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社会福祉法人への補助金について

ページ番号:0000004079 更新日:2019年10月21日更新 印刷ページ表示

広島市監査公表第37号
平成30年12月27日

 平成30年10月31日付けで受け付けた広島市職員に関する措置請求について、その監査結果を地方自治法第242条第4項の規定により、別紙のとおり公表する。

広島市監査委員 谷本 睦志
同 井上 周子
同 西田 浩
同 三宅 正明

別紙

広監第240号
平成30年12月27日

請求人
(略)

広島市監査委員 谷本 睦志
同 井上 周子
同 西田 浩
同 三宅 正明

広島市職員に関する措置請求に係る監査結果について(通知)

 平成30年10月31日付けで受け付けた広島市職員に関する措置請求(以下「本件措置請求」という。)について、地方自治法第242条第4項の規定により監査を行ったので、その結果を同項の規定により次のとおり通知する。

第1 請求の要旨

 平成30年10月31日付けで提出のあった広島市職員措置請求書に記載された内容は、以下のとおりである。

広島市民間社会福祉施設整備費補助金の不当な交付に関する措置請求の要旨

1 請求の要旨

 社会福祉法人A(理事長:B。以下「本件事業者」といいます。)が運営する特別養護老人ホームC(以下「本件施設」といいます。)は、平成30年3月1日に開設しました。
 本件施設は、平成29年度に広島市民間社会福祉施設整備費補助金(以下「本件補助金」といいます。)の交付を受けて整備されたものです。
 そもそも、本件補助金の交付までの流れとしては、広島市補助金等交付規則によると、

  1. 事業者による広島市長への補助金の申請
  2. 広島市長による補助金交付の決定
  3. 事業者による施設整備に係る工事着手
  4. 事業者による施設整備の完了
  5. 事業者による広島市長への事業実績報告
  6. 広島市長による補助金の額の確定
  7. 広島市長による補助金の交付

とされているものと解されます。
 また、本件補助金に係る制度においては、施設本体の工事費、各種設備の工事費、設計監理費のうちの工事監理費等が補助対象経費とされています。
 こうした中、本件事業者は、本件施設に係る工事監理を行った業者に対して工事監理費相当分の費用の支払を行っていません。
 それにもかかわらず、広島市長は、本件補助金の交付に係る事務の責任者である広島市健康福祉局高齢福祉部高齢福祉課長(以下単に「高齢福祉課長」といいます。)において、上記⑸の事業実績報告の際に添付されるべき本件施設に係る工事監理費(以下「本件工事監理費」といいます。)相当分の費用の支払に係る領収証書等の確認をしていない状況でありながら、本件工事監理費相当分の額を含めて本件補助金の額を確定し、これを交付しています。
 これはすなわち、本件事業者が、実際には支払が行われていない本件工事監理費相当分の補助金を不当に受給していることになります。
 高齢福祉課長は、これらの事実を認識しているにもかかわらず、何ら対応をしていません。
 これらの行為により、広島市において、本来交付すべきでない本件工事監理費相当分の額の損害が発生しています。
 よって、広島市長において、本件事業者に対して本件工事監理費相当分の額の不当利得返還請求を行うことを請求します。

 地方自治法第242条第1項の規定により、別紙事実証明書を添え、必要な措置を請求します。

(事実を証する事実証明書として次の書類が提出されているが、添付を省略する。)

  • 資料⑴ 平成30年6月4日広島市役所市民相談センターにて、口頭での質問に対する回答
  • 資料⑵ 広島市補助金等交付規則に関して市民相談センターヘの質問に対する財政課からの回答
  • 資料⑶ 広島市補助金等交付規則
  • 資料⑷ 社会福祉施設等整備の手引き 抜粋
  • 資料⑸ 設計契約書 写し
  • 資料⑹ 工事費目別内訳書

第2 請求の受理

 本件措置請求は、地方自治法第242条第1項の所定の要件を具備するものと認め、平成30年11月7日に、同年10月31日付けでこれを受理することを決定した。

第3 監査の実施

1 請求人による証拠の提出及び陳述

 地方自治法第242条第6項の規定に基づき、平成30年11月21日に請求人に対し証拠の提出及び陳述の機会を設けたところ、請求人は新たな証拠として次の書類を提出するとともに、陳述を行った。

 (新たな証拠として次の書類が提出されているが、添付を省略する。)

  • 資料Ⓐ 補助金交付申請書類の一部
  • 資料Ⓑ 実績報告書の一部

 請求人は、本件措置請求に沿った内容の説明について、陳述した。

2 広島市長の意見書の提出及び陳述

 広島市長に対し、意見書及び関係書類等の提出を求めたところ、平成30年11月20日付け広高高第171号により意見書が提出された。なお、陳述は行わなかった。
 意見書の内容は、以下のとおりである。

⑴ 本市の意見

 請求人の主張には理由がないため、本件措置請求は棄却されるべきである。

⑵ 本市の意見の理由等
ア 本件措置請求の要旨

 本件措置請求の要旨は、おおむね次のとおりであると解される。
 広島市民間社会福祉施設整備費補助金(以下「本件補助金」という。)の交付を受けて整備された特別養護老人ホームC(以下「本件施設」という。)を運営する社会福祉法人A(以下「A」という。)は、本件施設の工事監理を行った業者に対して工事監理費(以下「本件工事監理費」という。)相当分の費用を支払っていない。
 本件補助金は、施設本体及び各種設備の工事費並びに設計監理費のうちの工事監理費等が補助対象経費とされている。
 高齢福祉課長は、事業実績報告の際に添付されるべき本件工事監理費相当分の費用の支払に係る領収証書等の確認をしていない状況でありながら、本件工事監理費相当分の額を含めて本件補助金の額を確定し、これを交付している。
 これはすなわち、Aが、実際には支払が行われていない本件工事監理費相当分の補助金を不当に受給していることになる。
 高齢福祉課長は、これらの事実を認識しているにもかかわらず、何ら対応をしていない。
 これらの行為により、広島市において、本来交付すべきでない本件工事監理費相当分の額の損害が発生している。
 よって、広島市長において、Aに対して本件工事監理費相当分の額の不当利得返還請求を行うことを請求する。

イ 本市の意見の理由

 本件補助金の交付は、本市に何ら損害を発生させるものではなく、次のとおり、請求人の主張には理由がない。
 (ア) 本市に損害を発生させていないことについて
 本市は、広島市補助金等交付規則(以下「規則」という。)及び民間社会福祉施設整備費補助金交付要綱(以下「要綱」という。)に基づき、平成29年6月9日付けで、本件施設に対する補助金として、1億2,251万2,000円(=基準単価(371万2,500円)×定員(33名分)(限度額、千円未満切捨))を交付決定し、その後、高齢福祉課等の職員による完了検査を経て、平成30年4月19日に補助金交付決定額と同額の補助金をAに対して支出している。
 本件補助金は、「補助対象経費の2分の1」などといった定率補助とは異なり、前述のとおり「基準単価×定員」により補助額を決定する定額補助であることから、本件補助金を補助対象経費のうちのいずれに充てるかはAの裁量の範囲内である。
 したがって、Aが補助金交付決定額以上に補助対象となる経費を支出していれば、仮に本件補助金の全額を工事監理費以外の補助対象経費に充てたとしても何ら問題はない。
 実際に本市は、Aが補助金交付決定額以上の工事請負費を工事請負業者に対して支払済みであることを規則第24条第1項に規定されている調査権に基づき通帳等収支の事実を証する書類により確認するとともに、後日Aから提出された補助事業実績報告書により、本件補助金の全額が補助対象経費のうちの工事請負費に充てられていることを確認している。
 よって、本件補助金の支出は適正であり、本市への損害は発生していない。
  (イ) 請求人の主張への反論

  1. 請求人は、本市が事業実績報告の際に添付されるべき本件工事監理費相当分の費用の支払に係る領収証書等の確認をしていないと主張している。
    しかしながら、規則第15条第4項の規定により、「国又は地方公共団体その他市長が定める機関によって財務に関する調査、監査等を定期的に受けている者」は、領収証書等の書類の添付を省略することができることとなっており、本件補助金がこれに該当する社会福祉法人に対するものであることから、領収証書等の収支の事実を証する書類の提出は不要としているものである。
    なお、平成30年7月20日に、規則第24条第1項に規定されている調査権に基づき本件施設への調査を実施し、補助対象経費である工事請負費について、Aが補助金交付決定額以上の金額を工事請負業者に対して支出していることを通帳等収支の事実を証する書類により確認している。
  2. 請求人は、実際には支払が行われていない本件施設に係る工事監理費相当分の補助金をAが不当に受給し、高齢福祉課長はこれらの事実を認識しているにもかかわらず、何ら対応していないと主張している。
    しかしながら、要綱第2条第1項及び別表3においては、対象経費は、「補助事業の施設の整備に必要な工事費又は工事請負費及び工事事務費」としており、「設計監督料」は工事事務費の例示として記載されているにすぎない。また、本件補助金は、「基準単価×定員」により補助額を決定する定額補助であることから、補助対象経費のうちのいずれに補助金を充てるかはAの裁量の範囲内であり、後日Aから提出された補助事業実績報告書により、本件補助金の全額が補助対象経費のうちの工事請負費に充てられていることを確認していることから、補助金の不当な受給については当たらない。
    さらに、職員に指示して平成30年7月20日に規則第24条第1項に規定されている調査権に基づき本件施設への調査を実施し、補助対象経費である工事請負費について、Aが補助金交付決定額以上の金額を工事請負業者に対して支出していることを通帳等収支の事実を証する書類により確認するなど、適切に対応している。
  3. 請求人は、本件工事監理費相当分は本来交付すべきではないものと主張している。
    しかしながら、本件補助金は、「基準単価×定員」により補助額を決定する定額補助であることから、補助対象経費のうちのいずれに補助金を充てるかはAの裁量の範囲内である。
    後日提出のあった補助事業実績報告書によると、本件補助金の全額が補助対象経費のうちの工事請負費に充てられていることから、工事監理費相当分の補助金は存在せず、請求人の主張は失当である。

3 監査対象事項

 平成29年度民間社会福祉施設整備費補助金は、「広島市補助金等交付規則」及び「民間社会福祉施設整備費補助金交付要綱」等に基づき適正に交付されているか。

第4 監査の結果

1 事実関係の確認

 請求人から提出された広島市職員措置請求書及び事実を証する書類、請求人の陳述、広島市長から提出された意見書及び関係書類並びに広島市の関係職員への聞取りにより、次のとおり確認した。

⑴ 民間社会福祉施設整備費の補助制度について

 広島市は、社会福祉法人等の負担軽減を図り、もって社会福祉施設の整備を促進するため、社会福祉法人等がその設置経営する社会福祉施設の整備事業を行う場合、事業者に対する補助制度を設けており、その概要は次のとおりである。

ア 関係法令等

 地方公共団体の社会福祉法人に対する助成等については、「社会福祉法(昭和26年法律第45号)」第58条第1項において、地方公共団体は、必要があると認めるときは、条例で定める手続に従い、社会福祉法人に対し、補助金を支出し、又は通常の条件よりも当該社会福祉法人に有利な条件で、貸付金を支出し、若しくはその他の財産を譲り渡し、若しくは貸し付けることができると規定されている。
 これを受けて、広島市では、「社会福祉法人に対する助成の手続に関する条例(以下「条例」という。)」第2条において、社会福祉法人が助成を受けようとするときの申請書及び添える書類について規定している。また、第3条において、当該条例に定めるもののほか助成の手続に関して必要な事項は市長が定めると規定しており、交付の申請、決定等に関する基本的事項については「広島市補助金等交付規則(以下「規則」という。)」において、具体的な制度内容については「民間社会福祉施設整備費補助金交付要綱(以下「要綱」という。)」において規定している。

イ 制度内容(本件措置請求に係る施設整備の補助制度について規定した要綱第2条第1項及び別表3の内容)

 (ア) 補助対象施設
 「老人福祉法(昭和38年法律第133号)」第15条第4項の規定により設置する特別養護老人ホーム及びこれに併設する同条第2項の規定により設置する老人短期入所施設
 (イ) 補助対象法人
 社会福祉法人
 (ウ) 補助対象事業
 特別養護老人ホーム及びこれに併設する老人短期入所施設を創設(新たに施設を整備することをいう。)及び増改築(既存施設の現在定員を増員するための増築整備、既存施設の現在定員を増員するため既存施設を取り壊して改築整備(移転改築、一部改築を含む。)又は改修(増築整備又は改築整備に付随して行われる躯体工事に及ばない屋内改修工事(壁撤去等))を行うことをいう。)する事業
 (エ) 補助対象経費
 補助事業の施設の整備に必要な工事費又は工事請負費及び工事事務費(工事施工のため直接必要な事務に要する費用であって、旅費、消耗品費、通信運搬費、印刷製本費及び設計監督料等をいい、その額は、工事費又は工事請負費の額の2.6%に相当する額を限度とする。)。
 ただし、次に掲げる費用については補助の対象としないものとする。

  1. 土地の買収又は整地に要する費用
  2. 職員の宿舎、車庫又は倉庫の建設に要する費用
  3. その他施設整備費として適当とは認められない費用

 (オ) 補助額
 対象経費の実支出額の合計額と定員1人当たり基準単価(3,712,500円(ただし、改修に係る部分は1,856,250円)(※1))に補助事業により設置する施設の定員(現在定員を除く。)を乗じて得た額とを比較して少ない方の額と、総事業費から寄付金その他の収入額(社会福祉法人の場合は、寄付金収入額を除く。)を控除した額の合計額とを比較して少ない方の額(※2)
 (※1) 平成29年度補助事業における基準単価
 (※2) 補助金の交付額に1,000円未満の端数を生じたときは、その端数は切り捨てるものとする(要綱第2条第2項)。

⑵ 社会福祉法人Aに対する民間社会福祉施設整備費補助金について
ア 経緯

 社会福祉法人A(以下「A」という。)は、広島市が平成28年3月28日に開始した平成28年度から平成29年度を整備年度とする広域型特別養護老人ホームの整備運営事業者(以下「事業者」という。)の募集に応募し、同年10月3日に開催された社会福祉施設等の施設整備選定委員会において事業者として選定され、さらに同月27日に開催された広島市社会福祉法人設立認可等審査会において選定の承認を得て、事業者として決定されている。
 その後、平成29年2月1日、要綱第3条に基づく民間社会福祉施設整備費補助金(以下「補助金」という。)交付申請に係る広島市との事前協議を行い、同月16日に内定の通知を受けている。

イ 交付申請について

 Aは、条例第2条の規定に基づき、平成29年度における施設整備(創設)に当たり、平成29年6月1日、広島市に補助金の交付を申請しており、交付申請書の内容は次のとおりであった。

  • (ア) 申請者
    社会福祉法人A 理事長 B
  • (イ) 申請額
    122,512,000円
  • (ウ) 施設の種類
    広域型特別養護老人ホーム
  • (エ) 施設の名称
    特別養護老人ホームC
  • (オ) 事業名
    特別養護老人ホーム施設整備(創設)事業
  • (カ) 関係書類
    理由書、事業計画書、収支予算書(抄本)、申請額算出内訳(※)、財産目録、見積書
    (※) 所定の様式における名称は、施設整備申請額内訳書としている。
ウ 交付額の決定・通知について

 特別養護老人ホーム創設の場合における補助金額については、要綱第2条第1項及び別表3において、補助対象経費の実支出額(交付申請時においては支出予定額)の合計額と定員1人当たり基準単価(3,712,500円)に補助事業により設置する施設の定員を乗じて得た額とを比較して少ない方の額と、総事業費から寄付金収入額を除いた収入額を控除した額の合計額とを比較して少ない方の額とすることと規定しており、これに基づき、Aから提出された事業計画書等からそれぞれの額を算定した結果、次のとおりであった。
 (ア) 補助対象経費の支出予定額の合計額

区分 総事業費 左のうち補助対象
経費の支出予定額
工事費 373,194,000円 232,633,655円
工事事務費 設計費 20,412,000円 0円
監理費 3,618,000円 2,297,396円
24,030,000円 2,297,396円
設備整備費(備品) 12,096,000円 0円
合計 409,320,000円 234,931,051円

 (イ) 定員1人当たり基準単価に補助事業により設置する施設の定員を乗じて得た額

区分 施設定員 基準単価(B)
(A×B)
事業計画書記載の定員 左のうち補助対象数(※)(A)
特別養護老人ホーム 30人 30人 3,712,500円 111,375,000円
老人短期入所施設 10人 3人 3,712,500円 11,137,500円
合計 122,512,500円

 (※)「広域型特別養護老人ホーム整備運営事業者募集要領」において、特別養護老人ホームについては入所定員数、老人短期入所施設については利用定員数(特別養護老人ホームの入所定員数の10%以内)としている。

 (ウ) 総事業費から寄付金収入額を除いた収入額を控除した額の合計額

総事業費
(A)
寄付金収入額を
除いた収入額(B)
差引額
(A-B)
409,320,000円 9,450,000円 399,870,000円

 これについて、まず(ア)と(イ)の額を比較すると(イ)の方が少ない額であり、次に(イ)と(ウ)の額を比較すると(イ)の方が少ない額であることから、広島市は、(イ)の額から1,000円未満の端数を切り捨てた122,512,000円を補助限度額として交付することを決定し、交付の条件を付した上で、規則第7条第1項の規定に基づき、平成29年6月9日付け広島市指令高高第111号によりAに通知している。

エ 着手届について

 要綱第6条において、補助事業を行う者には、事業に着手した日から1週間以内に所定の着手届を提出させることと規定しており、これに基づき、Aから広島市に工事着工報告書及び添付書類として工事請負契約書等の写しが提出されている。
 工事請負契約書及び建築設計・監理業務委託契約書の主な内容は、次のとおりである。
 (ア) 工事請負契約書(発注者、請負者及び監理者による三者契約)

  1. 契約締結日 平成29年6月14日
  2. 発注者 社会福祉法人A
  3. 請負者 D社
  4. 監理者 E社
  5. 工期 着手 平成29年6月14日
    完成 平成29年12月31日予定
  6. 請負代金 373,140,000円
  7. 引渡時期 平成30年1月31日

 (イ) 建築設計・監理業務委託契約書

  1. 契約締結日 平成29年6月14日
  2. 委託者 社会福祉法人A
  3. 受託者 E社
  4. 実施期間 (監理業務)平成29年6月14日~同年12月31日
  5. 業務報酬額 24,030,000円(基本・実施設計業務及び監理業務の合計額)
オ 完了検査について

 要綱第5条第2号において、補助事業は、予定の期間内に完了させ、指定期日までに市長が指定する職員の完了検査を受けることと規定しており、これに基づき、広島市は、平成30年2月1日、現地施設において、Aのほか工事請負者及び建築設計・監理業務受託者の立ち会いの下で、施設整備に係る完了検査を実施している。
 その結果、建築基準法及び消防法上の検査済証を受けており、計画どおりの規模・施設配置で完了していることや、構造体・内部仕上げ・諸設備とも建築主であるAと協議し施工されており、品質管理が適切に行われていることなどを確認している。また、工事の関係書類についても、工事契約書等の必要書類が整備されており、監理の状況についても、検査、打合せ、承認等の状況が記録され、Aへの報告も随時なされていることなどを確認している。

カ 実績報告書について

 規則第15条第1項において、補助事業者等は、当該補助事業等が完了したときは、その完了の日から40日以内に補助事業等実績報告書(以下「実績報告書」という。)に次に掲げる書類を添えて市長に提出しなければならないと規定している。
 (ア) 事業実施報告書
 (イ) 決算書
 (ウ) 領収証書その他の収支の事実を証する書類又はその写し(市長が必要と認めるものに限る。)
 (エ) その他市長が必要と認める書類
 また、補助金交付決定に係る通知である平成29年6月9日付け広島市指令高高第111号における2交付の条件⑼において、補助事業が完了したときは、その完了の日から40日以内、又は平成30年3月31日のいずれか早い日までにその事業実績について、事業実績報告書、決算書及び精算額内訳書(所定の様式における名称は施設整備精算額内訳書としている。)を添えて文書で市長に報告しなければならないとしている。
 これらに基づき、Aは、平成30年3月30日、広島市に実績報告書及び所定の添付書類を提出しており、当該報告書における総事業費及び実支出額は、次のとおりであった。

区分 総事業費 実支出額
工事費 373,140,000円 373,140,000円
工事事務費 設計費 20,412,000円 20,412,000円
監理費 3,618,000円 3,618,000円
24,030,000円 24,030,000円
設備整備費(備品) 12,150,000円 12,150,000円
合計 409,320,000円 409,320,000円
キ 交付額の確定 通知 交付について

 規則第16条において、市長は、実績報告書の提出を受けた場合において、当該書類の審査及び必要に応じて行う現地調査等により、当該提出に係る補助事業等の実績が補助金等の交付の決定の内容及びこれに付した条件に適合すると認めるときは、交付すべき補助金額等を確定し、当該補助事業者等に通知するものとすると規定しており、これに基づき、広島市は、Aから提出された実績報告書の審査を行い、補助金交付額を確定している。
 なお、規則第15条第1項各号に規定する添付書類のうち、第3号の「領収証書その他の収支の事実を証する書類又はその写し(市長が必要と認めるものに限る。)(以下「領収証書等」という。)」については、同条第4項において、補助事業者等のうち国又は地方公共団体その他市長が定める機関によって財務に関する調査、監査等を定期的に受けている者は、添付を省略することができると規定している。本件補助事業者であるAは、社会福祉法人として社会福祉法第56条に基づき広島市健康福祉局監査指導室による定期的な監査を受けることから、これに該当するため、領収証書等の添付を省略しており、よって広島市は領収証書等の確認を行っていない。
 補助金交付確定額については、実績報告書に基づき、要綱第2条第1項及び別表第3に規定する算定方法によりそれぞれの金額を算定した結果、次のとおりであった。
 (ア) 補助対象経費の実支出額の合計額

区分 総事業費 左のうち補助対象
経費の実支出額
工事費 373,140,000円 234,645,815円
工事事務費 設計費 20,412,000円 0円
監理費 3,618,000円 2,326,010円
24,030,000円 2,326,010円
設備整備費(備品) 12,150,000円 0円
合計 409,320,000円 236,971,825円

 (イ) 定員1人当たり基準単価に補助事業により設置する施設の定員を乗じて得た額

区分 施設定員 基準単価(B)
(A×B)
事業計画書
記載の定員
左のうち補助対象数(※)(A)
特別養護老人ホーム 30人 30人 3,712,500円 111,375,000円
老人短期入所施設 10人 3人 3,712,500円 11,137,500円
合計 122,512,500円

 (※)「広域型特別養護老人ホーム整備運営事業者募集要領」において、特別養護老人ホームについては入所定員数、老人短期入所施設については利用定員数(特別養護老人ホームの入所定員数の10%以内)としている。

 (ウ) 総事業費から寄付金収入額を除いた収入額を控除した額の合計額

総事業費
(A)
寄付金収入額を
除いた収入額(B)
差引額
(A-B)
409,320,000円 9,450,000円 399,870,000円

 これについて、補助金交付額の決定時と同様に、まず(ア)と(イ)の額を比較すると(イ)の方が少ない額であり、次に(イ)と(ウ)の額を比較すると(イ)の方が少ない額であることから、広島市は、(イ)の額から1,000円未満の端数を切り捨てた122,512,000円を補助金交付額として確定し、平成30年3月30日付け広島市指令高高第280号によりAに通知しており、同年4月6日にAから補助金交付請求書の提出を受けて、同月19日に交付している。

ク 立入検査について

 広島市は、補助金交付後、本件の建築設計・監理業務受託者から建築設計・監理業務委託契約の業務報酬の一部がAから支払われていないとする申出を受けたため、Aから事情を聴取したところ、追加の工事費用をめぐる理由により業務報酬の一部を支払っていないとのことであった。
 このため、広島市は、工事費及び工事事務費の支払状況を直接確認するため、平成30年7月20日、規則第24条第1項に基づき、Aに対する立入検査を実施し、振込依頼書や預金通帳等収支の事実を証する書類を調査した。
 その結果、工事費については、工事請負契約額の全額373,140,000円の工事請負者への支払が証拠書類により確認された。
 一方、工事事務費については、証拠書類により建築設計・監理業務委託契約額24,030,000円のうち15,390,000円が受託者に支払われており、残る8,640,000円は未払いとなっていることを確認したが、設計費と監理費の内訳は書類上記載されていなかったため、補助対象経費である監理費の支出状況については確認できなかった。

区分 契約額(A)+(B)  
支払済額(A) 未払額(B)
工事費 373,140,000円 373,140,000円 0円
工事事務費 設計費 20,412,000円 15,390,000円
(※)
8,640,000円
(※)
監理費 3,618,000円
24,030,000円 15,390,000円 8,640,000円
合計 397,170,000円 388,530,000円 8,640,000円

 (※)設計費と監理費の内訳は不明である。

 なお、調査の結果、Aには工事事務費の一部において未払額があることで、広島市に提出した実績報告書の工事事務費の内容と相違していることが判明したため、そのことをAに伝えている。

ケ 実績報告書の修正について

 Aは、広島市の立入検査後、実績報告書を修正し、支出状況が不明な監理費を補助対象経費から外した内容の実績報告書を平成30年8月13日付けで広島市に提出している。
 これについて、当該修正後の金額により、改めて要綱第2条第1項及び別表3に基づき比較した結果、次のとおり、基準単価に施設定員を乗じて得た額が最も少ない額であることから、当該修正に伴う補助金交付確定額の変更は必要ないことを確認した。

区分 総事業費 左のうち補助対象経費の実支出額 補助金交付確定額
(基準単価×施設定員)
総事業費から寄付金収入額を除いた収入額を控除した額の合計額
工事費 373,140,000円 234,645,815円    
工事事務費 設計費 20,412,000円 0円
監理費 3,618,000円 0円
24,030,000円 0円
設備整備費(備品) 12,150,000円 0円
合計 409,320,000円 234,645,815円 122,512,000円 399,870,000円

 なお、規則第18条第1項には補助事業者等の事業遂行義務違反等に対する補助金等の交付決定の取消しができる場合として、⑴補助金等の交付の決定の内容又はこれに付した条件その他この規則又はこれに基づく市長の処分に違反したとき、⑵決算総額が予算総額に比して著しく相違し、予算の執行が不適当と認められるとき、⑶補助金等の交付の対象となった使途に用いた経費の合計決算額が当該経費に係る合計予算額に比し著しく減少したとき、⑷補助金等の額に比し過大な剰余金が生じたとき、⑸事業遂行の見込みがないときが掲げられているが、補助金交付の目的は達成されており、補助金の交付決定の取消事由には該当しないことから、補助金の一部取消は行っていない。

2 判断

 請求人は、Aに対する平成29年度民間社会福祉施設整備費補助金の交付において、広島市が、Aからの交付申請書における工事監理費を補助対象経費として含んだ事業費に基づき補助金を交付することを決定したが、Aは工事監理業務を行った者に対して工事監理費を支払っていないにもかかわらず、これを支出したとする実績報告書を提出し、広島市はこれに基づき補助金額を確定し交付したため、工事監理費相当額に対する補助金が過払いとなっており、広島市は損害を被っているので、Aに対し過払分の補助金の返還請求をすべきであると主張しているものと認められることから、以下検討する。
 広島市は、平成30年3月30日にAから提出された実績報告書に記載された支出済事業費の内訳金額に基づき補助交付額を122,512,000円に確定し交付したことが認められる。
 その後、建築設計・監理業務受託者から広島市に対し工事監理費が未払いであるとの申出があったため、広島市がAに対して立入検査を行ったところ、工事監理費等が支払われていないことが確認された。その際、広島市がその他の費用の実支出額について確認したところによれば、補助対象経費の実支出額の合計額は234,645,815円、定員1人当たり基準単価に補助事業により設置する施設の定員を乗じて得た額は122,512,500円、総事業費から寄付金収入額を除いた収入額を控除した額の合計額は399,870,000円であり、補助金の交付確定額は、このうち最少額である122,512,500円から1,000円未満の端数を切り捨てた122,512,000円となるべきであるところ、この額は前述の決定額と同額であるため、補助金の過払いは生じておらず、広島市が損害を被っているとの主張には理由がない。
 なお、Aが実績報告書に支払債務総額を実支出済額と記載をした点について、規則第18条第1項には補助金等の交付決定の全部又は一部取消しができる場合が規定されており、その適用の要否について検討したところ、本件補助金については、補助対象事業である施設整備が事業計画どおり完了していることが完了検査において確認され、その目的が達成されているとともに、補助対象経費が補助交付額を大きく上回っていることから、同項に規定するいずれの取消事由にも該当せず、補助金の交付決定の取消しをすべき場合には当たらない。
 また、請求人は、広島市が補助金交付額の確定・交付に当たり領収証書等を確認していない点についての違法性を主張しているが、規則第15条第4項によれば、社会福祉法人であるAは領収書等の添付を省略することができるとされているところであり、請求人が主張している違法性は認められない。

3 結論

 以上のとおり、本件措置請求については、請求人の主張に理由がないことから、これを棄却する。

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