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恵下埋立地(仮称)建設工事の支払について

ページ番号:0000163961 更新日:2020年6月10日更新 印刷ページ表示

広島市監査公表第20号
令和2年6月5日

 令和2年4月10日付けで受け付けた広島市職員に関する措置請求について,その監査結果を地方自治法第242条第5項の規定により,別紙のとおり公表する。

 

広島市監査委員 谷 本 睦 志

同       井 戸 陽 子

同       碓 氷 芳 雄

同       豊 島 岩 白

 

別紙

広監第82号 

令和2年6月5日 

請求人

 (略)

広島市監査委員 谷 本 睦 志

同       井 戸 陽 子

同       碓 氷 芳 雄

同       豊 島 岩 白

 

広島市職員に関する措置請求に係る監査結果について(通知)

 

 令和2年4月10日付けで受け付けた広島市職員に関する措置請求(以下「本件措置請求」という。)について,地方自治法第242条第5項の規定により監査を行ったので,その結果を同項の規定により次のとおり通知する。

 

第1 請求の要旨

 令和2年4月10日付けで提出のあった広島市職員措置請求書に記載された内容は,以下のとおりである。

 広島市長その他関係する職員による建設工事での不当な支払いに関する措置請求

1 請求の要旨

⑴ 監査請求の概要

 広島市は,広島市の次期一般廃棄物最終処分場「恵下埋立地(仮称)」の整備のため,「恵下埋立地(仮称)建設工事」を発注した。当該工事は,A企業体が受注し,工期を平成28年3月1日から令和4年3月10日までとして,契約金額10,647,077,280円(消費税及び地方消費税相当額を含む。)で実施されている。

 当該工事において,埋め立てられたごみの中を通って有害物質を含んだ水となった雨水等を一時貯留する「浸出水調整池」が築造される。浸出水調整池は,最終処分場の重要施設である。

 A企業体は,令和2年1月9日,浸出水調整池の築造を行うための鉄筋加工等の図面が契約図書に含まれておらず,現契約のままでは施工できないとして,その対策について広島市に協議を行った。(【事実証明書1】参照)

 その協議内容は,以下の通りである。

 浸出水調整池工の設計図書における配筋図は,配筋要領図に従って作成されており,鉄筋径および鉄筋間隔のみが表示された図面である。通常の土木工事における構造物の配筋図は,打設順序等を考慮し,鉄筋径,間隔に加えて,鉄筋継手位置,継手長が明記されている。また,鉄筋長さ,本数が明確に示された鉄筋加工図が存在する。

 しかしながら,浸出水調整池工の配筋図は標準的な配筋図と鉄筋形状表のみが存在し,先に述べた鉄筋加工図を作成しなければ施工ができない状況である。

 このことは,広島市建設工事請負契約約款第18条のうち2設計図書の表示が明確でないことに該当するため,配筋図作成について協議願います。

 A企業体から発議されたこの協議に対して,広島市は,「協議のとおり,配筋図を作成してください。」「設計変更の対象とする。」「広島市の積算基準により変更する。」と回答し,受注者が作成すること,その経費は広島市が受注者に支払うことが決定された。

 この協議結果に基づき,A企業体は配筋図を作成して,令和2年1月22日広島市に提出し,広島市は受理した。(【事実証明書2】参照)

 作成された配筋図は,(a)浸出水調整池116枚,(b)浸出水沈砂池11枚,(c)浸出水中継槽13枚の合計140枚である。

 これによって,配筋図140枚の作成経費を,今後の設計変更時点で広島市が支払うことが明らかとなっているが,この経費を支払うことは,不当な支払いになると思料されるので,監査請求する。

 その理由は,以下の通りである。

 当該図面(鉄筋加工図等)は,本来実施設計を受託したコンサルタントが作成し,成果品として広島市に納品すべきものであったが納品されなかった。広島市は,当該図面を,工事実施に必要な図面として設計図面に付けるべきものであったが付けなかった。工事の入札時に入札希望業者は設計図書等を閲覧し交付を受けて工事内容を把握するのであるから,その時点で鉄筋加工図等がないことを質疑し回答を得るべきであったが質疑しなかった。等々の不作為から,工事請負契約図書に含まれるべきであった図面が含まれていないために生じたものである。

 A企業体は,当該図面が含まれていないままで工事を落札し施工する契約をした。請負契約を締結した以上,工事目的物を築造するために必要な図面は,発注者が提供しない限り自らの負担で作成しなければならないのであるから,発注者がその費用を受注者に支払うことは不当な税金支出となる。

 広島市建設工事請負契約約款第18条は,以下の通りである。

 第18条 受注者は,工事の施工に当たり,次の各号のいずれかに該当する事実を発見したときは,その旨を直ちに監督員に通知し,その確認を請求しなければならない。

 ⑴ 図面,仕様書,工事に関する説明書及びこれに対する質問回答書が一致しないこと(これらの優先順位が定められている場合を除く。)。

 ⑵ 設計図書に錯誤又は脱漏があること。

 ⑶ 設計図書の表示が明確でないこと。

 ⑷ 工事現場の形状,地質,湧水等の状態,施工上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場とが一致しないこと。

 ⑸ 設計図書で明示されていない施工条件について予期することのできない特別な状態が生じたこと。

 2 監督員は,前項の規定による確認を請求されたとき,又は自ら同項各号に掲げる事実を発見したときは,受注者の立会いの下,直ちに調査を行わなければならない。ただし,受注者が立会いに応じない場合には,受注者の立会いを得ずに行うことができる。

 3 発注者は,受注者の意見を聴いて,調査の結果(これに対して採るべき措置を指示する必要があるときは,当該指示を含む。)を取りまとめ,調査の終了後14日以内に,その結果を受注者に通知しなければならない。ただし,その期間内に通知することができないやむを得ない理由があるときは,あらかじめ,受注者の意見を聴いた上,当該期間を延長することができる。

 4 前項の調査の結果において第1項の事実が確認された場合において,必要があると認められるときは,次に掲げるところにより,設計図書の訂正又は変更を行わなければならない。

 ⑴ 第1項第1号から第3号までのいずれかに該当し,設計図書を訂正する必要があるものについては,発注者が行う。

 ⑵ 第1項第4号又は第5号に該当し,設計図書を変更する場合で工事目的物の変更を伴うものについては,発注者が行う。

 ⑶ 第1項第4号又は第5号に該当し,設計図書を変更する場合で工事目的物の変更を伴わないものについては,発注者と受注者とが協議して発注者が行う。

 5 前項の規定により設計図書の訂正又は変更が行われた場合において,発注者は,必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し,又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。

 A企業体は,当該約款第18条第1項の⑶ 設計図書の表示が明確でないことに該当するとして協議を行っている。この協議は,同条第4項の⑴ 第1項第1号から第3号までのいずれかに該当し,設計図書を訂正する必要があるものについては,発注者が行うに該当し,設計図書訂正は発注者が実施すべきものであって受注者が行うものではない。具体的には,実施設計を受注したコンサルタントが当該図面を作成しなかったことが原因であり,必要な図面作成を怠っていたことが明らかになったのであるから,当該コンサルタントに作成させた上で発注者が受注者に提供すべきものであると考えられる。

 このように,発注者は,「発注者が行う」という約款の規定に背いて受注者に行わせることはできない。

 本来の手順を経ず,安易に受注者に丸投げし,その費用を税金で充当することは許されない。

 ⑵ 請求の対象となる職員

  配筋図の作成を指示し,その費用を設計変更で増額することの決定に携わった職員

 ⑶ 損害の推定

  配筋図140枚の作成に要した費用。(金額不明)

 ⑷ 請求する措置

  支払いの取りやめの決定

 地方自治法第242条第1項の規定により,別紙事実証明書を添え,必要な措置を請求します。

  (事実を証する事実証明書として次の書類が提出されているが,添付を省略する。)

  【事実証明書1】工事打合せ簿〔浸出水調整池工の設計図面について〕

  【事実証明書2】工事打合せ簿〔浸出水調整池工の配筋図について〕

第2 請求の受理

 本件措置請求は,地方自治法第242条第1項の所定の要件を具備するものと認め,令和2年4月30日に,同月10日付けでこれを受理することを決定した。

第3 監査の実施

1 請求人による証拠の提出及び陳述

 地方自治法第242条第7項の規定に基づき,令和2年5月19日に請求人に対し証拠の提出及び陳述の機会を設けたところ,請求人は,新たな証拠として次の書類を提出するとともに,本件措置請求に沿った内容について陳述した。

 (新たな証拠として次の書類が提出されているが,添付を省略する。)

 ・【事実証明書-追加1】「広島市建設工事設計変更ガイドライン」(広島市都市整備局技術管理課)

 ・【事実証明書-追加2】「設計書添付図面の作成要領」(国土交通省近畿地方整備局)(該当部分のみ抜粋)

 ・【事実証明書-追加3】「防災調整池」の鉄筋図面(全約90枚のうち4枚抜粋)

  ※一枚の図面に配筋図とともに鉄筋加工図が描かれているものもある。

 ・【事実証明書-追加4】「浸出水調整池」の鉄筋図面(全約50枚のうち3枚抜粋)

  ※躯体構造,鉄筋配筋図は揃っており,当該鉄筋の記載内容で構造物をつくることに問題はなく,設計図書は「表示が明確でない」わけでも「脱漏がある」わけでもないと考えられる。

 ・【事実証明書-追加5】ネット上で閲覧できる文献「コンクリート施工計画(その4)」(越本昌弘氏著)

 請求人は,以下の点について,陳述した。

 ⑴ 職員措置請求書に沿った内容の説明

 ⑵ 新たな証拠として提出した書類等に基づく補足説明

 ア 広島市建設工事設計変更ガイドラインの設計変更のフロー

 イ 設計書添付図面

 ウ 現場担当者が鉄筋加工図を作成する場合も多いとの記述が文献にあり,広島市建設工事請負契約約款第18条に該当せず,設計変更の対象にならないとも考えられること。

2 広島市長の意見書の提出及び陳述

 広島市長に対し,意見書及び関係書類等の提出を求めたところ,令和2年5月19日付け広施恵第36号により意見書が提出された。なお,陳述は行わなかった。

 意見書の内容は,以下のとおりである。

 ⑴ 本市の意見の趣旨

 本市は,A企業体から協議のあった図面作成の費用を支出することはない。

 このため,本件措置請求は却下されるべきである。

 ⑵ 本市の意見の理由

 ア 本件措置請求の要旨

 本件措置請求の要旨は,おおむね次のとおりであると解される。

 平成28年3月1日に広島市とA企業体との間で締結した恵下埋立地(仮称)建設工事(以下「本件工事」という。)の請負契約(以下「本件請負契約」という。)において,浸出水調整池工(調整池・沈砂池・中継槽)の設計図書における配筋図のうち,鉄筋加工図が不足していることから,広島市建設工事請負契約約款(以下「約款」という。)第18条第1項第3号「設計図書の表示が明確でないこと。」に該当するとの趣旨で,配筋図作成について,令和2年1月9日付けで,A企業体から広島市に対して協議があった。

 広島市は,この協議に対し,「協議のとおり,配筋図を作成してください。」「設計変更の対象とする。」「広島市の積算基準により変更する。」と回答したため,配筋図の作成は受注者が行い,その経費は広島市が受注者に支払うこととなった。その後,令和2年1月22日付けで,受注者は作成した配筋図を提出し,広島市はそれを受埋した。

 約款第18条第4項第1号の規定では,「約款第18条1項第1号から第3号までのいずれかに該当し,設計図書を訂正する必要があるものについては,発注者が行う。」と明記されているにもかかわらず,本来の手順を経ず,施工に必要な図面作成を受注者に行わせ,広島市がその作成費用を受注者に支払うことは,不当な支払である。

 そもそも鉄筋加工図等は,本件工事の実施設計を受託したコンサルタントが作成するべきものを作成しなかったものであるが,当該図面が含まれないままで請負契約を締結した以上,工事目的物を築造するために必要な当該図面は,受注者が自らの負担で作成しなければならないため,発注者がその作成費用を支払うことは許されない。

 よって,図面作成に係る費用の支払の取りやめの決定を求めるものである。

 イ 請求人の主張に対する反論等について

 しかしながら,請求人の主張には理由がない。以下その理由を述べる。

 (ア) 本件工事における浸出水調整池工(調整池・沈砂池・中継槽)の設計図書における配筋図について

 請求人は,本件工事に係る実施設計業務を受託したコンサルタントが,浸出水調整池の鉄筋加工図を含んだ配筋図を納品していないと主張しているが,同コンサルタントは,浸出水調整池の配筋図として,「構造細目共通図【資料1】」,「配筋図【資料2】」及び「鉄筋形状表【資料3】」を納品している。

 A企業体からは,令和2年1月9日付け工事打合せ簿で,鉄筋長さ,本数が明確に示された鉄筋加工図を作成しなければ施工できない状況であると協議されているが,本市は,浸出水調整池に関する図面について,「構造細目共通図【資料1】」には,鉄筋継手位置,鉄筋継手長などを,「配筋図【資料2】」には,鉄筋径,鉄筋配置間隔などを,「鉄筋形状表【資料3】」には,鉄筋径,鉄筋継手長などを記載しており,鉄筋に関し浸出水調整池の築造に必要な条件はこれらの図面により,明確に示されているため,発注図面としては適正であり,請求内容は事実と異なる。

 (イ) 配筋図作成に係る費用等について

 令和2年1月9日付けでA企業体は,浸出水調整池工の設計図書に,工事を施工するに当たり必要となる鉄筋継手位置,継手長を明記した配筋図が添付されていないことをもって,約款第18条第1項第3号「設計図書の表示が明確でないこと」に該当すると考え,本市に対して協議を行い,本市は,工事打合せ簿に「協議のとおり,配筋図を作成してください。」「設計変更の対象とする。」「広島市の積算基準により変更する。」と記載し,事務処理を行った。

 このことについて,請求人は,本市がその協議内容を認めた上で,約款第18条第4項第1号「第1項の事実が確認された場合において,必要があると認められるときは次に掲げるところにより,設計図書の訂正又は変更を行わなければならない。⑴第1項第1号から第3号までのいずれかに該当し,設計図書を訂正する必要があるものについては,発注者が行う。」の規定があるにもかかわらず,受注者であるA企業体に配筋図の作成を指示したと主張している。

 また,当該図面が含まれないままで本件請負契約を締結した以上,A企業体が自らの負担で作成しなければならないため,本市がその作成費用を支払うことは許されないと主張している。

 本市は,A企業体から施工上作成の必要があると協議のあった配筋図について,今回の作成図面は,受注者が工事施工にあたり任意で作成する詳細図であり,その経費は,既に本件工事の間接工事費の一部である技術管理費に含まれていることなどから,本市が支払うことはできない費用であると判断した。

 また,(ア)に述べたとおり,本件工事の設計図書において,鉄筋に関し浸出水調整池の築造に当たり必要な条件は明確に示しているため,約款第18条第1項第3号「設計図書の表示が明確でないこと」の協議には該当しない。

 令和2年1月9日時点では,本市が配筋図作成についての協議に応じていたが,更に協議を進める中で,以上のことをA企業体に説明し,(a)今回の配筋図作成費用は,技術管理費に含まれていることなどから支払うことはできないこと,(b)約款第18条第1項第3号「設計図書の表示が明確でないこと。」に該当しないことについて,A企業体と書面で協議し,承諾も得ている【資料4】。

 したがって,本市が図面作成の費用を支出することはない。

 ⑶ まとめ

 上記のとおり,請求人が主張する内容について,本市には何らの不当な支出は生じないことなどから,本件措置請求は却下されるべきである。

  (意見に係る証拠書類として次の書類が提出されているが,添付を省略する。)

  資料1 恵下埋立地(仮称)建設工事における浸出水調整池の構造細目共通図

  資料2 恵下埋立地(仮称)建設工事における浸出水調整池の配筋図

  資料3 恵下埋立地(仮称)建設工事における浸出水調整池の鉄筋形状表

  資料4 恵下埋立地(仮称)建設工事の工事打合せ簿

3 監査対象事項

 本件請負契約に基づく配筋図作成費用の支払は,不当なものか。

第4 監査の結果

1 事実関係の確認

 請求人から提出された広島市職員措置請求書及び事実を証する書類,請求人の陳述,広島市長から提出された意見書及び関係書類,広島市職員への聴き取り調査並びに関係人調査により,次のとおり確認した。

 ⑴ 恵下埋立地(仮称)建設工事(以下「本件工事」という。)の概要等

 ア 恵下埋立地(仮称)建設工事請負契約(以下「本件請負契約」という。)の概要

 (ア) 工事場所  佐伯区湯来町大字和田

 (イ) 工期  平成28年3月1日から平成32年3月10日まで(当初契約時)

         (契約締結日 平成28年3月1日)

        平成28年3月1日から令和4年3月10日まで(変更契約時)

 (ウ) 請負代金額  93億4,848万円(当初契約時)

            106億4,707万7,280円(変更契約時)

 (エ) 受注者  A企業体

 (オ) 工事内容  全体計画容量160万立方メートルのうちの35万立方メートルの廃棄物埋立地建設工事(埋立地の用地約22万4,000平方メートルの造成その他工事)

 イ 設計変更のマニュアル

 工事中の設計変更については,設計変更及び契約変更における手続を明確化し円滑かつ適正な契約の執行を図ることを目的として,広島市都市整備局技術管理課が「広島市建設工事設計変更ガイドライン」(以下「設計変更ガイドライン」という。)を平成19年3月に次のとおり制定し,各工事担当課にこれを適用するよう通知している。

 設計変更ガイドライン(令和2年1月)(抜粋)

  設計変更のフロー

設計変更のフロー

 ⑵ 市長への調査

 ア 市長(環境局施設部恵下埋立地建設事務所)から,本件工事の請負契約書等,工事打合せ簿及び恵下埋立地(仮称)実施設計その他業務の委託契約書等の書類の提出を受け,配筋図作成の費用は支払わないことを確認した。

 (ア) 設計図書上の変更に係る記載

 本件工事の契約図書に添付している広島市建設工事請負契約約款(以下「約款」という。)は,工事発注時において最新のものである。

約款(27.7改正)

(条件変更等)

第18条 受注者は,工事の施工に当たり,次の各号のいずれかに該当する事実を発見したときは,その旨を直ちに監督員に通知し,その確認を請求しなければならない。

⑴ 図面,仕様書,工事に関する説明書及びこれに対する質問回答書が一致しないこと(これらの優先順位が定められている場合を除く。)。

⑵ 設計図書に錯誤又は脱漏があること。

⑶ 設計図書の表示が明確でないこと。

⑷ 工事現場の形状,地質,湧水等の状態,施工上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場とが一致しないこと。

⑸ 設計図書で明示されていない施工条件について予期することのできない特別な状態が生じたこと。

2 監督員は,前項の規定による確認を請求されたとき,又は自ら同項各号に掲げる事実を発見したときは,受注者の立会いの下,直ちに調査を行わなければならない。ただし,受注者が立会いに応じない場合には,受注者の立会いを得ずに行うことができる。

3 発注者は,受注者の意見を聴いて,調査の結果(これに対して採るべき措置を指示する必要があるときは,当該指示を含む。)を取りまとめ,調査の終了後14日以内に,その結果を受注者に通知しなければならない。ただし,その期間内に通知することができないやむを得ない理由があるときは,あらかじめ,受注者の意見を聴いた上,当該期間を延長することができる。

4 前項の調査の結果において第1項の事実が確認された場合において,必要があると認められるときは,次に掲げるところにより,設計図書の訂正又は変更を行わなければならない。

⑴ 第1項第1号から第3号までのいずれかに該当し,設計図書を訂正する必要があるものについては,発注者が行う。

⑵ 第1項第4号又は第5号に該当し,設計図書を変更する場合で工事目的物の変更を伴うものについては,発注者が行う。

⑶ 第1項第4号又は第5号に該当し,設計図書を変更する場合で工事目的物の変更を伴わないものについては,発注者と受注者とが協議して発注者が行う。

5 前項の規定により設計図書の訂正又は変更が行われた場合において,発注者は,必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し,又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。

(設計図書の変更)

第19条 発注者は,前条第4項の規定によるほか,必要があると認めるときは,設計図書の変更内容を受注者に通知して,設計図書を変更することができる。この場合において,発注者は,必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し,又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。

 (イ) 設計図書上の図面

 本件工事の図面には,浸出水調整池について,構造細目共通図,配筋要領図,底版配筋図及び鉄筋形状表の図面がある。また,防災調整池について,配筋図の図面がある。

 (ウ) 設計図書上の積算に係る記載

 本件工事の仕様書(土木工事施工条件)には,積算について,土木工事積算基準書(平成26年度版(平成27年4月時の修正版))及び平成27年度4月版単価を適用していると記載がある。

 (エ) 質問回答書の記載

 本件工事の公告期間中の,設計書,仕様書,図面及び工事に関する説明書に対する質問回答書には,浸出水調整池に係る記載はない。

 (オ) 浸出水調整池に係る変更協議

 浸出水調整池の変更に係る工事打合せ簿には,次のとおり記載されている。

a 工事打合せ簿1

発議等

受注者

発議年月日

令和2年1月9日

発議内容

協議

内容

 浸出水調整池工の設計図面について

 浸出水調整池工(調整池・沈砂池・中継槽)の設計図面について,広島市建設工事請負契約約款第18条に基づき協議願います。

 (添付図書として次の書類が提出されているが,添付を省略する。)

 ・協議内容

処理・回答者

処理・回答年月日

令和2年1月9日

処理・回答

 上記について回答します。協議のとおり,配筋図を作成してください。設計変更の対象とする。広島市の積算基準により変更する。

b 工事打合せ簿2

発議等

受注者

発議年月日

令和2年1月22日

発議内容

提出

内容

 浸出水調整池工の配筋図について

 浸出水調整池工(調整池・沈砂池・中継槽)の配筋図を作成しましたので,提出します。

 (添付図書として次の書類が提出されているが,添付を省略する。)

 ・提出書類

処理・回答者

処理・回答年月日

記載なし

処理・回答

 上記について受理します。

c 工事打合せ簿3

発議等

発議年月日

令和2年5月8日

発議内容

協議

内容

 浸出水調整池工の設計図面について

 標記について,令和2年1月9日付けで回答したことについて,別紙のとおり,協議します。

 (次の内容を記載された別紙が添付されている。)

 令和2年1月9日に協議のあった浸出水調整池工(調整池・沈砂池・中継槽)の工事施工のための配筋図の作成について,「設計変更の対象とする」との回答をしましたが,関係課と協議し,協議書等の内容を精査したところ,当該配筋図は,設計図書に基づく工事の施工のための詳細図等に該当し,作成費用は本件工事の技術管理費に含まれていることなどから,次のとおり,協議します。

⑴ 今回の配筋図の作成費用は,支払うことはできません。

⑵ 約款第18条第1項第3号「設計図書の表示が明確でないこと。」に該当しません。

広島市建設工事請負契約約款(抜粋)第18条第1項⑶

(条件変更等)

第18条 受注者は,工事の施工にあたり,次の各号のいずれかに該当する事実を発見したときは,その旨を直ちに監督員に通知し,その確認を請求しなければならない。

⑶ 設計図書の表示が明確でないこと。

処理・回答者

受注者

処理・回答年月日

令和2年5月8日

処理・回答

 上記について承諾します。

 (カ) 本件工事におけるこれまでの支払状況

 a これまでの支払状況

 出来高に係る支払は,約款第37条第1項に規定されており,これまでの出来高に対しては支払が行われているが,浸出水調整池における出来高は0%であり,出来高の支払は行われていない。

 b 部分払に係る検査

 当該検査については,約款第37条第4項に規定されており,4回目までの請求に係る出来形部分等を確認するため,広島市の検査を受けている。

 令和2年3月12日に,検査担当課である技術管理課により4回目の検査が実施されており,工事検査調書に施行の確認が記されている。

 (キ) 恵下埋立地(仮称)実施設計その他業務(以下「実施設計業務」という。)

 a 浸出水調整池及び防災調整池の図面に係る記載内容

 実施設計業務の特記仕様書には,浸出水調整池及び防災調整池について作成する実施設計図等に「配筋図(鉄筋加工図,鉄筋表を含む)」と記載がある。

 b 完了に係る検査

 当該検査については,広島市委託契約約款(建設コンサルタント業務等用B・債務負担)(24.4改正)第32条第2項に規定されており,業務完了を確認するため,広島市の検査を受けている。

 平成27年3月27日に,恵下埋立地建設事務所により完了検査が実施されており,業務検査調書に施行の確認が記されている。

 イ 関係職員への聴き取り調査を行ったところ,次の内容の証言を得た。

 (ア) 令和2年1月9日の協議では,配筋図作成の費用は請負代金額に含まれていないと解釈していたが,具体的な計上方法は明確ではなく確定していなかった。

 (イ) 令和2年1月9日の協議の配筋図は,受注者が工事施工に当たり任意で作成する詳細図であり,その作成費用は本件工事の技術管理費に含まれていることを,その後技術管理課に確認している。

 ⑶ 関係人への調査

 ア 地方自治法第199条第8項の規定により,関係人であるA企業体に対して聴き取り調査及び関係書類の確認を行った。

 イ その結果,次のとおり確認された。

 (ア) A企業体は,本件工事の公告期間中には設計図書に鉄筋数量が掲示され見積を行うことが可能であり,設計図書に不足する図面はないと考えて配筋図が不足していることについての質問書を提出していなかったこと。

 (イ) A企業体は,工事期間中に設計照査を行った際に設計図書に配筋図の不足があると考え,約款第18条に基づく協議を令和2年1月9日に工事打合せ簿で行ったこと。

 (ウ) A企業体は,令和2年1月9日の協議以降にその協議の回答内容について広島市と更に協議を進め説明を受け,同年5月8日に工事打合せ簿で以下の事項について承諾したこと。

 a 令和2年1月9日の協議に伴って作成した配筋図の作成費用を広島市が支払わないこと。

 b 令和2年1月9日の協議は約款第18条第1項第3号の「設計図書の表示が明確でないこと。」に該当しないこと。

2 判断

 約款第18条では,受注者は,設計図書の表示が明確でないこと等の事実を発見したときは,その旨を直ちに監督員に通知し,その確認を請求しなければならない(第1項),監督員は,その請求をされたときは直ちに調査を行わなければならない(第2項),発注者は,受注者の意見を聴いて調査の結果を取りまとめ,その結果を受注者に通知しなければならない(第3項),設計図書の表示が明確でないこと等の事実が確認された場合で必要があると認められるときは,発注者が設計図書の訂正又は変更を行わなければならない(第4項),その設計図書の訂正又は変更が行われた場合において,発注者は,必要があると認められるときは請負代金額を変更しなければならない(第5項)とされている。

 本件請負契約の発注者たる広島市は,令和2年1月9日に受注者たるA企業体から,約款第18条に基づく配筋図作成の協議を受け,協議のとおり配筋図を作成すること及び設計変更の対象とすることを回答した。

 これに対して請求人はその大要,令和2年1月9日の広島市とA企業体の協議において,約款第18条に基づきA企業体が配筋図を作成しその費用を広島市が支払うことが決定されているが,この図面は約款において発注者が提供することとなっており,受注者が作成してその費用を発注者が支払うことは不当な支出に当たると主張している。また,陳述においては,この図面は本件請負契約の範囲において本来受注者が作成すべきものであって約款第18条に該当するものではないとも考えられ,いずれにしても設計変更により広島市が受注者に図面作成費用の支払をすることは不当な支出に当たると主張している。

 この主張について広島市は,令和2年1月9日の協議では,本来受注者が作成すべき配筋図の作成費用が本件請負契約の請負代金額に含まれていないと解釈していたが,その後,この費用は請負代金額の間接工事費の一部である技術管理費に含まれていたと判断し,A企業体にもさらに協議を進める中でこのことを説明し,同年5月8日に当該費用を支払わないことを工事打合せ簿で再度協議し承諾を得たことから,広島市に損害は発生しないと主張している。

 また,関係人調査でA企業体は,令和2年1月9日の協議においては,約款第18条に該当し設計変更の対象であると考えていたが,その後,広島市とさらに協議を進める中で上記の説明を受け,同年5月8日に設計変更の対象ではなく広島市から当該費用が支払われないことを承諾したことが確認された。

 このほか,監査委員は監査により,本件請負契約における設計図書は明確であり,浸出水調整池の配筋図に不足はなかったこと,技術管理課が定める設計変更ガイドラインに従えば,令和2年1月9日の広島市とA企業体との協議に基づいて作成した図面は,本件請負契約の範囲において受注者が作成すべきものであったことを認めることができた。このため,令和2年1月9日の協議時において,広島市からA企業体への図面作成の委託の合意があったことを前提に図面作成の費用を広島市がA企業体に支払うことになるとすると,不当な支出に当たるものと考えられる。しかしながら,その後,広島市とA企業体との間の協議による合意により,同日の協議は設計変更の対象ではなく広島市が今回の配筋図の作成費用を支払うことのないよう修正・確認されている。

 このように,広島市はこれまでに図面作成の費用を変更契約により支出しておらず,今後も支出することはないため,広島市の損害は認められない。

3 結論

 以上のとおり,本件措置請求については,請求人の主張はその請求事実がないことから,却下する。

第5 意見

 今回の設計変更対応に係る監査を通じ,その適切な運用について,広島市長に対して,以下のとおり意見を述べる。

 工事中の受注者からの書面による設計変更協議に対して,協議内容を十分精査し確認したうえで広島市が定める設計変更ガイドラインに基づいて回答がなされていれば,今回のような問題には至らなかったものと考えられる。

 今後は,このガイドラインに基づいた適切な設計変更の実施及び変更事務におけるチェック体制の強化に努められたい。