本文
広島市監査公表第29号
令和元年9月6日
広島市監査委員 谷本 睦志
同 井戸 陽子
同 碓氷 芳雄
同 豊島 岩白
地方自治法第252条の38第6項の規定により、広島市長から監査の結果に基づき措置を講じた旨の通知があったので、当該通知に係る事項を別紙のとおり公表する。
なお、併せて通知のあった監査の意見に対する対応結果についても、当該通知に係る事項を公表する。
(別紙)
1 監査結果及び監査意見公表年月日
平成29年2月3日(広島市監査公表第2号)
2 包括外部監査人
福田 浩
3 監査結果に基づいて講じた措置及び監査意見に対する対応結果通知年月日
令和元年9月2日(広産産第29号)
4 監査のテーマ
産業の創造と振興、中小企業の活性化と商店街の振興等に係る事務の執行について
5 監査の結果(指摘事項)及び措置の内容並びに監査の意見及び対応の内容
【監査の結果】
広島市中小企業協同組合融資制度及び広島市中小企業協同組合に対する損失補償制度
(1) 損失補償後の債権の保全と取立について
(所管課:経済観光局産業振興部産業立地推進課)
監査の結果 |
措置の内容 |
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広島市中小企業協同組合に対する損失補償制度要綱は、広島市は、広島市中小企業協同組合融資制度に基づき、広島市中小企業協同組合が、その組合員である中小企業者に貸し付けたことによって生じた損失の補償に充てるため、同協同組合と損失補償契約を締結すると定め(要綱第2項柱書)、広島市中小企業協同組合との間の損失補償契約書は、広島市は、同協同組合が、広島市中小企業協同組合融資制度に基づいて、その組合員である中小企業者に貸し付けたことによって損失を受けたときは、同協同組合に対してその損失を補償することを定めるとともに(契約書第1条第1項)、同協同組合は、広島市から損失補償を受けた後においても、善良な管理者の注意をもって、その貸付に係る債権を保全し、かつ、その取立に必要な措置を講ずるものと定めているところ(広島市中小企業協同組合に対する損失補償制度要綱第5項ア、広島市中小企業協同組合との間の損失補償契約書第6条)、広島市中小企業協同組合においては、訴えの提起などの法的手続をとっていない、連帯保証人に対する取立を行っていないなど、その保全及び取立が十分に行われておらず、また、同協同組合が保全し、かつ、その取立に必要な措置を講じなければならない債権は、平成23年度末には、合計159件、総額約4億8,153万円であったものが、平成27年度末には、合計169件、総額約5億4,234万円へと増加の一途をたどっていた。 |
監査の結果を受けて、本市と広島市中小企業協同組合(以下「市中協」という。)との間の損失補償契約(以下「補償契約」という。)の内容及び履行状況を本市及び市中協において再確認した結果、市中協による債権の保全及び取立てが不十分であることが認められたため、市中協において、他の金融機関や広島県信用保証協会における債権の管理方法を参考に「債権管理マニュアル」を作成した。その後、市中協に聴き取りを行い、作成したマニュアルに沿って適正に債権管理が行われていることを確認した。 |
【監査の意見】
広島市中小企業融資制度及び広島県信用保証協会に対する損失補償制度
(1) 取扱金融機関に対して拠出する預託金について
(所管課:経済観光局産業振興部産業立地推進課)
監査の意見 |
対応の内容 |
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広島市中小企業融資制度要綱は、広島市は、同要綱に定める融資の取扱金融機関に対し、同要綱に定める融資のための資金を預託し、取扱金融機関は、同要綱に定める融資を行う場合は、預託金の額に市が指示する倍率を乗じた額以上の額を融資するものと定め(要綱第1章第6項)、広島市中小企業融資制度要綱に基づく融資資金の預託及び融資に関する覚書は、広島市は、各取扱金融機関に対し、無利子の預託金を拠出することを定めている(覚書第1条)。平成27年度においては、平成27年1月末時点の融資残高を基準とし、各取扱金融機関別制度別に運用率及び協調倍率で除した必要預託額を算出し、同年4月1日、各取扱金融機関に対し無利子の預託金を拠出し、平成28年3月31日、この預託金の返還を受けているが、その金額は総額約157億円であった。 |
広島市中小企業融資制度における金融機関に対する預託金は、中小企業者にとって資金面でのセーフティネットの役割を担っており、リーマンショックのような経済危機が起きた際の緊急的な資金需要に的確に対応するため、必要な予算措置を講じているところである。 |
広島市中小企業融資制度及び広島県信用保証協会に対する損失補償制度
(2) 広島県信用保証協会に対する損失補償制度について
(所管課:経済観光局産業振興部産業立地推進課)
監査の意見 |
対応の内容 |
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広島市は、広島県信用保証協会に対する損失補償制度要綱に基づき、広島県信用保証協会に対し、同保証協会が同要綱に定める債務の保証につき保証債務を履行したときは損失を補償しているが、預託金方式の制度融資を実施している広島県内の17の自治体(広島県を含む。)のうち、広島県信用保証協会に対する損失補償制度を有しているのは広島市を含む11団体であり、同制度を有していないのは6団体であることを踏まえ、広島市も損失補償制度を設けなくてもよいのではないかなどといった疑念を抱かれないよう、同保証協会の業務の運営状況を監査し、同損失補償制度の具体的な事業成果を調査し、これを検証して、より効率的な制度に見直されたい。 |
広島県信用保証協会への損失補償は、経営基盤や信用力が脆弱な中小企業が保証協会の保証承諾を得る上での後押しとなり、金融機関の融資への積極性が期待できると考えている。 |
広島市中小企業協同組合融資制度及び広島市中小企業協同組合に対する損失補償制度
(1) 融資条件について
(所管課:経済観光局産業振興部産業立地推進課)
監査の意見 |
対応の内容 |
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広島市中小企業協同組合融資制度要綱は、広島市中小企業協同組合がその組合員に対してする融資の条件として、融資利率については、年2.1%以下と定め、融資形式については、証書貸付、手形貸付、手形割引、電子記録債権貸付及び電子記録債権割引を取り扱うものと定め(要綱第5項)、広島市、株式会社商工組合中央金庫広島支店及び広島市中小企業協同組合の間で取り交わした、広島市中小企業協同組合融資制度に基づく融資資金の預託及び融資についての覚書において、広島市中小企業協同組合は上記の融資条件で融資を行うこととしているところ(覚書第3条、第5条)、広島市中小企業協同組合作成に係るリーフレット類には、融資形式について、「手形貸付(信用貸付短期・長期貸付)・手形割引」、「手形による融資方式です(証書方式ではありません)」と記載があり、これらの記載の融資条件で組合員に対する貸付が行われていた。 |
広島市中小企業協同組合(以下「市中協」という。)の融資制度は、本市が商工組合中央金庫(以下「商工中金」という。)に預託した資金を基に市中協が商工中金から融資を受け、組合員に対する融資資金を調達するものであるため、証書貸付を行うには、商工中金の同意が必要である。 |
広島市中小企業協同組合融資制度及び広島市中小企業協同組合に対する損失補償制度
(2) 広島市中小企業協同組合に対する損失補償制度について
(所管課:経済観光局産業振興部産業立地推進課)
監査の意見 |
対応の内容 |
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広島市は、広島市中小企業協同組合に対する損失補償制度要綱、広島市中小企業協同組合との間の損失補償契約書に基づいて、広島市中小企業協同組合に対し、同協同組合が同要綱に基づいて組合員に貸し付けたことによって生じた損失を補償しているところ、この補償金の額は損失の100分の96に相当する額とする点について、同協同組合に、回収コストをかけて、貸付債権を保全し、その取立をする動機を生じさせることの支障となっていること、税金その他の貴重な財源が、同協同組合における与信の審査が緩やかになることによって生じる損失の代償となっているのではないかとの疑問も否定できないことを踏まえ、損失補償の割合は高すぎるのではないかなどといった疑念を抱かれないよう、議会と市民に対し、補償金の額は損失の100分の96に相当する額とする合理的理由を分かりやすく説明された上で、広島市中小企業協同組合に対する損失補償制度を実施されたい。 |
広島市中小企業協同組合(以下「市中協」という。)に対する損失補償の割合を100分の96とする理由は、市中協が公的な保証がなくても積極的に融資を行うことができるよう、本市がほとんどの損失を補償することで、広島県信用保証協会の保証付借入れが困難な零細企業を支援するためである。 |