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成年後見人等は家庭裁判所が、本人の生活・療養の支援や財産管理について、適正な仕事を期待できる人で、本人にとって最も適任だと思われる人を選任します。配偶者や親族が選ばれることが最も多いです。
また、成年後見人等の仕事には、法律や医療、福祉の専門的知識が必要な場合もあるため、弁護士や司法書士、福祉関係の専門家等にまかせたほうが適当な場合には、親族以外のこうした専門家が選ばれることもあります。また、同時に2人以上の複数の人や福祉に関わる法人(注釈)が選ばれることもあります。
(注釈)広島市社会福祉協議会は、平成23年10月から成年後見事業(法人後見)を開始しました。
しかし、誰でも成年後見人等になれるわけではありません。民法847条の欠格事由([1]未成年者、[2]家庭裁判所に解任された法定代理人(成年後見人等)、[3]破産者、[4]本人に対し訴訟をし、またはした者およびその配偶者並びに直系血族、[5]行方不明者)に1つでも該当していると成年後見人等にはなれません。
親族が成年後見人等になる場合
メリット
活用例:
親が認知症になり通帳や土地の管理を代わりにしたい など
専門家が成年後見人等になる場合
メリット
専門性の高さを活かした支援ができる
活用例:
親 | 4.4% |
---|---|
子 | 28.8% |
兄弟姉妹 | 8.8% |
配偶者 | 5.7% |
その他親族 | 10.9% |
弁護士 | 10.2% |
知人 | 0.4% |
法人 | 3.4% |
司法書士 | 15.6% |
社会福祉士 | 8.9% |
その他 | 2.9% |
最高裁判所「成年後見関係事件の概況」より(平成22年)
親族(親・子・兄弟姉妹・配偶者・その他親族)が成年後見人等に選任された割合が全体の半数以上となっています。今後は、親族以外の第三者(弁護士・司法書士・社会福祉士等)が増加することが見込まれます。
専門家が成年後見人に選ばれた事例
1.司法書士が成年後見人になる事例
本人は20年前に統合失調症を発症し、15年前から入院していますが、徐々に判断能力が低下しています。また、障害認定1級を受け障害年金から医療費が支出されています。本人は母ひとり子ひとりでしたが、母が半年前に死亡したため、親族は母方叔母がいるのみです。亡母が残した自宅やアパートを相続し、その管理を行う必要があるため、母方叔母は後見開始の審判の申立てを行いました。
家庭裁判所の審理を経て、本人について後見が開始されました。そして、母方叔母は、遠方に居住していることから成年後見人になることは困難であり、主たる後見事務は、不動産の登記手続とその管理であることから、司法書士が成年後見人に選任され、併せて公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートが成年後見監督人に選任されました。
2.社会福祉士が成年後見人になる事例
本人の状況:重度の知的障害 ・申立人:母 ・成年後見人:社会福祉士
本人は、ひとりっ子で生来の重度の知的障害があり、長年母と暮らしており、母は本人の障害年金を事実上受領し、本人の世話をしていました。ところが、母が脳卒中で倒れて半身不随となり回復する見込みがなくなったことから、本人を施設に入所させる必要が生じました。
そこで、本人の財産管理と身上監護に関する事務を第三者に委ねるために後見開始の審判を申立てました。
家庭裁判所の審理を経て、本人について後見が開始されました。そして、本人の財産と将来相続すべき財産はわずかであり、主たる後見事務は、本人が今後どのような施設で生活することが適切かといった身上監護の面にあることから、社会福祉士が成年後見人に選任されました。
複数の成年後見人が選ばれた事例
1.親族の二人が成年後見人になる事例
本人の状況:重度の認知症の症状 ・申立人:長男 ・成年後見人:申立人と本人の二女
本人は夫を亡くした後、ひとり暮らしをしてきましたが、約10年前から徐々に認知症の症状が現れ、3か月前から入院しています。最近では見舞いに訪れた申立人を亡夫と間違えるほど症状は重くなる一方です。本人の入院費用の支払に充てるため、本人の預貯金を払い戻す必要があり、後見開始の審判が申立てられました。
家庭裁判所の審理の結果、本人について後見が開始されました。そして、近隣に住んでいる長男と二女が、本人が入院する前に共同して身のまわりの世話を行っていたことから、長男と二女が成年後見人に選任され、特に事務分担は定められませんでした。
2.親族と弁護士が成年後見人になる事例
本人の状況:くも膜下出血による植物状態 ・申立人:妻 ・成年後見人:申立人と弁護士
2年前に本人はくも膜下出血で倒れ意識が戻りません。妻は病弱ながら夫の治療費の支払いや身のまわりのことを何とかこなしていました。しかし、本人の父が亡くなり、遺産分割協議の必要が生じたため、後見開始の審判を申立てました。
家庭裁判所の審理の結果、本人について後見が開始されました。そして、妻は、子どもと離れて暮らしており、親族にも頼る者がいないため、遺産分割協議や夫の財産管理をひとりで行うことに不安があったことから、妻と弁護士が成年後見人に選任され、妻が夫の身上監護に関する事務を担当し、弁護士が遺産分割協議や財産管理に関する事務を担当することになりました。
成年後見人等の心得
成年後見人等は本人の財産を適切に維持管理しなければなりません
成年後見人には、本人の利益のために、本人の財産を適切に維持し管理する義務があります。保佐人、補助人も与えられた権限の範囲内で同様の義務があります。
そのため、たとえ本人と成年後見人等が親族関係にある場合でも、あくまで「他人の財産を預かって管理している」という意識を持って、成年後見人等の仕事に取り組むことが大切です。
成年後見人等が本人の財産を、自らのために使用すること、親族などに贈与・貸付けをすることなどは、原則として認められません。
成年後見人等が、家庭裁判所の許可なしに、本人の財産から報酬を受けることは認められません。
なお、成年後見人等が本人の財産を不適切に管理した場合、成年後見人等を解任されるほか、損害賠償請求を受けるなど民事責任を問われたり、業務上横領などの罪で刑事責任を問われたりすることもあります。
成年後見人等は本人の意思を尊重し、本人の心身の状態や生活状況に配慮しなければなりません
判断能力の低下といっても、必ずしもすべての能力が失われるわけではありません。そのため成年後見人等は、本人に残された能力がある限り「その意思を最大限に尊重」して、「不足なところを補う」という心構えが大切です。
成年後見人等の仕事には財産管理のほかに、本人の生活状況の確認や居住に関する手続き、病院の入退院や施設の入退所に関する手続きなどを行う身上監護も含まれます。いずれの仕事も、本人の生活に直接に影響するものですから、本人の心身の状態や生活の状況に配慮した上で行う必要があります。
これらのことを踏まえ、成年後見人等は本人の心身の状態を考慮し、本人にとって最も良い生活を送れるように配慮しなければなりません。財産管理はそのための手段といえます。
監督・成年後見監督人等とは
「監督」とは、成年後見人、保佐人、補助人の仕事を、家庭裁判所が定期的にチェックをすることです。その際には、本人の財産や生活の状況、後見事務の内容を報告することになります。また、場合によっては、説明のために家庭裁判所に出向く場合もあります。
その他に、成年後見人等には「成年後見監督人等」が付くこともあります。成年後見監督人等も家庭裁判所と同様に成年後見人等が仕事を適正に行っているかどうかチェックします。もしも、成年後見人等に不正があった場合は、成年後見監督人等は家庭裁判所に成年後見人等の解任の申立てをすることができます。
成年後見人等の仕事は大きく分けて「財産管理」と「身上監護」になります。また、定期的に家庭裁判所への報告を行うことも大事な仕事です。
財産管理
本人に代わって財産の管理を行います。財産を維持することだけでなく処分することも含まれており、その内容は日常生活の金銭管理から重要財産の処分まで多岐にわたります。
身上監護
本人の生活や健康に配慮し、安心した生活がおくれるように契約などの法律行為を行います。
本人に対し成年後見人等が食事の世話をしたり実際に介護することなどは含まれていません。また、入院・入所の際の身元保証人・身元引受人になることや医療行為について同意することはできません。
定期的に…
家庭裁判所への報告
家庭裁判所は、成年後見人等に対して定期的あるいは随時、後見事務に関する報告を求め、調査します。また、本人の生活の大きな変動、大きな財産処分、高額な物品の購入、遺産分割などがある場合は、事前に家庭裁判所に連絡し、指示を受けることになります。
成年後見人等として仕事をする上で、契約を結ぶ際などに「登記事項証明書」の提示が求められます。
家庭裁判所の審判により選任され、成年後見人等に就任します。
本人の状態が変化した場合の対応について
本人の判断能力が回復して、成年後見、保佐及び補助の支援が必要なくなった場合や、判断能力がさらに低下して類型を変更したい場合には、本人、配偶者、四親等内の親族、成年後見人等は、申立てを行うことで、類型の変更や取消しをすることができます。
例えば、現在「補助」を利用していて…
判断能力が回復した場合
取消しの申立て(診断書を添付) をすると、調査、審問などの手続きが、(場合によってはさらに鑑定も) 行われます。その期間は状況によって異なります。
判断能力がさらに低下した場合
「成年後見」や「保佐」の申立てを再度行わなければなりません。
なお、新たに申立てをする場合、「開始」を請求するときと同様に、手数料などが必要となります。
(注釈)遺言や結婚・離婚、認知、養子縁組などをいいます。
(注釈)生命、身体に危険を及ぼす可能性のある検査、治療行為などをいい、与薬、注射、輸血、放射線治療、手術などをいいます。
本人死亡後の事務処理(福祉サービスの解約手続、各種支払い等)については、成年後見人等に行う義務はありません。死亡後の事務処理は原則として親族が行います。
成年後見人等の任期が終了するのは次のような場合が考えられます。
本人の判断能力が回復して成年後見人等の支援が必要なくなった場合は、その時点で任務は終了となります。
成年後見人等は「正当な事由」があれば家庭裁判所の許可を得て、辞任することができます。「正当な事由」としては、成年後見人等の老齢、体調が良くないことや遠方へ転勤等で本人への支援に支障が出る場合などが考えられます。
辞任により成年後見人等が欠けることになる場合には、辞任する成年後見人等は後任者の選任を家庭裁判所へ請求しなければなりません。
成年後見人等が本人の財産を横領したり、本人等へ虐待を行うというような不適切な行為があった場合、本人や成年後見監督人等による申立てまたは家庭裁判所の職権により解任される場合もあります。また、本人のために何もしなければ、任務怠惰ということになり解任されることもあります。
成年後見人等が亡くなっても、本人の判断能力が十分でない限り、本人が生存している間は成年後見等が続きます。このように成年後見人等が欠けた場合、本人の親族からの請求や裁判所の職権で、家庭裁判所は後任者を選任することになります。
本人が死亡した場合は、成年後見等は終了します。
財産管理のために活動したときの交通費や通信費などは、実費を本人が負担することになり、本人の財産の中から支払われます。
成年後見人等には、その事務の内容に応じて、本人の財産の中から報酬が支払われます。この報酬は、成年後見人等が、1年などの一定期間の支援を行った後に家庭裁判所に対し報酬請求の申立てをしなければなりません。これに対し、家庭裁判所は、事務の内容などを考慮して、報酬を認めるかどうか、認める場合には報酬の額をいくらとするべきか決定します。
成年後見人等は家庭裁判所から報酬を認める旨の審判がなされた後、認められた額だけを本人の財産から受け取ることができます。
また、成年後見監督人等がいる場合の報酬も同様です。
広島市成年後見制度利用支援事業
広島市では、資力が十分でなく、成年後見人等への報酬の支払いが困難な人(成年被後見人、被保佐人、被補助人)に、家庭裁判所が決定した報酬に相当する額を助成します。
【対象となる人】
広島市内に居住する成年被後見人等のうち、次のいずれかに該当する人です。(報酬助成の申請時点)
(注釈)成年後見人等が成年被後見人等の親族(民法第725条に規定する親族)の場合は対象になりません。
【助成額】
家庭裁判所が決定する成年後見人等に対する報酬額を助成します。ただし、次の額を上限とします。
(注釈)本人、配偶者、親族等が成年後見人等選任の申立てを行った場合は、平成22年7月1日以降の成年後見人等の業務が助成対象となります。
(注釈)各区役所厚生部健康長寿課又は保健福祉課にご相談ください。
電話: 082-504-2145
Fax: 082-504-2136
メール: korei@city.hiroshima.jp
電話: 082-504-2148
Fax: 082-504-2256
メール: jiritsu@city.hiroshima.jp
電話: 082-504-2228
Fax: 082-504-2256
メール: seishin@city.hiroshima.jp