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昭和59年(1984年)

ページ番号:0000009436 更新日:2019年10月21日更新 印刷ページ表示

平和宣言

8月6日—あの忘れ得ぬ日の一瞬の閃光と、身を焦がす灼熱、地軸を揺るがす轟音は、われわれの脳裡に焼き付き、今もなお消え去ることはない。

言語に絶する原子爆弾の惨禍を体験した広島は、繰り返し、核兵器の廃絶と恒久平和の確立とを、訴え続けて来た。

しかるに、米・ソ両国は、相互の不信と憎しみをますますつのらせ、核抑止論の名のもとに、自らの安全確保への道を核軍備の増強に求め、戦略兵器削減交渉や、中距離核戦力制限交渉を中断したまま、核軍拡競争に狂奔している。

また、両国の高度に開発された中距離核ミサイルのヨーロッパ・アジア地域への配備や、宇宙空間にまで拡大された核戦略により、軍事的緊張は極度に高まり、世界は核戦争の脅威にさらされている。

ひとたび核戦争が起これば、勝者も敗者もなく、全人類は絶滅するのみである。

この危機に直面して、インド・スウェーデンを始めとする6か国首脳は、核兵器保有国に対し核軍縮を要請するなど、軍縮への世界各国の動きが活発化している。

また、核兵器反対の市民運動は大きな盛り上がりを見せ、「ヒロシマの心」は世界に広く深く浸透し、これが国際世論にまで高まっている。

核兵器保有国は、これらの国際世論を真剣に受け止め、核実験を即時全面的に停止し、核兵器廃絶に踏み出すべきである。特に人類生存の命運をにぎる米・ソ両国は、直ちに核軍縮交渉を再開するとともに、互いの確執を断ち、一日も早く首脳会談を開催するべきである。

わが国は、憲法の平和理念を堅持し、唯一の被爆国として非核三原則を空洞化させることなく、これを厳守するとともに、核軍縮の促進と東西緊張の緩和に積極的に取り組まなければならない。

今や、人類は、破滅か生存かの重大な岐路に立っている。

われわれは、世界恒久平和の理想を高くかかげ、英知をもって対決から対話へ、不信から友好へ、歴史の流れを変えなければならない。

広島・長崎両市は、核兵器の廃絶を希い、平和と協調のため、世界の都市に連帯を呼びかけた。その輪は大きく広がり、被爆40周年には「世界平和連帯都市市長会議」を開催し、都市連帯による新しい平和秩序を探求する。

被爆39周年の本日、われわれは改めて原爆被爆者及び遺族のために、国家補償の理念に立った被爆者援護対策が早期に講じられるよう強く求めるとともに、犠牲となられた御霊の前に、深く慰霊の誠と平和への誓いとを捧げるものである。

1984年(昭和59年)8月6日

広島市長 荒木 武