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技能業務職の給与支給について

ページ番号:0000265463 更新日:2022年2月22日更新 印刷ページ表示

 

広島市監査公表第4号 

  令和4年2月16日 

 

 令和3年12月21日付け第1159号で受け付けた広島市職員に関する措置請求について、その監査結果を地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第5項の規定により、別紙のとおり公表する。

 

広島市監査委員 政氏 昭夫

同       井戸 陽子

同       宮崎 誠克

同       森畠 秀治

 

別紙

 

広監第152号 

令和4年2月16日 

 

請求人

 (略)

 

 

広島市監査委員 政氏 昭夫

同       井戸 陽子

同       宮崎 誠克

同       森畠 秀治

 

   広島市職員に関する措置請求に係る監査結果について(通知)

 令和3年12月21日付け第1159号で受け付けた広島市職員に関する措置請求(以下「本件措置請求」という。)について、地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第5項の規定により監査を行ったので、その結果を同項の規定により次のとおり通知する。

 

第1 請求の要旨

 本件措置請求に係る広島市職員措置請求書に記載された内容は、以下のとおりである。

 技能業務職の給与支給に関する措置請求の要旨

1 請求の要旨

(1) 請求の対象となる職員 技能業務職の給与支給に関わる職員

(2) 技能業務職の給与支給が不当であるとする理由

 令和3年9月29日市人事委員会は、職員の給与等に関する報告及び勧告を行っています。

 職員給与関係資料も報告されており、技能業務職の平均給与月額は、392,657円となっています。(添付資料1参照)

 技能業務職は、1~3級の係員相当の職員で構成されており(添付資料2参照)、1~8級の役職者を含む人員構成の行政職の平均給与月額368,822円を、(添付資料1参照)23,835円も上回っており不当です。

(3) 広島市に与える損害

 行政職の1~3級と同じであるべきとして比較表を作成しました。(添付資料3参照)

 試算すると、行政職の1~3級3,007人の平均給与月額は、282,930円となり、その較差は、109,727円です。

 特別給支給額計算基礎額にも較差116,715円があり、年収較差は、支給月数4.30月で計算して、1人当たり平均約182万円となります。

 職員数617人で計算すると、市に与える損害は、約11億円となります。

(4) 要求する措置

ア 技能業務職の給与がこのように高額になった原因としては、以下の事が推測されます。

 しかし、職務内容を勘案すると、行政職の1~3級の年収額を上回って給与を支給する理由はないと思います。このような高額な給与になった「真の原因」を追求し、再発防止対策と共に、公表回答し、適正な給与支給を行う事を要求します。

(ア) 平均年齢が、48.7歳と高齢である。(添付資料4参照)

(イ) 民間給与との月例給比較が、行政職のみで行われている。(添付資料5参照)

(ウ) 特別給は、支給月数を比較しているにも関わらず、同様の職種とみられる民間技能・労務等従業員の支給月数3.66月を無視して年間の平均4.30月で支給している。(添付資料6参照)

(エ) 民間における定期昇給の実施状況と異なる定期昇給を実施している。(添付資料7参照) 等。

イ その他の職種等についても、当然適正な給与支給となっているかの疑いがもたれます。

 以下について、公表回答し、適正な給与支給を行っていると証明する事を求めます。

(ア) 行政職給料表と他の職種給料表を職位別給与等で比較し、適正である事を証明する。

(イ) 医療職には、コロナで低賃金が問題化した看護師と同様業務を行うとして給与支給されている職員が相当数在籍していると思われます。具体的に民間平均給与との給与比較を行う事で、適正な給与支給である事を証明する。

(ウ) 役職者や管理職者には、特別給の加算条例が制定され増額支給されています。

(一般職員の職員の給与に関する条例参照)

 民間企業で、月例給に無い手当を支給額計算給料月額に加えてボーナスを支給する企業はありません。増額支給できる根拠を回答する事で、適正な給与支給である事を証明する。

(エ) 給与比較を行っている行政職の人員構成を見ますと(添付資料8参照) 、課長相当(6級) 337人、課長代理相当(5級) 815人、係長相当(4級) 1,214人、係員相当(1~3級) 3,007人となっています。

 課長相当1人に対し、課長代理相当(2.4人)、係長相当(3.6人)と、課長代理相当や係長相当が異常に多い人員構成です。

 課長相当自体も、人事課等のように1課に2人の課長が存在しています。

 役職者が多ければ、当然平均給与も高くなります。

 人員構成が、民間企業と比較して適正である事を回答して、適正な給与支給である事を証明する。

(オ) 民間における特別給の支給状況を見ますと(添付資料6参照)、年間の平均4.30月は、職員の人員構成に合わせて求めたものとなっています。

 民間の支給割合は、民間従業員の人員構成に合わせて求めるのが常識と思います。

 職員の人員構成に合わせて年間の平均を求める事が正しい事を回答して、適正な給与支給である事を証明する。

 

(事実を証する事実証明書として次の書類が提出されているが、添付を省略する。)

【添付資料1】職員給与関係資料 第3表職員の給料表別平均給与月額 P30~31

【添付資料2】職員給与関係資料 第4表-(10)技能業務職給料表 P48

【添付資料3】令和3年度広島市職員給与比較資料

【添付資料4】職員給与関係資料 第1表職員の給料表別人員、平均年齢、平均経験年数 P28

【添付資料5】「給与勧告」別紙第1報告 3-(1)月例給 P5

【添付資料6】「給与勧告」別紙第1報告 2-(5)特別給 P3

【添付資料7】「給与勧告」別紙第1報告 2-(6)第3表 P4

【添付資料8】職員給与関係資料 第4表-(1)行政職給料表 P32~33

 

第2 請求の受理

 本件措置請求は、地方自治法第242条第1項の所定の要件を具備するものと認め、令和4年1月13日に、令和3年12月21日付けでこれを受理することを決定した。

 

第3 監査の実施

1 請求人による証拠の提出及び陳述

 地方自治法第242条第7項の規定に基づき、請求人に対し、証拠の提出及び陳述の機会を設けたところ、請求人からはこれによる新たな証拠の提出はなかったが、令和4年1月24日に本件措置請求の要旨に沿っておおむね次のとおり陳述を行った。

(1) 技能業務職の給与の支給は定期昇給や給料表の在り方からみて適正でないこと。

(2) そのほか、人事委員会が給与勧告を行うため実施している調査が不正であることや、給与勧告における特別給の支給月数に合理性がないことから行政職その他の職の給与支給は適正でないこと。

2 広島市長の意見書の提出及び陳述

 広島市長に対し、意見書及び関係書類等の提出を求めたところ、令和4年1月20日付け広人給第59号により意見書が提出された。なお、陳述は行われなかった。

 意見書の主な内容は、以下のとおりである。

(1) 事実

 技能業務職員の給与は、技能業務職員の給与に関する規則(以下「技能業務職員給与規則」という。)に基づき支給している。また、技能業務職員以外の職員の給与は、一般職の職員の給与に関する条例(以下「給与条例」という。)に基づき支給している。

(2) 本市の意見の趣旨

 本件措置請求は、理由がないものである。

(3) 本市の意見の理由

 技能業務職員の給与は技能業務職員給与規則に基づき、また、技能業務職員以外の職員の給与は給与条例に基づき適正に支給しており、本件措置請求は理由がないものである。

 請求人は、技能業務職員の給与が高額であること及び技能業務職員以外の職員についても適正な給与支給が行われているか疑いが持たれることを主張しているので、以下、この点について述べる。

ア 地方公務員の給与の決定原則について

(ア) 人事委員会の勧告制度

 地方公務員の給与等の勤務条件については、地方公務員の労働基本権制約の代償として、公務員の給与等の勤務条件を民間の水準と均衡させるため、第三者機関である人事委員会による客観的な調査結果に基づく勧告制度(人事委員会勧告)がとられており、地方公共団体は、人事委員会勧告を最大限尊重しなければならない。

(イ) 技能業務職員の取扱い

a 地方公営企業等の労働関係に関する法律及び地方公営企業法の適用

 地方公務員法第4条の規定により、同法の規定は、一般職に属する全ての地方公務員に適用することとされている。

 一方、技能業務職員については、地方公務員法第57条の規定によって、この法律に対する特例を別に法律で定めるとされ、この特例として、地方公営企業等の労働関係に関する法律附則第5項の規定により、技能業務職員の労働関係その他身分取扱いについては、同法(第17条を除く。)並びに地方公営企業法第38条及び第39条の規定が準用される。

b 地方公務員法の適用除外

 地方公務員法第24条第5項の規定により、地方公共団体の職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定めることとされている(条例主義の原則)。

 一方、技能業務職員については、地方公営企業法第39条第1項の規定により他の法律の適用除外等が定められており、地方公務員法の条例主義の原則や人事委員会勧告などの規定が適用除外されている。

 また、地方公営企業法第38条第4項の規定により、技能業務職員については給与の種類と基準のみを条例で定めることとされており、給料表や諸手当については地方公共団体の長の規則などによって定めることとなる。

イ 本市の技能業務職員の給与

 本市の技能業務職員の給与については、給与条例附則第4項において給与条例の給料表の適用を受ける職員の給与を基準とすることを定め、同項の規定に基づく技能業務職員給与規則に、技能業務職員に適用すべき給料表(以下「技能業務職給料表」という。)を定め、諸手当については給与条例の適用を受ける職員の例によると定めている。

(ア) 技能業務職給料表

 技能業務職給料表は、行政職給料表に準拠した改定を行っている。これは、技能業務職員も同一の地方公共団体に勤務する公務員であり、人事委員会勧告に基づき改定を行う行政職給料表に準拠した改定を行うことが、給与の公正性を確保する上で合理的であるからである。

(イ) 諸手当

 諸手当は、各職員の生活実態や勤務条件の違いなどを全て給料で具体的に措置することが技術的に困難であるため、給料に対する一種の補完的な給与として設けられるものであり、技能業務職員を区別する理由はなく、給与条例の適用を受ける職員と同様に支給している。期末・勤勉手当についても、本市を含む全ての政令指定都市において、技能業務職員と給与条例の適用を受ける職員の支給月数は同じである。

(ウ) 行政職給料表適用職員との比較

a 令和3年度の初任給

 採用時18歳の初任給は、行政職給料表適用職員では161,920円、技能業務職員では162,030円と同水準であり、採用時22歳の初任給は、行政職給料表適用職員では197,450円、技能業務職員では177,320円と、行政職給料表適用職員が技能業務職員を上回る。

b 給料水準

 令和3年4月1日時点の技能業務職員と行政職給料表の1級から3級までの職員の給料月額を、学歴別、経験年数別に対比させて比較(ラスパイレス比較)すると、技能業務職員の給料水準は、行政職給料表適用職員の95%であり、行政職給料表適用職員を上回る状況にはない。

c 令和3年人事委員会勧告参考資料の平均給与月額

 請求人は、令和3年人事委員会勧告参考資料によると、技能業務職員の平均給与月額が行政職給料表適用職員を上回っていると主張する。しかしながら、これは、技能業務職員は業務の委託や執行体制の見直し等により新規採用者が減少傾向にある一方で、行政職給料表適用職員は、近年、大量採用が続いたため、技能業務職員の平均年齢(48.7歳)が行政職給料表の1級から3級までの職員の平均年齢(30.8歳)を17.9歳上回っており、それに伴い平均給与月額についても技能業務職員が行政職給料表適用職員を上回っているもので、給料水準を理由とするものではない。

ウ 本市の技能業務職員以外の給与

 本市の技能業務職員以外の給与は、給与条例に基づき支給している。その給与水準は、前述のとおり民間の水準と均衡している。

 以上のとおり、技能業務職員の給与は技能業務職員給与規則に基づき、また、技能業務職員以外の職員の給与は給与条例に基づき支給しており、適正なものである。

 

3 監査対象の特定

 請求人は、請求の趣旨として、平均年齢が高齢であることや民間給与との月例給比較が行政職のみで行われていることなどを理由として、技能業務職の平均給与月額が行政職の平均給与月額を上回っていることが不当であるとしている。

 このため、個々の給与支給が不当であると主張していないようにも見えるが、本件措置請求の事実証明書として添付された令和3年広島市職員給与等実態調査の結果に掲げられる平均給与月額は、令和3年4月に個々の技能業務職の職員に対し支給された給与から算出されたものであることから、請求人は、同月になされた技能業務職の職員に対する給与支給が違法又は不当な公金の支出であると主張していると認められる。

 住民監査請求は個別具体的な財務会計行為等を対象とするものであることから、この点について監査することとし、その余については監査しない。

 

4 監査の着眼点

 本市の技能業務職員に対する給与支給が違法又は不当であるか。

 

5 監査の実施

 請求人から提出された広島市職員措置請求書及び事実を証する書類並びに広島市長から提出された意見書のほか関係書類を確認するとともに、関係職員への聴取り調査を行った。

 

第4 監査の結果

1 事実の確認

(1) 技能業務職給料表について

 地方公務員法第57条に規定する単純な労働に雇用される職員、すなわち本市の技能業務職員の給与については、地方公営企業等の労働関係に関する法律附則第5項において準用する地方公営企業法第38条第4項の規定による給与条例附則第4項では、この条例の給料表の適用を受ける職員の給与を基準とし、その職務と責任の特殊性を考慮して別に定めるとされ、これを受け、技能業務職員給与規則において技能業務職給料表を定めるとともに、給与の支給方法などについて給与条例の適用を受ける職員の例によるとしている。

 その技能業務職給料表の改定については、例年、人事委員会勧告に基づいた一般職の職員の給料表の改定に準拠して行われている。なお、令和3年度の人事委員会勧告に月例給の改定がなかったため、その際の改定は行われていない。

 次に、技能業務職給料表の給与水準については、広島市長から提出された意見書にあるとおりであるが、特に請求人からあった行政職給料表と比して高額であるという点については、本市の行政職給料表の適用を受ける職員と技能業務職員の年齢構成が異なっていることから、令和3年4月1日時点の技能業務職員と行政職給料表の1級から3級までの職員の給料月額を、学歴別、経験年数別に対比させるラスパイレス方式で比較したところ、技能業務職員の給与月額が行政職給料表の1級から3級までの職員の給与月額を約5ポイント下回っていた。

(2) 技能業務職に対する給与支給について

 人事委員会が令和3年4月1日現在で実施した令和3年広島市職員給与等実態調査の対象となった技能業務職員は、業務員や調理員などが617人いるとされ、また、その職務の級としては、例えば清掃業務員では、主に、業務員(1級)、技術員(2級)、清掃指導員(3級)というように区分されている。

 この技能業務職員に対する毎月の給与支給は、給与担当課である企画総務局人事部給与課、下水道局経営企画課、議会事務局総務課及び教育委員会事務局総務部総務課において、人事・給与システム及び財務会計システムを使用して費目別支給明細書兼支給依頼書や支出命令書などの関係帳票を出力し、これにより給与支給の決定及び会計管理者への支出命令が担当課長の決裁を経た上で行われている。

 また、令和3年4月分の技能業務職員に対する給与支給を監査委員において抽出して監査したところ、適法かつ正確に行われていることを確認した。

 

2 判断

 1により確認した事実を基に、本件措置請求について次のとおり判断した。

 請求人の請求の趣旨は、技能業務職の平均給与月額が行政職の平均給与月額を上回っていることが不当であるというものであるが、これについて、監査委員は、第一に、技能業務職給料表は違法又は不当ではないか、第二に、その技能業務職給料表に基づき、個々の技能業務職員に対してなされた給与支給が違法又は不当ではないかという点から監査した。

 その結果、第一の点については、1で確認したとおり、本市の技能業務職給料表は法令に従って適正に定められており、また、その給与水準は、技能業務職員と行政職1級から3級の職員の給与月額をラスパイレス比較した結果などを見ても、その職務と責任の特殊性を考慮したものとなっていると認められたことから、技能業務職給料表に違法又は不当はないと認められる。

 第二の点については、技能業務職給料表に基づく個々の技能業務職員に対する令和3年4月分の給与支給について抽出して監査したところ、1で確認したとおり、適正に行われていた。

よって、本件措置請求がされた技能業務職員に対する給与支給は違法又は不当な公金の支出には当たらない。

 

3 結論

 請求人の行った本件措置請求については、理由がないものであり、請求を棄却する。