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「世界に誇れる『まち』広島」の地域福祉の再構築に向けて~広島型・福祉ビジョン~

ページ番号:0000040533 更新日:2020年1月15日更新 印刷ページ表示

平成28年(2016年)2月、広島市長は、福祉分野の施策についての基本的な問題認識や重要だと思う点などをまとめた、「世界に誇れる『まち』広島」の地域福祉の再構築にむけて(通称:広島型・福祉ビジョン)を発表しました。

〔参考〕 2016年02月08日記者会見

広島型・福祉ビジョン

1.現状認識について

(1)我が国全体の状況

  • 我が国は、世界に類を見ないスピードで少子高齢化し、2008年には、本格的な人口減少社会に突入した。
  • 人口のオーナス期に入り、
    • 右肩上がりの経済成長の終焉
    • 雇用基盤(正規雇用、終身雇用、充実した福利厚生等)の変化
    • 核家族化、単身世帯の増加など家族形態の多様化
    • 地域社会のつながりの希薄化
      など、変容せざるを得なくなっている経済環境・社会構造に対応し得る社会保障制度が求められている。
  • そこで、国においては、社会保障制度をすべての世代に安心・納得してもらい、長く、将来にわたって持続する制度とするために、消費税率を引き上げ、それによる増収を社会保障制度の充実・安定化に充てる「社会保障と税の一体改革」を進めている。
  • さらに、国では、アベノミクスの第2ステージとして、「新・三本の矢」※を掲げ、「1億総活躍社会の実現」に向けた取り組みをしている。

 ※新・三本の矢
 少子高齢化という我が国の構造的な問題に正面から取り組み、50年後も人口1億人を維持し、国民1人ひとりが生きがいを持って、充実した生活を送ることができることを目指すもの
 第一:「希望を生み出す強い経済」、第二:「夢をつむぐ子育て支援」、第三:「安心につながる社会保障」

(2)本市の状況

ア 少子高齢化と人口減少
  • 本市の総人口は2015年12月末現在で119.1万人となっているが、近年、人口増加のペースは鈍化しており、自然増(出生数-死亡数)、社会増(転入者数-転出者数)ともに鈍化傾向にある。
  • 2005年には老年人口(65歳以上人口)が年少人口(0~14歳人口)を逆転し、2010年には65歳以上1人に対して20~64歳3人という「騎馬戦型」の人口構造となっている。
  • 2014年の合計特殊出生率は1.49で、全国平均(1.42)よりは高いが、人口置換水準(2.07)には程遠く、市民の希望出生率(1.81)との差も大きい。

[国立社会保障・人口問題研究所の地域別将来推計人口(2013年3月推計)]

  • 本市の総人口は2015年以降減少に転じ、2040年に109.3万人(2015年比93%)、2060年には93.3万人(同79%)に減少する。
  • そのような中、2025年には老年人口は33.3万人(27.8%)、75歳以上の人口は20.2万人(17.2%)となり、その後も、2045年まで増加する。
  • そして、2040年には65歳以上1人に対して20歳~64歳1.4人、2060年には1人に対し1.3人と、完全に「肩車型」の人口構造となる。
  • なお、本市が2016年3月に策定予定の「世界に誇れる『まち』広島人口ビジョン」で示した「出生率の向上※1」と「若い世代を呼び込んでいくこと※2」を実現し、2040年に119.1万人、2060年に116.7万人と、人口110万人台を維持したとしても、「肩車型」の人口構造となる。
    • ※1 2030年に市民の希望出生率(1.81)、2040年に人口置換水準(2.07)を達成、その後も維持
    • ※2 東京圏・関西圏への転出超過の抑制
イ 家族形態の変化
  • 共働き世帯が一般化しており、就学前児童の44.3%、就学児童の61.8%で、母親が就労(育休含む)している。現在、就労していなくても、就学前児童の母親の73.0%、就学児童の母親の64.7%が将来的な就労を希望している。
  • また、単身世帯数は、2010年で18万9千世帯(36.9%)と、全国平均(32.4%)よりも高い割合となっており、特に、一人暮らし高齢者(65歳以上)は42,600人(2014年)と、2005年以降大幅に増加している。
  • さらに、ひとり親世帯は14,178世帯(2013年)と増加傾向にある。
ウ ライフサイクルの変化
  • 平均寿命(2010年)は男性79.93歳、女性86.86歳と全国平均よりも若干長くなっているが、いわゆる健康寿命(2010年)は男性69.96歳、女性72.19歳と全国平均よりも若干低い状況となっていることから、健康上の問題で日常生活に制限を抱えている高齢者が全国平均よりも多くなっている。
  • また、平均初婚年齢は男性30.7歳、女性29.3歳(2013年)、母親の平均出生時年齢が31.7歳(2014年)と、晩婚化、晩産化が進んでいる。高齢出産率(35歳以上の出産の率)は、2013年は25.9%と、年々上昇している。
  • 家族内での子育てと介護が同時進行となる「ダブルケア」は一層増加する傾向にある。
エ 地域コミュニティの変化
  • 地域コミュニティの基盤である「町内会・自治会加入率」は、近年、毎年1%程度ずつ低下し続け、2015年には61%となっている。
  • 市民意識調査でも、近年、地域社会(コミュニティ)とのつながりが弱くなっていると感じている者が多く(65.7%)、特に、20~40代では、70%超が、子育て世帯(親と子の世帯)では68.3%が「弱い」と感じている。
オ 雇用・就労環境の変化、格差の拡大・子どもの貧困
  • 若者(15~34歳)の非正規雇用割合は2012年には34.1%に達するなど、生産年齢人口(15~64歳)全体における割合(31.3%)や15~59歳における割合(29.4%)と比較して高水準であり、また、非正規雇用の給与は正規雇用と比較して低くなっている。
  • また、子育て世帯の平均所得金額は、2014年で660万円となっている。広島県全体でみると、2004年の705万円から2014年の679万円と低下している。
  • 子どもの相対的貧困率※(全国)は、2012年には16.3%と、近年、上昇傾向にあり、特に、ひとり親家庭(大人が1人の世帯)では54.6%と、非常に高い水準であり、OECD諸国中最悪となっている。

※については、広島市も同様の傾向にある。

2.本市が目指すべき方向性

(1)基本認識

  • 本市では、「世界に誇れる『まち』広島」の実現を目指しているが、本市の状況を踏まえるならば、「翁・媼」と「童」に着目した地域福祉を再構築していくことが必要不可欠である。
  • また、その際、「自助」「共助」「公助」の適切な組み合わせにより、「持続可能性」を高めることが重要となる。
  • すなわち、「童」(子育て・教育)に関しては、「出生率の向上」や「若い世代を呼び込んでいくこと」につながるような、安心して子どもを産み育てることができる環境づくり(「子どもと子育てに優しいまち」)が必要となるが、それを確実に進めていくためには、家庭内の支え(「自助」)に加え、「共助」・「公助」を強化し、将来の広島を担う子ども達の育ちを広島市全体で支えていくことが極めて重要である。
  • また、「翁・媼」(高齢者福祉)に関しては、これから特に後期高齢者の急速な増加が見込まれる中で、高齢者が安心して暮らしていける環境づくり(「高齢者一人一人が、いきいきと、住み慣れた地域で安心して暮らせる社会」)が必要となるが、それを確実に進めていくためには、従来の「公助」による支えはもとより、可能な限り住み慣れたすまい・地域において生活を継続できるよう、健康寿命を延ばしていくための「自助」や近隣との「共助」を厚くしていくことが必要である。

(2)再構築に当たって重要となる視点

 「翁・媼」と「童」に着目した地域福祉の再構築は、市民の誰もが将来にわたって安心して働き、希望に満ちた結婚、出産、子育てをすることができ、愛着と誇りを持って住み続けられるまちを目指すものであることから、再構築に当たっては、次の3つの視点が重要となる。

ア エリアマネジメント
  • 高齢者や子どもの数そのものが地域によって差があるだけでなく、それらが置かれている状況は一様ではないことから、地域住民の参加の下で、地域ごとの実情に応じた「自助」・「共助」・「公助」を適切に組み合わせたマネジメント(管理)の下で、包括的な支援体制を確立する必要がある。
  • また、福祉にとどまらず、医療、教育、住宅、交通といった他の分野との連携を図ることによって、総合的な地域コミュニティの充実・強化・活用を進めていく必要がある。
イ 支え合い
  • 市民の結婚・妊娠・出産・子育てに関する希望に応え、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らすためには、広島市内の全域において、子ども・子育て、高齢者をきめ細かく支えていく環境づくりが進められる必要がある。
  • 特に、子ども・子育てに関しては、妊娠・出産・子育て期から青少年期と、ライフステージごとにニーズが変化するとともに、子ども・子育て家庭が置かれている状況ごとにニーズが異なることから、多様なニーズに柔軟かつ切れ目なく対応することが重要である。
  • その際、多様な担い手の確保が不可欠であり、高齢者の社会参加の推進など、従来の「支える側」と「支えられる側」の二分論にとどまらない仕掛けづくりが必要となる。また、介護・子育てサービスの提供を担う人材を安定的に確保できるようにしておく必要がある。
ウ 世代等を超えた分かち合い

 アのエリアマネジメント及びイの支え合いのいずれにおいても、重要となる「公助」の充実・強化に当たっては、その裏付けとなる財源が不可欠であり、これについては、社会全体で広く薄く負担する必要がある。その際、公平感に留意し、一定の負担能力を有する層に対しては最低限の負担を求め、その上で、世代等を超え、社会全体で分かち合うようにすることが重要である。

3.再構築に向けての具体的な課題への取組(重点事項)

(1)地域における包括的な支援体制の構築

  • 子育て支援に関しては、医療・保健・予防・教育・保育等のサービスが包括的に提供される体制(子育て世代包括ケアセンター等)を構築していく必要があり、その構築に向けては、
    • 妊娠・出産包括支援事業等の体制強化
    • 児童虐待防止を含め、子どもの健やかな育ちと親の子育てを支える体制の強化
    • 地域子育て支援拠点事業(オープンスペース)の設置促進・機能強化
    • 多様で良質な教育・保育の提供といった諸対策を進める。
  • また、高齢者の支援に関しても、医療・介護・予防・生活支援等のサービスが包括的に提供される体制(「地域包括ケアシステム」)を構築していく必要があり、その構築に向けては、
    • 高齢者自らが健康づくりと介護予防に取り組める環境づくり
    • 共助の精神で高齢者を見守り支え合うことができる地域づくり
    • 介護が必要な状態になっても、できる限り在宅で暮らすための医療・介護連携を推進する。
  • いずれの場合も、多様な担い手の確保とともに、新たな社会資源の開発なども組み合わせてマネジメントしていく必要がある。
  • そのために、地域住民やサービスの提供主体、行政等の幅広い関係者が一体となった体制づくりを進める。
  • また、こうした取組みは、分野ごとの縦割りに陥ることなく、包括的に支えていく「小さな拠点」づくりを行うという考えの下で、従来の福祉サービスにとどまらず、住宅、交通といった他分野と連携するための仕掛けづくりを進めていく。

(2)ライフステージに対応した切れ目ない保健・医療・福祉等サービスの構築

  • 子ども・子育てに関しては、妊娠・出産・子育て期から青少年期へと、ライフステージごとに大きく変化するニーズに応じた切れ目のない支援をしていく必要がある。
  • 特に、妊娠期から出産・子育て期には、心身の不調や育児不安等に対し、きめ細かく対応できる支援体制が重要である。そのため、安心して子どもを産み育てるための医療に係る経済的支援の拡充や不妊治療に伴う経済的な負担の軽減も図っていく。また、待機児童の解消に向けた保育所や放課後児童クラブの整備の推進といった取組みを進めていく。
  • 高齢者の支援に関しては、介護が必要な段階になっても、高齢者ができる限り在宅で暮らせるために、在宅医療と介護サービスを一体的に提供できるよう、関係機関の連携を強化していく。

(3)早期の発見と予防・健康づくりの重点的な推進

  • 「支え合い」をしていくために大事なことは、まず、市民一人ひとりが、できるだけ健康で自立した生活を続けることができるようにすることである。
  • 子ども・子育てに関しては、医療を受ける場合であっても、発達障害や先天性の難聴を含め、疾病等を早期に発見することが、早期かつ効果的な療育等につながることから、成長・発達(健康状態)を切れ目なく確認する機会を増やす対策を「公助」として積極的に実施していく。
  • そのため、妊婦・乳幼児健診に関しては、妊婦健診の充実や新生児聴覚検査の実施をはじめ、5歳児健診を段階的に実施していくなど、政令市トップクラスの体系を構築していく。
  • 高齢者にとっては、「健康寿命」を伸ばしていくことが重要であり、運動機能、認知機能、口腔機能等の低下を遅らせていくための継続的な運動や地域社会との交流等、積極的に取り組むことができる環境づくりが必要である。
  • そのため、特定健康診査の充実、受診率の向上を促進するとともに、健康ウォーキングや住民運営の介護予防拠点づくりを推進する。

(4)地域における支え合いの推進

  • 子育て・高齢者支援については、「公」(行政機関)と「私」(民間主体)が、バラバラにサービスを提供するならば、「隙間」や「排除」が発生し、十分な成果に結びつかない。そこで、「公」と「私」の中間的な性格を有する地域活動の主体(町内会、社会福祉協議会、NPО法人、老人クラブ、こども会、青少年健全育成協議会等)が、「共助」、すなわち、地域において支える力(支え合う力)となって、密接な連携の下、1人ひとりの課題・ニーズに着目し、積極的に支援を行うことが重要となる。
  • そのため、子ども・子育てに関しては、「オープンスペース」(地域子育て支援拠点事業)や「地域の子育てサロン」を築き、ネットワーク化・機能の強化を図り、親子の交流、相談・支援等が受けられる環境づくりを推進する。
  • また、高齢者の支援に関しては、様々な地域団体等の連携強化を図り、高齢者の見守り情報の集約、活用等を行う仕組みづくりを推進する。
  • このような、「支え合い」の機能を十分に発揮するには、多様な担い手の確保が必要となるが、平均寿命・健康寿命の延伸などを踏まえるならば、元気な高齢者層が、地域におけるサービスの担い手となれる仕組みの確立が重要となる。
  • その際、協同労働の仕組みの活用や女性の社会参加を推進するほか、ダブルケアの増加への対応にも資する男性の積極的な参加を図る。

(5)子育て・高齢者支援人材の確保

  • 子育て支援・介護に関する多様なニーズの増大に応えるためには、多様で良質な教育・保育、介護を担う人材を、将来にわたり安定的に確保していく必要があるが、全国的な需要増に伴い、その確保が難しくなる恐れがある。
  • こうした中、人材を確保し、その定着を図れるようにすることが、保育・介護の質の向上を図っていく上で不可欠となっている。人材と事業主体双方のニーズを踏まえた効果的なマッチング機会の創出とともに、「ディーセント・ワーク」に向け、優秀な人材の定着につながる処遇改善など、効果的な支援策を講じていく。
  • また、その際、人材を社会的な財産として支援・育成するような体制づくりも重要である。

(6)社会的支援の必要性が高い子ども・家庭への支援

 貧困、虐待のほか、障害などにより社会的支援の必要性の高い子どもが増加する傾向にあり、置かれている状況ごとにニーズが異なることから、多様なニーズに柔軟かつ切れ目なく対応することが重要である。

  • ア 貧困の連鎖等を防ぐための支援の充実
    • ひとり親家庭などの子どもと家庭に対し、就業支援、学習支援、子どもの居場所づくりなど、自立に向けたきめ細かい支援を充実する。
    • また、児童虐待の発生を予防し、子どもの健全な育ちを保障していくために、妊娠・出産包括支援事業やオープンスペース、乳幼児健診など、様々な事業・場を活用した早期支援の充実・強化を図る。
  • イ 障害のある子どもの支援の充実
     発達障害などの障害のある子どもについては、障害の早期発見及び療育体制の充実、特別支援教育等における効果的な教育等の支援を充実する。

(7)世代等を超えた負担の分かち合い

  • 「騎馬戦型」社会から「肩車型」社会へと移行する本市における「公助」を充実・強化していくために必要な財源については、社会全体で広く薄く負担していくことが基本となる。
  • その際、受益層の中でも一定の所得(負担能力)を有する層に対しては、所得に応じた最低限の負担を求めることで、全体として公平感が感じられるようにしつつ、世代等を超え、社会全体で分かち合うようにする必要がある。
  • また、「公助」のうち、市単独のものについては、関連する施策の充実に合わせて、整合性と持続可能性なども併せて考慮し、全体としてバランスが取れるようにしていくことが必要である。

4.今後について

 「世界に誇れる『まち』広島」の実現を目標とする本市としては、平成28年度予算より、まずは、当面取り組むべき具体的な課題に重点的に取り組んでいくとともに、今後の政策展開に当たっても、2で述べたいわば「広島型・福祉ビジョン」を基に諸施策を進め、広島市で将来に希望をもち、安心して生活を営むことができる、子どもが健やかに生まれ育つことができる、といった幸せ・生きがいを実感することができる「まち」、多様な価値観を持った市民がその価値観に応じて生き生きと暮らすことができる「まち」の実現を目指していく。

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