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日当支給について

ページ番号:0000282815 更新日:2022年6月7日更新 印刷ページ表示

広島市監査公表第26号

令和4年6月1日

 令和4年4月5日付け第42号で受け付けた広島市職員に関する措置請求について、その監査結果を地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第5項の規定により、別紙のとおり公表する。

広島市監査委員 政氏 昭夫

同       井戸 陽子

同       宮崎 誠克

同       森畠 秀治

別紙

広監第53号

令和4年6月1日

請求人
(略)

広島市監査委員 政氏 昭夫

同       井戸 陽子

同       宮崎 誠克

同       森畠 秀治

   広島市職員に関する措置請求に係る監査結果について(通知)

 令和4年4月5日付け第42号で受け付けた広島市職員に関する措置請求(以下「本件措置請求」という。)について、地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第5項の規定により監査を行ったので、その結果を同項の規定により次のとおり通知する。

 

第1 請求の要旨

 請求の要旨は、請求書の記載内容から抜粋引用すると、大要は次のとおり。

  広島市長その他関係する職員による日当支給に関する措置請求

(1) 監査請求の概要

 広島市には、旅行命令権を有し、その権限を行使して旅費支給の要否を決定する旅行命令権者がいます。旅行命令権者は各部署の長です。

 広島市の旅費条例には旅費の種類として「日当」があります。「日当」は、用件先で用務を遂行するにあたり職員個人が自腹で支出する必要のある経費に対して、その「実費弁償」の目的で定額で支給されるものです。

 広島市の旅行命令権者には、職員個人が用件先で自腹で支出する実費が存在しないことから、日当を支給すれば不当な支出になるとして、日当を非支給としている旅行命令権者がいる一方で、漫然と日当を支給している旅行命令権者もいます。

 「実費弁償」として支給されている「日当」が、実費支出がない場合にも支給された場合、日当の目的を逸脱し、国税庁の所得税基本通達9-3《非課税とされる旅費の範囲》の「旅費の範囲」を逸脱して給与所得に該当することとなり、違法な「ヤミ給与」を支給していることになると考えられます。

 一部の旅行命令権者の日当支給行為は、違法・不当な財務会計上の行為に該当することから、監査の実施を請求するものです。

 公用車のない時代には、出張先での移動にバスや電車等を利用し、そのためのバス賃・電車賃が個人の懐から支払われていたため、その実費を弁償する必要がありました。定額としたのは、乗車賃のように領収書の発行が困難なものや領収書の清算に係る事務等の煩雑さを避けるための措置で、余っても不足しても清算しないという制度のようです。

 公用車での移動が当たり前となった現在、旅費を個人で支払うことはなくなり、「日当」が不要となっています。その結果、「日当」はそのまま当該職員の収入となり、非課税でありながら個人の給与に加算される「ヤミ給与」という解釈になります。

 実際に、安佐南区役所市民部地域起こし推進課や安佐北区役所農林建設部建築課では、ともに「広島市職員の旅費に関する条例第43条第1項に基づき日当を支給していない」とのことです。

 このように、正しい見識を有する旅行命令権者がいる一方で、支給した場合不当な支出となる日当が漫然と支給されています。

 他の自治体でも、日当を廃止するなど、実態に即した見直しが以前から行われています。広島市はそれを怠っており、不当に税金が支出され続けています。

 現在では、公用車での移動が一般的で、ドアツードアの移動ができ、諸雑費は発生していません。出張先で仮にバス代や電車賃が必要となる場合があったとしてもプリペイドカードなどによって支払われ日当から充当されるのではありません。駐車場代が必要となった場合も、広島市会計規則等によって別途公金から支出されています。

 実費弁償としての日当と別途公金支出による駐車場代や乗車券代等によって、二重の支給が行われるなどの不当な税金支出が起こっています。

(2) 請求の対象となる職員

 広島市長

 支給すれば給与所得の扱いとなる日当を支給した旅行命令権者その他関係する職員

(3) 損害の推定

 不明(環境局の年間の日当支給が約900万円、広島市職員数が約1万5千人であることから、億円単位になるのではないかと思われる。)

(4) 請求する措置

 旅費としての支出がなく、不当に支給された日当(「ヤミ給与」)は返還すること。

 旅費としての支出がない日当は支給せず、他の自治体のように日当を廃止すること。

(事実を証する事実証明書として次の書類が提出されているが、添付を省略する。)

【事実証明書1】 日当についての給与課長の回答

【事実証明書2】 日当を支給していない理由(安佐南区役所地域起こし推進課)

【事実証明書3】 日当を支給していない理由(安佐北区役所建築課)

【事実証明書4】 日当を支給していない理由(給与課長)

【事実証明書5】 支給された「日当」から支出した事例がないという、児童相談所長及び佐伯区維持管理課長の回答

【事実証明書6】 駐車場代は公金から支出できるという回答

【事実証明書7】 日当支給の事例

【事実証明書8】 国では100km未満の移動で「日当」を支給していない事実

【事実証明書9】 ウエブ上に掲載されている鎌倉市の日当廃止の事例

【事実証明書10】 駐車場代が日当からではなく、別途公金から支出されている事実

【事実証明書11】 岡山市では県内移動の場合には日当は支給していない事実

【事実証明書12】 大阪市、京都市や相模原市では、旅費の種類に「日当」がない事実

【事実証明書13】 日当の定額支給、減額判断、市施設の場合の非支給、非課税理由などについての給与課長回答

【事実証明書14】 広島県内市町の日当非支給範囲(インターネット上に掲載されている市町の条例等から推定)

【事実証明書15】 他の政令指定都市の日当非支給範囲

【事実証明書16】 所得税法基本通達 法第9条≪非課税所得≫関係「非課税とされる旅費の範囲」について(国税庁ホームページ)

 

第2 請求の受理

 本件措置請求は、地方自治法(以下「法」という。)第242条第1項の所定の要件を具備するものと認め、令和4年4月28日に、同月5日付けでこれを受理することを決定した。

 

第3 監査の実施

1 請求人による証拠の提出及び陳述

 法第242条第7項の規定に基づき、請求人に対し、証拠の提出及び陳述の機会を設けたところ、請求人からは証拠の提出はなく、陳述も行われなかった。

2 広島市長の意見書の提出及び陳述

 広島市長に対し、意見書及び関係書類等の提出を求めたところ、令和4年5月11日付け広人給第9号により意見書が提出された。なお、陳述は行われなかった。

 意見書の主な内容は、以下のとおりである。

(1) 事実

 日当は、「広島市職員等の旅費に関する条例」(以下「旅費条例」という。)及び「広島市職員等の旅費に関する条例の運用について」(以下「運用通知」という。)に基づき、各所属において支給している。

(2) 本市の意見の趣旨

 本件措置請求は、理由がないものである。

(3) 本市の意見の理由

 上記(1)のとおり、日当は旅費条例及び運用通知に基づき、各所属において適正な支給を行っているものと認識しており、本件措置請求は理由がないものである。

 請求人は、職員の実際の支出がない場合に支給された日当は、日当の目的を逸脱し給与所得に該当すると主張しているので、以下、この点について述べる。

ア 日当の定額支給について

 日当は、旅費条例に基づき、目的地や職位等に応じた一定の基準により、定額での支給を行っている。

 日当をすべて実費支給にすると、その都度、領収書を提出させる必要が生じ、その領収書の内容を確認した上で、計算を行うこととなるため、支給事務が極めて煩雑になり、かえって全体経費は増えると考えられる。そのため、支給事務、精算事務を効率的に行う観点から、国家公務員等の旅費に関する法律(以下「旅費法」という。)に準じて定めた定額での支給を行っており、旅行完了後に、日当の実際の使途を確認することとはしていない。

イ 日当の減額について

 上記アのとおり、日当は原則、定額での支給を行っているが、旅行の実態からして、日当を定額で支給することが適当でない場合は、旅費条例第43条1項に基づき、減額することができるとしており、運用通知において、その主な例を示している。各所属において、旅費条例や運用通知の趣旨を踏まえ、旅行の実態に応じて日当を減額するかどうかの判断を行っていることから、日当を支給している所属と、非支給としている所属があるが、日当を支給することは、旅費条例に基づくものであり、不当な支出ではない。

ウ 所得税について

 上記アのとおり、日当は、旅費条例に基づき、目的地や職位等に応じた一定の基準により、定額で支給を行っており、その金額は国における日当と同額としている。国においては、日当は非課税とされていることから、本市においても同様に、所得税基本通達9-3に規定する「旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品」として、非課税と取り扱っており、違法な「ヤミ給与」ではない。

 以上のとおり、日当は旅費条例及び運用通知に基づき、各所属において支給しており、適正なものである。

 なお、令和4年4月1日から50キロメートル未満の旅行(勤務場所の存する地域(広島市にあつては、安芸郡の府中町、海田町及び熊野町を含む。)内の旅行を含む。)の場合の日当及び公用車を利用した往復100キロメートル未満の旅行をする場合の日当の支給を原則廃止する見直しを行っている。

3 監査対象事項

 請求人は、広島市では、旅行命令権者によっては日当を支給すると不当な支出になると判断してこれを支給していない事例がある一方で、漫然と日当を支給している事例もあり、一部の旅行命令権者の日当支給行為は、違法又は不当な公金の支出に該当すると主張していると認められる。

 このため、日当を支給している事例について、令和3年度に日当を支給した部署のうちから抽出して、その日当の支給が条例等に基づき適正に行われているか否かを監査する。

4 監査の実施内容

 請求人から提出された広島市職員措置請求書及び事実を証する書類、広島市長から提出された意見書のほか関係書類を確認するとともに、関係職員への聴取りを行うなどして監査した。

 

第4 監査の結果

1 事実の確認

(1) 旅費制度について

ア 法第204条第1項で、普通地方公共団体は常勤の職員等に対し旅費を支給しなければならないとされており、同条第3項において旅費の額、支給方法は条例で定めなければならないとされている。

イ 広島市職員等の旅費に関する条例(昭和27年広島市条例第17号。以下「旅費条例」という。)第2条第1項第6号で、職員が公務のため一時その勤務場所を離れて旅行することを出張というとされ、旅費条例第3条第1項で、職員が出張した場合には、当該職員に対し、旅費を支給することとされている。日当を含む旅費の種類は旅費条例第6条第1項で規定されており、同条第6項の規定により、日当は、1日当たりの定額により支給するとされている。その額は、旅費条例第20条第1項で別表第1の定額によるとされ、5級以下の職務にある者が内国旅行する場合、1日につき2,200円とされている。

ウ 旅費条例第43条第1項では、旅費を支給した場合には不当に旅行の実費を超えて旅費を支給することとなる場合においては、その実費を超えることとなる部分の旅費について、旅費の全部又は一部を支給しないことができるとされている。

エ この不当に旅行の実費を超えて旅費を支給することとなる場合については、「広島市職員等の旅費に関する条例の運用について」(昭和27年4月1日広職甲第88号。以下「運用通知」という。)第43条関係第1項で、正規の旅費を支給することが旅費計算の建前に照らして適当でない場合においては、各機関の長は、各号に掲げる基準により旅費の調整を行うことができるとされ、令和3年度以前では、その例の一つとして、同項第2号では50キロメートル未満の旅行(勤務場所の存する地域(広島市にあっては、安芸郡の府中町、海田町及び熊野町を含む。)内の旅行を含む。)の場合の日当の額は、旅費条例別表第1の日当定額の4分の1に相当する額とするとされていた。

オ また、運用通知に掲げられている例のほかに、旅行の実態に鑑みて更なる減額を行うことができるという考えが制度所管課や制度運用課で認識され、取り扱われていた。

カ なお、この運用通知では、半径8キロメートルを超え往復100キロメートル未満の公用車での出張の旅費の支給額は、日当定額の4分の1に相当する額とされていたところ、令和4年4月1日以降の旅行分から、往復100キロメートル未満の公用車での出張に係る旅費の日当を非支給とする等の運用の見直しが行われた。

(2) 日当の支給について抽出により調査した結果について

 日当の支給について、請求書に添えて提出された事実証明書に掲げられた部署のうちから令和4年1月から3月までの支給分を抽出して、日当の支出手続を調査したところ、個々の旅行命令に係る日当の支給は、旅費条例や運用通知にのっとって行われていた。

2 判断

(1) 法第232条の3では、「普通地方公共団体の支出の原因となるべき契約その他の行為(これを支出負担行為という。)は、法令又は予算の定めるところに従い、これをしなければならない。」とされ、旅費の支給に係る支出負担行為は、法令に基づき適正に行わなければならない。

(2) 旅費の支給については、1でみたとおり、法及び旅費条例の規定により、職員が出張した場合等は、旅費条例で定める定額の日当を含む旅費を支給しなければならないとされている。また、旅費条例の規定により、旅費を支給した場合において、不当に旅費の実費を超えることとなる場合には、各機関の長は、実費を超えることとなる部分の旅費の全部又は一部を支給しないことができるとされ、その際の減額に関しては、旅費条例所管課から庁内に向け、標準的な減額に係る基準が示されている。

 旅費の支出負担行為を行う各部署は、これら旅費条例や運用通知にのっとって旅費の支給事務を行っている。

(3) 請求人は、大要、この運用通知で示された基準を越えて減額すべきであるにもかかわらず、その減額をしないで行われた旅費の支給は違法又は不当な公金の支出に該当すると主張していると認められる。

 この点について、日当は、「旅行中の昼食費及びこれに伴う諸雑費並びに目的地である地域内を巡回する場合の交通費等を賄なうために支給されるもの」であり、「定額支給の建前がとられており、原則としてその用途をいちいち詮索する必要はない」とされるとともに、「特別の事情により(略)認定した額に調整することができるものとされている」場合は、「日当の額を調整する必要性の有無に関し市長としての判断の当否が問われることがあるとしても、市長の右判断が権限を濫用するものであるなどの特段の事情がなければ、日当支給それ自体が直ちに違法になるものとはいえない」とされている(徳島地裁平成5年11月12日判決)。

 このような、旅行の際に生ずるであろう諸雑費を賄うために用途を問わず定額で支給するという日当の性格を鑑みると、旅費条例第43条第1項の適用基準として旅費条例所管課から庁内に示された運用通知の内容は、明らかに不合理であるとする点はないと認められるとともに、運用通知に従って日当を支給した部署を抽出して調査したところ、この運用通知で示された基準を越えて更に減額しなかったことに、各機関の長としての裁量権の行使に関し違法・不当な点は認められなかった。

 加えて、これら抽出して調査した部署において、旅費条例や運用通知にのっとって適正に旅費の支給が行われていた。

(4) したがって、法令(条例の運用に関し旅費条例所管課から示された運用通知を含む。)に従って行われた旅費の支給に違法・不当な点はなかった。

3 結論

 請求人の行った本件措置請求については、理由がないものであり、請求を棄却する。