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折り鶴に託された思いを昇華させるための方策について(最終とりまとめ)

ページ番号:0000010126 更新日:2019年10月21日更新 印刷ページ表示

折り鶴に託された思いを昇華させるための方策について(最終とりまとめ)

目次

1 方策検討の目的
2 方策のコンセプト(基本理念)
3 市民から募集したアイデア・意見の概要
4 事業の試行実施の結果及び成果・課題の検証
5 折り鶴寄贈者へのアンケート調査結果の概要
6 思いを昇華させるための方策
7 まとめ

1 方策検討の目的

 平和記念公園の「原爆の子の像」には、国内外から年間約1,000万羽、重さにして10トン以上の折り鶴が捧げられています。この世界中の人々から託された思いを大切にし、平和への思いに応えるためには、折り鶴に託された平和を願う思いを多くの市民と共有し、この尊い「思い」を昇華させることが重要です。
 このため、検討委員会では、市民から募集したアイデアや意見を基に、事業の試行実施による成果や課題などを検証しながら、これまでの「折り鶴の長期保存」に代わる取組として、「折り鶴に託された思いを昇華させるための方策」を検討します。
 その結果を報告書としてまとめ、その方向性をベースとして、広島市において、方策の具体化に活用していただきます。

2 方策のコンセプト(基本理念)

折り鶴に託された平和への思いを共有し、新たな「思い」として継承

 折り鶴を捧げた人々の平和を願う思いが、様々な過程を経て、広島市民をはじめ世界の多くの人々の心に刻まれ、核兵器廃絶と世界恒久平和を願う輪が広がり、さらに、新たな「思い」として継承される方策を目指します。

折り鶴が広島に寄せられるようになった背景

 原爆の子の像のモデルとなっている佐々木禎子さんは、2歳の時に被爆し、被爆から10年後、6年生のときに突然白血病を発症しました。禎子さんは、入院中、鶴を千羽折ると病気が治ると聞き、千羽を超える鶴を折りましたが、8か月の闘病生活の末に亡くなりました。
佐々木禎子さんの同級生たちは、禎子さんの死に大きな衝撃を受け、これをきっかけとして、「原爆で亡くなった全ての子どもたちのために慰霊碑をつくろう」と呼びかけを始めました。同級生たちの思いから始まったこの呼びかけは、市内の小・中・高等学校を巻き込んだ大きな運動に発展し、運動の趣旨に賛同した人々から多くの募金が寄せられ、1958年5月、平和記念公園内に「原爆の子の像」が完成しました。
 このように、子どもたちの純粋な思いから始まった運動が「原爆の子の像」の建立につながり、「サダコと折り鶴」の物語は絵本やアニメなどの題材となって世界中に広がり、今日では、折り鶴は核兵器廃絶と世界恒久平和を願う世界中の人々の象徴となり、毎年1,000万羽以上、重さにして10トン以上の折り鶴が原爆の子の像に届けられるようになりました。
oriduru01原爆の子の像除幕式

3 市民から募集したアイデア・意見の概要

(1) 募集期間

 平成23年(2011年)6月1日(水曜日)~7月29日(金曜日)

(2) 応募件数

 203件

(3) アイデアの内容など

市民から募集したアイデア・意見の内訳
区分 件数 構成比
再生紙 95件 46.8%
焚き上げ 66件 32.5%
展示 43件 21.2%
記念品・寄贈(折り鶴の形を維持) 28件 13.8%
その他の加工 24件 11.8%
焼却処分 23件 11.3%
焼却灰などの利用 19件 9.4%
イベント 18件 8.9%
データベース化 18件 8.9%
その他 37件 18.2%
合計 371件 182.8%

(※1)複数のアイデアが記載されているものがあるため、応募件数とアイデア件数の合計は一致していない。
(※2)構成比は、応募件数203件に占める割合とした。

(4) 一定期間保存・展示の要否・期間

区分 件数 構成比
必要あり 84件 41.4%
  1週間 1件 0.5%
1月~1年程度 20件 9.8%
1年間 32件 15.8%
1~3年程度 11件 5.4%
5年以上 4件 2.0%
その他(一定期間など) 16件 7.9%
必要なし 4件 2.0%
記載なし 115件 56.6%
合計 203件 100.0%

4 事業の試行実施の結果及び成果・課題の検証

 市民から募集したアイデアのうち、実施・運営主体が明確であり、直ちに実施できる5つの事業を試行し、参加者からの意見などを基に、成果や課題を検証しました。

(1) とうろう流しの色紙(和紙)に再生・流灯

実施・運営者

 広島市中央部商店街振興組合連合会(とうろう流し実行委員会)
特定非営利活動法人おりづる広島

事業内容

 「ピ-スメッセ-ジとうろう流し」において、8基のとうろうの色紙(和紙)に折り鶴再生紙を使用し、原爆死没者への慰霊や平和への祈りを込めて川に流しました。

実施時期・場所

 平成23年(2011年)8月6日(土曜日)・元安川親水護岸元安橋北側

折り鶴の使用量

 約10kg(約1万羽)

障害者就労支援施設での千羽鶴の解体・選別作業の画像
障害者就労支援施設での千羽鶴の解体・選別作業

祈りを込めて川に流しましたの画像
祈りを込めて川に流しました

取組の成果と課題

 参加者を対象としたアンケートでは、「昇華させる取組としてふさわしい」と答えた人の割合が95%を超え、非常に高い評価が得られました。
 ふさわしいと思う理由としては、「平和への思いを多くの人々と共有することで、たくさんの祈りが受け継がれていく」「思いを大切にし、生かしていると感じられる」「ゴミとして処理したり燃やしたりするより良い」などの意見が多数あり、参加者の多くが折り鶴に託された思いを共有し、平和の大切さを再認識する機会となる有意義な取組であったものと考えられます。
 一方、ふさわしくない理由には、「折り鶴を捧げた人の中には再生紙にすることを望んでいない人もいる」「勝手にとうろうに変えるのは折った人に失礼」などがありました。また、この取組に「抵抗感がある」と答えた人の理由としては、「鶴を折った方々の知らないうちに処分することに申し訳なさを感じる」「捧げた人が寂しく思うことが心配」など、折り鶴を捧げた人の心情へ懸念を示すものが見受けられました。

(2) ひろしま市民芸術祭2011~折り鶴でつなごう!平和の心~

実施・運営者

 社団法人広島青年会議所
特定非営利活動法人千羽鶴未来プロジェクト

事業内容

 学生や市民が共同して折り鶴のモザイクアートを制作し、平和記念公園に展示するセレモニーなどを通して折り鶴に託された平和への思いを広く発信しました。
 なお、イベント終了後は、使用した折り鶴をノートなどに再生する予定です。
【第1部】つながりのパート

  • 折り鶴が寄贈されるようになった背景や歴史などについての学習
  • 千羽鶴を一羽ずつに解体する作業、折り鶴モザイクアート(ピース)の制作

【第2部】感謝のパート

  • 平和記念公園を訪れる多くの方々の参加を得て折り鶴モザイクアートを完成させ、芝生広場に展示
  • 折り鶴再生品の展示と紹介
  • 折り鶴寄贈者への感謝の気持ちを表現するセレモニーを実施し、折り鶴に込められた思いを受け止め、多くの人々に平和へのメッセージや思いを発信
実施時期・場所
  • 【第1部】平成23年(2011年)8月7日(日曜日)・広島なぎさ中学校・高等学校
  • 【第2部】平成23年(2011年)8月27日(土曜日)・平和記念公園
折り鶴の使用量

 約550kg(約65万羽)

市民参加による折り鶴解体・選別作業の画像
市民参加による折り鶴解体・選別作業

モザイクアート(原爆ドーム)を完成し平和記念公園芝生広場に展示の画像
モザイクアート(原爆ドーム)を完成し平和記念公園芝生広場に展示

取組の成果

 参加・来場者へのアンケートでは、「昇華させる取組としてふさわしい」と答えた人の割合が95%を超えるとともにふさわしくないと答えた人はなく、非常に高い評価が得られました。
 ふさわしいと思う理由としては、「平和の思いを世界へ発信し、広げていくことができる」「一人一人の平和を大切にする気持ちや平和への意識が深まる」などの意見が多数あり、平和の思いを広く発信するとともに、参加者の多くが平和の大切さを再認識する機会となる有意義な取組であったものと考えられます。

(3) 広島テレビ開局50年事業「平和へのひと筆 Piece for Peace HIROSHIMA」

実施・運営者

 広島テレビ放送(株)

事業内容

 平和への願いや大切な人への思いのこもった一文字を募集し、集めた文字をフォント(書体)化して人々の思いを広く発信することとし、この事業に使用する用紙(半紙、制作する絵本など)に折り鶴再生紙を使用します。
【集めた文字の活用方法】

  • テレビ番組で文字・メッセージを紹介
  • ホールなどで展示
  • 被爆体験を伝える絵本の制作 など
実施時期

 平成24年(2012年)1月~平成25年(2013年)3月

折り鶴の使用量

 約2~3t(予定)

実施上の課題

 再生紙の素材として未知数である折り鶴を使用するため、試作から配合率の決定、製作などの作業工程に長期間を要するとの課題があります。

⑷ 平和・環境ワークノートの提供

実施・運営者

 中国地区製紙原料直納商工組合

事業内容

【ノートの提供】
 折り鶴再生紙で平和と環境について学べるワークノートを作成し、県内の小学生に提供します。(公益財団法人古紙再生促進センターの平成23年度古紙回収推進事業)
 【折り鶴の解体・分別作業及び紙すき体験イベント】
 ア リサイクル勉強会(子どもたちにも理解し易いようクイズ形式で実施)
 イ 折り鶴分別作業
 ウ 紙すき体験(折り鶴と牛乳パックによるハガキ作り)

実施時期・場所など

【ノートの提供】
 平成24年(2012年)3月頃・
 県内小学校約550校の高学年児童を対象に約8万冊を配付
 【折り鶴の解体・分別作業及び紙すき体験イベント】
 平成23年(2011年)12月4日(日曜日)・楠那小学校

折り鶴の使用量

 約1.6t(約182万羽)

取組の成果と課題

 折り鶴解体・分別イベントでは、折り鶴をリサイクルすることの意義と古紙分別の重要性を伝えるとともに、リサイクルと平和を学ぶきっかけを子供たちに提供するという目的は達成できたものと考えられます。
 一方で、折り鶴の分別に時間と労力を要すること、単発的なイベントでは安定した昇華の効果が得られにくいことから、恒常的にリサイクルするための仕組み作りが必要であることなどの課題があります。

折り鶴分別作業の画像
折り鶴分別作業

紙すきによるハガキ作りの画像
紙すきによるハガキ作り

⑸ ANAボーイング787ドリームライナー広島~羽田就航記念セレモニー

実施・運営者

 全日本空輸(株)

事業内容

 新型旅客機「ボーイング787」の初就航を出迎えるセレモニーの一環として、折り鶴ウェルカムボードを広島空港内に設置するとともに、1か月間(11月1日~30日)継続して展示しました。なお、展示終了後は、古紙関係事業所に搬入し、リサイクル古紙としての処理を依頼しました。

実施時期・場所

【折り鶴ウェルカムボード制作イベント】
 平成23年(2011年)10月16日(日曜日)・広島空港
【就航記念セレモニー】
 平成23年(2011年)11月1日(火曜日)・広島空港

折り鶴の使用量

 約10kg(約1万羽)

取組の成果

 広島らしい平和への願いと県民の手作りによる温かいお出迎えをコンセプトとする事業として、マスコミによる取材・報道が数多く行われるなど、平和の思いを広く発信する有意義な取組であったものと考えられます。

折り鶴ウェルカムボード制作イベントの画像
折り鶴ウェルカムボード制作イベント

初就航の乗客をお出迎えの画像
初就航の乗客をお出迎え

(6) 試行実施による折り鶴の使用量について

 今年度試行実施した5つの事業で使用した折り鶴の総量は約4~5トンであり、これは1年間に寄せられる折り鶴の約半分に相当することから、昇華の取組は、市民主体で実施する事業としてのポテンシャルを有すると考えられます。

【試行実施事業での折り鶴使用(予定)量】
事業名 折り鶴使用量
とうろう流しの色紙(和紙)に再生・流灯 約10kg
ひろしま市民芸術祭2011
~折り鶴でつなごう!平和の心~
約550kg
広島テレビ開局50年事業
「平和へのひと筆 Piece for Peace HIROSHIMA」
約2~3t(予定)
平和・環境ワークノートの提供 約1.6t
ANAボーイング787ドリームライナー
広島~羽田就航記念セレモニー
約10kg
合計 約4~5t

5 折り鶴寄贈者へのアンケート調査結果の概要

(1) 抵抗感の有無

 試行実施のアンケートにおいて、折り鶴を捧げた人の心情へ懸念を示す意見があったことを踏まえ、折り鶴寄贈者の意向を把握するためのアンケート調査を実施しました。この結果、様々な方法で昇華させることについて、「抵抗感がある」と答えた人は1%であり、抵抗感は極めて少ないという結果が得られました。

(2) 昇華の取組に対する賛否

 また、折り鶴の取扱いについて、これまでと同様に折り鶴ブースで展示し、その後一旦保管したうえで昇華させるという方向性に賛成する人は97.5%にのぼり、「昇華させることで形が変わっても思いは共有され、心に残り、継承される。」といった昇華による効果を評価する意見や、「思いを大切にされていると感じる。」など昇華の取組自体を評価する意見、「膨大な量の折り鶴の保管には限度があり、その後の処理は負担の少ない方法で。」といった長期保管による負担を軽減することを重視する意見が数多く見受けられました。
 一方、「いいえ」と答えた人も、今よりも短い展示期間とすることを望む意見や、特定の昇華方法を支持する意見など、必ずしも昇華の方向性に反対する趣旨のものではなく、昇華の取組は、折り鶴寄贈者の思いに概ね沿ったものであると考えられます。

(3) 保管展示の期間

 さらに、「捧げた後の折り鶴の取扱いは全てお任せする。」「1日でも展示されればあとは役割を終了したものとして処分してほしい。」などの意見が多く、保管展示については、折り鶴ブースでの展示期間が目安であることが見て取れます。

6 思いを昇華させるための方策

(1) 実施方法と効果・課題の検証

 市民から募集したアイデア・意見及び事業の試行実施の結果などに基づき、具体的な実施方法を例示するとともに、それぞれの効果と課題を整理すると次表のとおりとなります。

区分 概要 効果 課題
再生紙
  • 折り鶴を溶解し、平和の思いが共有できる物や平和のメッセージの発信につながる物に再生し、希望者や国内外の子どもたちに販売・寄贈する。
  • 寄贈団体などへのお礼状などに活用する。
  • メッセージ性を付加することにより、新しく形を変えて平和への思いを広げていくことができる。
  • 再生品の種類や実施方法の工夫などにより、平和の思いを伝える多様な事業を展開することができる。
  • 平和学習のカリキュラムや修学旅行の体験プログラムとして、次世代に被爆体験を継承・伝承することができる。
  • 資源の有効活用を図ることができ、環境啓発にもつながる。
  • 実施方法により、障害者の就労支援や地域産業の活性化などに寄与することができる。
  • 折り鶴を古紙として売却した資金などによるファンドを創設することにより、平和貢献事業としての可能性が広がり、折り鶴再生のための財源の確保も期待できる。
  • 再生処理に先立ち、原則として、糸や止め具など不純物の除去作業などが必要となる。
  • 再生化には相当のコストを要するため、事業協力者や財源の確保を図る必要がある。
  • 再生した物が粗末に扱われることのないよう対策を検討する必要がある。
焚き上げ
  • 平和を祈るセレモニーとして焚き上げを行う。
  • 平和の思いを込めたとんど焼きやキャンプファイヤーなど地域や学校などの協力を得て実施する。
  • 形ある「折り鶴」が形なき尊い「思い」として昇華されることにより、平和への思いが世界に広がっていくことが期待できる。
  • 広島に定着した一大イベントとして実施すれば、平和のメッセージの大きな発信力となり、観光客の誘致にもつながる。
  • 地域を巻き込むことで、一つ一つの取組は小さくても、市全体として平和意識を高揚する大きなムーブメントを創出することができる。
  • 折り鶴を捧げた子どもたちや被爆者などの気持ちに配慮し、実施方法を慎重に検討する必要がある。
  • 火災予防のための必要な準備や、近隣から苦情が出ないような対応など実施に当たっての検討課題が多い。
展示
  • 公共施設や駅・空港などの交通結節点、企業や商業施設、宿泊施設など人が多く集まる場所に展示する。
  • 国内外の学校、希望する自治体や団体などで展示してもらう。
  • 折り鶴ブースに一定期間展示する。
  • 広島市民をはじめ、広島に来る機会のない世界の多くの人々にも平和を願う思いを伝えることができる。
  • 様々な地域や場所で展示されることにより、多くの人に平和都市広島を印象付けるとともに、平和について考えてもらう機会が増え、折り鶴を通した広島の新たなイメージの構築につながる。
  • メッセージ性と視覚的なインパクトを兼ね備えたシンボリックなイベントとして実施することにより、平和への思いの発信と観光客の誘致につながる。
  • 折り鶴ブースに一定期間展示することにより、折り鶴寄贈者の思いやメッセージを受け止める機会とすることができる。
  • 展示を終了した後の折り鶴については、展示の主催者が責任を持って適切に取り扱う必要がある。
  • 折り鶴の長期保存を前提とする旧日本銀行広島支店の展示は、折り鶴寄贈者の意向を踏まえ、見直す必要がある。
記念品・寄贈
  • 数羽程度に小分けした折り鶴を記念品やお土産として来広者や平和記念式典参列者などに配布・販売する。
  • 学校や来訪のVIP、世界の国や都市などに寄贈する。
  • 折り鶴の形のまま不特定多数の人の手元に渡ることで、目に見える形で平和の思いを永く共有することができる。
  • お土産として購入者から家族や友人などに贈られることで平和の思いが繋がり循環していく。
  • 広島を訪れることができない人にも平和のメッセージを届けることができる。
  • 寄贈先の団体などとの交流の契機となる。
  • 寄贈された折り鶴が粗末に扱われることのないよう、有償化や配付先の限定など、実施方法を工夫する必要がある。
  • 記念品として加工するための作業が必要となる。
  • 多数の団体や遠方の地域に送付する場合は、相当の輸送費が必要となる。
その他の加工
焼却灰の利用
折り鶴を再生紙以外のものに加工し、記念品やモニュメントとして再生する。 資源の有効活用になる。 加工技術や商品化などの研究開発や経費の検証など、実現可能性の検討に相当の期間を要する。
焼却処分 再生できない折り鶴や展示などの過程を経た折り鶴を焼却する。 大量の折り鶴の処理が可能となる。
  • 折り鶴を捧げた子どもたちや被爆者などの気持ちに配慮し、実施方法を慎重に検討する必要がある。
  • 「昇華」のコンセプトに合致する過程を経て実施する必要がある。
イベント 折り鶴を活用し、平和への祈りと慰霊を兼ねたイベントを実施する。
  • イベントに参加し折り鶴に託された思いを受け止めた多くの人が、平和について考え、行動する契機を得ることになる。
  • 広島発の新たな観光・文化とすることで、地域の活性化や修学旅行・観光客などのビジターの誘致につながる。
短期間のイベントのために相当の労力と経費を要する。
データベース 折り鶴の写真・映像などを寄贈者名とともに記録・公開する。
  • 折り鶴に託された思いと合わせ、折り鶴を捧げた人々自身やその行為、気持ちを尊重することになる。
  • 誰でもどこでも見られる情報とすることにより、より広く折り鶴に託された思いの共有化を図ることができる。
寄贈者の名前やメッセージなどをホームページで公開している現行の「折り鶴データベース」に折り鶴の写真・映像などを付加する場合、膨大な労力を要する。

(2) 取組の方向性

 昇華の方法については、いずれも効果と課題を併せ持っていることから、特定の方法に固定化せず、次に掲げる方向性の中で、目的や手段、用途などを総合的に勘案しながら取組を推進するとともに、時代のニーズに合わせてリニューアルしていくことが望ましいと考えられます。
 これまで大量に蓄積している折り鶴については、その保存状況なども踏まえ、様々な昇華方法のうち、できるだけ処理期間を短縮できるよう適切に対応することが肝要です。

ア 平和への思いの継承、発信
  • 被爆の惨状から再生した広島の使命として、世界中の人々の思いのこもった折り鶴を平和のツールとして甦らせ、平和を願うメッセージを発信することにより、折り鶴に託された思いが、さらに大きな普遍的な思いとして広がるような取組を推進する。
  • 折り鶴の美しい色や形を活かし、折り鶴寄贈者の思いを目に見える形で分かりやすく伝えることで折り鶴に託された思いを共有し、次世代への被爆体験の継承・伝承につながるような取組を推進する。
イ 地域や立場を超えた心の循環
  • 身近な人を大切にするなど広義の意味での平和を学び、訴え、実感できるような取組や、平和への架け橋となるような交流、ESD(社会の課題と身近な暮らしを結びつけ、新たな価値観や行動を生み出すことを目指す学習や活動)に結び付くような取組を推進する。
  • 過去の苦しみを知っている広島だからこそできる恩返し、現代の課題に結び付け将来につながるような新しい循環の創出といった観点から、広島発の国際協力・国際貢献の仕組みを構築する。
  • 障害者の就労支援や障害者の社会参加につながるような仕組みの構築や、高齢者などに生きる力や勇気を与えるような活用を図る。
ウ 広島発の新たなブランドや観光資源の創出
  • デザイン性に優れた折り鶴のロゴを募集・選定し、「昇華」を象徴するマークを広島発の新たなブランドとして浸透・定着させることにより、個々の取組の発信力や価値を高めるとともに、CSR(企業の社会的責任)重視の企業参画を促進する。
  • 折り鶴再生の過程などを修学旅行生や子どもが参加できる折り鶴再生などの体験型プログラムを構築するなど、観光資源としての付加価値を高める。
  • 世界恒久平和への祈りを込めた焚き上げや折り鶴のボリューム展示など、メッセージ性が高く、視覚的なインパクトを兼ね備えたシンボリックなイベントの開催に努める。

(3) 取組の進め方

 (2)の方向性に基づき取組を推進するに当たっては、「昇華」のプロセスの範囲や流れを明確にしたうえで、市民をはじめできるだけ多くの人々が主体的に参画できるような環境づくりや、経済性も考慮した持続可能な取組とするための仕組みの構築などに意を用いながら、実効性のある取組として展開していくことが重要です。

ア 「昇華」の流れと位置づけ
  • 「原爆の子の像」の周囲に設置している折り鶴ブースへの展示については、折り鶴を捧げる人々の思いやメッセージを受け止めるための象徴的な機会として捉え、「昇華」の一部と位置づける。
  • 折り鶴の寄贈者へのアンケート調査結果によれば、基本的に折り鶴を捧げた段階でその思いは完結しており、捧げた後の保存や展示まで期待されていない。こうしたことを斟酌すると、折り鶴の象徴的な展示は折り鶴ブースでの展示をもって終了し、次の「昇華」のステップに進めることが妥当であり、既設の旧日本銀行広島支店での展示も見直し、他の方法により「昇華」させることが、折り鶴寄贈者の意向に沿った取扱いであると考えられる。
  • 折り鶴ブースに展示の後、「昇華」の過程を経た折り鶴は、一定の使命を終えたものとし、その後は「昇華」の取組を行った実施・運営主体によって適切に処理されれば問題ないものと考えられる。
イ 市民主体の取組の推進
  • 折り鶴に託された思いをより多くの市民が共有し、市民活動として根付くことが重要であり、一定の基準を設けて「昇華」の趣旨に合致する取組の実施主体に折り鶴を託す、象徴的な取組の提案を公募により実施するなど、取組のプロセスへの積極的な市民参画を促進する。
  • 平和教育の一環として学校との連携を図るとともに、アジア競技大会時の一館一国運動のような地域に密着した機運の醸成や現在活動している団体のネットワークの活用を図るなど、市民レベルでの活動の輪を広げる。
  • 自由な発想で事業の検討や実施・運営を担うボランティアを募集するなど、市民の手によるムーブメントを展開する。
  • 障害者就労支援施設や関係団体などと連携し、折り鶴を通じた障害者の社会参加や地域交流を促進する。
ウ 行政の役割
  • 「昇華」のための基準を設けるなど、民間の取組を先導・コーディネートする役割を担うとともに、指導機能を発揮し、進行管理などを行う。
  • 市民主体の取組を積極的に情報発信するとともに、事業のアウトラインを示したうえで実施団体を募集するなどの方法により、民間レベルでの取組の輪がさらに広がっていくよう努める。
  • 「昇華」の意義に対する理解を深め、取組の裾野を広げていくため、学校・公民館との連携事業や修学旅行生が体験できるプログラムの検討、市の用紙への折り鶴再生紙利用のモデル実施など、市民活動を誘発・先導するような取組を市が率先垂範する。
  • 平和市長会議の加盟都市をはじめ、広島県や近隣市町などとの連携を図り、「昇華」の取組を通じた核兵器廃絶と世界恒久平和の実現を願う輪を広げるムーブメントを展開する。
エ 持続可能な取組とするための仕組みづくり
  • 折り鶴を古紙や再生紙商品などとして売却した資金や寄付金付きの折紙による収益を基金として積み立てるなど、平和貢献事業に活用するためのファンドを創設し、財源として活かす仕組みを検討する。
  • 折り鶴の再生やイベントをはじめとして、経済が循環するような手法を積極的に取り入れることにより、市民の意識をより高め、息の長い事業とすることを目指す。
オ 折り鶴寄贈者などの心情への配慮
  • 折り鶴を捧げる人々の思いを尊重するため、「昇華」の目的や方法などをホームページなどで公開し、折り鶴を捧げた後の取扱いについて広く告知する。
  • 焚き上げなどの方法により「昇華」する場合は、折り鶴を捧げた子どもたちや被爆者などの気持ちに配慮し、実施方法を慎重に検討する。

7 まとめ

 平成23年(2011年)9月に「折り鶴に託された思いを昇華させるための方策検討委員会」における検討を開始し、以来、半年間に亘り、市民などから募集したアイデアや意見、事業の試行実施による検証結果を基に、方策のコンセプトや取組の方向性及び進め方などについて、委員それぞれの専門的視点から議論を重ねてきました。
 検討過程においては、より多くの人々の理解を得ることができるよう、折り鶴寄贈者への意向調査や中間とりまとめに対する市民意見募集を行うなど、折り鶴を捧げてくださった方々や、それを受け止める人々の思いを大切にしながら方策づくりを進めました。
 広島市においては、この方策に示した方向性に沿って、できるだけ幅広く、積極的に取組を推進していただくよう要請します。また、持続可能な取組となるよう個々の事業に係る市民ニーズや経済的なコストなどを十分検証しながら、市民各層の方々に主体的に取り組んでいただけるよう機運醸成を図り、市民の心と力を結集した広島発のプロジェクトとして推進されることを強く期待します。
 折り鶴に託された平和を願う思いは、こうした昇華の取組を継続的に推進していくことにより世界の多くの人々に伝わり、さらには、次代を担う世代に継承され、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けた大きなエネルギーになるものと確信しています。

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このページに関するお問い合わせ先

市民局 国際平和推進部 平和推進課 被爆体験継承担当
電話:082-242-7831/Fax:082-242-7452
メールアドレス:peace@city.hiroshima.lg.jp

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