特集/建物が伝える被爆の記憶、復興の軌跡

被爆建物の一つである旧日本銀行広島支店(旧日銀)。あの日を耐えた建物は、被爆の実相や広島の戦後復興を支えた史実を伝えてくれます。
◆問い合わせ先:文化振興課(電話504-2500、ファクス504-2066)
かつての銀行は平和を思う場に
旧日銀は、20年前から市の重要有形文化財として一般公開されており、内部を見学できます。
1階には当時の受付があり、銀行としての面影がしっかりと残っています。
2階は資料室として旧日銀の被爆前の写真や図面、被爆時の状況の分かるパネルの展示。また、市が所蔵する昭和30年頃からの市内の復興の様子を写真で紹介しています。
市民や団体向けに建物内の一部をレンタルスペースとして提供しています。市民主体の写真・絵画の展示やワークショップなどが催され、恒久平和の実現を目指した芸術・文化活動の発表の場は、文化財という落ち着いた空間の中、国内外の多くの人を啓発し、魅了しています。
同時に見学者は、原爆により大きな被害を受けた建物内で改めて平和への思いを深めるのです。
爆心地から近距離で被爆
昭和20年8月6日、旧日銀は、爆心地から380メートルの距離で被爆しました。爆風により、窓枠やシャッター、欄干などは全て吹き飛ばされましたが、堅固な構造により建物本体の崩壊は免れました。
建物内部は、窓ガラスなどの破片が散乱し、机や戸棚などの家具はほとんどが破損。特に3階はよろい戸を開けていたため全焼し、職員20人が亡くなりました。
地下室へつながるエレベーターの昇降路には、爆風が吹き込み、金庫前の廊下入り口の鉄格子が吹き飛ばされましたが、金庫や倉庫は無事でした。

被爆直後の旧日本銀行広島支店
撮影:川本俊雄 提供:川本祥雄
被爆した2日後に営業再開
甚大な被害を受けたにもかかわらず、旧日銀は原爆が投下された2日後の8月8日には営業を再開。建物内の窓口を民間銀行などに間貸ししました。8日の朝から10行余りの銀行などが顧客に対応。預金の払い出しに必要な資金は旧日銀が民間銀行などに貸し付けることで、払出業務を行うことができました。
爆風で天窓が破損していたため、晴れた日は青空がのぞき、雨の日は傘を差して業務が行われました。

撮影:米国戦略爆撃調査団
所蔵:米国国立公文書館
混乱の中で生まれた信頼の物語
預金者の多くは、被爆により預金通帳や印鑑を失い、引き出しのための本人確認に必要な書類などが出せない状態でした。そんな状態でも、銀行は預金者の申告額を信頼し、払い出しに応じました。この期間に預金者からの不正な引き出しはほとんどなかったと伝えられています。
現金の供給・流通の早期回復が経済活動の再開の一助となり、まちは長い復興の道のりの第一歩を踏み出しました。
建築物としての旧日銀
旧日銀の建物は、広島の昭和初期を代表する建物で、設計は建築家・長野宇平治(ながのうへいじ)によるものです。
1階は、天井まで吹き抜けになっており、受付窓口を挟んで、客溜(きゃくだま)りと一般事務室が連なっています(上メイン写真)。窓口の大理石の天板などには被爆の影響で至る所にひび割れがあります。
2階の支店長室では、寄せ木張りの床や豪華な暖炉風装飾など当時の内装を見ることができます。壁の腰板には爆風で飛ばされた窓ガラスの破片が刺さった跡が残っています。



シンプルながらも風格ある西欧様式の外観

1階窓口の柱の台座。被爆の影響で角が欠損


暖炉風の装飾や寄せ木張りの床。当時の建築技術が垣間見える

支店長室腰板に残る傷。ガラス片が残っている部分も

爆風の中、無傷で残った金庫の内部。金庫は平成4年まで実際に使用

地下の鉄格子の蝶番(ちょうつがい)。爆風で吹き飛ばされた際に欠損
平和の尊さを感じてほしい

旧日銀地下展示 村上学芸員
被爆80周年という節目を迎える今年。より多くの人に、旧日銀を見学して、その歴史を知ってもらい、今ある平和の尊さを改めて感じてもらいたいと思います。
今後旧日銀で開催される催し
催し名 | 日時 |
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pique-nique | 7月17日木曜日 午前11時~午後4時 |
ヒロシマ平和ポスター展 | 7月18日金曜日~24日木曜日 午前10時~午後7時 (初日は午後1時から、最終日は午後5時まで) |
「平和のためのダイアログ・イン・ザ・ダーク」 -もうひとつの広島- (ピース・イン・ザ・ダーク) |
8月2日土曜日~11日祝日 午前11時~午後6時半(各回90分) |
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暗闇の中で平和を考える
ピース・イン・ザ・ダーク
詳しくは市ホームページで
市ホームページ平和関連行事
被爆80年のこの夏、各施設などでさまざまな催しがあります。右記のほかにも、7月下旬~8月に開催されるものを市ホームページで紹介しています。
市ホームページ特別企画展「被爆樹木」
被爆の実相や思いを今に伝える「被爆樹木」。現状や樹勢回復事業、被爆樹木を題材にした研究・創作などの活動について紹介します。
◆日時:7月19日土曜日~10月13日祝日
◆会場:植物公園
講演会「被爆樹木を未来につなぐ」
◆日時:7月20日日曜日午後1時半~3時半
◆会場:植物公園
◆内容:テーマ「被爆80周年と100周年を見据えて、未来への思い」
◆講師:樹木医・堀口力(ほりぐち ちから)氏
◆申し込み方法:当日会場で。先着100人程度
◆問い合わせ先:電話922-3600、ファクス923-6100

被爆樹木 ユーカリ(広島城二の丸跡)
詳しくは同園ホームページで
ホームページ広島ゆかりのアニメーション
広島とアニメーションとの関わりを再発見して広島の文化の一つとして捉え直す機会となるよう、漫画家・中沢啓治(なかざわ けいじ)氏原作の被爆を語り継ぐ、広島ゆかりのアニメーション2作品を上映します。
7月 ①25日金曜日 黒い雨にうたれて
②26日土曜日 クロがいた夏
【上映時間】10:30、14:00、18:00から
◆会場:映像文化ライブラリー
◆内容:①原爆投下から30年後の被爆者たちを描く、②こどもたちと子猫の姿を通して平和への願いを込めたアニメーション
◆料金など:26歳以上510円、シニア(65歳以上)250円、25歳以下は無料
◆問い合わせ先:電話223-3525、ファクス228-0312

クロがいた夏
詳しくは同施設ホームページで
ホームページ8月6日は「平和記念日」
市は、人類史上最初の原子爆弾が投下された8月6日を、世界平和樹立への礎として永久に忘れてはならない日とし、原爆による死没者を追悼し、世界恒久平和の実現を祈念するため、この日を平和記念日と定めています。