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広島市は、水質汚濁防止法に基づき、河川、海域、地下水の水質状況を常時監視するために、国や広島県と連携して水質調査を行っています。広島市衛生研究所では現在、太田川水系7地点、八幡川水系4地点、地下水17地点の計28地点の調査を行っています。
水質調査では、BOD、浮遊物質(SS)、大腸菌群などの生活環境の保全に関する項目、カドミウム、鉛などの重金属類のほか、殺虫剤、除草剤などの農薬、揮発性有機化学物質など人の健康の保護に関する項目、窒素化合物、リン酸塩など栄養塩類の項目を調査しています。
今回は、生活環境の保全に関する項目の代表的な水質指標であるBODを取り上げ、当所での調査結果から太田川と八幡川の水質の状況を紹介します。
BOD(生物化学的酸素要求量)とは、水中の有機物が微生物の働きによって分解されるときに消費される酸素の量のことで、河川の有機汚濁を測る代表的な指標とされています。この数値が大きくなれば、その河川の水中には有機物が多く水質が汚濁していることを意味します。
水質汚濁に係る環境基準は、環境基本法に基づいて国が定める環境保全行政上の目標であり、人の健康を保護し生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準とされています。
環境基準値は河川の利用目的に応じて類型別に定められています。当所で調査している太田川水系と八幡川水系の調査地点のうち、6地点が環境基準点であり(【図1】河川水調査地点)、BODの環境基準は2mg/L以下(A類型)及び3mg/L以下(B類型)となっています。ある基準点での1年間の全測定データn個をその値の小さいものから順に並べた時の0.75×n番目のデータ値(75%水質値)が、その基準点が属する類型指定水域の環境基準値を満足していれば、その基準点において環境基準に適合していると判定しています。
当所で現在調査を行っている環境基準点6地点のBOD(75%水質値)年次推移を【図2】BOD(75%水質値)年次推移に示しました。平成17年度から平成31年度(令和元年度)の15年間の推移を示しています。
これらの6地点においては15年間にわたってすべての基準点で環境基準に適合した水質となっていました。太田川水系の基準点では平成23年度から25年度にかけて上昇傾向があったものの、平成26年度以降BOD(75%水質値)は1mg/L以下となっており、安定した水質が続いています。八幡川水系の基準点については、特に下流域にあたる環境基準点の泉橋において平成19年度から平成27年度までBOD(75%水質値)が上昇傾向にありましたが、その後の流域での下水道の整備などに伴い数値が改善し、ここ数年は最も厳しい環境基準である2mg/Lを下回る状況が続いています。
これらの結果を含めた広島市の水質調査結果は、広島市ホームページの「広島市の環境(環境白書)」に掲載されています。
広島市は緑の多い山々や市内を流れるたくさんの川、また瀬戸内海など豊かな自然環境に恵まれています。太田川中流域の安佐北区可部町を流れる行森川との合流点から下流の祇園水門までの間は、環境省が選ぶ昭和の全国名水百選にも選ばれています。これからもみんなで広島のきれいな川を守っていきましょう。
太田川(戸坂上水道取水口付近)