、そういった中で、一番の決定要因は、今の世界に影響力を持っている為政者の方々が、どう行動するかということになると。そうすると、そういった方々に、このヒロシマの思いを直接知っていただく。その考え方の論拠を自分の目で被爆の実相を見ていただくということになれば、そういった方々だって、みんな同じ人間ですから、受け止めをきちんとしていただけるんじゃないかということで、迎える平和ということで、多くの方に来ていただきたいということをやっています。その中で、オバマ(元)大統領にも来ていただいたということであります。そしてその後も、それを続けている中で、いろいろ来ていただいているということですけれども。問題はそういった受け止めをしたあとの対応ですよね。分かったけれども、国内に帰り自分の領地に帰って、今言った思いをどう実現するかといったときに、その徹底的な独裁者とかであれば、ひと言で右から左とかね、世の中のシステムが動くかも分かりませんけれども。そうでない国際情勢の中で、それに目がけてやったとしても動いていないという事実があったりすると。実際問題、目指すと言われながら、そんなに進んでいないという評価もあるとおりでありまして、今回の事態は、そういったときの思いから比べると、今の米露の状況は、むしろ事態は悪化しているということだと思うんですね。その悪化している事由がそれぞれの言い分がありまして、相手が過剰に仕掛けてきたから、やむを得ざることをやっていると。仕掛けているんじゃなくて、民主主義の輪を広めていったらなったんで、自分達の方が落ち度があるんじゃないか。そんな論点で議論しながら、でもやっていることは、自分たちの言い分を通すために、核の力に寄らざるを得ないっていうことをやっていて、皆さん、それが現実だなということを言いはじめているんですね。あのときの核のない世界を目指して、皆さんうまくやっていきましょうと言った、あの言葉はどこに行ったんでしょうかと。それを忘れちゃいけませんよと。それをきちんと自分のものにしていただくべく、このヒロシマの地で確認していただき、今の軌道を修正するということを、常に忘れないようにしていただくということをやり続けたいんですね。そして、為政者がそういった判断をする基盤というのは、そういった方々を選ぶ市民社会です。今、民主主義がほとんど行き渡っていますから。選挙とかいう形で選出できるわけですから、都市というものを通じて、武力なり軍事力を持つことのない都市という組織を中心に、そういった首長さん方が市民と一緒になって、そういった世界に行かないようにしようじゃないかと、国境を超えて仲良くしようじゃないかということをやってきていると。そしてそれを確認してもらうという、非常に地味かもしれないけれども、いわゆる、いろいろな意味で、ボトムアップといいますか、下からそういったものを積み上げる努力をやり続けるということをやらなきゃいかんし。これがなくなってしまうと、本当に世の中大変なところに流れて行くんじゃないかと思っています。そういう意味で、先ほども言いましたけれども、今年の平和記念式典ですね、とても重要だと思いますし、多くの方に可能なかぎり見ていただいて、確かに今の世の中、もう少し何とかしなきゃいかんなというふうに思っていただけるきっかけになればなというふうに思うわけであります。
※( )は注釈を加えたものです。