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平和宣言
本日、平和記念日を迎えた広島市民は、思い出も新たに、当時を回顧し、万感胸に迫るものがある。
13年前に起こった原爆の悲劇は人類史上、類のない、まことに不幸なでき事であって、今なお被爆市民の生命をおびやかし、犠牲者は跡を絶たない。
こうした悲惨な現実に直面しつつ、われわれは平和への祈りをこめて、人類永遠の平和を象徴する平和都市「ひろしま」の建設に努力してきた。今日、あのように草木も青々と茂り、家並も美しく立ちならんできた街を目のあたりにして謹んで地下の諸霊を弔うとともに、いよいよ平和への信念を固くするものである。
今や原水爆禁止の世論は漸く高まり、核実験停止決議や査察専門家会議開催など前途に僅かながらも曙光を見いだし得るかの感があるが、われわれは更に声を大にして世論を喚起し、核兵器の製造と使用を全面的に禁止する国際協定の成立に努力を傾注し、もって人類を滅亡の危機から救わなければならない。
ここに、われら広島市民は自らの体験にもとづき決意を新たにして全世界に訴えるものである。
1958年(昭和33年)8月6日
広島市長 渡辺 忠雄