中央市場の使用料
広島市監査公表第28号
平成29年9月7日
平成29年7月14日付けで受け付けた広島市職員に関する措置請求について、その監査結果を地方自治法第242条第4項の規定により、別紙のとおり公表する。
広島市監査委員 佐伯 克彦
同 井上 周子
同 原 裕治
同 桑田 恭子
別紙
広監第58号
平成29年9月7日
請求人
(略)
広島市監査委員 佐伯 克彦
同 井上 周子
同 原 裕治
同 桑田 恭子
広島市職員に関する措置請求に係る監査結果について(通知)
平成29年7月14日付けで受け付けた広島市職員に関する措置請求(以下「本件措置請求」という。)について、地方自治法第242条第4項の規定により監査を行ったので、その結果を同項の規定により次のとおり通知する。
第1 請求の要旨等
平成29年7月14日付けで提出のあった広島市職員措置請求書に記載された内容は、以下のとおりである。
広島市経済観光局中央市場長による市場施設使用料に関する措置請求の要旨
1 請求の要旨
平成29年4月17日付けで、広島市中央市場連合会(以下「連合会」という。)会長から「市場施設使用許可申請書」及び「施設使用料免除申請書」が広島市長あてに提出された。
申請の内容は次のとおりである。
- 使用目的 連合会が事務所として使用
- 面積 96平方メートル
- 使用期間 平成29年5月1日から平成30年3月31日まで
- 場所 中央市場 管理棟3階
- 使用料免除申請の理由
当団体は、市場業務の円滑な運営に寄与する公共性を持つ団体であること。
今年度から、入場証の資格確認・発行や駐車場の巡回監視など場内自治への取組を実施するなど、市の事務事業にも密接な関連を有していること。
連合会の収入の大部分は、厳しい経営環境にある場内関係事業者の会費であり、これ以上の会費の負担は困難な状況にあること。
この申請に対し、中央市場長は、平成29年4月28日付けで、市場施設使用許可及び使用料免除を決定し、同日付けで「市場施設許可書」を交付している。
使用料については、連合会は公共性を持つ団体であり、かつ本市の事務事業と密接な関連があり、本市としてもその事業に積極的に協力すべき立場にあること、連合会収入のほとんどは会員からの会費等で賄われており収益事業は行っていないことから、広島市中央卸売市場業務条例(以下「条例」という。)第71条第6項第3号の規定(その他市長において特別の理由があると認めたとき。)に基づき免除することを決定している。
請求者が求める措置は、次の理由により使用料免除を取り消し、条例に基づく、正当な使用料を連合会から徴収することを求める。
- 市場開設以来、昨年度まで、連合会事務所として青果棟2階(20平方メートル)を使用許可し、使用料として年間44万円を徴収してきており、今の時点で公共性があるとは言えないこと。さらに、この面積が今回の使用許可で約5倍になるのに、使用料が免除というのは矛盾していること。
- 連合会が現在行っている入場証の資格確認・発行や駐車場の巡回監視などは、市場内の駐車場の適正な管理の一端を担ってもらっているとしているが、あくまで連合会の自主事業であり、本市の事務事業に密接な関連があるとは言えないこと。
- 市は、平成29年6月29日開催の経済観光環境委員会において、経済観光局長は、「市は連合会の自主事業(入場証の資格確認・発行等)には関わらないし、内容も一切把握していない。」と答弁しており、連合会事業が市と密接な関連があるとは言えないこと。
- 連合会は市場運営の合理化等の事業を行う公共性を持つ団体であるとしているが、市場内の青果や魚商、花きなどの組合で構成されている団体であり、あくまでも営利目的の事業者による団体であることから、公共性を持つ団体とは言い難いこと。
- 連合会の事業が本市に関連することや本市が協力すべき立場にあることは理解できるが、あくまで事業に対することであり、使用許可する事務所施設とは直接関連がないこと。
- 使用許可した管理棟の3階の96平方メートルには、使用実態として、単に連合会専務理事(前市場長OB)の執務室となっていること。
- 連合会収入のほとんどは会員からの会費等で賄われており収益事業は行っていないこととあるが、連合会は、平成29年4月より新たに、市場への入場証の発行業務により、関連業者から市場内の出入りに伴う車両1台につき、500円から3,000円を徴収しており、その徴収金総額600万円余りが連合会の収入となっていることから、連合会は事務所の使用料を支払うことが十分可能であること。
- こうした理由から、本市が厳しい財政状況の中で、中央市場を健全に運営していくには、条例に基づく適正な使用料を徴収すべきであり、本来、広島市が得られるであろう相当な収入を失っていること。
2 監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることを求める理由
中央市場にかかわるOB職員が連合会専務理事をしていることから、公正な外部監査を求める。
地方自治法第242条1項の規定により、別紙事実証明書を添え、必要な措置を請求します。併せて、同法第252条の43項の規定により、当該請求に係る監査について、監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることを求めます。
(事実を証する事実証明書として次の書類が提出されているが、添付を省略する。)
- 「市場施設使用許可申請書」の写し
- 「施設使用料免除申請書」の写し
- 「市場施設使用許可書(広島市指令場中第8号)」の写し
- 決裁文書「市場施設使用許可について(広島市中央市場連合会)」の写し
- 広島市中央市場連合会「平成29年度収支予算書(案)」の写し
- 広島市中央市場連合会「会則」の写し
- 広島市中央市場連合会「細則」の写し
- 広島市中央市場連合会「慶弔金、見舞金等に関する規程」の写し
- 広島市中央市場連合会「役員名簿」の写し
- 広島市中央市場連合会「会員名簿」の写し
第2 請求の受理
本件措置請求は、地方自治法第242条第1項の所定の要件を具備するものと認め、平成29年8月2日に、同年7月14日付けでこれを受理することを決定した。
第3 個別外部監査契約に基づく監査によることが相当であると認められない理由(広島市長に地方自治法第252条の43第2項前段の規定による通知を行わなかった理由)
請求人は、本件措置請求による監査について、地方自治法第252条の43の規定により、監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることを求めているが、監査委員は、市長から独立して監査を行う機関であり、常に公正不偏の態度を保持して監査をしなければならないとされていることから、本件措置請求に係る使用料の免除の対象である広島市中央市場連合会の役員が広島市職員OBであるからといって、公正な監査ができないとはいえないため、請求人の個別外部監査の請求は相当とは認められない。
第4 監査の実施
1 請求人による証拠の提出及び陳述
地方自治法第242条第6項の規定に基づき、平成29年8月17日に請求人に対し証拠の提出及び陳述の機会を設けたところ、請求人は新たな証拠として次の書類を提出するとともに、陳述を行った。
(新たな証拠として次の書類が提出されているが、添付を省略する。)
各局において、目的外使用許可し、使用料を減免している事例
請求人は、以下の点について、陳述した。
- ア 職員措置請求書に沿った内容の説明
- イ 新たな証拠として提出した書類等に基づく補足説明
- (ア) 広島市における行政財産目的外使用料の免除事例及び食肉市場における売買参加者組合等の事務所使用に係る使用料の徴収事例と本件との比較
- (イ) 本件免除決定の不透明性、不当性及び利益誘導の懸念
2 広島市長の意見書の提出及び陳述
広島市長に対し、意見書及び関係書類等の提出を求めたところ、平成29年8月16日付け広場中第85号により意見書が提出された。なお、陳述は行わなかった。
意見書の内容は、以下のとおりである。
(1) 広島市の意見
請求人の主張には理由がないため、本件措置請求は棄却されるべきである。
(2) 理由
本件措置請求人(以下「請求人」という。)は、平成29年4月28日付けで本市が広島市中央市場連合会(以下「連合会」という。)に対し行った中央市場管理棟3階の一部(96平方メートル)についての市場施設使用許可とその使用料の免除について、ア 市は、連合会から昨年度まで事務室使用料を徴収してきており、連合会が今の時点で公共性があるとは言えない、イ 連合会が行う入場証の資格確認・発行や駐車場の巡回監視等は、連合会の自主事業であり、本市の事務事業に密接な関連があるとは言えない、ウ 平成29年6月29日に開催された経済観光環境委員会において、経済観光局長の「市は連合会の自主事業には関わらず内容も一切把握していない」との答弁に基づけば、連合会の事業が市と密接な関連があるとは言えない、エ 連合会は、市場内の青果、水産、花き等の組合で構成されており、営利目的の事業者による団体であることから、公共性を持つ団体とは言い難い、オ 連合会の事業が市に関連することは理解できるが、使用許可する事務所施設とは直接関連がない、カ 使用を許可した施設は実態として連合会専務理事の執務室になっている、キ 連合会は、平成29年4月から開始した入場証の発行業務による収入により、使用料の支払いが可能である、ク 使用料を免除することで、本市が得られるであろう相当な収入を失っているとして、使用料免除の取り消し及び条例に基づく使用料の徴収を行うよう主張している。
以下、これらの点に関して述べる。
- ア 「連合会が今の時点で公共性があるとは言えない」とのことについて
- (ア)連合会の公共性・公益性について
連合会は、昭和62年に「市場内の緊密な連携と協調により市場の健全かつ円滑なる運営と秩序の保持を図り、もって市場全般の発展を促進すると共に会員の親睦と福利厚生の向上に資すること」(広島市中央市場連合会会則(以下「会則」という。)第3条)を目的として設立された団体である。
会員が、市場内で開設者の許可を受け市場施設を使用している事業者、その他市場に関係のある事業者(会則第5条)で、現在、青果、水産、花き各部の卸売業者、仲卸業者、売買参加者や、関連事業者にまたがった、場内関係事業者のほぼすべての者で構成されている。
また、その事業は、(1)市場運営の合理化、活性化並びに施設の充実及び改善に関する調査研究、(2)市場内の保健並びに環境衛生に関すること、(3)教育及び情報の提供に関すること等である(会則第4条)。これまで、会則第4条に基づき別添のとおり、様々な公益的な事業を行っているとともに、市職員(市場長等)が連合会の正副会長会議や役員会等に出席し、常に市場運営等について市との意見交換を行っている。平成29年度からは入場証交付等業務を市から受託するとともに、自主事業として場内駐車車両の管理を行っている。さらには本市が平成28年度に決定した「中央市場の現地での全棟建替え」の方針に呼応して、新市場建設に向け場内関係事業者の意見集約を行い、市との調整などに本腰を入れて取り組むこととされている。
以上のことから、連合会は公共性・公益性のある団体である。 - (イ)事務所の移転について
事務所の移転については、前述のとおり、新市場建設への対応や場内駐車車両の管理に取り組むに当たり、連合会がこれまで以上に市と緊密な連携をしていくためには、(1)市との調整や自主事業を円滑に行っていくために事務局の体制強化や会議場所の確保等が必要であり、十分な広さが求められたこと、(2)より市管理事務所に近い場所がのぞましいことから、現在の場所に移転したいと考え、本市に対して使用許可申請をされたものである。 - (ウ)使用料の免除について
使用料の免除については、連合会において、平成28年度までは免除申請を行っていなかったものであるが、前述のとおり、事務所の拡充移転が必要となる中で、改めて市からの支援が得られないかと検討され、連合会の設置目的が公共性・公益性にかなうことから、優遇措置が得られるのではないかと考え、申請されたものである。本市において、この免除申請を審査した結果、前述の連合会の設置目的、事業内容及び活動実績は、公共性・公益性にそぐうものであると判断し、広島市中央市場業務条例第71条第6項第3号の規定に基づき使用料の免除を決定したものである。
- (ア)連合会の公共性・公益性について
- イ 「連合会の入場証の資格確認・発行や駐車場の巡回監視などは自主事業であり、市の事務事業に密接な関連があるとは言えない」とのことについて
中央市場の駐車場の管理については、これまで、市場を利用する目的のない不法駐車や、決められた駐車エリアを守らないことによる荷捌きへの支障、大型トラック等の路上駐車などの問題があった。
本市としては、円滑な市場運営の支障となるこうした実態への対応は、長年の懸案課題であることから、平成26年度から連合会に呼びかけ検討してきた結果、本年4月から、本市においては、市場を利用する目的のない部外者車両の入場防止や入場資格があっても駐車区画を守らない車両へ対応するため、資格確認・入場証交付の業務を連合会に委託するとともに、改めて、駐車場について、部門ごとのエリア、一般利用者も含めたその他のエリアに区分けし、これを明示することとした。
これに合わせて、連合会においては、市からの委託業務を実施するに当たり、その事業効果を高めるため、傘下の会員に決められた部門ごとのエリアへの駐車の誘導とその後のフォローについてのルールの徹底を図るとともに、巡回監視などを自主的に行い、協力することとなった。
したがって、以上の連合会の自主事業は、本市の事務事業と密接な関連がある。 - ウ 「平成29年6月29日開催の経済観光環境委員会において、経済観光局長が『市は連合会の自主事業(入場証の資格確認・発行等)には関わらないし、内容も一切把握していない。』と答弁していることに基づけば、連合会事業が市と密接な関連があるとは言えない」とのことについて
経済観光局長から「連合会に対して、受付、確認審査、作成・交付までの業務を委託しており、これに関連してより効率的な駐車場の利用の管理をするために巡回監視等を連合会の方で行うことにしている」旨の答弁を行っており、請求書に記載してある「市は連合会の自主事業(入場証の資格確認・発行等)には関わらないし、内容も一切把握していない」との答弁は行っていない。 - エ 「連合会は営利目的の事業者による団体であることから、公共性を持つ団体とは言い難い」とのことについて
連合会の構成員の個々は概ね営利事業者等であるが、アで記述したように、連合会は公共性・公益性がある団体である。 - オ 「連合会の事業が市に関連し、市が協力すべき立場であるが、使用許可する事務所施設とは直接関連がない」とのことについて
アで記述したように、連合会は公共性・公益性のある団体である。連合会がその目的を達成するための事業を行うためには、事務所は必要不可欠である。 - カ 「使用を許可した施設の使用実態が、単に連合会専務理事の執務室になっている」とのことについて
使用を許可した施設は、連合会の事務所として、専務理事の執務室、職員の事務室及び会議室に供されているものである。 - キ 「入場証の発行業務による収入が600万円余りあることから連合会は事務所の使用料を支払うことが十分可能である」とのことについて
本市において使用料の免除を審査するに当たっては、前述のとおり、連合会は公共性・公益性にそぐうものであると判断し、広島市中央市場業務条例第71条第6項第3号の規定に基づき使用料の免除を決定したものである。
なお、連合会が駐車車両に関して徴収している収入は、連合会の駐車場のルールの徹底・巡回監視等の自主事業や事務局体制の強化に充てられると聞いている。 - ク 結論
これまで述べてきたとおり、本市は連合会の申請を受け、広島市中央市場業務条例に基づき、適正に施設の使用を許可し、その使用料を免除しているものである。 - よって、請求人の主張には理由がないため、本件措置請求は棄却されるべきである。
(3) 別添・広島市中央市場連合会の平成28年度の主な取組事業
- ア 市場内の保健並びに環境衛生に関すること
次の事業を実施し、従業員の保健や場内の環境衛生の保持に努め、市場の安全安心の確保を図っている。- (ア)保健に関すること
- 職場献血(夏・冬)
赤十字血液センターとの日程調整、会員事業者への周知・献血勧奨を行い、市場内で実施(4日間実施 125名献血) - インフルエンザ予防ワクチン接種
協力可能な医療機関を当たり日程調整、会員事業者への周知・接種勧奨を行い、市場内で実施(2日間実施 444名接種) - 場内事業者の健康診断(夏・冬)
広島県集団検診協会との日程調整、会員事業者への周知・受診勧奨を行い、市場内で実施(4日間実施 1,086名受診)
- 職場献血(夏・冬)
- (イ)環境衛生に関すること
- 門前清掃(平成6年度から継続実施)
連合会の呼びかけにより毎月1回実施、会員全事業者が参加 - 場内一斉清掃(平成27年度から実施)
連合会の呼びかけにより毎年1回実施、会員全事業者が参加
- 門前清掃(平成6年度から継続実施)
- (ア)保健に関すること
- イ 教育及び情報の提供に関すること
次の事業を実施し、会員事業者における優秀な人材の確保・育成を支援し、市場の発展に寄与している。- (ア)優良従業員の表彰状授与式等の開催
広島市中央卸売市場表彰要綱に基づく優良従業員表彰の表彰状授与式の開催への協力- 被表彰者は連合会の推薦に基づいて広島市が決定
- 授与式後に市長及び市議会議長を招いて、連合会が祝賀会を開催
- (イ)市場セミナーの開催(年1~2回)
会員事業者の経営体質の強化等を目的とし、連合会が外部講師を招へいして開催
(年1回開催、94名参加) - (ウ)フォークリフト運転技能講習の開催
安全・安心な労働環境を確保するため、広島県労働基準協会に依頼し、会員事業者向けの運転技能講習を市場内で開催(7日間の講習 29名受講) - (エ)新入社員合同入社式及び研修会の開催
連合会の主催により、会員事業者の新入社員の合同入社式を開催するとともに、外部の専門家を講師とする合同研修会(内容「社会人としての心構え等」)を開催
- (ア)優良従業員の表彰状授与式等の開催
- ウ 市場運営の活性化に関すること
次の事業を実施し、市場の活性化やPR、食育等の推進による消費拡大を推進している。- (ア)「市場まつり」の開催(平成25年度から継続実施)
広く市民に市場の仕組みや役割を知ってもらうため、連合会の主催により年1回開催
連合会が、会員事業者との協議(WG会議10回程度開催)や外部事業者との出店調整等に当たる(平成29年3月25日開催、来場者数:約1万1千人)。 - (イ)NHKひるまえ直送便(平成7年から継続実施)
毎週月曜~金曜(午前11時30分~11時54分)に放送されるNHK広島テレビの生活情報番組「ひるまえ直送便」中の、「新鮮市場」のコーナー(火曜・木曜)に卸売業者のせり人が出演し、旬の「野菜」、「果物」、「魚」及び「花」やその目利きなど、市場のプロならではの情報を紹介
連合会がNHKとの打合せ及び出演者(会員事業者:主に卸売業者)の調整に当たる。
- (ア)「市場まつり」の開催(平成25年度から継続実施)
- エ 会員の福利厚生、親睦に関すること
(ア)ボーリング大会
会員事業者の親睦を目的とし、連合会主催により年1回開催
(40チーム、160名参加)
(意見に係る証拠書類として、次の書類が提出されているが、添付を省略する。)
決裁文書「市場施設使用許可について(広島市中央市場連合会)」の写し
3 監査対象事項
広島市が、平成29年4月28日付け広島市指令場中第8号による広島市中央市場連合会への市場施設使用許可に際し、使用料を免除したことは、違法又は不当に公金の賦課徴収を怠る事実に該当するか。
第5 監査の結果
1 事実関係の確認
請求人から提出された広島市職員措置請求書及び事実を証する書類、広島市長から提出された意見書及び関係書類並びに広島市の関係職員への調査により、以下の点について確認した。
(1) 中央市場の施設の使用に関する法令等について
広島市中央卸売市場中央市場(以下「中央市場」という。)は、広島市中央卸売市場の一部であるが、この広島市中央卸売市場は、卸売場、自動車駐車場その他の生鮮食料品等の取引及び荷さばきに必要な施設を設けて継続して開場される生鮮食料品等の卸売のために開設される卸売市場であり、また、卸売市場の中でも、生鮮食料品等の流通及び消費上特に重要な都市及びその周辺の地域における生鮮食料品等の円滑な流通を確保するための生鮮食料品等の卸売の中核的拠点となるとともに、当該地域外の広域にわたる生鮮食料品等の流通の改善にも資するものとして、農林水産大臣の認可を受けて開設した中央卸売市場(卸売市場法第2条第3項)である。
中央卸売市場に係る主要な事項(位置及び面積、取扱品目、開場の期日及び時間、卸売の業務を行う者に関する事項、施設の使用料等)については、卸売市場法第9条の規定により、業務規程に定めなければならないこととされている。
これを受け、広島市では、これらの事項と合わせて、施設の使用、監督処分等について、広島市中央卸売市場業務条例(以下「業務条例」という。)を定め、中央卸売市場の適正かつ健全な運営を確保することにより、生鮮食料品等の取引の適正化とその生産及び流通の円滑化を図り、もって市民等の生活の安定に資することとしている(業務条例第1条)。
本件事務所に係る使用料は、業務条例第71条第1項に、別表第2に掲げる金額の範囲内で規則で定めることとされており、業務条例施行規則第48条に規定する別表第2によれば、1平方メートルにつき月額1,833円と定められている。
また、業務条例第71条第6項において、市長は、次のいずれかに該当するときは、使用料を減免することができると定められている。
一 使用者の責めに帰することができない理由によって市場施設を使用できないとき。
二 使用者が国又は公共団体であるとき。
三 その他市長において特別の理由があると認めたとき。
なお、上記の業務条例第71条第6項第3号の「特別の理由がある」か否かの判断基準は定められていない。
(2) 中央市場の施設及び使用料に関する法的性格について
中央市場は、地方自治法第244条第1項に規定する公の施設に該当し、広島市中央卸売市場中央市場等の設置条例により設置され(第1条及び第2条)、その管理運営に関しては、業務条例の定めるところによると規定されている(第3条)。
したがって、業務条例第71条第1項に規定する使用料は、地方自治法第238条の4第7項及び広島市財産条例等に基づく「行政財産の目的外使用料」には該当しない。
(3) 連合会について
広島市中央市場連合会(以下「連合会」という。)は、昭和62年、「市場内の緊密な連携と協調により市場の健全かつ円滑なる運営と秩序の保持を図り、もって市場全般の発展を促進すると共に会員の親睦と福利厚生の向上に資すること」を目的として設立された団体である。
その会員は、市場内で開設者の許可を受け市場施設を使用している事業者その他市場に関係のある事業者を対象とし、平成29年6月現在、青果、水産物、花き各部の卸売業者、仲卸業者、売買参加者、関連事業者の計105社(業種の重複を除く実数)、3組合で構成されている。
連合会は、上記の設立目的を達成するため、(1)市場運営の合理化、活性化並びに施設の充実及び改善に関する調査研究、(2)市場内の保健並びに環境衛生に関すること、(3)教育及び情報の提供に関すること等の事業を行うこととしている。
平成28年度の活動実績としては、献血や門前清掃の実施、市民に市場を紹介するための市場まつりの開催やテレビ番組(食料品の情報提供コーナー)への出演調整等といった活動をはじめ、健康診断やインフルエンザ予防ワクチン接種等の実施により、従業員の保健や場内の環境衛生を保持することを通じて中央市場の安全安心の確保を図ったり、セミナー、講習、研修会等の開催により、会員事業者の経営体質の強化、従業員の技能向上、人材育成等を支援することを通じて中央市場の発展に寄与することを目指した活動を実践している。
(4) 連合会と広島市との関わりについて
中央市場に関係する全ての分野の事業者で構成される連合会は、中央市場長等広島市職員が連合会の正副会長会議や役員会等に出席して密接に意見交換を行うなど、広島市にとって、中央市場の運営等における重要な連携相手となっている。
また、中央市場各卸売場棟の耐震強度不足を受け広島市が平成28年度に決定した「中央市場の現地での全棟建替え」方針の中の「計画づくりに当たっての基本的事項」には、「事業手法、市と場内事業者との整備分担、適正な施設規模や仕様、配置等について検討」することが示されている。これを受けて、連合会においては、平成29年5月、正副会長会議において「市場整備の進め方について」を議題とし、また、同年7月には、「新中央市場建設計画策定の進め方について」を議題とし、広島市に説明を求め、協議するなど、市場建替方針に呼応した取組に着手しており、中央市場の建替えの検討に当たっては、連合会による場内事業者の意見集約機能や広島市との調整窓口としての役割が非常に重要なものとなるとともに、連合会の関連事務量は相当程度増加することが想定される。
さらに、中央市場運営上の長年の懸案である場内の駐車対策に関し、連合会は、平成29年度から、入場証交付等業務について広島市から委託を受けるとともに、この委託を含む広島市の取組と連動し、これを補う形で場内の駐車対策を推進するため、場内自主管理の取組の一環として場内駐車車両への対応に着手し、巡回監視の範囲を徐々に拡大している。
(5) 本件許可及び本件免除について
平成29年4月17日、連合会は、広島市長に対し、中央市場の管理棟3階にある96平方メートルの区画を連合会の事務所として使用することにつき、市場施設使用許可を求める申請を行った。また、同時に、当該許可に伴う使用料の免除を求める申請を行った。
広島市長は、これらの申請を受け、市場施設使用許可(以下「本件許可」という。)については業務条例第65条第2項の規定に、また、本件許可に伴う使用料の免除(以下「本件免除」という。)については業務条例第71条第6項第3号の規定に該当するものとして、平成29年4月28日付けで、広島市職務権限規程に基づく職務権限により中央市場長が決裁して決定し、その旨を示した市場施設使用許可書を同日付け広島市指令場中第8号により連合会に交付した。
広島市長は、本件免除の理由(業務条例第71条第6項第3号の規定に該当する理由)を、連合会は、その会員構成や設立目的等の点で、公共性を持つ団体であり、かつ、同会の事業は駐車対策や中央市場の建替えに関する検討において、広島市の事務事業と密接な関連があり、広島市としてもその事業に積極的に協力すべき立場にあること、また、連合会収入のほとんどは会員からの会費等で賄われ収益事業は行っていないこととしており、本件免除の審査に当たり、連合会が公共性・公益性にそぐうものであると判断した。
(6) 連合会による従前の市場施設使用許可の申請及び使用料免除の申請について
連合会は、平成28年度までは広島市長に対し、中央市場の青果棟3階にある20平方メートルの区画(本件許可の区画とは異なる区画)を連合会の事務所として使用することについて、市場施設使用許可の申請を行っている(これを受けて広島市長が許可)が、その際、当該許可に伴う使用料の免除を求める申請を行っていない。
(7) 平成29年第2回広島市議会定例会の経済観光環境委員会(平成29年6月29日開催)における経済観光局長の関係答弁について
広島市議会ホームページの録音中継によれば、経済観光局長が「市は連合会の自主事業(入場証の資格確認・発行等)には関わらないし、内容も一切把握していない。」という内容の答弁を行った事実は認められない。
(8) 事務所の使用内容について
本件許可に係る区画の使用内容は、専務理事の執務室及び会議室並びに事務局長等職員の事務室である。
2 判断
請求人は、広島市が行った本件免除は違法又は不当であり、これにより、広島市に損害が発生したと主張していることから、以下、本件免除が違法又は不当かについて検討する。
業務条例第71条第6項においては、使用料の減免事由の一つとして、同項第3号に「その他市長において特別の理由があると認めたとき。」と定められている。
この「特別の理由」については例示もなく、また判断基準について定められたものはないので、その認定に当たっては、広範な裁量権を広島市長に付与したものと解される。また「特別の理由」の意義については、当該公の施設に関する条例の目的等に照らし、当該使用の目的・内容、使用する団体の性格・状況、市の事業との関わりの程度等を総合考慮し、公益性の観点から使用料を減免する必要性ないし相当性が特に高いと認められる場合を意味するものと解される(名古屋高裁平成17年4月13日判決参照)。
よって、本件免除が違法となるのは、上記のような必要性ないし相当性の判断において、市長がその裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した場合であり、また、不当となるのは、違法とまではいえないが、裁量権の行使に当たり不合理な判断を行った場合であるといえる。
以上のことを踏まえ、上記1のとおり確認された事実関係を基に、本件免除について業務条例に規定する「特別の理由」があるか否かを検討したところ、
- 業務条例の目的は、生鮮食料品等の取引の適正化とその生産及び流通の円滑化を図り、市民生活の安定に資することであるところ、連合会は、中央市場に関係する全分野の事業者で構成され、場内の緊密な連携・協調による中央市場の健全・円滑な運営と秩序の保持、市場全般の発展促進を目的とする団体であること。
- また、その活動内容は、市民向けの公益的な活動をはじめとして、従業員の保健や場内の環境衛生を保持する事業を通じて中央市場の安全安心の確保を図り、また、セミナー、講習、研修等の開催を通じて会員事業者の経営体質の強化、従業員の技能向上、人材育成等を支援するなど、中央市場の発展に寄与する公益的な活動を実践していること。
- 広島市は連合会と密接に意見交換を行っており、連合会は中央市場の運営等における重要な連携相手であって、特に、長年の懸案である場内の駐車対策や、平成29年1月に決定した全棟建替方針に基づく可及的速やかな現地建替えの実現のため、体制を強化した連合会と引き続き緊密な協力関係を構築する必要があること。また、これに伴い連合会の関連事務量は相当程度増加することが想定され、対応する人的物的設備を充実させる必要があること。
- 連合会は収益事業を行っておらず、収入の大部分が会費及び駐車車両に関して徴収している収入によるものであり、その収支は未だ不安定であって、拡充した自主事業を継続し、職員増等により強化を図った事務局体制を維持していく上で、余裕のある状況とまではいえないこと。
などが認められる。
したがって、本件においては、公益性の観点から、使用料を減免する必要性ないし相当性が特に高いものと認められ、本件免除については、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用や、その行使に際しての不合理な判断は認められない。このため、本件免除は使用料の賦課徴収を違法又は不当に怠る事実には当たらない。
3 結論
以上のとおり、本件措置請求については、請求人の主張に理由がないことから、これを棄却する。
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