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2022年4月7日記者会見「核兵器禁止条約第1回締約国会議及びNPT再検討会議について外3件」
動画は下記からご覧ください。
(「広島市公式チャンネル(YouTube)(市長記者会見)」のページへジャンプします<外部リンク>)
日時 令和4年(2022年)4月7日(木)午前10時15分~午前11時05分
場所 市役所本庁舎11階第1会議室
■市政記者クラブからの代表質問■
【核兵器禁止条約第1回締約国会議及びNPT再検討会議について】
記者
核兵器禁止条約の締約国会議が6月にウィーンで、NPT(核兵器不拡散条約)再検討会議が8月にニューヨークで開かれることが正式に決まりました。ロシアによるウクライナ侵攻で核兵器の使用リスクが高まる中、被爆国の代表として改めて両会議で何を訴えたいのか、核廃絶に向けた意気込みをお聞かせください。
市長
現在、ウクライナの各地におきまして、罪のない多くの一般市民の方が戦禍に遭っているということについて非常に深い悲しみを感じております。こうした状況を踏まえて、為政者には戦争で犠牲となるのは常に市民であって、犠牲となる市民の目から見て望まれる安全、あるいは安心な生活と真逆になるような事態、そういったことに陥らないような理性的な判断が今こそ求められていることを強く訴えたいというふうに思っています。また現状を見てみますと、核兵器というものはその保有者を壊滅的な戦争に駆り立てるばかりでありまして、安全保障に寄与することはできないということの証明を行っているというふうにも見えるわけであります。私たちは全ての核兵器の脅威というものを断固拒絶して、非人道的な結末をもたらし、多くのリスクを伴うこのような兵器に対する強い懸念を改めて表明したいと、あるいは表明しなければならないというふうに思っています。さらにNPT(核兵器不拡散条約)(再)検討会議の本来目的を踏まえまして、同条約が課している軍縮義務の履行をさせるものであるというこの会議の本分。それから、核兵器禁止条約締約国会議、これは将来的な核兵器の廃絶に向けた議論を前進させるものであると、こういった性格を踏まえた上で、これから先、今起こっているような事態を起こすことなく核兵器廃絶に一歩でも近づいていくための努力を締約国に強く求めていかなければならないと思っています。今申し上げたようなことをしっかりと発言したいといいますか、発信したいというふうに思っています。
記者
今、被爆地からこうしたメッセージを訴えたいということだったんですけれども、特にNPT(核兵器不拡散条約)については、やっぱり日程がかなり厳しそうというか、8月6日の式典ともかなり近接しておりまして、今のところ現地に行って訴えるということができそうなのかどうか、あるいは、もしそれが難しいとなった場合には、どういった代替手段を考えていらっしゃるのか、その辺り伺えたらと思います。
市長
おっしゃるように、今のところ8月の日程ですと、6日の式典は欠かせませんから、必ずこちらにいなきゃいけません。今までの経験からいくと、この会議、8月に開くとすると始めの方でNGO(非政府組織・民間団体)セッションっていいますか、そういった発言機会が設けられますので、この平和(記念)式典との調整日程を確保できれば行きますし、長崎の市長さんは(8月)9日ですから、少し余裕があるとすると、長崎の市長さんと小泉事務総長に行っていただいて対応するということもあり得るかなと。締約国会議、実は6月の議会がありますから、そちらは議会の方にお願いして日程調整をするというようなことを考えて、可能なかぎりその場に出て、今申し上げたようなことを発言したいなというふうに思っています。
記者
先ほど、6月の締約国会議は議会と調整しながら、ぜひ参加をというお話でしたが、行った際にどういった場で発言できるのかとか、そういったところは決まっているんでしょうか。
市長
まだ決まってはいませんけれど、今までの前例から言うと、その会議の前半にNGO(非政府組織・民間団体)の発言機会などが比較的早めに設定されて、そこで順番付けとかいうのを聞いた上で発言ということです。具体的なものはまだ決まっていません。あくまで想定で対応しています。
記者
6月の(核兵器禁止条約の)締約国会議の方なんですけれども、市長、度々、日本政府に対してもオブザーバー参加を呼びかけてはいらっしゃるんですけれども、まだ、ただ現状として、後ろ向きということについて、今後、6月まで、まだあと2か月ほどあるんですが、まず、オブザーバー参加についてはどういうふうな形で日本政府に訴えていくというふうなことがございますでしょうか。
市長
今までも言っておりますけれども、「橋渡し役としての立場はしっかりしたい」と、こう言われていますので、橋渡し役であれば、核兵器保有国と非保有国、その間に立って、双方が意思の疎通が図れるようにすることがまず橋渡しの本務だと思うんですね。そうした中で、この(核兵器)禁止条約に全くタッチしないというのは、橋渡し役としてどうなんだろうと。ですから、今、いろいろな国内事情、あるいは海外の核兵器保有国との関係で、直接の対応が難しいとしても、開かれる会議に何らかの形で出て、非締約国の思いなり、そこでの議論をしっかり受け止めるということがいると思います。そういう意味では、オブザーバー参加は、ぜひやってもらいたいと思います。何らかの形で、この会議に参画する関与をして、橋渡し役をしっかり果たせるようにしてもらいたいという主張は今までもしていますけれども、重ねてしっかりしていきたいというふうに思います。
記者
締約国会議の前にも核兵器の非人道性の会議も開かれるみたいなんですけれども、そこについても、日本政府ちょっとまだ、はっきりはしていないみたいなんですが、そこについても日本政府の参加はこれまでしてきたんですけれども、今回はいかがでしょうか。市長としてどういうふうに訴えていくとか。
市長
今回の事態を考えたときに、いろいろな議論がある中で、今まで以上にこういったものに対しての日本政府の対応というか、世界中が注目していると思いますので、被爆国日本、本当に核兵器のない国を目指す、そういったことが皆さんにしっかり分かっていただき、これを一歩でも逆に進めるというか、今の事態は悪化しそうな事態ですから、それを押しとどめていい方向に向かうためのピンチをチャンスに変えるといいますか、そういった機会にすべく、発想をしてもらいたいなと考えてもらいたいなと思います。
【平和首長会議の加盟都市増加について】
記者
続きまして、平和首長会議の加盟都市増加について質問をさせていただきます。核兵器廃絶などを目指す世界約8,000都市の連帯組織「平和首長会議」の加盟都市が、緊迫するウクライナ情勢を背景に急増しています。副会長都市のドイツ・ハノーバー市がウクライナの平和を願い、同会議の旗を庁舎に掲揚してSNSで発信したところ、賛同する都市などが加わりました。これについて、会長としての受け止めをお聞かせください。
市長
今回のハノーバー市の対応、これは副会長都市としての立場とともに、ヨーロッパ内のリーダー都市という立場ももっておられる都市なんですけれども、それが世界の平和を望む人々との連帯を示そうということで呼びかけをいたしまして、やった結果が同国内の約30の加盟都市が平和首長会議の旗を掲揚する、市庁舎の前で掲げていただきまして、思いを発信するということをやりまして、そして、それに呼応した形で同国の中で58の都市が一気に(平和)首長会議に加盟するということになりました。平和首長会議の会長という立場からいたしますと、こういった平和首長会議の加盟都市が平和というものを願って、安全で活力ある都市の実現ということに向けて、連帯して取り組むという動きを、実際しっかりとやっていただいたということ、このことについて心から歓迎したいと思いますし、非常に心強く思っております。実際、各自治体として、都市の市民、市民の皆さんにそういったことがアピールできるということが、非常にうれしく思っているところであります。私としては加盟都市との連帯というものを深めて、市民社会の平和への思いが国際的な規模で醸成されていくと、そのことを通じて市民社会というものが、為政者に対して政策転換を促していくということになると思うんです。このことによって一日も早くこの痛ましい戦争というものが終結する、そして、ウクライナの国民が再び平和な日常を取り戻すことができるようにということを心から願っています。多くの方が望んでいるということをしっかり示すことで、為政者がこれまでの対応を少しでも変えていく、平和に向けて歩むという基盤づくりをしっかりやっていく。この平常時からも重要だと思うんですけれども、こういった事態の中で、多くの人がそれを望んでいるということをしっかりとアピールしたいというふうに思っています。
記者
平和首長会議の関係ということなんですけれども、この平和首長会議にも参加していると思うんですけれども、ロシアのボルゴグラード市との、今年、姉妹都市連携締結から50周年の記念事業が中止されるということが、議会の中で表明されたと思います。改めて、この理由と今後この姉妹都市連携に関して、ボルゴグラード市との姉妹都市連携のあり方についてどのようにお考えなのか、お考えをお聞かせください。お願いします。
市長
私自身は、都市の使命というのは自国の統治システムの中で、国家レベルでは戦力、武力というものは、通常持つものだという認識がある、今の世界観の中でね。都市はそういったものを備えることなく、その都市内の市民、そこにお住まいの方々の安心・安全を確保するために、国内で与えられた権限を最大限駆使して、いろいろな問題に対処すると。こういった性格のいわゆる組織、そういう意味では、武力を持たない、安心・安全を確保するための行政、統治システムを持っています。その都市同士が共通の思いを持ち、似たような体験をしながらも、しっかり市民の安全・安心を確保するということをやろうという、そのつながりをしっかり持とうというのが、平和首長会議の目的でありまして、そういった中で、日頃から各都市が共通する様々な問題を、一緒になって解決するための情報交換、あるいは協力をする。さらには、それをしっかりと確保するために、この地球上から核兵器がなく、戦争という殺し合いの行為が根絶されるようにするということを、皆で考えながら、それぞれの役割を果たそうということをやっているわけでありますから、ボルゴグラード、元スターリングラード(※)でありますけれども、そういう経験を踏まえれば、広島と同じ思いを持っておられるというふうに思っています。ですから、姉妹都市縁組みができているわけであります。これをしっかりと維持し、それを発揮したいんですけれども、今の国内事情を見てまいりますと、それが十分に機能し得ない状況にあるということ。そことの会議も、逆に「したい」というような申し出もあったりして、集まれないとするとWeb会議でもぜひやりたいんだがと、こういうような申し出もいただいているくらいでありますから、多分、志は変わっていないと思うんですけれども、ただそれに参画する諸都市から国内事情を見たときに、今の状況の中で、十分なその会議体制が整わないから今回は見送ろうというふうな状況が見て取れましたので、我が市としても、そういった市がいろいろ会議を開催するということに関しての対応については、今回は見送ろうというふうにしたものであります。そういった状況がありますので、基本的に姉妹都市縁組みを解消するとか、そんなことは考えているわけではありません。むしろ強化して、その思いがしっかりとロシアという国内に浸透していくために、今後何ができるかということをしっかりと考え続けるということをやっていきたいというふうに思っています。
※音声ではレニングラードと発言していますが、スターリングラードの誤りです。
記者
平和首長会議の加盟都市が急増しました。今回のその背景について、当然、ロシアのウクライナ侵攻ということがあると思いますが、核兵器廃絶を目指す平和首長会議の加盟都市が、欧州を中心に急増したということのこの背景を、改めて市長はどのようにお考えでしょうか。
市長
元々平和首長会議は、核兵器のない世界を実現していこうということを願って、1982年に国連(国際連合)で声を上げて認知された組織なんですけれども、その後の展開として、私自身、市長になって、会議の会長を務める中で、今申し上げた究極の目標実現のためには、改めて、それを構成する都市が持っている共通の課題、つまり安全で活力のある都市というもの。自分たちの課題も一緒に合わせて解決すること。それをやることで、初めて究極目標を達成できるんだよということを明確にしてお願いして、さらには、それをしっかりと根づくものにするために平和文化といいますかね。日頃からそういった活動をしていこうということを、この組織の目標にして活動していくということを訴えまして。着実に増えてきていたんですけれども、そういった中で、ヨーロッパ、特に自分たちの近場で、こういった紛争が起こるということを実感された首長諸氏がですね、それを回避するための、地道かもしれないけれども確実な活動をしている組織があるということを旗を揚げて示されたということを見ていただいて、今までの取り組みの効果が一段、皆さんに印象づけられるということをリーダー都市にやっていただいたというふうに思うんですね。自分の環境から遠いところで問題が起こっていればね、ややもすればスルーしがちな問題が近場で起こり、それを解決するためにいろいろな手段、議論あるんですけれども、根源的にやっていくのは日頃からのきちっとしたこういう事態を起こさないようにするための、むしろ取り組みが重要だということも分かっていただけたんじゃないかなと思うんですね。だから、改めてこの組織の価値というか値打ちを身近に問題が起こった中で確認していただき、それならば一緒にやろうということになったというふうに受け止めております。これをもっともっと広げるということを一層力を入れてやっていかなきゃいけないかなというふうに思っているところであります。
記者
特に今回はウクライナのキーウの近郊の地域で、いろいろロシアによる残虐な行為といいますか、そういったものが報道されていますが、市長はこういったウクライナ国内にも加盟都市がありますけれども、こういった都市が、実際そういった民間人が被害を受けているといったことにどんなふうにお感じになっていらっしゃるかお聞かせいただけますか。
市長
先ほど申し上げたように、戦争という行為は国対国の戦争というか、戦争行為だということで、国対国というふうに整理するんですけれどもね。実際、国というのは抽象的な概念でありますよね。国と国が戦争するとなれば、その国の国民一人一人が他国の一人一人と殺し合いをするんですね。実際、国がいわゆる長距離弾とかね、核弾頭を積み込んで撃ち込むということで、実際、自らが殺害行為をしないとしても、爆弾を発射するボタンを押すと、それが飛んでいき相手の国に落下したときに、単にその国の物、施設を破壊するだけではなく、そこでは人々の暮らしがあり、市民、国民が生きているわけですね。それを殺害するわけですよね。だから戦争という行為は、あくまで人を殺す行為なんですよね。だからそういったことを国内で平常時の生活しているときに人殺しをしてはいけないといったことを、みんなルール化しているのに、なんで国ならば許されるんでしょうかと。その疑問に、皆ぶち当たると思うんですよ。そして、今回ヨーロッパで起こっている事態は、特にドイツは、かつて、ロシア、ソ連時代ともね、戦争したことがある。日本と違ってNATO(北大西洋条約機構)という組織があり、核を国内に配備している。お互いに冷戦時代を脱却して、核兵器を減らすということをしたんですけど、まだ残っていると。そして一方ではEU(欧州連合)という経済体制では、一緒の経済圏をつくろうという融和の動きがある。しかしながら、含めた地域の中でNATOという、また軍備を備えているという、二重の構えなんですね。より複雑な状況にある中で、起こってはならないこの紛争が起こってしまった。ですから我々以上に地元として、真剣に考えている方が多いと思うんですね。そして国内政治のあり方についても、エネルギー問題も含めて共存しなければいけないけれども、こういった紛争が起こったときに利害調整が複雑になるといったことを考えると、先ほど申し上げたように安全・安心な都市というものをまずつくる。そのためにはそれを前提とした国家をつくってもらいたいし、戦争のない核兵器のない世界というのは多くの人々の共通の願いだと思うんですね。それが実際できていないという現実を踏まえてどう対応するかといったときに、理想に向けて物事を解決していく、そのための行動を日頃からやるということの重要性が今問われていると思うんですね。今の事態を対処するため攻撃的に相手を脅し上げて物事を収めるという、そういった発想が出てくるのかもしれませんけれども、長い目で見て人類が存続していくための発想というものを、もう一回冷静にみんなが考えると、そういったことを何より必要と思います。そういったことができる、あるいはするための条件設定として、一つの重要なツールとして平和首長会議、これが認知されたんじゃないかと思いますし、これを大事にしていかなきゃいかんというふうに思っているところです。
【米国の「核体制の見直し(NPR)」の公表について】
記者
アメリカの核体制の見直しの公表について質問いたします。アメリカがバイデン政権で初めてとなる新核戦略指針「核体制の見直し(NPR)」の概要を発表し、「安全で効果的な核抑止力と強力で信頼できる拡大抑止の維持は最優先事項だ」として「核の傘」の堅持を明記しました。これについての受け止めをお願いします。
市長
先日公表されました米国の核体制見直し(NPR)、ここにおいて、「核抑止力維持を最優先事項」という処理がされたというふうに受け止めていますけれども、このことは、バイデン大統領がかつて、「核の唯一の目的を抑止と核攻撃への報復にすべきだと信じている」というふうに言われたことに反しているんじゃないかというふうに思います。それとともに、核兵器廃絶への一歩が踏み出せないというばかりか、逆に遠ざけかねない。そういったものになっているというふうに受け止めておりまして、平和を希求する本市としては大変残念であり、遺憾に思うというのは、素直な気持ちであります。
現に、核兵器が存在している中で、ウクライナの情勢を踏まえるならば、威嚇というこの考え方、こういう対応は止めるわけにはいかないという考え方があるのは、十分承知しているんですけども、ただ、そういった考え方は、先ほど来、申し上げているような考え方は敷延ばしていくと、核戦争への入り口を近づけるだけではないかというふうに思うんですね。そして、今申し上げたことは、私のみならず、世界中の人々が実感しているんじゃないかと思うんです。どうでしょうかね。現状のいろいろな議論は分かるんだけれども、そうなるんじゃないかというふうに思われていると思います。そういう意味では、核兵器がひとたび使用されると、その被害を受けるのは、罪のない市民なんですね。いろいろな立場で人々は、葛藤していますよ。それは、軍人という立場でおる方もおるけど、その方も元々は市民ですからね。その1個の尊い命を失う、そして多くの方を苦しめる。そんなものなんですね。それは、言葉を変えると、お一人お一人のそういった悲劇が積み重なって、地球規模の悲惨な状況をつくりあげるということは間違いないと思うんですよね。だから、そういったことを、しっかりと頭に叩き込むならば、改めてバイデン大統領には、被爆者の「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」という、この思いをしっかり受け止めていただくということ。そして、核兵器のない世界を目指すという目標を見失わないでいただきたいんですね。いろいろな事情があってこういうことだというふうにも思いたいんですね。目標は堅持していただくということ。そして、そうするならば、次に、今すぐにやらなきゃいけないのは、核抑止力に頼るという発想を切り替えていくこと。そして、対話を通じた信頼関係をもとに安全保障を行っていくということ。それを、世界規模で、そういった仕掛けを構築するということに向けてリーダーシップを、ぜひ発揮していただきたいというふうに思います。
記者
NPRに関してなんですが、日本政府がそういった唯一目的化に反対したというふうな報道が一部であります。そういった姿勢があるにせよないにせよ、日本政府に対して、このNPRが核の傘の堅持を明記したということに対して日本政府に市長が求めていきたいことっていうのは、どんなことか教えてください。
市長
日本政府にも今申し上げたのと同じようなことをある意味で申し上げたいと思うんですね。日本政府がいろいろな政策決定するという大前提として、もちろん選ばれた為政者の判断もあるんですけれども、例えば、為政者を選出するための、日本の場合は、議院内閣制ですからね。為政者を選び出すための国会議員の方々、各政党ありますね。そういった方々、いろいろな思いを持っていて、そこでの議論の中でも、先ほど申し上げたように、現在のウクライナ情勢を踏まえると、威嚇ということをやらざるを得ない。敵地を攻撃する能力を持つということを今こそやらないと、こんな事態は乗り切れないんじゃないかということを言っておられます。で、マスコミ各社も、そういったことを取り上げて、そういった議論があるということはご存じなわけですね。そういったことも踏まえながら、あるいは、核を共有しようというような議論も出てくる。しかし、非核三原則を守るということ、これも重要だと。それをちゃんと調整しようということを議論していると受け止めています。ですから私は、あるべき方向っていうのは分かっているわけです。憲法でもうたっている。その理想にめがけて、理想をいかに実現するかという方向で議論をぜひ深めていただきたいのであって、現実が理想と違うんだから、現実に合わせて理想をもう少し、低めるとかね。理想は理想で現実的な対応が必要だという議論があることは分かっていますけども、しかし、人類がこの世に生まれて理性を持ち、ここまで発展してきたのは英知を使ってあるべき姿を設定して、それに向けていろいろな障害を乗り越えて現実に起こる問題を回避する、あるいはそれをうまく処理するということでここまできているということを踏まえたときに、今後のあるべき姿をしっかりみんなで考えていた。それを、現在のいろいろな意見がある中で調整しながら理想に向けての方向を崩すことなく確実にリードするという、そういう為政者が今求められているし、国会での議論もそういった方向にしっかりやってもらいたいと思っています。ぜひ、そういった方向での論じというか議論を、きちっと国民に分かるように皆さんもしっかり紹介していただきたいなというふうに思います。
記者
すみません、もう1個追加でその点に関して、日本政府のNPRに関してのアメリカ政府への対応状況っていうふうなのは、松井市長はどういうふうに思われているのかっていうことと…。
市長
これも理想と現実にもある議員諸氏、そして現在の日本のシステム、日米安保条約(日米安全保障条約)というものを締結している中での、ある意味で苦慮した結果かなというふうに受け止めています。ですが、これもう少しいいものにしていくための努力ということを確実にやっていただきたいんですね。それが願いです。現実に妥協することなく理想に向けて時代を1歩でも2歩でも前進させるという考え方でこれからも取り組んでもらいたいし、後退することのないようにしてもらいたいとそう思っています。
記者
もう一点、そのいいものにしていく努力っていうふうなのは、具体的にどういうふうなものを市長として求めていかれますか。
市長
これは一国だけの問題ではなくて国際情勢全体を整えるっていうことがないと、一国の力でできないと思うんですね。例えば今起こっている国連(国際連合)というこの国家調整システム、第1次世界大戦の国際連盟をつくって反省してやったけれども調整困難に陥って第2次世界大戦に入り、そして改めて国連をつくって、その中で最初に核兵器をなくすということをうたいあげて、その調整システムをつくった。そして、過去の反省を踏まえて今問題となっている拒否権といいますか、しっかりしたリーダー国が問題をきちっと解決するために常任理事国、しかも安全保障を議論する常任理事国に拒否権を与えたといったことがあるわけです。これは国際連盟の失敗を鑑みてつくったんですけれども、これが今逆作用していると。いろいろな物事を決めようとしても当事国が関与したときに拒否権を発動して不利な扱いを認めないと、こういうことで難問になっているんですけれども、ただ過去の歴史から見ると象徴的には国際連盟を瓦解したのは、日本国が当時、常任理事国だった日本が脱退してその国際調整システムが崩壊してしまったから、ある意味で戦争に突入したと。すでにその当時、日本では満州事変が起こり、そして日中戦争に入る直前の中で常任理事国を放棄して調整システムが機能不全になり、あとドイツもイタリアも脱退するというようなことが起きて国際調整システムが瓦解いたしましたね。そういったことを考えると、今だって国際調整システムをきちっと維持しながら、そして各国がその状況の中で平和的に物事を解決するための個別の対応を少しずつ確実に改善していくということをやらないと、一気に物事をどこかの責任で解決するということはなかなか難しいという状況があろうかと思いますね。そういったことを踏まえて橋渡しという役割、これもあるべき姿だと。それを着実に実行するために、今の状況の中で仮にNPT体制、これをしっかり守らなければいけないということを今こそ皆さんが自覚するのであれば、これを実行するための、実現するための取組を日本がやっぱり先頭を切って皆さんとやっていこうということをやることから始めたい。ただちに今の状況の中でNPR態勢を見直すということは、なかなか多くの方、特にヨーロッパだと先ほど申し上げたようにNATOの体制などをつくっている中で、ある意味ではケンカ当事者が、そういった行動が起こっている中で片方でやるとどうなるか分からない、疑心暗鬼が走っているというようなことを考えたときに、なかなか言いにくい状況だというふうにも受け止めるんですね。だからこういったことを、先ほど申し上げたようにしっかりと事実を、ファクトファインディングをしっかりするという情報を多くの方々に提供した上で冷静になって判断しようということを、もっともっと広めていただきたいんですね。結論先に出てどっちがいいか悪いかという議論をするよりか、そういったことをしっかり議論するという状況設定をする中で、先ほど申し上げたやれること、やるべきことを着実に進めるといったようにしたいんですね。抽象的で申し訳ないんだけれど、この精神こそ重要だというふうに私は思っています。
【米国大統領の広島訪問の意義について】
記者
幹事社から最後の質問です。アメリカ大統領の広島訪問の意義について質問いたします。市長はバイデン氏に広島を訪問するよう求めておられます。ウクライナ情勢を踏まえ、改めて広島を訪問する意義についてお考えをお聞かせください。
市長
先月の26日にエマニュエル(駐日米国)大使、広島を訪問していただきました。その際、エマニュエル大使、被爆の実相に触れていただきまして、「資料館で見た子どもたちの目、私たちを見ている目のイメージ、これが脳裏から離れません。資料館を見学して感情的にならない人はいないんじゃないでしょうか」というようなことを発言されました。それを聞いておりまして、実際に被爆地を訪問して被爆の実相に触れるということは、改めて多くの方々の理性ですかね、心情といいますか、そういうものに直接訴えかける体験になるんだなということを実感したところであります。
オバマ大統領のもとで大統領首席補佐官をされて、さらに当時の副大統領であったバイデン大統領とも親密な関係にあるというふうにお聞きしているこの大使でありますから、この大使を通じてバイデン大統領に来ていただくよう要請してもらって、この被爆地訪問、実現するならば、最初申し上げたように被爆の実相にしっかりと触れていただいて、その上で核抑止論という考え方を今ずっと申し上げているこのことを再考していただく、改めて考え直していただく絶好の機会になるのではないかというふうに思っています。
そして、ウクライナの状況が緊迫化しております。そして、核兵器使用のリスクが懸念される状況にあるという状況であります。こういった状況にあるからこそバイデン大統領には、核兵器を使用してしまったあとの結末、これに直接触れていただく重要な機会といいますか、そういったことはとても重要ではないかと思うんですね。被爆の実相というものは、必ずや、核抑止に頼ることない外交政策の実現ということの必要性、あるいは核兵器のない世界を目指すための決意、必要性を認識し決意を促すというものになると、このように思います。
■その他の質問■
【黒い雨を体験された方への被爆者健康手帳交付について】
記者
今月から、いわゆる黒い雨を浴びた人の救済をめぐって、被爆者認定の新しい基準の運用が始まりました。改めてこのことの受け止めと、広島県の知事とかは、今後も疾病要件を削除するよう引き続き求めていくというふうな発言もされていますけれども、この点について広島市の考え、今後も求めていくのかどうかについて教えてください。
市長
この黒い雨につきましては、今までの経緯を踏まえて、まずは国の定めた基準に合致する方々にしっかりと「申請できますよ」というご案内を申し上げまして、個別の審査といいますか、やっています。これを早急にして、可能な限り早くお手元に手帳が届くようにするということを徹底していきたいと思います。ですから、自分が該当するかなというふうに迷っておられる方、疑問に思っている方は、ぜひともご相談いただいて、しっかりとその資格を検査して、可能な限りお渡しできるようにしていくという対応に心掛けたいと思います。そうした中で、「一定の症状がなければ」という部分が引っ掛かるということで、私自身はそういった国とのやり取りの中で、どなたもが発症するであろう白内障とかいったことも、それが絶対に放射能の影響ではないということが証明できない限りは、そういったこともちゃんと考慮して出せるようにするといった最後のやり取りを踏まえて、手続き開始を急ごうということで決断したわけでありますので、まず、それをやっていただく。そんな中で、当初から言っていますように、手帳は本当に被爆したということを証明するための手段として位置づけられていて、その後の病理現象が出れば、それに対応して手当を出すという二段構えの制度だから、それを率直に適用すればいいじゃないかという考え方を踏まえて交渉していったという経緯がありますから、その考え方をいささかも譲るものではありません。それについて、引き続きその注文をつけるということを県の方は明確に見ながら手続きをするということをされておるんであって、それも否定するものではありません。我が市とすれば、今双方で調整手続きを踏まえてやったこの基準を適用してしっかりやる中で、さらに、最初に申し上げたような問題等が起こるのであれば、改めてそれを国に要請すると、要求するという方針を持っておりますので、現段階で県の言うように、わざわざ言葉に出して言わなきゃいかんものであるとは思っていないわけです。したがって、今やれるべき手続きを迅速、的確にやっていくということをやっていく中で、この課題については常に向き合っていきたいというふうに思っております。
【G7サミット誘致について】
記者
先ほど、バイデン大統領が広島に来られる意義について語られたのですが、一方で、(G7)サミットの方も広島は誘致されていると思うのですが、もちろん、以前から平和のことについてサミットを開かれる意義はずっと語られていると思うのですが、ウクライナの情勢があって、さらに、アメリカにとどまらず核保有国も含めて大国が集まるサミットの意義というのは増していると思うのですが、その辺のサミット誘致とウクライナの情勢について市長の方からお願いします。
市長
先ほどから申し上げていますように、G7サミットの為政者の皆さん方が、今求められている問題解決、そのために、ある意味では理想というものをしっかり踏まえた課題解決を目指そうということが共通の基盤である中、私は広島でのG7会合は大いにあると思うのです。しかし、理想は分かるけども、現実的な対応でそれをうまく処理するために、ある意味でその問題を、理想をちょっと棚に置いてやった方がいいという、ある意味で現実的な対応といいますか、それを思考するメンバーが多ければ、その開催地として広島はどうなのだろうというような意見も出てくる可能性があるというふうにずっと受け止めているわけです。ですから、ここのところは、ある意味でG7全体として、あるべき姿というものを考えながらこの物事を解決するということに舵を切っていただけるかどうか、そんなせめぎ合いというのか状況じゃないかと思うのです。私とすれば、ぜひとも広島開催ということをする中で、G7の各首脳は理想を目指した為政者の集まりであるということをある意味で証明していただくという絶好の機会になればなというふうに思っています。
【ウクライナ避難民受け入れについて】
記者
昨日、ウクライナから約20人の避難民の方が日本に到着されたという報道がありましたけれども、今のところ広島の方で受け入れに向けた具体的な動きであるとか、あるいは、国からの何らかの連絡であるとか、何か具体的な動きというのは出ていますでしょうか。
市長
このウクライナの方からの難民の方々についての件を少し整理して申し上げますと、今回、政府が3月2日に決定したウクライナからの避難民の受け入れという問題になると思うのですけれども、これに関しては、いわゆる難民条約上の難民に該当するかどうかということと関係なく、ウクライナが面しています危機的な状況を踏まえて、人道的な観点から緊急措置として受け入れをするというふうに決定したというふうに理解しています。これは国の基本的な方針ですね。そのために、この緊急措置をやろうということでありますから、その措置の中身たるや従前の、いわゆる難民受け入れの支援とは一線を画した新しい枠組みを設ける必要が生じているのだということだと思うのですね。そのため、国におきましては、国会が明けて3月16日に設置いたしました「ウクライナ避難民対策連絡調整会議」、ここを中心にその枠組みについて、今検討をしているということだと思うのです。つまり、難民支援のあり方とか基本的な支援方法等を検討していて、現在、その検討した内容が徐々に公になってきていると、こんな状況だと思うのですね。こうした中、本市としての対応は、このような国の動きの中で、国からの照会に応じて市営住宅を提供するといったような支援内容、我が方からできる支援内容の登録はすでに国の方に致しております。準備はもう整っているということです。ただ、問題は実際に避難民を受け入れることになった場合に、さてどうするかという問題なんですけれども、避難民の方、大きく分けて今のところ2種類ありまして、その、いわゆる身元保証がある方とない方と。身元保証というのは、国内で親類とか知人の方がいて、民間でその方を受け入れますと。で、このお世話する方を何とかしてくださいと言って政府・自治体に、特に政府にお願いするっていうパターンと、身元保証もないけれどもとにかく何とかしてくださいっていうようなパターンと。両方通じて最終的に住まいがどうなるかというようなので、そういったいろいろな問題があるので、その様々な状況にある方の要望を踏まえて、柔軟な対応ができるようにしなきゃいかんというふうなのが基本的な立場だというふうに思ってます。その際、問題なのは現行のいろいろな支援制度、あるいはこれまで外国人を支援してきた経験がありますからそういったことを踏まえて、これをこういったウクライナの方々にどう適応するかということを実際やっていかなきゃいけないと思います。その際は、今先ほども言った連絡調整会議で徐々に内容が固まっている国の支援方針。これをうまく活用する。あるいはそことの整合性を取りながら対策を講ずるということが必要になってきていますので、その調整をしっかりとやるということをした上で、来る方々。この広島に来られる方々の生活支援をしっかりやりたいというふうに思っています。実際、直近の経験でいうと、災害があったときに家を追われた方がいると。それと市内だけで住居を転居しなきゃいけない方に、家がないときにお知り合いのとこに行って避難される方。それがないときには市営住宅を確保して部屋数を確保してやると。市営住宅に入るとしてもただちに生活に必要な食料はどうするかとかね、生活関連物資はどこまで提供したらよいのかと。そんな問題がすぐに出てくるわけですね。そういうのは国の方も同時並行で検討を進めて国としてどういった支援ができるか、自治体としてどこまでやるかという整理を逐次しながら情報きております。それを自治体のみならず関係団体とかですね、プライベートの方もやった場合には適応するという基準をいろいろ作ってきておりますので、それを踏まえて先ほど申し上げたように両方踏まえた柔軟な対応ができるようにしていきたいというふうにしているところです。
記者
現段階では、例えば何人を受け入れてほしいとかそういう話がきている段階ではないってことですね。
市長
ないです。一定程度供給できる住宅戸数なども提示しておりますので、それを踏まえてまた連絡が来るんじゃないかなというふうに思います。
※( )は注釈を加えたものです。