interview 歯科健診と口腔ケアでオーラルフレイル予防
広島市歯科医師会地域連携担当理事
藤田友昭氏(38)
お口のトラブルはフレイルの入り口
年齢とともに心身の機能(働き)が低下し、要介護状態に陥る危険性が高まっている状態を「フレイル」といいます。かむ、飲み込むといった口腔の機能が低下した状態を「オーラルフレイル」といい、「フレイル」の入り口になると言われています。「オーラルフレイル」の状態を放っておくと、食べにくいことで食欲が低下し、低栄養、さらには全身の機能低下を引き起こします。また、楽しく食事ができないと、仲間と食事をするのもおっくうになり、閉じこもりの原因にもなります。
高齢者の約5人に1人がオーラルフレイル
オーラルフレイルは、主に歯の喪失と加齢による口の周りや舌の筋力低下が原因です。ものを食べるには、かむ力と飲み込む力が必要ですが、歯周病などで歯を失うと、かむ力が弱くなり、固いものが食べにくくなります。また、口の周りの筋力が低下すると、食べこぼしや誤嚥(えん)といったオーラルフレイル特有の症状を引き起こします。市の約20%の高齢者に口腔機能の低下がみられます。最近、「固いものが食べにくくなった」「お茶などでむせる」「口の渇きが気になる」などと感じることがあれば、それはオーラルフレイルのサインかもしれません。まずはチェックをしてみましょう。(下表)
オーラルフレイルセルフチェック表
8つの質問に答え、合計点で自分の危険度をチェックしてみましょう。
質問事項 |
はい |
いいえ |
1.半年前と比べて、固いものが食べにくくなった |
2 |
0 |
2.お茶や汁物でむせることがある |
2 |
0 |
3.義歯を入れている |
2 |
0 |
4.口の渇きが気になる |
1 |
0 |
5.半年前と比べて、外出が少なくなった |
1 |
0 |
6.さきイカ・たくあんくらいの固さの食べ物をかむことができる |
0 |
1 |
7.1日2回以上、歯を磨く |
0 |
1 |
8.1年に1回以上、歯科医院に行く |
0 |
1 |
↓
合計点数 |
危険度・取るべき行動 |
0〜2点 |
オーラルフレイルの危険性は低い
⇒口や舌の体操をして、今の状態を維持しましょう。 |
3点 |
オーラルフレイルの危険性がある
⇒歯科医院で歯科健診を受けましょう。毎日、口や舌の体操をしましょう。 |
4点以上 |
オーラルフレイルの危険性が高い
⇒歯科健診を受け、歯周病などがあれば治療しましょう。
歯科医院で口腔の機能を高めるための指導を受けましょう。 |
かかりつけ歯科医に相談を
オーラルフレイルを予防するためには、かかりつけ歯科医院で歯科健診を受け、しっかりかめる状態を維持しましょう。特に60歳、70歳の人は、市の「節目年齢歯科健診」を必ず受けてください。また、口の周りの筋肉を鍛える体操(下図)を自宅で毎日やってみましょう。口腔機能について気になることがあれば、かかりつけ歯科医やお住まいの地区を担当する地域包括支援センターに気軽に相談してください。
新型コロナウイルス感染症の重症化リスクと口腔ケア
新型コロナウイルス感染症は、糖尿病があると重症化しやすいと言われていますが、歯周病になると糖尿病を悪化させることが分かっています。また、飲み込む力の低下による誤嚥で肺炎を重症化させるなど、新型コロナウイルス感染症の重症化リスクとオーラルフレイルは意外な関係があります。誰もが新型コロナウイルス感染症にかかる可能性がある今だからこそ、歯科健診と口腔ケアが一層大切なのです。