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清掃作業の指導監督業務に従事する職員への特殊勤務手当支給の是正について

ページ番号:0000359000 更新日:2023年11月10日更新 印刷ページ表示

広島市監査公表第32号

                                 令和5年11月8日

 令和5年9月13日付け第834号で受け付けた広島市職員に関する措置請求について、その監査結果を地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第5項の規定により、別紙のとおり公表する。

広島市監査委員 古川 智之

同       井戸 陽子

同       山本 昌宏

同       平野 太祐

別紙

広 監 第148号

令和5年11月8日

請求人

(略)

広島市監査委員 古川 智之

同       井戸 陽子

同       山本 昌宏

同       平野 太祐

   広島市職員に関する措置請求に係る監査結果について(通知)

 令和5年9月13日付け第834号で受け付けた広島市職員に関する措置請求(以下「本件措置請求」という。)について、地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第5項の規定により監査を行ったので、その結果を同項の規定により次のとおり通知する。

 

第1 請求の要旨

 請求書の記載内容から、請求の要旨は次のとおりと整理できる。

 清掃作業の指導監督業務に従事する職員への特殊勤務手当支給の是正に関する措置請求

(1) 監査請求の概要

 清掃指導員に対する特殊勤務手当の支給実態は以下の通りである。

〇「廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当」として、環境局に勤務する職員の行う清掃作業の指導監督業務に月額5,500円を支給する。

〇「清掃作業等に従事する職員の特殊勤務手当」として、(1)ごみ及びがれきの収集、(2)ごみの焼却処分、(3)ごみ及びがれきの埋立処分、(4)し尿の収集、(5)し尿浄化槽の維持管理、の5分野に関する「指導業務」に、1日に7時間45分以上従事したときに、日額1,310円を支給する。

 清掃指導員には、出勤したすべての月に対して月額5,500円(16日以上出勤の場合)、出勤する日ごとに1,310円の支給によって、ひと月に20日勤務した場合、月額5,500円+日額1,310円×20日=31,700円支給されている。

 広島市では、「職員の特殊勤務手当に関する条例」(以下、「条例」という。)及び「職員の特殊勤務手当の支給に関する規則」(以下、「規則」という。)を根拠として、上記の通り、「清掃指導員」という職名のすべての職員に、「廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当」と「清掃作業等に従事する職員の特殊勤務手当」の2種類の手当が支給(併給)されている。

 しかし、この支給は、「条例」及び「規則」に反するものであり、違法又は不当である。

 特殊勤務手当は、「一般職の職員の給与に関する条例」第12条の規定「著しく危険、不快、不健康又は困難な勤務その他の著しく特殊な勤務で、給与上特別の考慮を必要とし、かつ、その特殊性を給料で考慮することが適当でないと認められるものに従事する職員には、その勤務の特殊性に応じて特殊勤務手当を支給する。」が支給根拠となっている。

 つまり、支給の大前提は、「著しく危険、不快、不健康又は困難な勤務その他の著しく特殊な勤務」である。

 そうすると、「清掃指導員」の仕事が「著しく危険、不快、不健康又は困難な勤務その他の著しく特殊な勤務」である場合にのみ支給可能であるから、その支給理由を調べたところ、過去に行われた住民監査請求「清掃作業の指導監督業務に係る特殊勤務手当支給について」の結果公表(令和4年7月7日付け広島市監査公表第29号)に、広島市長の見解として以下の記述があった。

〇月額の「廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当」は継続して対象業務を行う点に着目し、その職に対して支給することとしている一方、日額の「清掃作業等に従事する職員の特殊勤務手当」は業務内容に着目し、対象業務に従事した場合に支給することとしており、それぞれ手当の性質を異にしたものとなっている。

〇請求人は職務分担表に記載している単位業務のごく一部のみが清掃作業の指導監督業務にあたるとしているが、清掃指導員に割り振っている単位業務は、それぞれの業務が相互に関連し合って、前述した清掃指導員による指導監督業務となるものである。

 このような見解を受けて、「監査の結果」の章には、広島市の運用状況が以下の通り記述されている。

 清掃作業の指導監督業務は、市民へのごみの分別や出し方に係る指導、事業者へのごみの排出指導、家庭ごみの収集運搬に係る指示等に係る業務であるとされるが、その際、個々具体の単位業務のみにとどまらず、指導監督の場所や方法を問わず、その準備や整理も含め、それぞれが相互に関連し合って一連の指導監督業務を成していると理解され、運用されている。

 広島市では、「指導監督業務」について、「指導監督」という具体的な行為にとどまらず、例えば、ごみステーションにごみの取り残しがないことを確認に現地に行くとか、手書きで記載されている数値を他の様式の書類に転記するとか、車の点検・洗車を行うとか、車検のために整備工場に運ぶといった作業も指導監督に付随する行為と位置付け運用している。

 その結果として、特殊勤務手当の支給権者である環境局の環境事業所や焼却工場等の所属長が、「清掃指導員」が1日に行っている全ての行為を「指導監督業務」に認定して手当を支給しているが、これは、条例・規則の解釈を誤ったための支給である。

 最高裁まで争われ平成21年9月28日に確定した通称奈良市職員特殊勤務手当返還事件は以下の通りの判決であった。

 「違法手当金返還命令等請求事件(通称奈良市職員特殊勤務手当返還)(平成18(行ウ)第3号。平成20年3月19日奈良地裁判決→奈良市控訴→平成20年(行コ)第76号。平成21年5月21日大阪高裁判決→奈良市上告→平成21年9月28日最高裁上告棄却。大阪高裁判決確定)」においては、特殊勤務手当の支給が違法であったとして、奈良市に対し、当時の奈良市長らに約3100万円の損害賠償請求をすることを命ずる判決が確定した。

 このときの支給について、「大型ごみ収集手当の適用範囲は「大型ごみ収集の作業をしたもの」とされているが、実際には収集業務に付随する電話受付業務、収集経路作成業務に携わった職員に対しても支給されていた。」として違法支出とされている。

 これを、本市の「指導監督業務」に当てはめると、「指導監督業務」は「指導監督」を行う業務であり、現地の確認とかデータの転記とか車の点検・洗車、車検対応といった「指導監督」とかけ離れた業務は「指導監督業務」にはあたらないという解釈になる。

 ここで例示した最高裁の判決からは、「個々具体の単位業務のみにとどまらず、指導監督の場所や方法を問わず、その準備や整理も含め、それぞれが相互に関連し合って一連の指導監督業務を成していると理解され、運用されている。」という運用は条例の解釈を誤っていて違法であり、実際に「指導監督」を行う業務に限って支給すべきである。

 つまり、「清掃作業等に従事する職員の特殊勤務手当」は「指導業務」に、1日に7時間45分以上従事したときに支給するのであるから、他の付随する業務等に従事していて、「指導業務」に従事している時間数が1日に7時間45分に満たない日には支給してはならない。

 また、広島市長の見解には「月額の「廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当」は継続して対象業務を行う点に着目し、その職に対して支給することとしている」とあるが、これも看過できない。

 広島市職員は、あらゆる職種で、継続して対象業務を行っており、それは「清掃指導員」に限ったことではない。例えば市税の賦課・徴収事務に従事する職員は継続してその対象業務を行っており、看護師は継続して看護師の業務を行っている。

 この市長見解は、条例・規則の解釈を根本から誤っているので、その支給は理由なき支給となっている。

 実際には、著しい特殊性を有する「指導監督業務」に対して特殊勤務手当を支給するという条例・規則であるにも関わらず、「清掃指導員」という職名の職員すべてに一律に支給しているという実態があり、このことは違法・不当な財務会計処理にあたる。

 以上の通り、現在の支給が、条例・規則に反した支給となっていることから、監査の実施を求めて監査請求する。

 なお、全政令指定都市をインターネット等で調べたところ、広島市以外の都市では、清掃作業の指導監督業務に対する特殊勤務手当は設けられていなかった。また、広島市と同じ名称の「清掃指導員服務規程」のある長崎市に確認したところ、清掃指導員の業務は特殊な業務ではなく特殊勤務手当の支給はないとのことであった。

 総務省は、平成21年度に総務事務次官名で通達「地方公務員の給与改定に関する取扱い等について」を発出しており、そこには、「近年、一部の地方公共団体において、特殊勤務手当、通勤手当など諸手当の支給に当たって、不適正な運用等が住民の厳しい批判を受けているところである。諸手当の在り方については、「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針の策定について」(平成17年3月29日付け総行整第11号)及び「地方公共団体における行政改革の更なる推進のための指針の策定について」(平成18年8月31日付け総行整第24号)を踏まえ、一般行政職のみならず職種全般について点検し、制度の趣旨に合致しないものや不適正な支給方法については、早急に是正すること」と記されている。

 他都市では、このような通達等によってすでに見直しが行われ是正されてきているが、広島市ではいまだ十分な是正が行われていない。

(2) 請求の対象となる職員

 広島市長及び特殊勤務手当支給に関わる職員

(3) 損害の推定

 1年間でおよそ3800万円

(4) 請求する措置

 違法に支給した特殊勤務手当を返還すること。

 

(事実を証する事実証明書として次の書類が提出されているが、添付を省略する。)

【事実証明書1】「職員の特殊勤務手当に関する条例」及び「職員の特殊勤務手当の支給に関する規則」のうち清掃作業の指導監督業務に係る部分

【事実証明書2】職名が「清掃指導員」である職員に、出勤したすべての月に対して月額、出勤する日ごとに日額の特殊勤務手当が支給されている事例

(令和3年10月西環境事業所)

【事実証明書3】清掃指導員業務日誌の例

【事実証明書4】清掃指導員に支給される特殊勤務手当の1年間の概算額

 

第2 請求の受理

 本件措置請求は、地方自治法第242条第1項の所定の要件を具備するものと認め、令和5年10月3日に、同年9月13日付けでこれを受理することを決定した。

 

第3 監査の実施

1 請求人による証拠の提出及び陳述

 地方自治法第242条第7項の規定に基づき、請求人に対し、証拠の提出及び陳述の機会を設けたところ、請求人から次の書類の提出はあったが、陳述は行われなかった。

(1) 提出された書類

 「清掃作業の指導監督業務に従事する職員への特殊勤務手当支給の是正に関する措置請求の新たな証拠」(添付を省略する。)

【事実証明書追加1】特殊勤務手当支給の条例・規則の制定と、支給の違法・不当性の根拠                                

【事実証明書追加2】広島市清掃指導員服務規程第4条に基づく「所定の勤務日誌」(令和4年11月1日の全日誌)

【事実証明書追加3】2021年3月17日付け中環境事業所長あて質問に対する2022年3月25日付け中環境事業所長及び給与課長回答

【事実証明書追加4】平成21年3月10日付けで奈良市監査委員に提出された「収集課の職員が行う電話受付作業等の業務に対する大型ごみ業務手当の支給」に関する住民監査請求に対する監査結果(平成21年6月1日発行奈良市公報)

【事実証明書追加5】大阪高等裁判所平成21年5月21日判決言渡 平成20年(行コ)第76号 違法手当金返還命令等請求事件(原審・奈良地方裁判所平成18年(行ウ)第3号より、判決文の「主文」及び「第3当裁判所の判断⑶損害賠償請求及び賠償命令の相手方らの責任」のうち「ウ〇前市長」と「エ〇元人事課長及び〇元出納室長」の部分を抜粋

【事実証明書追加6】奈良地方裁判所平成20年3月19日判決言渡し 平成18年(行ウ) 第3号 違法手当金返還命令等請求事件より、判決文のうち、「事実及び理由 第2事案の概要」を抜粋

【事実証明書追加7】平成17年11月25日付けで奈良市監査委員に提出された「環境清美第一事務所職員の特殊勤務手当」に関する住民監査請求に対する監査結果(平成18年2月27日発行奈良市公報)

【事実証明書追加8】違法手当金返還命令等請求事件(通称奈良市職員特殊勤務手当返還)一審判決全文

【事実証明書追加9】違法手当金返還命令等請求事件(通称奈良市職員特殊勤務手当返還)二審判決全文

(2) 主な内容

 条例・規則の規定からは、清掃指導員の仕事には「清掃作業の指導監督業務」という業務が含まれている。しかし、「清掃作業に従事する職員の特殊勤務手当」は、「指導業務」が対象であって「監督業務」は対象としていない。そうすると、監督業務も行っている清掃指導員が、毎日7時間45分以上「指導業務」ばかり行っているという説明には無理がある。

 つまり、監督業務を行った日に残業をしていなければ、決して7時間45分「指導業務」を行うことはできないのであるから支給することはできない。

2 広島市長(環境局業務部業務第一課)の意見書の提出及び陳述

 広島市長に対し、意見書及び関係書類等の提出を求めたところ、令和5年10月13日付け広業一第44号により意見書が提出された。なお、陳述は行われなかった。

 意見書の内容は、以下のとおりである。

(1) 指導監督業務の該当性について

 清掃指導員は、市民へのごみの分別や出し方に係る指導、事業者へのごみの排出指導、家庭ごみ収集運搬に係る指示等の指導監督業務を行っている。

 請求人は、ごみステーションにごみの取り残しがないことを確認に現地に行くこと、手書きで記載されている数値を他の様式の書類に転記すること、車の点検・洗車を行うことなどは指導監督業務にあたらないとしているが、清掃指導員が行う業務は、その準備や整理なども含め、それぞれの業務が相互に関連し合って、前述した清掃指導員の指導監督業務となるものである。

(2) 清掃指導員への一律の手当支給の違法性について

 制度所管課からの見解のとおり。

 

 以上のとおり、特殊勤務手当は、職員の特殊勤務手当に関する条例及び職員の特殊勤務手当の支給に関する規則に基づき支給しており、適正なものである。

3 広島市長(制度所管課である企画総務局人事部給与課)の見解

 広島市長に対し、職員の特殊勤務手当に関する条例を所管する観点から見解を求めたところ、令和5年10月13日付け広人給第14号により以下のとおり回答があった。

(1) 制度所管課としての見解

 請求人の2点の主張に対する見解は、次のとおりである。

ア 清掃指導員に対する「清掃作業等に従事する職員の特殊勤務手当」は、その支給対象及び上限額を議会の議決を経て条例で定めた上で、規則において具体的事項を定めている。

 規則では、第12条第2項において、対象業務にあらかじめ定められた勤務時間以上従事したときに当該手当を支給すると定めており、当該規定に基づいて適切に支給している。

イ 月額の「廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当」は、特殊勤務手当の対象となる業務を継続して行う職である点に着目し、条例及び規則の規定に基づいて適切に支給している。

 なお、勤務実態を手当額に反映させるため、月額の手当であっても、勤務日数が16日未満であれば、日割りで支給することとしている。

4 監査対象事項

 請求人は、市が清掃指導員に対し「廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当」(月額5,500円)及び「清掃作業等に従事する職員の特殊勤務手当」(日額1,310円)を支給していることについて、これらの手当の支給対象業務である「指導業務」に該当しない業務に対しても当該手当を支給していると考えられることなどから、違法に支給した特殊勤務手当を返還させるよう主張していると認められる。

 このため、職員措置請求書に添付された事実証明書にあった令和4年11月1日の清掃指導員業務日誌に係る所属について、主に同月分における、清掃指導員に対する「廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当」及び「清掃作業等に従事する職員の特殊勤務手当」の支給について、違法又は不当な点はないか監査する。

5 監査の実施内容

 請求人から提出された広島市職員措置請求書及び事実を証する書類、請求人から提出された追加証拠、広島市長から提出された意見書のほか関係書類を確認するとともに、関係職員への聴取りを行うほか、別添の令和4年7月7日付け広島市監査公表第29号で監査結果(以下「前回監査結果」という。)を公表した広島市職員に関する措置請求(以下「前回措置請求」という。)等、これまでに実施した監査での知見を活用し、本件措置請求において述べられている事実関係について確認した。

 

第4 監査の結果

1 事実の確認

(1) 前回措置請求との比較について

 請求人は、次のア及びイに記載のとおり、2つの特殊勤務手当が支給されていることが、職員の特殊勤務手当に関する条例(昭和26年8月11日広島市条例第21号。以下「特勤条例」という。)及び職員の特殊勤務手当の支給に関する規則(昭和57年広島市規則第22号。以下「特勤規則」という。)の解釈を誤った違法又は不当な財務会計上の行為であると主張していると認められるが、これらは後記(2)から(4)までの点を除けば、前回措置請求の内容に包含されると認められる。

ア 廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当

 著しい特殊性を有する「指導監督業務」に対して特殊勤務手当を支給するという特勤条例及び特勤規則であるにもかかわらず、「清掃指導員」という職名の職員全てに、月額の「廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当」を一律に支給している。

イ 清掃作業に従事する職員の特殊勤務手当

 「清掃指導員」が1日に行っている全ての行為を「指導監督業務」に認定して「清掃作業に従事する職員の特殊勤務手当」を支給している。

(2) 指導監督に係る準備等の作業の特殊性について

 請求人は、違法手当金返還命令等請求事件(奈良地方裁判所平成18年(行ウ)第3号)及び同控訴事件(大阪高等裁判所平成20年(行コ)第76号)を引用し、同事件の判決では、大型ごみの収集業務に付随する電話受付業務、収集経路作成業務に携わった職員に対する特殊勤務手当の支給が違法支出とされたとしている。

 そして、このことを根拠として、本件措置請求における特殊勤務手当の支給について、ごみステーションにゴミの取り残しがないことを確認に現地に行く作業、手書きで記載されている数値を他の様式の書類に転記する作業、車の点検・洗車を行う作業、車検のために整備工場に運ぶ作業といったものを挙げ、これらの作業は指導監督業務とはいえず、違法支出であると主張している。

 この点、奈良地裁の判決文を検分したところ、次のとおりであった。

ア 奈良市特殊勤務手当規則では、大型ごみ収集手当は、「第一事務所に勤務し、廃棄物収集作業に従事する現業職員で、大型ごみ収集作業をした者に対して、勤務1回につき1500円。」支給することが規定されていた。

イ 外部監査報告書の記載を引用し、「大型ごみ収集手当の適用範囲は「大型ごみ収集の作業をしたもの」とされているが、実際には収集業務に付随する電話受付業務、収集経路作成業務に携わった職員に対しても支給されていた。(略)これら業務に関する「大型ごみ収集手当」の支給については、特殊勤務手当規則に定める適用範囲を明らかに拡大して解釈している。」とされていた。

ウ 「大型ごみ収集の電話受付業務及び収集経路選定業務についても大型ごみ収集手当の対象とされ、1日当たり3000円が支給されていた。これは、平成7年度から、大型ごみの収集方式がステーション方式(予め年間を通じて定められた時期、回数、場所を市民に通知した上、集中して収集する方式)から電話リクエスト方式(市民から電話で収集の依頼を受けて収集に行く方式)に変更されたことに伴い、電話受付業務や収集経路選定の業務が新たに発生した一方、職員の増員等の措置がとられなかったことから、従業員労組と市当局の協議の結果、これらの作業についても大型ごみ収集手当の対象とすることとされたものである。」、「規則等に抵触する労働協約は、規則等の改廃によりこれとの整合性を保つ形とされて初めて効力を認められていると解されることからすれば、慣行により手当の支給に適法性が認められる余地はないと解すべきであるから、(略)平成16年11月から同17年3月の間にされた(略)大型ごみ収集手当の支給は、(略)規則に基づかないものとして、違法というべきである。」とされていた。

 つまり、規則上「大型ごみ収集の作業をした者」に支給される「大型ごみ収集手当」が、「大型ごみ収集の電話受付業務及び収集経路選定業務」を対象として支給されていたことについて、「規則に基づかないものとして、違法」と判断しているだけで、電話受付業務や収集経路選定業務が特殊勤務手当の対象となる特殊性を有するかどうかについて、判示されているとは認められなかった(大阪高裁判決も同旨)。

(3) 「監督業務」が清掃作業に従事する職員の特殊勤務手当の対象となる「指導業務」に含まれるかどうかについて

 請求人は、特勤条例及び特勤規則の規定からは清掃指導員の仕事には「清掃作業の指導監督業務」という業務が含まれているものの、「清掃作業に従事する職員の特殊勤務手当」の対象は「指導業務」であって「監督業務」は対象としていないと主張している。

 この点、特勤条例及び特勤規則の改正状況について確認したところ、その改正の過程において、「指導監督」から「指導業務」へと規定の整備がなされたにすぎず、その用語の差異により手当の対象とする業務の範囲に差が生じているとは認められなかった。

(4) 廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当及び清掃作業等に従事する職員の特殊勤務手当の支給について

 広島市中環境事業所及び同佐伯環境事業所における令和4年11月分の支給事務について、清掃指導員業務日誌等を確認したところ、休暇等により清掃指導員として従事していない日を除く全ての日について業務日誌が作成されており、業務日誌の記載内容や職員への聴取りなどから、清掃指導員が特勤条例及び特勤規則に規定された業務に従事したと確認できた日を基礎としてこれらの手当が支給されていた。

(5) 前回措置請求との類似性について

 以上から、本件措置請求に対する判断の基となる事実関係は、上記(2)から(4)までのとおりのほか、前回監査結果において確認した事実関係に包含されるものと認める。

2 判断

 上記1(2)から(4)までの事実関係は、前回監査結果において確認した事実関係に反するものではなかったことから、前回監査結果における判断をもって、本件措置請求に対する判断とする。

3 結論

 請求人の行った本件措置請求については、理由がないものであり、請求を棄却する。

 

 

別添

広島市監査公表第29号

  令和4年7月7日

 令和4年5月9日付け第203号で受け付けた広島市職員に関する措置請求について、その監査結果を地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第5項の規定により、別紙のとおり公表する。

広島市監査委員 政氏 昭夫

同       井戸 陽子

同       山路 英男

同       山内 正晃

別紙

広監第71号

令和4年7月7日

請求人

(略)

広島市監査委員 政氏 昭夫

同       井戸 陽子

同       山路 英男

同       山内 正晃

   広島市職員に関する措置請求に係る監査結果について(通知)

 令和4年5月9日付け第203号で受け付けた広島市職員に関する措置請求(以下「本件措置請求」という。)について、地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第5項の規定により監査を行ったので、その結果を同項の規定により次のとおり通知する。

 

第1 請求の要旨

 請求の要旨は、請求書の記載内容から抜粋引用すると、大要は次のとおり。

 清掃作業の指導監督業務に係る特殊勤務手当支給に関する措置請求

(1) 監査請求の概要

 広島市では、「職員の特殊勤務手当に関する条例」(以下、「条例」という。)及び「職員の特殊勤務手当の支給に関する規則」(以下、「規則」という。)により、以下の通り規定されています。

○「廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当」として、環境局に勤務する職員の行う、清掃作業の指導監督業務に月額5,500円を支給する。

○「清掃作業等に従事する職員の特殊勤務手当」として、(1)ごみ及びがれきの収集に関する指導業務、(2)ごみの焼却処分に関する指導業務、(3)ごみ及びがれきの埋立処分に関する指導業務、(4)し尿の収集に関する指導業務、(5)し尿浄化槽の維持管理に関する指導業務を、あらかじめ定められた勤務時間以上従事したときに、日額1,310円を支給する。

 このことにより、職名が「清掃指導員」である職員に、出勤したすべての月に対して月額5,500円(16日以上出勤の場合)、出勤する日ごとに1,310円(勤務が通常行われる日の勤務時間の場合)の特殊勤務手当が支給されています。

 他都市では、「著しく特殊」な業務ではないとして支給のない手当が、広島市では、ひと月に21日勤務した場合、月額5,500円+日額1,310円×21日=33,010円支給されています。

 しかし、その支給は、以下に記述の通り、条例及び規則に照らして不適切な支給であり、かつ給与の情勢適応の原則などに照らしても不適切であることから、是正を求めて監査請求するものです。

ア) 規則が禁止している「併給」を行っていること。

 規則第26条は、「廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当(別表第3の(1)の表第2種の項第3号に掲げる運転業務又は収集作業に従事したときに支給されるものを除く。)については、月額の特殊勤務手当と日額をもつて定められている特殊勤務手当(以下「日額の特殊勤務手当」という。)を重複して支給しない。」と規定しており、塵芥車によるごみ収集作業(運転業務を含む)に従事する職員以外の職員への併給を禁止しています。

 清掃指導員は、「清掃作業の指導監督業務」を行う場合、規則別表第3の(2)の表第2種の項第1号によって「廃棄物の処理作業等に従事する職員」となります。(「処理作業等」の「等」が「清掃作業の指導監督業務」と考えられます。)

 そこで、「廃棄物の処理作業等に従事する職員」たる清掃指導員には、月額と日額の特殊勤務手当を併給できないと規定されており、日額と月額の併給を行うことは違法・不当な財務会計処理になると考えられます。

イ) 「清掃作業の指導監督業務」以外の業務に対しても特殊勤務手当が支給されていること。

 指導監督業務に携わる職員には、条例及び規則によって、「清掃作業の指導監督業務」を行う場合、特殊勤務手当が支給されることとなっています。

 そこで、清掃指導員の実際の業務内容を、古い資料ではありますが、平成30年度の西環境事業所の職務分担表によって、指導係の清掃指導員について調べました。

 ここで主張する主旨は、現時点の職務分担でも変わりはないと思います。

 平成30年度には、西環境事業所の指導係には、4名の「清掃指導員」という職名の方がおられました。

 指導係の職務分担表15項目の業務のうち、「清掃作業の指導監督」に該当すると思われる業務は、委託業務に関する業者の指導と排出指導ではないでしょうか。

 その業務の割合は、A氏の場合、ご自身の全業務のうちの20%、B氏の場合は同じく25%、C氏及びD氏の場合は同じく4%です。

 これは計画であって実績ではありませんが、年度の計画を立てる時には前年度以前の実績を考慮して作成しているはずですので、大きな違いはないものと考えられます。

 このように、職名が清掃指導員であっても、全ての職務時間を「清掃作業の指導監督」に充てている訳ではありません。

 条例及び規則の規定は、「清掃作業の指導監督業務」に従事する場合に支給するとされていますので、清掃作業の指導監督業務に従事した日のみ手当を支給すべきところ、全ての出勤月において月額、全ての出勤日において日額の特殊勤務手当を支給していることは違法・不当な財務会計処理になると考えられます。

ウ) 支給対象や支給額を条例で規定せず規則に委ねたことが違法であること

 他の政令指定都市を調べたところ、清掃作業の指導監督業務を「著しく特殊な業務」とはとらえておらず、特殊勤務手当は支給していません。

 私たちには、指導監督業務が、「著しく危険、著しく不快、著しく不健康又は著しく業務遂行が困難で、著しく特殊である」とは思えませんので、広島市以外の政令指定都市の判断に首肯するものです。

(2) 請求の対象となる職員

 広島市長及び特殊勤務手当支給に関わる職員

(3) 損害の推定

 過去5年間で約7800万円

 西環境事業所の指導係の4名の「清掃指導員」について、平成30年度の職務分担表で調べたところ、「清掃作業の指導監督」に該当する業務は、4名の平均として、各人の全業務の12.25%でした。

 令和3年10月の特殊勤務手当の総額を推定すれば、およそ144万円で、月額支給分がおよそ26万円、日額支給分がおよそ118万円です。併給は違法・不当として月額分の全額(約26万円)、実際に清掃作業の指導監督業務に従事したのは全体の12.25%であると考え、日額分の87.75%(約104万円)は違法・不当な支給として、これらを合わせた130万円が、粗削りではありますが、違法・不当に支給されたと考えられます。

 過去5年間では7800万円(130万円×12×5年)程度になると考えられます。

(4) 請求する措置

・条例の見直しにより、清掃作業の指導監督業務への特殊勤務手当を廃止すること。

・違法に支給した特殊勤務手当を返還すること。

(事実を証する事実証明書として次の書類が提出されているが、添付を省略する。)

【事実証明書1】「職員の特殊勤務手当に関する条例」及び「職員の特殊勤務手当の支給に関する規則」のうち清掃作業の指導監督業務に係る部分

【事実証明書2】職名が「清掃指導員」である職員に、出勤したすべての月に対して月額、出勤する日ごとに日額の特殊勤務手当が支給されている事例

(令和3年10月西環境事業所)

【事実証明書3】職務分担表の事例(平成30年度西環境事業所指導係)

【事実証明書4】政令指定都市におけるごみ収集処理及び指導監督業務への特殊勤務手当の支給実態(広島市以外では指導監督業務への支給はない)

【事実証明書5】令和3年10月の4環境事業所の清掃指導員への特殊勤務手当支給実態から推定した1か月の特殊勤務手当のおおよその支給額

(開示請求した資料に基づき、監査請求人がまとめたもの)

 

第2 請求の受理

 本件措置請求は、地方自治法第242条第1項の所定の要件を具備するものと認め、令和4年5月27日に、同月9日付けでこれを受理することを決定した。

 

第3 監査の実施

1 請求人による証拠の提出及び陳述

(1) 地方自治法第242条第7項の規定に基づき、請求人に対し、証拠の提出及び陳述の機会を設けた。

(2) これを受けて、請求人のうち1名は、次のとおり、書類を提出するとともに、令和4年6月24日、本件措置請求の要旨に沿って陳述を行い、残る2名は書類の提出もなく陳述も行わなかった。

ア 提出された書類

・「清掃作業の指導監督業務に係る特殊勤務手当支給に関する措置請求に係る新たな証拠の提出」

【事実証明書追加1】清掃作業の指導監督業務に係る特殊勤務手当についての中環境事業所長及び給与課長の回答

【事実証明書追加2】平成21年3月10日付けで奈良市監査委員に提出された「収集課の職員が行う電話受付作業等の業務に対する大型ごみ業務手当の支給」に関する住民監査請求に対する監査結果(平成21年5月8日勧告)(平成21年6月1日発行奈良市公報)(ウエブ上から)

【事実証明書追加3】特殊勤務手当支給によって、市に損害を与えたとして、市に対して、元市長、元出納室長及び元人事課長にあわせて約4370万円と年5分の割合による金員を支払うよう請求又は賠償命令することを命ずる判決(大阪高等裁判所平成20年(行コ)第76号(平成21年5月21日判決))最高裁が上告棄却、上告不受理の決定をしたため高裁判決が確定。(ウエブ上から)

【事実証明書追加4】奈良市の住民が住民監査請求を行い、市監査委員が特殊勤務手当の支出についての請求を棄却する旨の決定をし、その旨原告らに通知していたとのことの一審判決の記載(ウエブ上から)

【事実証明書追加5】同上住民監査請求(ごみ処理事業についての包括外部監査結果等の報告書受領後も漫然と不適正な支出を続けていた事による公金の損害金を返済するよう求めるもの)の監査結果(平成18年1月24日棄却)(平成18年2月27日発行奈良市公報)(ウエブ上から)

【事実証明書追加6】清掃指導員勤務日誌の一例

(添付を省略する。)

・「清掃作業の指導監督業務に係る特殊勤務手当支給に関する措置請求に係る新たな証拠の提出(その2)」

【事実証明書追加7】環境局関係の高額な特殊勤務手当を問題視して、令和2年9月9 日付けで、市民団体が環境局長に提出した質問書に対して、1年後の令和3年9月8日付けで広島市がした回答

【事実証明書追加8】「清掃指導員勤務日誌」の一例

【事実証明書追加9】「運行日誌」の一例

(添付を省略する。)

・「清掃作業の指導監督業務に係る特殊勤務手当支給に関する措置請求に係る新たな証拠の提出(その3)」

【事実証明書追加10】業務第一係E清掃指導員の令和3年12月の「清掃指導員勤務日誌」

【事実証明書追加11】業務第二係F清掃指導員の令和3年12月の「清掃指導員勤務日誌」

【事実証明書追加12】令和3年12月の中環境事業所の公用車の運行日誌

(添付を省略する。)

イ 主な陳述の内容

・清掃指導員の職務分担は、清掃作業の指導監督に該当する業務以外の業務の割合が多いにもかかわらず、出勤した全ての月、全ての日に対して月額及び日額の特殊勤務手当が満額支給されているのは不当であること。

・特殊勤務手当の本来の目的や支給要件を逸脱して支給しているのではないかという点についても監査してもらいたいと考えていること。

2 広島市長(環境局業務部業務第一課)の意見書の提出及び陳述

 広島市長に対し、意見書及び関係書類等の提出を求めたところ、令和4年6月10日付け広業一第15号により意見書が提出された。なお、陳述は行われなかった。

 意見書の主な内容は、以下のとおりである。

(1) 事実

 清掃作業の指導監督業務に従事する職員への特殊勤務手当は、職員の特殊勤務手当に関する条例及び職員の特殊勤務手当の支給に関する規則に基づき支給している。

(2) 本市の意見の趣旨

 本件措置請求は、理由がないものである。

(3) 本市の意見の理由

ア 規則が禁止している「併給」を行っていることについて

 制度所管課からの見解のとおり。

イ 「清掃作業の指導監督業務」以外の業務に対しても特殊勤務手当が支給されていることについて

 清掃指導員は、市民へのごみの分別や出し方に係る指導、事業者へのごみの排出指導、家庭ごみ収集運搬に係る指示等の指導監督業務を行っている。

 請求人は職務分担表に記載している単位業務のごく一部のみが清掃作業の指導監督業務にあたるとしているが、清掃指導員に割り振っている単位業務は、それぞれの業務が相互に関連し合って、前述した清掃指導員による指導監督業務となるものである。

 清掃作業の指導監督を行う職員に対する月額支給の「廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当」は、前述した指導監督業務を行っている清掃指導員の職に着目して支給することとしており、勤務日数が16日以上であれば月額で、16日未満であれば日割で支給している。

 また、日額支給の「清掃作業等に従事する職員の特殊勤務手当」は、ごみ及びがれきの収集に関する指導業務に対して支給するものであり、清掃指導員が前述した業務に従事した場合に支給している。

ウ 支給対象や支給額を条例で規定せず規則に委ねたことが違法であることについて

 制度所管課からの見解のとおり。

 以上のとおり、特殊勤務手当は、職員の特殊勤務手当に関する条例及び職員の特殊勤務手当の支給に関する規則に基づき支給しており、適正なものである。

3 広島市長(制度所管課である企画総務局人事部給与課)の見解

 広島市長に対し、職員の特殊勤務手当に関する条例を所管する観点から見解等を求めたところ、令和4年6月9日付け広人給第20号により以下のとおり回答があった。

(1) 制度所管課としての見解

 請求人の3点の主張に対する見解は、次のとおりである。

ア 規則第26条においては、「廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当(別表第3の(1)の表第2種の項第3号に掲げる運転業務又は収集作業に従事したときに支給されるものを除く。)」について、月額支給と日額支給の特殊勤務手当を重複して支給しないこととしているが、「清掃作業等に従事する職員の特殊勤務手当」は、「廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当」とは別の手当であることから、対象業務に従事したときに支給することができる。

イ 月額の「廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当」は継続して対象業務を行う点に着目し、その職に対して支給することとしている一方、日額の「清掃作業等に従事する職員の特殊勤務手当」は業務内容に着目し、対象業務に従事した場合に支給することとしており、それぞれ手当の性質を異にしたものとなっている。

 なお、勤務実態を手当額に反映させるため、月額の「廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当」については勤務日数が16日未満であれば日割で、日額の「清掃作業等に従事する職員の特殊勤務手当」については正規の勤務時間が勤務が通常行われる日の勤務時間の2分の1に相当する時間である日である場合はおよそ2分の1の額を、それぞれ支給することとしている。

ウ  廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当については、条例第12条において対象作業を「廃棄物の処理作業等で市長の定めるもの」とし、手当額は「作業に従事した日1日につき730円の範囲内又は勤務1か月につき9,150円の範囲内で市長が定める額」と、上限額を条例に定めた上で、規則で具体的事項を定めている。これは、給与条例主義のもと、上限額を議会の議決に基づく条例で決定することによって、議会による民主的統制を及ぼすという住民自治の原則にかなうものである。

(2) 特殊勤務手当支給に関する各課等への指導状況

 各所属において行う支給事務については、職員向けのネットワーク内に給与の手引及び給与等支給事務の手引を掲載し、職員が閲覧できるようにするとともに、毎年度、職員向けに説明会を実施し、周知徹底を図っている。

4 監査対象事項

 請求人は、市が環境事業所の清掃指導員に対し「廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当」(月額5,500円)及び「清掃作業等に従事する職員の特殊勤務手当」(日額1,310円)を支給していることについて、これらの手当の支給対象業務に従事していない日に対しても当該手当を支給していると考えられることなどから、違法に支給した手当を返還させるとともに、条例及び規則を見直すことを主張していると認められる。

 このため、職員措置請求書に添付された事実証明書にあった広島市西環境事業所における令和3年10月分を例として、環境事業所の清掃指導員に対する「廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当」及び「清掃作業等に従事する職員の特殊勤務手当」の支給について、違法又は不当な点はないか監査する。

5 監査の実施内容

 請求人から提出された広島市職員措置請求書及び事実を証する書類、請求人の陳述の内容、広島市長から提出された意見書のほか関係書類を確認するとともに、関係職員への聴取りを行うなどして監査した。

 

第4 監査の結果

1 事実の確認

(1) 特殊勤務手当に係る本市の条例等の規定について

 地方公務員法(昭和25年法律第261号)第24条第5項において、職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は条例で定めることとされ、本市では一般職の職員の給与に関する条例(昭和26年3月30日広島市条例第62号。以下「給与条例」という。)第12条第2項の規定に基づき、職員の特殊勤務手当に関する条例(昭和26年8月11日広島市条例第21号。以下「特勤条例」という。)により特殊勤務手当の支給に関し必要な事項を定めるとともに、特勤条例第29条の規定に基づき、必要な事項を職員の特殊勤務手当の支給に関する規則(昭和57年広島市規則第22号。以下「特勤規則」という。)において定めている。

 本件請求にある廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当(以下「廃棄物特勤手当」という。)及び清掃作業等に従事する職員の特殊勤務手当(以下「清掃特勤手当」という。)はそれぞれ特勤条例第12条及び第13条に規定され、それぞれの手当の支給に関し必要な事項は特勤規則第11条及び第12条に規定されるとともに、廃棄物特勤手当については、特勤規則第26条において、日額の手当と月額の手当との併給ができないこととされるほか、特勤規則第27条の規定では、月額の手当について日数が足らない場合の減額が定められ、また、月額の手当を除く手当については、特勤規則第29条の規定により所定の実績簿の記録に基づき支給されることとされている。

 給与条例、特勤条例及び特勤規則における廃棄物特勤手当及び清掃特勤手当の規定を抜粋すると、次のとおりである(清掃作業の指導監督業務に従事する職員に適用される主な部分に下線を付している。(※注))。

ア 廃棄物特勤手当

 

条文

給与条例

(特殊勤務手当)

第12条 著しく危険、不快、不健康又は困難な勤務その他の著しく特殊な勤務で、給与上特別の考慮を必要とし、かつ、その特殊性を給料で考慮することが適当でないと認められるものに従事する職員には、その勤務の特殊性に応じて特殊勤務手当を支給する

2 特殊勤務手当の種類、支給される職員の範囲、支給額その他特殊勤務手当の支給に関し必要な事項は、別に条例で定める。

特勤条例

(廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当)

第12条 廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当は、職員が次に掲げる作業に従事したときに支給する

(1) 廃棄物の処理作業、し尿浄化槽の検査作業、と畜場内における作業等で市長の定めるもの

(2) (略)

2 前項の手当の額は、次の各号に掲げる作業の区分に応じ、当該各号に掲げる額とする。

(1) 前項第1号の作業 作業に従事した日1日につき730円の範囲内又は勤務1か月につき9,150円の範囲内で市長が定める額

(2) (略)

特勤規則

(廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当)

第11条 条例第12条第1項第1号に規定する市長の定める作業は、別表第3の(1)の表及び(2)の表の支給対象となる作業欄に掲げる作業とし、同条第2項第1号に規定する市長が定める額は、別表第3の(1)の表の支給日額欄及び別表第3の(2)の表の支給月額欄に掲げる額とする。

(併給禁止)

第26条 廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当(別表第3の(1)の表第2種の項第3号に掲げる運転業務又は収集作業に従事したときに支給されるものを除く。)については、月額の特殊勤務手当と日額をもつて定められている特殊勤務手当(以下「日額の特殊勤務手当」という。)を重複して支給しない。

2~4 (略)

(手当の減額)

第27条 月額の特殊勤務手当(夜間学級担当教育職員の特殊勤務手当を除く。)を支給する場合において、職員が、次の各号のいずれかに該当する場合の当該手当の額は、当該各号の規定により算出した額とする

(1) 月額の特殊勤務手当の支給される職員の勤務した日数がその月について16日に満たない場合 16日と現に勤務した日数とを基礎とする日割計算により算出した額

(2)~(3) (略)

2 日額の特殊勤務手当のうち、次に掲げる特殊勤務手当の支給される作業に従事した時間が1日について4時間に満たない場合における当該手当の額は、条例又はこの規則の規定により受けるべき額の100分の60に相当する額とする。

(1)~(4) (略)

(5) 廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当

(6)~(7) (略)

3 (略)

(特殊勤務実績簿)

第29条 特殊勤務手当(月額の特殊勤務手当を除く。)の支給に関しては、所定の実績簿(略)に所要事項を記録し、これに基づいて支給するものとする。

 別表第3(第11条関係)

 廃棄物の処理作業等に従事する職員の特殊勤務手当

(1)

種別

支給対象となる作業

支給日額

第1種

 (略)

(略)

第2種

1~2 (略)

3 環境局に勤務する職員の行うじんかい車(ごみの収集作業に従事するため同乗する職員の数が1のものに限る。)の運転業務又は当該じんかい車への同乗によるごみの収集作業

4~5 (略)

 

550円

第3種

 (略)

(略)

(2)

種別

支給対象となる作業

支給月額

第1種

1 環境局に勤務する職員の行うごみの収集作業(次号に掲げる収集作業を除く。)及びごみの処分作業

2 別表第3の(1)の表第2種の項第3号に掲げる運転業務及び収集作業

7,900円

第2種

1 環境局に勤務する職員の行うごみ運搬車の運転業務(第1種の項第2号に掲げる運転業務を除く。)及び清掃作業の指導監督業務

2 (略)

5,500円

イ 清掃特勤手当

 

条文

給与条例

(特殊勤務手当)

第12条 著しく危険、不快、不健康又は困難な勤務その他の著しく特殊な勤務で、給与上特別の考慮を必要とし、かつ、その特殊性を給料で考慮することが適当でないと認められるものに従事する職員には、その勤務の特殊性に応じて特殊勤務手当を支給する

2 特殊勤務手当の種類、支給される職員の範囲、支給額その他特殊勤務手当の支給に関し必要な事項は、別に条例で定める。

特勤条例

(清掃作業等に従事する職員の特殊勤務手当)

第13条 清掃作業等に従事する職員の特殊勤務手当は、清掃作業に従事する職員が市長の定める作業の基準を超えて清掃作業に従事したとき、又は清掃作業の指導監督を行う職員が市長の定める業務に従事したときに支給する

2 前項の手当の額は、作業又は業務に従事した日1日につき1,590円(12月29日から翌年の1月3日までの間については、2,390円)の範囲内で市長が定める

特勤規則

(清掃作業等に従事する職員の特殊勤務手当)

第12条 (略)

2 条例第13条第1項後段に規定する市長の定める業務に従事したときは、次に掲げる業務にあらかじめ定められた勤務時間以上従事したときとする。

(1) ごみ及びがれきの収集に関する指導業務

(2) ごみの焼却処分に関する指導業務

(3) ごみ及びがれきの埋立処分に関する指導業務

(4)~(5) (略)

3 条例第13条第2項の規定により市長が定める額は、作業又は業務に従事した日1日につき、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に掲げる額とする。

(1) (略)

(2) 前項各号に掲げる業務にあらかじめ定められた勤務時間以上従事したとき 1,310円(正規の勤務時間が勤務が通常行われる日の勤務時間の2分の1に相当する時間である日及びこれに相当する日については、660円)

4 (略)

(特殊勤務実績簿)

第29条 特殊勤務手当(月額の特殊勤務手当を除く。)の支給に関しては、所定の実績簿(略)に所要事項を記録し、これに基づいて支給するものとする

 

(2) 技能業務職員に対する給与等の支給に係る制度について

 地方公務員法第57条に規定する単純な労働に雇用される職員、すなわち本市の清掃に携わる職員の多くが該当する技能業務職員の給与については、地方公営企業等の労働関係に関する法律(昭和27年法律第289号)附則第5項において準用する地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第39条において地方公務員法第24条の規定が適用除外されるとともに、同項において準用する地方公営企業法第38条第4項の規定により定められた給与条例附則第4項では、給与条例の給料表の適用を受ける職員の給与を基準とし、その職務と責任の特殊性を考慮して、別に定めるとされ、これを受け、技能業務職員の給与に関する規則(昭和32年広島市規則第75号)において技能業務職給料表を定めるとともに、技能業務職員に対する給与の種類、額、支給条件及び支給方法については、同規則に定めるものを除くほか、給与条例の適用を受ける職員の例によるとされている。

(3) 清掃指導員の行う「清掃作業の指導監督業務」に係る廃棄物特勤手当及び清掃特勤手当の支給の趣旨及び要件について

 条例及び規則の規定の内容や関係課等からの聴取りなどを踏まえ、次のことが認められる。

ア 清掃作業の指導監督業務は、月額の廃棄物特勤手当の支給対象となっている(特勤条例第12条第1項第1号並びに特勤規則第11条及び別表第3の(2)の表第2種第1号)。

 廃棄物特勤手当は、その作業の不快性、不健康性等を考慮して、特勤条例において、その作業に従事した職員に月額又は日額で支給するよう設けられたもので、支給について、特に、日額のほか、月額が設けられたのは、その作業を日々継続して行うことを通例とするという点に着目して設けられたものと解することができる。

 次に、清掃作業の指導監督業務は、市民へのごみの分別や出し方に係る指導、事業者へのごみの排出指導、家庭ごみの収集運搬に係る指示等に係る業務であるとされるが、その際、個々具体の単位業務のみにとどまらず、指導監督の場所や方法を問わず、その準備や整理も含め、それぞれが相互に関連し合って一連の指導監督業務を成していると理解され、運用されている。

イ また、清掃作業の指導監督業務は、日額の清掃特勤手当(特勤条例第13条第1項並びに特勤規則第12条第2項及び第3項第2号)の支給対象にもなっている。なお、この清掃特勤手当とアの廃棄物特勤手当とは、それぞれの手当の支給趣旨が異なることから、併給は禁じられていない。

 この清掃作業の指導監督業務に係る清掃特勤手当は、その業務の困難性を考慮して、特勤条例において、その業務に従事した職員に日額で支給するよう設けられたものである。

 次に、この手当の支給対象となる清掃作業の指導監督業務として、ごみ及びがれきの収集に関する指導業務などが特勤規則で掲げられ、その内容は、市民へのごみの分別や出し方に係る指導、事業者へのごみの排出指導、家庭ごみの収集運搬に係る指示等の業務であるとされるが、その際、アの廃棄物特勤手当の場合と同様に、個々具体の単位業務のみにとどまらず、それぞれが相互に関連し合って一連の指導監督業務を成していると理解され、運用されている。

 なお、この清掃特勤手当の支給に当たっては、指導業務にあらかじめ定められた勤務時間(すなわち7時間45分)に従事したときに支給するとされているほか、所定の実績簿に所要事項を記録し、それに基づいて支給されることになっている。

(4) 環境事業所における廃棄物特勤手当及び清掃特勤手当の支給について

 広島市西環境事業所における令和3年10月分の支給事務について確認したところ、休暇等により清掃指導員として従事していない日を除く全ての日について、清掃指導員業務日誌が作成されており、当該業務日誌には、一部に所内での作業内容について詳細な記載がないものも見受けられたが、業務日誌の記載内容や職員への聴取りなどから、清掃指導員が清掃作業の指導監督業務に従事したと確認できた日を基礎としてこれらの手当が支給されていた。

2 判断

 清掃指導員が行う指導監督業務に係る特殊勤務手当については、月額の廃棄物特勤手当及び日額の清掃特勤手当の2つの手当がそれぞれ支給要件を満たせば支給されることとなっている。

 月額の廃棄物特勤手当の支給については、その業務を日々継続して行うことを通例とするという点に着目して特勤条例において月額として設けられたものであり、清掃指導員が実際に行った指導監督業務について監査したところ、それらの指導監督業務に関わる業務は日々継続的に行われていると認められた。

 また、日額の清掃特勤手当の支給については、清掃作業の指導監督業務の内容として、直接的な場面での指導を核としつつも、その前後の業務を含む運用がなされている。こうした運用については、明確な基準はないものの指導業務の性格などを考慮すると、直ちに不合理であるとまではいえず、監査した限りにおいて、清掃業務といえないものが含まれているとは認められなかった。加えて、支給手続についても適正に行われていた。

 なお、このほか、請求人は、特勤規則で禁止されている月額と日額の特殊勤務手当の併給を行っていること及び現行の特勤条例は給与条例主義からすれば違法であると指摘しているが、これらの点についても監査した結果、前者については、規定上、月額の廃棄物特勤手当と日額の清掃特勤手当の併給は禁じられておらず、後者についても、一定の上限額を条例で定めて規則に委任している場合は給与条例主義に違反しないと解されており(同旨判決 大阪高裁平成19年10月31日)、本件においても特殊勤務手当の上限額を条例で定め、その範囲で同手当の額を定めても問題はないと考える。

 以上のとおり、環境事業所の清掃指導員に対する廃棄物特勤手当及び清掃特勤手当の支給について、監査した限りにおいて、違法又は不当な点があるとまでは認められない。

3 結論

 請求人の行った本件措置請求については、理由がないものであり、請求を棄却する。

 

第5 意見

 廃棄物特勤手当及び清掃特勤手当については、現状においては、その規定の内容が複雑であることに加え、前記のとおり基準となるものがない中で前後の業務を含んだ運用がなされている、業務日誌に詳細な記載がない事例があるといった状況が認められる。

 これらの手当を含む特殊勤務手当のあり方や運用については、一般に、市民の厳しい目が向けられているものであることから、市においては、このことを十分認識し、他の地方公共団体の状況も把握しながら、手当の支給対象業務の明確性の向上や支給対象となる業務の実施に係る記録の正確な作成などに意を用いて、市の特殊勤務手当に係る制度及びその運用について、市民に説明し理解を得られるよう努めていくことが望まれる。

 

(※注)ホームページでは、原文において下線を付している部分を太字で表示しています。