市長コラム 忙中有閑/第46回

広島市長 松井一實
市長コラム 忙中有閑(ぼうちゅうゆうかん)
対話による信頼関係の醸成に取り組んでいく
日ごとに暑さが増してきました。日々強くなる日差しに、平和への祈りを捧げる被爆地広島の夏の訪れを感じます。
来月、広島は被爆から80回目の8月6日を迎えます。本市では、毎年、8月6日に広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式を開催し、原爆死没者を慰霊するとともに、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けた「ヒロシマの心」を発信しています。「ヒロシマの心」とは、被爆者が過去の悲しみに耐え、憎しみを乗り越えて紡ぎ出した、「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」という、全人類の共存と繁栄を願うものです。「ヒロシマの心」は、平和な世界を築くための世界共通の普遍的な願いであり、本市としてもこの願いを世界中に広めたいと考えています。
そこで、今年の式典では、各国等代表への参列要請の方法を、駐日大使などの相手方を指定して招待状を送る方法から、式典の原点に立ち返り、全ての国・地域に案内状を送る方法に改めました。案内状には、式典への参列は、「ヒロシマの心」への理解を深めるためのものであることを明確に示しており、各国等には、そうした目的を十分理解し受け止めた上で参列いただくことにしています。
世界では、軍事力の強化は戦争を仕掛ける動機付けをさせないために有効であるという考えが為政者の中で勢いを増しています。一方で昨年度、日本原水爆被害者団体協議会がノーベル平和賞を受賞し、核兵器のない真に平和な世界の実現を望む声が、改めて広く世界に届くきっかけとなったと考えています。この声こそ、為政者に届いてほしいと思います。核兵器廃絶という道は険しいと言わざるを得ませんが、今後も相手との対話により信頼関係を醸成し、平和への思いや願いを共有するための取り組みを積み重ねていくことこそが今求められている現実的な対応であると考えています。
被爆80周年の今年、式典を通じて、核兵器のない平和な世界の実現に向け、共に行動してくださることを願っています。