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ページ番号:0000109007更新日:2023年6月19日更新印刷ページ表示

所信表明

令和5年第3回広島市議会定例会の開会に当たり、議員各位に敬意を表します。

私は、去る4月9日に行われた市長選挙において、市民の皆様の御支援により、引き続き市政を担わせていただくことになりました。今定例会における諸議案の説明に先立ち、私の市政推進に当たっての考え方や主要な施策について所信を申し述べます。

私は、市長に就任して以来、先人によるまちづくりの成果を踏まえながら、生まれ育ったこの広島を世界に誇れる「まち」とすることを目指し、市政を推進してまいりました。そして、今後50年、100年先を見据え、広島の「まち」の持続的な発展に全力を尽くすことが、私の使命であると考えています。

まちづくりの最高目標となる都市像として「国際平和文化都市」を掲げる本市は、昭和24年に憲法第95条に基づく特別法として制定された「広島平和記念都市建設法」を基に、被爆による廃墟から立ち上がり平和記念都市の建設を進めてきました。そうした先人たちの努力を受け継ぎ、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けて「平和への願い」を世界中に広げていくとともに、地球環境の改善など人類共通の課題解決に向けて世界の中で先導的な役割を果たす都市を目指さなければなりません。
また、中四国地方最大の都市である本市は、国と地方の関係を変革し、市域はもとより、広島広域都市圏全体の活力とにぎわいを生み出すために、近隣市町との新たな協調体制の構築を目指さなければなりません。
さらに、広島の「まち」としての基盤そのものをより強固なものにしていくためには、市民の「まち」への誇りの醸成が不可欠であり、そのためには、社会全体に共助の精神が根付き、市民一人一人が仕事と生活の調和を図りながら、互いに支え合って暮らしていくことができる環境が整っている必要があります。

このため、私は、「200万人広島都市圏構想」と「地域コミュニティの活性化」の実現を市政運営の中軸に据えながら、「持続」と「循環」を意識した財政的な裏付けのある施策を展開する中で、「共助」と「協調」を基調とする地域社会の形成をハード・ソフトの両面から強力かつ着実に推進していきたいと考えています。

「200万人広島都市圏構想」は、人口が減少したとしても圏域内人口200万人超を維持することを共通の目標とした上で、圏域全体で目的を共有し連携・交流を進め、圏域内でのヒト・モノ・カネ・情報を好循環させることにより、圏域内の地域資源や地域産業が付加価値を生み続ける「ローカル経済圏」の構築を目指すものです。中四国地方の中枢都市である本市は、今後、瀬戸内海をまたいで愛媛方面へと連携を拡大し、圏域全体のけん引役となっていく必要があると考えています。

「地域コミュニティの活性化」は、「自分たちのまちは自分たちで創り、守る」という市民主体のまちづくりが全ての地域で続けられるようにするために不可欠な取組です。連合町内会・自治会や地区社会福祉協議会を核として、町内会・自治会に加入しているか否かにかかわらず、全ての地域住民を対象に様々な活動が行えるよう、新たな協力体制を整備し、今後は、これを市内全域に展開していく必要があると考えています。

「200万人広島都市圏構想」では、広域的な経済圏においてヒト・モノが活発に「循環」し続けるための取組を、また、「地域コミュニティの活性化」では、地域住民の活動による「循環」を促すための取組を進めていますが、これからは「循環」を直接支えている「移動」を容易にするための方策の充実強化が不可欠となっていると考えています。
このため、本市では、地域、交通事業者、関係自治体が一体となって、公共交通ネットワークを最大限活用する取組を進めていきたいと考えています。その際には、これまで事業者間の「競争」任せになっていた鉄道やバス等の公共交通を道路と同様に「社会インフラ」と捉えた上で、「協調」して運用するものへと舵を切り、国の支援も引き出しながら、利用者の利便性を重視した「広島型公共交通システム」へと再構築していくことを目指します。

そして、今後50年、100年先を見据えるならば、「平和文化」を世界に向けて発信し続けることができ、また、そこに暮らす市民一人一人が日常生活の中で「平和文化」を実感することができるまちづくりこそが持続可能なまちづくりにつながるものと考えています。このため、「200万人広島都市圏構想」と「地域コミュニティの活性化」の実現に加え、新たに「平和文化の振興」を市政運営の中軸に据えていきたいと考えています。

以上のような考え方の下、今後、私が推進したいと考えている主要な施策の概要について、「活力にあふれにぎわいのあるまち」、「ワーク・ライフ・バランスのまち」、「平和への思いを共有するまち」というまちづくりの三つの領域に沿って説明します。

最初に、一つ目のまちづくりの領域である「活力にあふれにぎわいのあるまち」についてです。

本市は都心を、国内外から多くの人を引き付け、市域を越えて活力とにぎわいを生み出すための中四国地方の中枢拠点(核)として発展させることを目指しています。このため、引き続き、「楕円形の都心づくり」を目指し、広島駅周辺地区と紙屋町・八丁堀地区の東西の核を同時進行で抜本的に強化する「都心の大改造」を着実に進めます。
東の核である広島駅周辺地区では、JR西日本が行う駅ビルの建て替えと連携して、路面電車の高架乗り入れを含む広島駅南口広場の再整備等を着実に推進するとともに、広島駅新幹線口周辺地区や広島駅南口周辺地区で活動するエリアマネジメント団体を始め、民間事業者等と連携して、更なる活力とにぎわいの創出に向けた取組を進めます。
西の核である紙屋町・八丁堀地区では、広島広域都市圏の更なる経済振興を図るためのリーディング・プロジェクトである基町相生通地区市街地再開発事業を着実に進めるほか、国の都市再生緊急整備地域制度や都市計画制度など様々な支援制度を駆使して、民間におけるビルの建て替えや再開発を強力に進めます。
また、令和6年2月の開業を目指して建設中のサッカースタジアムを始め、中央公園とその周辺地域を、年間を通してにぎわいのある空間とするための取組や、西部方面から紙屋町・八丁堀地区等へのアクセス向上に大きな効果がある国道2号西広島バイパスの都心部延伸事業も着実に進めます。
さらに、基町住宅地区については、紙屋町・八丁堀地区に隣接する都心の一角であることを生かし、住民と共に、多様な世代が共存し、住みやすくにぎわいのあるまちにしていくことにより、広島の更なる発展をけん引する街へと転換を図っていきます。

広島広域都市圏の発展をけん引する本市は、集約型都市構造の形成を目指す中で、「都心周辺部の大改造」にも取り組むこととしており、商工センター地区や西風新都については、高次の都市機能について都心を補完する広域拠点と位置付け、また、西広島駅周辺地区については、行政区レベルでの総合的な生活サービスを担う地域拠点と位置付けた上で、それぞれの拠点性を更に高め、地区の特性や役割に応じた都市機能を強化していきます。
商工センター地区では、MICE施設の整備や草津漁港の観光用の港としての活用、新井口駅等の交通機能の強化などを盛り込んだビジョンを策定し、広島広域都市圏のローカル経済圏を支える西の拠点として、流通機能や商業機能のより一層の強化を図っていきます。
また、西風新都では、広島高速4号線の延伸や梶毛南工区・善當寺工区における幹線道路のネットワーク化を進めるとともに、令和10年代初頭の全線開業を目指して新交通西風新都線の整備を着実に進めます。
さらに、西広島駅周辺地区では、駅前広場やアクセス道路を整備することにより、交通結節点としての機能強化を図りつつ、広島の西の玄関にふさわしいまちづくりを進めていきます。

中山間地・島しょ部については、地域コミュニティの担い手を確保するため、引き続き、新規就農者の育成や移住者に対する「仕事の確保」、「住宅の確保」、「地域の受入態勢の構築」の三つの支援を中心とした受入れのための環境整備や、地元中小企業の雇用確保への支援に取り組むとともに、ドローンによる配送サービスや出張医療サービス(医療MaaS)など、デジタルを活用した生活支援について調査検討を進めます。
また、南区の似島地域、安佐南区の戸山地域と佐伯区の湯来地域、安佐北区の高陽地域や白木地域については、地域住民との対話を重ねながら、それぞれの地域が有する特色ある自然環境や魅力ある地域資源を最大限に活用したオーダーメイドのまちづくりを進め、交流人口の拡大を始め更なる活性化を図っていきます。

観光の振興については、引き続き、広島広域都市圏の市町と連携し、観光プログラムの開発や観光資源のネットワーク化、圏域全体の一体的なプロモーション活動を行うとともに、G7広島サミットを契機として、広島・宮島を始めとする広島広域都市圏内を周遊する国内外の観光客の一層の拡大や観光消費額の増大を目指します。
また、広島城について、天守の木造復元の実現に向けた取組を強化するとともに、三の丸の歴史館やにぎわい施設を整備するなど、歴史・文化の発信拠点としての魅力の向上を図ります。さらに、平和大通りや「水の都ひろしま」としての緑豊かな水辺空間を生かしたにぎわいの創出や回遊性の向上などに取り組みます。

産業の振興については、本市の基幹産業である自動車関連産業を始めとするものづくり産業の競争力の強化を図るため、自動車関連産業に対する脱炭素化・電動化に向けた支援を始め、省エネ機器の導入、AI・IoTの導入による脱炭素化や生産性の向上に取り組む中小企業への支援など、グリーントランスフォーメーション(GX)やデジタルトランスフォーメーション(DX)といった次世代に向けた変革への支援に取り組みます。
また、産業活動のダイナミズムを持続させていくため、創業・ベンチャーへの支援や新分野の創出、医療・福祉、環境・エネルギーなど、成長が期待される分野にチャレンジする企業を支援するとともに、スマート農林水産業の導入支援に向けた検討を進めます。

次に、二つ目のまちづくりの領域である「ワーク・ライフ・バランスのまち」についてです。

私は、全ての市民が住み慣れた地域で、仕事や家庭、近所付き合いなどの様々な場面において、それぞれに役割を果たしながら、心豊かにバランスのとれた日常生活を送ることができる生活環境を整えなければ持続可能なまちづくりは行えないと考えています。
このため、高齢者や障害者を始め様々な市民がこれまでのように「支える側」と「支えられる側」に二分されるのではなく、「お互い様」の心で豊かに暮らしていける「地域共生社会」の実現を目指しています。
そこで重要となるのは、地域コミュニティや関係機関、行政が連携・協働し、地域の実情に応じて「自助」、「共助」、「公助」を適切にマネジメントすることです。そのために、地区社会福祉協議会の活動拠点へのスタッフの配置を支援するとともに、相談支援包括化推進員や地区ごとの担当保健師を配置することにより、地域の方々が抱えている様々な困りごとを的確に把握し、保健・医療・福祉に関する専門的・包括的な支援が能動的に行える体制を整えていきます。

また、医療提供体制については、北部の拠点病院としての役割を担う北部医療センター安佐市民病院や安佐医師会病院において、地域の医療機関等との連携による地域包括ケアの推進や地域完結型医療の提供体制の確立に取り組むとともに、広島広域都市圏内の医療機関等と連携して広域的な医療提供体制を強化します。また、東部の拠点病院である安芸市民病院の建て替えを進めます。

子ども・子育てについては、「これからの広島の発展の礎となるのは、未来を担う子どもの育成である」という考え方の下、全ての子どもが様々な個性や能力を伸ばしながら、自主性や社会性を身に付け、自立した大人へと健やかに成長できる環境づくりを進める必要があります。
そこで、乳幼児期における子どもについては、幼稚園と保育園という枠組みを越えた教育と保育の一体化を基本とし、そのための拠点として、公立認定こども園を各区に設置していきます。
待機児童の解消に向けては、公立・私立の役割分担の下、延長保育や一時預かりを始めとする様々な保育サービスの充実も含め、ハード・ソフト両面にわたる対策を講じます。

また、児童・生徒の育成に当たっては、一人一人に「確かな学力、豊かな心、健やかな体」や「平和を希求する心」などの資質・能力を身に付けさせるだけではなく、これからの予測困難な社会に対応できる思考力・判断力・表現力などを向上させていくための教育が重要になります。
このため、国際平和文化都市を目指す本市の特性を生かした平和に関する教育を小学校から高等学校まで全校共通の一貫した方針の下で実施します。また、実践的な会話ができる英語教育など、学力向上対策を一層推進するとともに、中高一貫の広島中等教育学校における高度な教育や広島みらい創生高等学校における従来の枠組みにとらわれない柔軟な教育など、一人一人の児童・生徒のニーズに応じた教育プログラムの更なる充実に取り組みます。

スポーツの振興については、新しい「スポーツ王国広島」を掲げ、トップレベルの国際的・全国的なスポーツ大会の誘致やスポーツ関連組織の活性化に取り組むとともに、スポーツツーリズムを推進することにより、スポーツを通じたまちの活力を創出していきます。また、市民一人一人が日常的にスポーツに親しむことで、生涯にわたり心身共に健康に過ごせるよう、引き続き市民スポーツの振興に取り組むとともに、「eスポーツ」の振興にも取り組みます。

文化芸術の振興については、シンフォニーホールの整備を視野に入れつつ、ひろしま国際平和文化祭や広島交響楽団などによる花と音楽のイベント、平和の夕べコンサート、障害者ピース・アート事業などを通じて、花と緑と音楽を相互に連動させながら、市民が日常的に平和文化に触れられるようなまちづくりを進めます。また、中央図書館については、広島駅南口のエールエールA館への移転と併せて「平和文化の情報拠点」として機能の充実強化に向けた再整備を行うとともに、現在中央図書館内にある浅野文庫及び広島ゆかりの作家の文学資料については、保存環境の確保と利活用のための整備を進めます。さらに、老朽化が進んでいるこども文化科学館については、こども図書館の機能充実と併せて中央公園内においてリニューアルを図っていきます。いずれにしても、市内の文化芸術施設については、引き続き「楕円形の都心づくり」を担う「都心回廊づくり」に資するよう配置していきたいと考えています。

平成26年8月豪雨災害や平成30年7月豪雨災害を経験した本市は、被災した地域の早期復興と安全で安心なまちづくりの重要性を痛感しています。
このため、引き続き、国や県と連携して被災した地域の早期復興に取り組むとともに、災害に強いまちづくりを目指した「復興まちづくりビジョン」などに基づき、安全で安心なまちづくりに向けて主体的に取り組む地域コミュニティを支援するなどの対策を講じます。

また、近年日本を含め世界で猛暑や豪雨などによる災害が頻発する要因として、温室効果ガスの排出による気候変動の影響があると考えられています。令和3年8月にも豪雨災害に見舞われるなど、度重なる自然の脅威を実感している本市としては、地球温暖化に対する意識の共有を図りつつ、広島広域都市圏内の市町と連携して、国が進めるグリーントランスフォーメーション(GX)の取組も踏まえながら、省エネルギー対策や再生可能エネルギーの導入促進の二つの柱に沿った地球温暖化対策を着実に進めます。

次に、三つ目のまちづくりの領域である「平和への思いを共有するまち」についてです。

私は、被爆者の「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」という思いを根底に、被爆体験を基にした平和を希求する「ヒロシマの心」を国内外の市民社会に発信し続け、それへの共感が得られるよう、たゆまぬ努力を続けていくことが、人類史上最初の被爆都市である本市の使命であると考えています。
そのための重要な役割を果たしている平和首長会議については、今後も様々な機会を捉えて加盟都市の拡大を図るとともに、令和3年7月に策定した「持続可能な世界に向けた平和的な変革のためのビジョン」(PXビジョン)に基づき、加盟都市と共に、世界中の多様な主体との連携を深め、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けた連帯の輪を更に強固なものにしていきます。
そのために、毎年11月を「平和文化月間」と定めて、平和への思いの共有につながる取組を集中的に実施するほか、次代の平和活動を担う青少年の育成などを通じて平和文化を市民社会に根付かせるための取組を進めます。

また、本市がこれまで続けてきた世界の為政者の被爆地訪問の働き掛けやNPT再検討会議などの国際会議の誘致など、世界中の多くの人々に広島への訪問を促す「迎える平和」も推進します。
そして、被爆者の高齢化が進み、被爆体験を直接語り継ぐことができる人が減少していく中でますます重要となっている被爆者の被爆体験や平和への思いの若い世代への伝承については、被爆体験伝承者、家族伝承者の養成や、修学旅行誘致の強化とともに、平和記念資料館の附属展示施設の整備などに取り組み、平和に関する発信力を強化していきます。
また、広島大学旧理学部1号館については、広島大学、広島市立大学、広島平和文化センターと本市が連携・協力しながら平和に関する教育研究や情報発信を行う「知の拠点」として整備するとともに、比治山公園については、放射線影響研究所の移転整備を契機として、「平和の丘」構想の実現に向けた取組を加速化させます。

以上、申し上げたようなハード・ソフト両面にわたる持続可能なまちづくりを限られた経営資源の下で着実に実行していくため、増加が不可避である扶助費などの社会保障等のための支出については、その増加に着実に応えることができるように措置するとともに、将来に備えた大型の建設事業費など社会資本整備等のための支出については、計画全体では多額になるとしても年々に要する額を一定以下に保つことにより、収支バランスや将来世代の負担に十分配慮した市政運営を行っていきます。

こうした市政の推進に当たっては、議会との関係を重視し、対話を重ねながら、より良い関係をつくり、共に広島のまちづくりに取り組んでいきたいと考えています。

以上、今後4年間の市政を推進するに当たり、所信の一端を申し述べました。市政のあらゆる分野で質的向上を図り、その後の社会経済など様々な環境の変化を乗り越え、持続的に発展する国際平和文化都市の完成を目指し、情熱を持って「世界に誇れる『まち』づくり」に果敢に挑戦する決意であります。

議員各位並びに市民の皆様の一層の御支援と御協力を切にお願い申し上げます。
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