すまいるワーク
【インタビュー】町内会では対応しきれない困りごとを解決する「すまいるワーク」吉川常雄さん・姫宮宣和さんの挑戦
高度経済成長期に造成された住宅団地は、全国的に高齢化が進み、買い物や交通手段など日常生活に関わるさまざまな課題が顕在化しています。広島市安佐南区の瀬戸内ハイツ団地もその一つで、高齢化率は40%を超えています。
こうした課題に向き合うため、協同労働の仕組みを活用して2016年に設立されたのが「すまいるワーク」です。設立時の代表は吉川常雄さんで、現在は2代目代表として姫宮宣和さんがその役割を引き継いでいます。では、なぜ彼らはこのような活動を始めるに至ったのでしょうか。
吉川さんと姫宮さんへのインタビューをご紹介します。

Q:活動を始めたきっかけは。
私たちはもともと町内会の役職を務めていました。その活動を通じて感じたのは、町内会は「全体奉仕」を基本としているため、個々の生活上の困りごとには十分に寄り添いきれないという現実でした。そうした中で、「もっと個別の課題に向き合える仕組みが必要だ」と強く思うようになりました。
その思いが現在の活動を始める原動力となり、今の私たちの活動目的にもつながっています。

Q:どんな活動をされているのですか。
私たちの活動は、大きく3つの柱で成り立っています。
まず1つ目は、公園管理業務です。
現在、瀬戸内第二公園の指定管理者として、清掃や遊具の点検といった維持管理を行っています。住民の皆さんが安心して利用できる、安全で快適な環境づくりを心がけています。
2つ目は、団地の活性化につながる取り組みです。
毎月第3金曜日の14時から16時まで、会員宅を会場にサロンを開いています。コーヒーやケーキを楽しんでいただいたり、家庭菜園で収穫した野菜や果物を販売したりと、住民同士が気軽に集える場になっています。参加者は毎回20~25名ほどで、交流の輪が広がっています。
3つ目は、地域の支え合い事業です。
庭木のせん定や大型ごみの搬出、高齢者の見守り、留守家庭の子どもの見守りなど、地域の「ちょっと困った」に随時対応しています。住民の方々が安心して暮らせるよう、日常の小さな困りごとに寄り添うことを大切にしています。

Q:「協同労働」という制度を選んだ理由を教えてください。
無償の活動だけでは、継続的に十分な取り組みを行うことが難しいと感じていました。運営資金をしっかり確保することは、活動を続けていくうえで欠かせません。
また、サービスを受ける側にとっても、無償だと「頼みにくい」という声があることを事前に把握していました。そうした双方のニーズに応えられる仕組みとして、協同労働という制度が最も適していると考え、この形を選びました。
※広島市では「協同労働」の仕組みを活用して、主体的に地域を支える活動に取り組む団体に対し、様々な支援を行っています。詳細は以下「協同労働促進事業」ホームページを参照ください。
Q:チームづくりにあたって、どのように人を集めたのですか。
私たちは、町内会では対応しきれない地域課題に取り組むという目的がありました。そのため、まずは町内会の役員経験者を中心に声をかけていきました。看護師や大工など、資格や専門性を持つ方々が集まってくださり、それぞれの得意分野を活動に活かしています。
また、協同労働はメンバー自身が出資する仕組みで、お金が関わる制度でもあります。だからこそ、信頼関係のある、気心の知れた仲間で構成したいという思いもありました。
そうした点も踏まえて、メンバーを募っていきました。
Q:チームづくりにあたって、何人くらいで始めようと考えたのですか。
当初から、10人以下の少人数チームでのスタートを想定していました。これまでの経験から、人数が少ないほうが意思決定がしやすく、活動もスムーズに進むと感じていたからです。
また、特に女性は決断力があり、行動も早いという印象を持っていました。そのため、女性メンバーが多いチームのほうが望ましいと考えていました。
Q:少人数のメンバーで苦労することはありますか。
私たちは「少人数でできることしかやらない」という方針を大切にしています。そのため、人数が少ないこと自体が大きな問題になることはありません。
むしろ、複数人で手早く協力しながら“ササっと解決する”ことを心掛けており、その機動力が強みになっています。
Q:メンバーを増やすことは考えていますか。
現在の7人で、ほとんどの依頼に対応できているため、今のところメンバーを増やす予定はありません。ただし、活動を長く続けていくためには、いずれ世代交代が必要になると感じています。実際に、代表も初代の吉川さんから二代目の姫宮さんへと引き継ぎながら活動を続けています。
今後も、無理のない形で次の世代へバトンを渡していくことが課題だと考えています。
Q:財政状況はいかがですか。
今のところ、赤字は出ていません。サロンで提供しているコーヒーセット(400円)は採算が合わず赤字ではありますが、ほかの収支で補填できている状況です。
また、いざという時に備えて、メンバーが出資した資金については、いつでも返還できるように貯蓄を確保しています。
活動を継続するうえで、健全な財政管理を心がけています。
Q:活動を継続するために大切にしていることは何ですか。
まず大切にしているのは、無理をしないことです。
私たちは「できることだけをやる」という姿勢を徹底しています。また、専門的な対応が必要な場合は、無理に自分たちで抱え込まず、専門家に任せるようにしています。逆に、できないことはきちんとお断りする勇気も必要だと感じています。
依頼を受ける際には、事前に見積書を作成し、領収書の整理など収支管理を丁寧に行うことも欠かせません。活動を続けるうえで、財務面の透明性と正確さはとても重要です。
さらに、パソコンのエクセルやワード、スマホのグループLINEなど、便利なツールは積極的に活用しています。少人数だからこそ、効率よく連携できる仕組みづくりを心がけています。
そして、気心の知れた仲間であっても、規約やリーダーといったチームの核となる部分はしっかり定めておくことが大切です。こうした基本的なルールがあることで、安心して活動を続けられると感じています。
Q:これまでトラブルになったことはありますか。
有償で活動していることを理由に、地域から施設の利用を制限され、活動場所を移さざるを得なかった経験があります。この出来事を通して、地域で活動を始める際には、事前に丁寧な説明を行い、理解を得ておくことがいかに大切かを強く感じました。
Q:今後の展望について教えてください。
まずは、現在取り組んでいる活動を無理なく続け、地域の安心を支える仕組みをこれからも維持していきたいと考えています。
住民の方々が「困ったときに頼れる存在」であり続けることが、私たちの大きな目標です。
さらに、将来にわたって活動を継続できるよう、次の世代の担い手を育てていくことも重要な課題だと感じています。地域の支え合いの仕組みを途切れさせないためにも、若い世代へとバトンをつないでいきたいと思っています。

吉川常雄さん、姫宮宣和さんをはじめ、「すまいるワーク」の皆さま。インタビューにご協力いただき、ありがとうございました。
これからも地域を支える皆さまのご活躍を心より期待しています。
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